明日奈を引き取って数年が経ち、タカミチがいる麻帆良学園へ通わせた。それから龍燕は再び旅を始めた。
「そういえば、ナギの息子がその故郷にいるとか言ったな」
「あ、そうですね。確か…イギリスの、ウェールズとか言っていましたね」
白が答え、龍燕は転移魔法を試しながら行ってみるのも良いなと思った。
「そうだな。見に行ってみるか」
転移魔法の座標を合わした龍燕はナギの故郷ウェールズへ飛んだ。
─ウェールズ
龍燕達が着いた時、そこは火の海だった。
「なんだこれは、……祭か何かか?」
いや、良く考えなくても火の海になるような祭があるわけが無い。
「主、あれを!」
何かに気づいた黒が指を指した。龍燕はその指差す先を見た。
「あれは…悪魔か?」
「そうみたいです」
龍燕は町を見渡し、逃げ遅れた人を何人も見えた。
「俺と白、黒、神威の四人で悪魔を討つ。他守護騎士と煉、暁は町人を護衛しながら安全なところを見つけて避難誘導!行くぞ!」
皆はおうと声を上げ飛んだ。
龍燕は悪魔達を見据えた。
「結構いるな」
大小様々な悪魔が目算で百を上回っている。数だけなら百鬼火獣等の分け身の技で攻撃できるが、基本体術のみしか攻撃できないため悪魔相手では無駄な消費になってしまう。
龍燕は悪魔を倒しながら押し進み、ネギを捜した。ナギの息子なら、もしかしたら魔力が多く狙われるかもしれないと思ったからだ。
ふと、龍燕は周りより大きい悪魔を見つけた。そこに雷の暴風が撃たれたのが見えた。
「あれは……ナギか?」
急接近した龍燕はネギを発見したが、ネギは龍燕に気づかず走っていってしまった。
「っ、待て」
するとネギの前に悪魔が現れ、そいつは何かを放ってきた。瞬動で龍燕は動き、ネギを守るため前で左手突き出して咄嗟に炎壁を張る。
「ぐぅ……これは」
炎壁が一瞬で石化し、ひび割れた隙間から二の腕に攻撃が当たってしまい、直撃した二の腕から肘辺りまで広まって石化していた。その後もじわじわと広がり続けるのを見
て、龍燕は籠手を待機状態の首飾りの変える。
「石化……厄介だな」
石化を放った悪魔は、遅れてネギを助けに来た老人が封印した。
「お主…大丈夫か?」
封印を終えた老人は膝をついた龍燕に近寄る。その老人も石化の魔法を受けたようで龍燕よりも酷かった。
龍燕は石化の進行を止められないとわかり、左肩の付け根を武己から小太刀を出して切り落とした。
「ぐっ…ぅ……」
切り落とした左肩から先に炎を放って焼却し、血の流れる断面は癒し火を掛けて応急処置を施す。
「…とりあえず問題ない。ナギ」
龍燕は下りてきたナギに顔を向けた。
「すまん。龍燕」
龍燕はにやりと笑いながら立ち上がる。
「この程度なら問題ない。久しぶりだな」
「ああ、久しぶり」
それからナギはゆっくりとネギの前に歩いて行き、しゃがんだ。
「お前…、そうか……お前がネギか……。大きくなったな」
ナギはネギの頭に手を載せると少し乱暴に頭を撫でた。相変わらず不器用だなと龍燕は苦笑してしまった。
「そうだ……お前にこの杖をやろう。俺の形見だ」
「お…父さん……?」
渡された長い杖は、ナギが戦乱を駆け抜けた頃から愛用していた杖。
「もう時間が無い……わりぃな、お前には何にもしてやれなくて……」
そう言うと、ナギは浮遊術?で浮き上がる。それでもネギは名残惜しそうに、手を伸ばす。
「こんなこと言えた義理じゃねぇが……元気に育て!幸せにな!」
走り出したネギは転び、その間にはナギは消えていた。
龍燕はナギが消えるところをしっかりと見ていた。空間転移?いや、ナギが得意とする雷系統のモノでもない。ただ、漠然と消滅……。分身という訳でもなさそうだ。まさか精神体か?と考えたがわからなかった。
「お父さあ――――ん!!!」
ネギの悲痛な声が遠く、空へと木霊する。静かに涙するその姿は、本当にただの子供だった。
龍燕はそんなネギに何も言えなかった。
龍燕は腕が治るまでネギの家に厄介になった。数日で腕が元に戻った時には皆が驚いていた。
腕が戻った後、ネギ達に別れを告げ、また旅に戻った。