処刑されそうになったアリカ姫を助け出した紅き翼は、その後解散した。
龍燕は皆と別れ旅に出た。放浪するなら一緒に来るかとラカンに誘われたが断った。
旅に出て数日が経ったある日。森で野宿をしていた龍燕は、誰かが襲われているような声が聞こえた。
龍燕は急いで火を消し、近くの木に自分の精神力を含ませた帯を縛ってから辺りを散策した。
散策し始めて約5分。金髪の少女を見つけた。龍燕はその少女を気配で感じ、人でない事に気づいた。
「なんだ貴様…」
その少女は睨んできた。
龍燕は少女を見て、妙な気持ちになった。鼓動が高ぶるような、そんな感じだ。
「来い」
龍燕は少女の腕を掴み、帯のところで瞬間移動をした。
「い、今のは?」
少女はいきなり景色が変わったことに混乱していた。
「襲われているようだったから助けた。ここはさっきのところから離れたところだ」
「何故助けた」
少女は龍燕を睨み、怒鳴った。
「危ない目に遭っているのを見れば、誰だって助けるだろう?それに…いや」
龍燕の言葉に少女は首を傾げた。
「なにを言ってるんだ、お前は……。まぁ私を知らないからそうしていられるんだろうな」
「ん、ああまだ俺は名乗っていなかったな俺は灼煉院龍燕だ。よろしく。君の名は?」
「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ!これでどうだ!」
龍燕の眉間にシワが寄った。
「エヴァンジェリン……、あの『闇の福音』か?」
「そうだ。怯えろ、竦め。私が『闇の福音』よ」
エヴアンジェリンは笑いはじめた。
「ほう。噂は少しだが聞いた事はある。一度会ってみたいと思っていた」
「なんだど?!私は吸血鬼だぞ」
エヴァは驚きながら言った。
「ん?ああ、それなら会ってすぐに気配で気づいたよ」
「…貴様は、吸血鬼の私が怖くないのか?」
「怖い?いや、むしろ……なんていうか、『可愛い』と思ったな」
「私が……可愛い、だと///」
エヴァは顔を赤く染めた。
「ふっ、ふざけているんじゃないだろうな」
横目で見ながら龍燕に言う。
「嘘などつかん」
「…む……」
エヴァはさらに顔を赤く染めて、そっぽを向いた。
「夜は危ないからな、夜が明けるまで一緒にいるといい」
「……そうさせてもらう」
龍燕は焚火を起こし、近くにテントを立て、そこでエヴァを寝かせた。
次の日。朝食を食べ終えた後、エヴァと別れた。龍燕は一人では危険だから一緒に来ないかと言ったがエヴァは私は…「賞金首付きの吸血鬼だから」と言って断ったのだ。
「エヴァ」
「なんだ?」
「いつか、迎えに行っていいか?」
エヴァは言葉の意味がわからず、?を浮かばせる。
「どういう意味だ?」
「そうだな…次逢った時言いたい」
「そうか」
「あ、あと一つ」
龍燕は武己から袋を出した。
「腹が減ったら食べるといい」
「ん…ありがとう」
エヴァはそういって袋を貰った。
「じゃまたな」
「ああ、またいつか会おう」
二人は別れた。
別れた後、龍燕は何故鼓動が早くなったのかを歩きながら考えたが、今までそんな事は無かったため、わからなかった。まさか病気かと思い、空間モニターを操作して自分の身体に異常がないかを見たが異常は見当たら無かった。あのエヴァを思い出すとすぐに鼓動が早くなることしかわからなかった。
「俺の身体に何がおきたんだろう」
丘になった草原の上で暁や煉、神威や守護騎士達と昼食を食べている時に、龍燕は呟いた。
守護騎士達は顔を見合わせたがすぐに顔を傾げる。
そして暁と煉は顔を見合わせてクスクスと笑った。
「ん、どうした?」
「龍燕……」
「鈍感……」
二人は交互に言ってきた。
「何?鈍感?……どういう意味だ?」
すると守護騎士達もそうかそうかと声が上がってきた。
「わかったのか?」
「ええと、はい。わかりましたよ」
白の言葉に皆が頷く。
「教えてくれ。これは未知の病気か何かか?」
「病気?未知のでは無いけど」
「そうね。病気といえば…重度となれば病気になるんじゃない」
「九天の王ならばそれに相応しい方かと…」
「あのエヴァでしょ?昨日の晩に会って、今朝別れた、あの子でしょ?」
「髪も綺麗で…肌も白かった。主龍燕の相手に相応しい方と思うが」
皆は龍燕をおいて話し合い始めた。その内容から龍燕は少しずつだが気づきはじめ
た。
「俺は……恋をしたのか?」
その言葉に気づいた白は振り返った。
「あ、はい。主龍燕は『恋』をしたようです」
「これからどうするの?」
「今から追い掛けて告白しに行きますか?」
「告白なら場所も考えた方がいいですよ?」
「そうね。景色の良いところで告白」
「夕陽を背景になんていうのは?」
守護騎士達は盛り上がっていくなか、龍燕は悩んだ。
「闇の福音…か」
相手が吸血鬼だからとかは龍燕にはどうでもよかった。ただこれは自分の気持ち。エヴァは断る可能性が高い。
「もし、この気持ちが届かなくても……何かをしてやりたいな」
龍燕は何をしてらればエヴァンジェリンが喜ぶかを考えはじめた。