九天の王となった操炎者   作:【時己之千龍】龍時

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第04話 決戦と黒幕

 

 紅き翼は、頭脳労働担当と肉体労働担当に分かれた。

 

 頭脳労働はタカミチ、アル、姫様二人と偶にガトウ。

 

 肉体労働はナギ、ラカン、ゼクト、そして龍燕(シエン)達だ。

 

 肉体労働の担当は、敵だと判明したやつらを片っ端から倒していく組だ。

 

 そして行動を始めて数日後、遂に頭脳労働者は黒幕の本拠地を突き止めた。

 

 そこは世界最古の都、王都オスティア空中王宮最奥部『墓守り人の宮殿』。

 

「不気味なら位静かだな、奴等」

「なめてんだろ?悪の組織なんてそんなもんだ」

「案外、とっくの昔に尻尾巻いて逃げ出してるのかもね」

「ハッハッハ!そうかもしれねぇなぁ!」

 

 最終決戦だと言うのに…紅き翼に緊張の色は全くない。龍燕(シエン)達も警戒はしているが同様といった感じだった。

 

「ナギ殿。帝国・連合・アリアドネー混合部隊、準備完了しました」

 

 頷いたナギは報告しにきたアリアドネーに雑魚の相手をお願いした。

 

 

 

 

 紅き翼と龍燕(シエン)達は真正面から敵地に突っ込み、敵を倒していく。そして最後の敵をナギは首を掴みあげた。

 

「見事……理不尽なまでの強さだ……」

「黄昏の姫巫女は……どこだ?消える前に吐け」

「フ……フフフ……まさか君は、いまだに僕が全ての黒幕だと思っているのかい?」

「なんだと……?」

 

 一瞬にして膨れ上がった魔力の感覚。それに気づいた龍燕(シエン)は声より先に瞬動で動き、ナギを突き飛ばした。

 

「ぐっ………」

 

 龍燕(シエン)と黒幕と思っていた男の腹を黒い魔力の閃光が貫通していった。

 

「シ、シエン!」

「主!」

 

 傷口を押さえながら距離を置く龍燕(シエン)。そこへ騎士達が駆け寄った。龍燕(シエン)は自分の身体の状態をみる。腹には穴が開き、胃が完璧に消し飛んでるのがわかった。

 

「誰だっ!?」

 

 敵の気配にラカンがいち早く気づく。守護騎士は龍燕(シエン)を見て気が動転し、全く敵の気配に気づいていない。

 

「全、員っ!防御をっ!」

 

 龍燕(シエン)は叫び、右手を前に突き出して自分の今の状態で張れる最大の防御を張

る。そして一コンマ遅れて皆が防御魔法や結界を張った。

 

 しかし全ての防御は破壊され、ラカンの両腕が吹っ飛び、詠春やアルも軽くは無い傷を負ってしまった。守護騎士達は皆被害に耐え切れず、強制的に九天の書に戻ってしまった。再生には時間が掛かる。

 

 だが、龍燕(シエン)が突き飛ばしたナギは先ほどの攻撃で無傷だった。

 

「ぐっ……バカな……!」

「まさか……アレは……」

 

 霞む視界の先、そこには黒く暗い……真の敵が。ライフメイカーが居た。

 

 アレには、絶対に、勝てない……ラカン達に絶望が心を覆いかける。

 

「はっ!」

「え?」

 

 龍燕(シエン)は開いた穴を手で強く抑え、ゆっくりと立ち上がる。

 

「皆は少し下がっていろ」

「シエン!なに言ってやがる!奴はマズイ!奴は別物だ!死ぬぞッ!」

 

 両腕を飛ばされたラカンは顔を恐怖の色に染め、龍燕(シエン)に怒鳴る。

 

「俺が…死ぬ?俺は灼煉院家の血をひく、灼煉院龍燕だ。絶対に死なんっ!」

 

 龍燕は武己から暁と煉を出した。

 

(アカツキ)(レン)。仲間を全力で護れ」

「わかった」「うん」

 

 二人を見て龍燕(シエン)は頷いた。

 

「この状況で……楽しいと思うのはやっぱり龍神(シシン)様の曾孫だからかな」

 

 小さな声で呟き、やつを見た。

 

「行くぞ。眞炎流を超える龍燕(シエン)流をな」

 

 龍燕(シエン)の様子がいつもと違うのを皆は感じた。

 

「……『熾煉之双翼(シレンノソウヨク)』」

 

 龍燕(シエン)の全身から紅の櫻炎(オウエン)が弾けるように溢れ出した。そしてその炎は龍燕(シエン)の身体に纏わり付き、背には大小二対の紅の双翼が形成された。

 

「『熾煉之瞳(シレンノヒトミ)』……」

 

 龍燕(シエン)の髪留めが弾け消え、乱れた髪が炎髪のごとく紅色に燃え盛って広がり、さらに髪や双翼からは桜の花弁状の火花が舞い踊った。開かれた瞳からは燃え盛る炎の様な煌めきに満ちていた。

 

「『熾煉之鎧兜(シレンノヨロイ)』」

 

 身体を覆っていた炎は真紅に煌く甲冑に形を変え、その上にも髪や双翼同様な火花を舞い散らす炎の羽織を生成し辺りを輝かせた。 

 

「さぁ……始めようか」

 

 龍燕(シエン)は笑みを浮かべながら『創造主』の前に立つ。

 

 

 

 

 

 戦いが終わるのは10分後だった。

 

 

 

 

 皆が驚いた。皆が勝てないと思っていた相手を、龍燕(シエン)は僅か10分で倒した。戦いが終わった直後に「シエン……お前…本当に人間なのか?」と皆が言ってしまった。龍燕(シエン)もどうだろうなと思いながらにっと笑い返した。

 

 そして龍燕(シエン)は皆の近くへ降り立ち、同時に龍燕(シエン)に纏っていた炎は消え、髪と瞳も元の黒に戻り、(アカツキ)(レン)も粒子となって武己に戻った。纏っていた胴着も上は消失し、下もところどころ穴が開き肌が露出していた。また体の怪我も酷く血だらけとなっていた。

 

 技が解けた龍燕(シエン)は辛そうに視線を下げたが、力が抜きかけそうになる身体にぐっと堪え、拳を高く突き上げた。

 

「やった、ぞ」

 

 絞り出すように龍燕(シエン)が言い、皆から歓声が湧いた。皆が痛む身体を無理に動かし、龍燕(シエン)に近づいた時……龍燕(シエン)は立ったまま気絶していた。

 

 

 

 

 

 


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