イナズマイレブン 少年サッカー伝説の威光 作:ぬんちゃくティッシュ
雷門中の棄権により勝利を飾った聖クラウド学院だが、雷門が何かを警戒しての棄権だと言うことは俺を含めメンバー全員が感じている。
一体なぜ、あんなにも急に試合を放棄したのか…真相は…恐らく俺の存在だろう。けれど、まだ正体は把握しきれていないようだ。
何にせよ、今の勢いを止めてはならない。無事、雷門との練習試合を終えた今、フットボールフロンティアへの参加を学院は取り合ってくれたようで、地方予選のトーナメント表に我が学院の名前が彫られていた。
練習試合から2日経過し、部室にはメンバー全員を召集。フットボールフロンティアの事についてのミーティングと言ったところであった。
「全員いるな?」
キャプテンの焔先輩が現時点での部員の安否を確認。そこはやはりキャプテンだと思う。きちんとチームを統率し、常に目をかけている。
「ひぃふぅみぃ……全員揃ったぜ」
副キャプテンの雄大先輩が皆いることを報告。良いねぇ…部活って感じだなぁ。
「よし!それじゃ、皆聞いてくれ。この前の雷門中への勝利を踏まえて、フットボールフロンティアへの参加が発足された。もうトーナメント表には名前が載ってるぞ」
「とうとうここまで来たんだね…」
大地がこぼした言葉。それでこのチームにとってフットボールフロンティア参加はかなり大きい壁であったのだろう。
今のこのチームなら、練習次第で大技を決められるようにもなるだろうし、現に技を使えるのが数人いれば、地方予選の1回戦…あわよくば2回戦と行けるかもだが、俺としたことが昨今のフットボールフロンティアの参加校の実力事情を知らない。
故に、1回戦から強敵が当たって来ることもあり得るし、対応も出来なくなる。油断は出来ないと言うことだな。
「トーナメント表を見れば分かるが、1回戦目の相手は傘見野中だ」
「あれ?傘見野って隣町の学校じゃないの?確かそんなに強豪では無かった気がするんだけど…」
副キャプテンが疑問をこぼした。
俺は傘見野…だったっけ?そこのことはよく知らないが、その言葉からして、あまり強くはないようだ。最悪なことにはならなさそうで安心できるな。
「いや、最近監督が変わったらしく、かなり実力が上がっているらしい。何でも、律されて無かった部員らが息を揃えて監督に従うらしい」
「何ですかそれ…軍隊じゃあるまいし」
「相手が何だろうが全力でぶつかるだけだ。全員練習は気を抜くなよ。それじゃ各自練習に解散だ!」
………。
各自に練習へ散ったのは良いが、雷門との試合とは違ってかなり激化するのがフットボールフロンティアだ。並な強さでは潰される可能性大なんだが、どうだろう?
持ち技の面では比較的強い技を使えるから太刀打ち出来るとしても、ボール運びをカットされてしまったらそこからのリカバリーがうちのチームは苦手のようだ。いくら世界を制したオフェンスでもボールに触れさえ出来なかったとあれば、危機感は覚えよう。さて…。
DF部隊には強力なブロック力を付けてもらうのは当然だ。まぁ、大地に至ってはかなり強いブロック技を習得してるからまだ安心できる。問題はもっと上のポジにいるMFがブロック力に乏しいこと。今回の課題はこれだな。
しかし、自分のチームの事ばかり気にしてはいられないな。
相手になる傘見野とは、一体どう言ったプレイをするのかを俺も知っておく必要がある。…フットボールフロンティア初戦は1週間後。俺らはその数あるトーナメントの中から初戦から数えて4試合目。日にちにしたら1週間後強くらい。それまでになら情報を仕入れて練習メニューの徹底を図れるだろう。
俺は傘見野の情報がないかと監督に言ってネットを走らせていた。動画でも文面でも、最悪の話は噂でも今は貴重な情報だ。
そんな気持ちで探していると、何やら面白い記事を見つけた。小さい事でも少年サッカーに関する情報を載せているサイトだったのだが、傘見野に関する情報が1つ。傘見野サッカー部は普段、近くの河川敷のグラウンドで練習していると言う。前までの傘見野サッカー部は不良が集まる…と言うレッテルを貼られている為、他の部がグラウンドを使わせれくれないから…との理由らしい。キャプテンの言った通りだ。前までは律されていなかったんだな。…これは偵察に行く価値はありそうだな。
…ん?なんかもう1つ面白い記事が載ってるぞ。何々?小学生強豪サッカークラブ『稲妻KFC』と練習試合をしたって?
稲妻KFCと言えば、俺も聞いたことがある。地元の小学生を集めたサッカークラブだが、練習のレベルが高いらしく、小学生だと侮るとあっという間に点差が開く…と言う噂を聞いたことがある。あくまで噂は噂だと思っているのだが、信憑性が高くてどうも言えないんだが…。
…続きがあるな、結果か?な…?15対0で傘見野の勝利だあ!?
………。確かに小学生相手で実力はプロに及ぶとは言いづらいとしても、こんなに点数が開くものなのか?だとすれば…傘見野の攻め方はかなり荒いか、それともボールをキープするのが上手く、かつシュートも正確なチーム…そう考えられる。まぁ、KFCが案外強くなかったりするのかもしれないが、世間評価が証明しているだけに少し驚きだ。実際にプレイを目にしたわけではないが…。
もしこの記事が本当だとすると、今も河川敷で練習しているはずだ。偵察がてら行ってくるか。
…黙って出ていってもバレないよな?
「あれ…?爽くん?どこに行くんだろう?…付いて行っちゃおっと♪」
…隣町の河川敷に到着。隣町と言っても稲妻町なのだが、長閑でどこか懐かしさも感じさせる街並み。俺は何となくここ場所が好きなんだよな。ちなみにウチの学院は聖町(ひじりちょう)と言う町だ。小さくて田舎っぽいが、俺は悪くないと思う。
確か、稲妻町には雷門中があるってことで少し有名になったんだっけ?
本題に入ろう。
グラウンドは河川敷の橋桁麓にあり、いつも傘見野が練習しているとの情報だ。それまではそれこそKFCが使っていたり、雷門が練習していた様だが、雷門は専門のグラウンドを作ったらしい。KFCの方は傘見野との交渉で移ったらしい。とは言うけど、実は河川敷にはグラウンドはもう1つあるから(実際はありません)そっちに移っただけなんだけどね。
…で、グラウンドがある場所に近づくほど練習している声と音がよく聞こえてくる。どうやら紅白戦しているようだ。
「お、やってるな?」
あれが傘見野…。どのようなプレイをするのか、見物じゃないか。
「さて…しっかり偵察させてもらおうか…」
「そうだね、相手を知るのは大切なことだもん」
「お、分かってるじゃないですか…って、何やってるんですか?風祭先輩」
なんと…この人にはバレてたのか…全く、風祭先輩には敵わないな。
「いやね?爽くんが学校を出ていくのが見えたから付いていこうってね?」
「まぁ…俺は別に構いませんけど、ただの敵情視察ですから。面白いことはありませんからね?」
「分かってるって!私もどんなシュートを打ってくるのか気になるしね」
と言うことで、少し予想外ではあったが風祭先輩も偵察に加わった。
と言うか、少し話がずれるが、風祭先輩はなぜこうも俺に良くしてくれるのだろう?まぁ元々誰にたいしても仲良く振る舞う人ではあるのだけど、なぜか俺にはこうやって付いて来たりだとか、この前なんか一人で帰ろうと思っていたら校門でわざわざ待っててくれていたと言う恋愛SLG的な事をしていたし…。…まさかな。
話を戻そうか。そうこう言っている間にシュートを仕掛けるようだ。きちんと見ておかねば。
「シュート仕掛けるようですね。先輩必見ですよ」
「ゴッドハンドで止められる範疇であって欲しいんだけど…」
「行くぞ!止める気で構えろ!」
『マッハウィンド改』
なんかリーゼントの様な髪型をしたキャプテンマークを付けている選手が放ったシュートなのだが、見てくれで風を意識した技と言うのが良く分かる。もとい、あの選手はかなり足腰が強いことが見てとれる。必然的にフットワークが予想できるな…厄介だ。
「止めるぜ!」
『デザートストーム』
おぉ…止めたぞ。今の技は…中東を相手にしてた時に似た技を見たぞ。あれは他の連中のシュートがなかなか通らないって言うんで厄介だった記憶がある。結局、その時は俺が積極的にシューターに回って点を絞り取っていたな。
…で、目の前の傘見野がそんな技を使っているところを見ると…、まぁ…能力値による差はあるかもしれないが、警戒しておいた方が良いだろうな。
打破できる技は俺のシュートと雄大先輩のリフレクトバスター…それだけだ。確実に言える…これではツラい。
「見ましたか?今の的確なシュートと確実なセービング」
「どうやら、私が知ってる傘見野とはワケが違うってことなのね…」
もしウチで傘見野に関しての情報が更新されていないようなら、一刻も早く伝えなくてはならない。違うことに確証を持って練習しても自分の首を絞めるような物だ。
…ん?何だ?練習が止まったぞ?そして、こちらに気付いてる…と言った雰囲気だ。面倒な事になりそうだ…。
「おいお前ら二人、聖クラウド学院のジャージだよな?」
続く