リンディと話した次の日。虎牙となのは、ユーノは再び話しをするため待ち合わせ場所と指名した海鳴近海公園へ向かっていた。
「虎牙君」
「決めたか?」
「私は…ジュエルシードを集める事は、リンディさん達と協力することに決めた」
「という事は、フェイトは別か」
なのはは頷いた。
「私、フェイトちゃんとお話ししたいもん。お話しして……友達になりたい。だからフェイトちゃんの事だけはジュエルシードと別にしたい」
「そうか。なのはの言いたい事はわかった。きっと、友達にられるさ」
「うん」
なのはは大きく頷いた。
──特務機動隊隊舎:マスラオ
「龍燕」
フェイトが龍燕に声を掛けた。
「どうした?」
「管理局の人が来るんだよね?」
フェイトは不安そうに言う。
「ああ」
するとアルフが不機嫌そうな声を出した。
「攻めて来たらどうするのさ?」
「攻めて来たら?そんなこと、解りきっている事だ」
「そんなことって、なんなのさ?」
龍燕は拳を握り、二人の見える位置にあげる。
「攻めて来たら……攻め返すのみ」
アルフとフェイトがピクッと身体を震わせた。
「あっちにはすでに『攻めて来たら管理局を潰す』と警告しといたからな。当然だ」
「え…と?冗談、だよね?」
ひきずった顔でフェイトが龍燕に聞く。
「いや、本気だ。警告までして攻めて来たら、やるぞ?」
真面目な顔で言う龍燕に、二人は苦笑し始めた。
「攻めて来ない事を祈ろうよ?」
「まぁ、俺も攻めて来てほしくはない。正直無駄に疲れるしな。さて、少し早いが昼食の準備をしよう」
「うん」
フェイトはまだ心配そうな顔をしていた。
「皆で握り飯でも握るか」
「ニギリメシ?」
アルフとフェイトは首を傾げた。
「軽く塩の入ったご飯を三角に握るんだ。中に具を詰めても美味い。フェイト達で言うサンドイッチに近い食べ物かな」
「そうなんだ」
「具を入れると美味いんでしょ?なら肉入れようよ!肉肉~ッ!」
アルフは口から涎を垂らしながら踊る様に喜んだ。
二人はアルフを見て微笑した。
そして約束の時間になった。
1200時。リンディ提督はクロノ執務官と十二名の部下を連れて指定の位置に降りた。
「あの家かしら」
「多分そうですね。他には何もありません」
クロノ執務官が先頭に立ち、家の扉を叩いた。
扉は開かれ、少女が顔を出した。
「はい」
「時空管理局、クロノ・ハラオウン執務官だ」
「はい。お待ちしていました。どうぞお入り下さい」
リンディ提督達が中へ入る。
「灼煉院龍燕は何処に?」
クロノが真剣な顔で少女に言う。が少女は無視してリンディ提督の方を見る。
「私は龍燕の武己、煉双暁の煉です。主龍燕は今城でお待ちです。どうぞこちらへ」
煉は奥の部屋へ歩き出す。クロノは不機嫌な顔でその後を追った。
リンディ提督達は地下の部屋に案内された。
「この部屋は?」
案内されたこの部屋は特に何もない部屋だが床に何か魔法陣にも似た絵が描かれている。
「少しお待ち下さい」
煉は奥の壁に手を置いた。すると壁は真ん中で縦に裂け、左右に向かって消えるともう一つ、奥の部屋が現れ、その中央には城の飾りが硝子の中に飾られていた。
「何だ?この部屋は」
クロノの顔が険しくなった。
「皆様。この羅暁式八方魔方陣の中へお入り下さい」
局員達はざわめいたがリンディ提督は頷いて魔方陣内に入ったため、クロノ執務官と局員達も中へ入った。
「では」
魔方陣は光り始め、皆を包み込んだ。
光りが収まり、巨門が目の前に現れ、局員達は驚いていた。
「なんだ?この扉は」
「俺の城、特務機動隊の城の表門だ」
龍燕は軽々と門を開け、皆を入れた。
「ようこそ。特務機動隊隊舎、『マスラオ』へ」
龍燕は皆を客間に案内した。客間は二つを使い分けた。
一つは護衛で来た局員達。もう一つは話しをする龍燕とリンディ提督以下、クロノ執務官と補佐のエイミィだ。
後から入って来た煉が皆に粗茶を配り終え、話しが始まった。
また、管理局側には秘密で別の間にいるフェイト達に聞こえるように音声を送りながらの話しだ。
交渉話しは約二時間程続いて終わった。結果は当然、決裂に終わった。
龍燕が言ったのは『ジュエルシードの回収の許可』だ。しかし、当然の事その答えは『許可は出せない』だ。
だが龍燕も諦めず、『ここは管理局でいう管理外世界であるから捜査も何もかも駄目なものだろう』という答えに『君達が集めているジュエルシードは危険度の高いロストロギアだから』と返され、話しは完全に平行線、決裂した。
次に話したのは龍燕についてだった。その話しの結果として出たのは次元漂流者という答えだった。
話しが一通り終えたあと、リンディ提督は龍燕に質問する。
「龍燕さんは何故テスタロッサ家に手を貸すんですか?」
その問いに龍燕は「それは…」と間をあけてから答えた。
「助けたかったからだ」
リンディ提督は首を傾げた。
「帰り道のわからなかった俺を助けてくれた。だから俺が自分の世界への帰り道がわかる日まで、助けてあげたいと思った。テスタロッサ家への恩返しともいうかな」
「そうですか」
それで会談は終わり、管理局は母艦へ戻って行った。
「龍燕」
「どうした、フェイト」
「これからどうするの?」
フェイトは不安で堪らなそうな顔をしていた。
「そうだな。まず、このままジュエルシードを回収しよう。そしてまたも管理局が邪魔をしてきたら、軌道上に待機している母艦の近くを攻撃し、いつでも沈められると最終警告を出そう。さらに艦隊が来てしまった時はその本拠地へ単身攻め入り恐怖を刻ませる」
「マジか?」
アルフが震えながらフェイトの後ろに下がり、それを見た龍燕は笑いながら冗談だと返す。
「最終的にはフェイトが決めてくれ」
「え?」
「もしフェイトが俺に『それ』を頼んだら行こう。まぁ、無いと思うがな」
フェイトはくすくすと笑った。
「うん。私はそんなこと言わないよ」
アルフや煉達も笑い始めた。