白い少女…高町なのはとフェイトが目の前で戦っている。アルフもフェレットと戦っている。が……。
「虎牙。何故お前がそこにいるんだ?」
「それは、俺が聞きたい」
他は戦っている中、龍燕と虎牙は向かい合うようにして話しをしていた。
虎牙は龍燕と同じ世界の出身で従兄弟、さらに龍燕の作った部隊の副官だ。
「これは……戦わないといけないのか?気まずいぞ」
「気まずくても、な……。戦いづらい」
二人はかなり悩んだ。不審に思われぬように二人は距離を置いた。その時、衝撃が身体を襲った。
「何だ?」
振り向くと、ジュエルシードがフェイトと高町の魔力に反応したらしく暴走し始めていたようだった。
「あれは……危ない!」
龍燕は瞬動でフェイトの前に立ち、ジュエルシードに手を翳す。
「龍燕?」
「くっ…離れていろ」
「…うん」
フェイトが離れたのを確認した後、龍燕はジュエルシードに炎を纏わせた。
「眞炎流『炎球壁』、術式装填技『爆炎』」
ジュエルシードは炎の丸い結界に包まれ、その内の一瞬結界内で爆発が起こり……暴走が止まった。
「あの!」
なのはが龍燕に杖を向けた。同時に肢体が捕われる。
「今度は逃がしません。集める理由を教えてください!」
「仕方ないか……三分以内に俺を倒せたら理由を話す」
「わかりました」
龍燕は右手を拘束していた魔法を力で砕き、掴んだジュエルシードをフェイトへ投げた。フェイトはそれを受け取る。同時にフェイトから念話が来る。
『シエン?』
『それを持って先に行っててくれ』
『うん。気をつけてね』
フェイトとアルフは離脱した。
「いきます!ディバイン…バスター!」
龍燕は左手の捕縛を振り解き、バスターを弾く。
「ッ!シュート!」
なのはは三つの誘導弾を放つが、龍燕は左手だけで軽く弾き返していく。
「あと…一分半」
龍燕がそういうと激しくなった。直後、緑の輪が両手を拘束した。
「なのは!」
「ユーノ君。全力全開!ディバイン……バスター!」
さっきよりも大きい砲撃が龍燕を覆い尽くした。
「これで!」
龍燕は魔力混じりの爆煙を吹き飛ばす。
「残念、終わりだ。また会おう」
龍燕は瞬動で移動した。
──特務機動隊隊舎『マスラオ』
「今帰った」
「シエン!大丈夫だった?」
フェイトが出迎えた。手には包帯が巻かれていた。
「俺よりフェイトが心配だ」
龍燕はフェイトの手に癒し火を掛けて傷を癒す。
「ありがとうシエン」
「ああ。もうそろそろ報告に帰った方がいいのかな」
「うん。明日の午後に」
「俺はもしものために待機しているよ」
「わかった」
翌日の昼、フェイトは翠屋という店のシュークリームの入った箱を持って、アルフと一緒に時の庭園に戻った。
「煉、暁。何もなければ明日はジュエルシードが発動するまで休日にしよう」
二人は喜んだ。
「じゃあ龍燕、明日買い物に行こうよ!」
暁の言葉に煉は頷いた。
「そうだな。買い物に行こう」
明日の話しを終えた後、モニターを見ながらフェイト達の帰りを待つ。二人が戻ってきた時もう夕方だった。
「お帰り、フェイト、アルフ」
「ただいま。龍燕」
「うん、ただいま」
帰ってきた二人に元気が無かった。フェイトは夕食まで部屋にいると言い、帰ってすぐ部屋に入ってしまった。心配になった龍燕はアルフに事情を聞くことにした。
「アルフ、なにかあったのか?」
「それが…」
アルフは事情を話した。途中から涙を流しながら言った。
「そんなことが……」
龍燕は握った拳に自然と力が入った。手からは血が滲み出ていた。
「シ、シエン…血が……」
「俺の手よりフェイトの方が辛い」
二人はしばらく黙り込んでしまった。
「龍燕、何してるの?」
「煉」
気がつくと後ろに煉がいた。
「血が出てる」
「いや…何でもない」
龍燕は癒し火で自分の手を治しす。
「どうした?」
「夕食が出来たから呼びに来た」
「そうか。アルフ、行こう」
「あ、うん」
龍燕達は食堂に向かった。
次の日の早朝。龍燕、フェイト、アルフの三人は模擬戦をしていた。
アルフが前に出て龍燕と格闘戦をし、フェイトがアルフの支援。時折フェイトが入る、といった感じだ。
アルフも龍燕にはまだ一回も勝ったり、引き分けということはないが最初に比べ凄く上達した。
龍燕もそれをみて、眞炎流歩法術の一つ『縮地』を教え、今のところは練習中だがもう少しで使えるようになると龍燕は思った。
「さて、早朝の鍛練は終わりだ」
「うん」
皆は食堂に行き、朝食を食べた。
「フェイト、アルフ。今日の午後は皆で出掛けようと思ってるんだが」
「お出かけ?ジュエルシードは?」
「発動がないかぎり忘れて、今日は休日のように。どうだ?」
「でも……」
フェイトは不安そうな顔をした。
「たまには休む事も必要だ」
龍燕はアルフを見た。アルフも頷き返した。
「そうだよフェイト」
「アルフ……。うん」
「決まりだ」
朝食を食べ終えた後皆で準備を始めた。
「さ、行くか」
「うん」
「出発~!」
暁は大きく上げ、出発した。
夜、公園のベンチに座って星を見上げた。
「綺麗…」
「これだけ綺麗だと羅暁国を思い出す」
空一面に広がる星を見て龍燕が呟いた。
「シエンのいた国も星が綺麗なの?」
「凄く綺麗だよ」
フェイトの問いに暁が答えた。
「そうなんだ」
その後も話しをしながら星を眺めた。