異界の魔法少女   作:【時己之千龍】龍時

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第04話 拠点は必要不可欠

 

「ここにその『ジュエルシード』があるのか」

 

 龍燕(シエン)、フェイト、アルフの三人は見渡しのいい高いビルの屋上に降り立った。

 

「うん」

 

 龍燕(シエン)は二人に振り向く。

 

「さて、拠点を造りに行くか」

「「え?」」

 

 龍燕(シエン)の一言にフェイトとアルフが驚く。その二人の反応に龍燕(シエン)は首をかしげる。

 

「どうした?」

「ちゃっちゃと見付けて帰ればいいじゃん」

 

 アルフが反論を言うが龍燕(シエン)龍燕(シエン)でそれにさらに反論する。

 

「見付けられなかった場合、食事はどうするんだ?内容上、管理局の介入が何時始まるかわからない。管理局が現れてしまった時、アルフは『落ち着いて』『冷静』に食事出来るか?」

「うっ」

 

 アルフは口を閉じる。

 

「じゃ、理解してくれたところで『仮拠点』を造りに行こう」

 

 二人は頷いた。

 

 

 

 

──山

 

「人気もないし、認識障害や視覚障害など複数掛ければ問題無いな」

 

 龍燕(シエン)(レン)(アカツキ)を出した。

 

「景色良いね」

「眺めが良い」

 

 するとフェイトが口を開いた。

 

「けどここ、小屋も無いよ?」

 

 龍燕(シエン)は振り向いた。

 

「小屋より城さ。広い方がフェイトも修練できるだろう」

「城?」

 

 龍燕(シエン)の言葉にフェイトは首を傾げる。隣のアルフも同じ感じた。

 

「ああ、城だ」

 

 龍燕(シエン)は近くにあった廃墟を見つけた。

 

「こんな廃墟どうするんだい?」

 

 アルフが聞いてきた。

 

「使うんだ。(アカツキ)

「はーい」

 

 (アカツキ)は廃墟に手を翳した。

 

「はっ!」

 

 すると微妙な高さを保って、廃墟は浮いた。

 

「廃墟が浮いた?!」

 

 アルフとフェイトはぽかんとしながら、ゆっくりと動き始めた廃墟を見ていた。今までは模擬戦の時にランサーを重力で圧気させて落としたり消したり、壁にして受け止めたり弾かせたりとしたのを見ただけだ。

 

「その辺りでいいぞ」

「はい」

 

 (アカツキ)は廃墟を下ろした。

 

「んー、少し疲れたかな」

「ありがとう。重力系の消費は結構激しいからな、回復するまで武己《ブキ》で休んでろ」

「うん」

 

 (アカツキ)は武己に入った。

 

「し、龍燕(シエン)(アカツキ)は何をしたの?」

(アカツキ)は重力慣性能力の応用を使ったんだ」

「応用…だったんだ」

 

 フェイトは暁とよく模擬戦をやっていたが、その応用は見ていなかったので驚いていた。

 

(レン)のはまだ見ていなかったな。(レン)は物質変換能力を使える」

 

 龍燕(シエン)(レン)に視線を向けた。

 

(レン)。その廃墟内にあるものを物質変換して外に出してくれないか?」

 

 小さく頷いた(レン)は廃墟に手を翳した。

 

「変わって」

 

 そういうと廃墟内にあった瓦礫等は一つに纏まり、外に出てきた。

 

「え、と…これが物質変換能力?」

「そうだ。まぁ今のはただ纏めて出しただけだけとな」

 

 フェイトは興味深そうに見ていた。

 

 龍燕(シエン)は華麗になった廃墟内に入り、見はじめた。

 

「中は…、下は丸出しになった基礎か。広い部屋と小さい部屋が廊下を挟んで一つずつ。広い出入口が一つか。(レン)、早速だが床を造ってくれ」

「わかった」

 

 龍燕(シエン)は続いてフェイト達を見た。

 

「二人は周囲を調べて、魔力を持つ者がいないか調べてくれ。勿論、認識阻害等を掛けてな」

「わかった。けど、ジュエルシードは?」

 

 アルフは龍燕(シエン)に言う。

 

「基本は魔力を持つ者を探索。今回は最優先に。第二にジュエルシードを発見したら回収してくれ」

「うん。わかった」

 

 フェイトも頷いた。

 

「魔力を持つ者を見つけても無駄な争いは避けて、情報収集のみになるべくしろ」

「うん。じゃ、行ってくるね」

「ああ」

 

 フェイトとアルフは飛んで行った。

 

「さて、(レン)はどこまで進んだかな」

 

 龍燕(シエン)は廃墟内に入った。

 

「広い部屋は出来ているな。(レン)

「はい」

「残りは?」

「廊下の半分と小さい部屋と出入口」

「そうかわかった。それが終わったら休んでいいよ」

 

 (レン)は頷いて作業を再開した。

 

「さて、俺はアレの調整をするか」

 

 龍燕(シエン)は広い部屋で『アレ』の調整を始めた。

 

 

 

 

 

─夕方

 

「シエン、只今」

 

 フェイトとアルフは戻り、廃墟の中に入って驚いていた。

 

「わっ、すごい」

「綺麗になってる」

 

 瓦礫が一つも無くなり綺麗になってるだけではなく、椅子やテーブルも置いてあった。

 

「シエン、この椅子とテーブルはどうしたんだい?新品みたいだけど」

「生成した。(レン)がな」

 

 龍燕(シエン)(レン)を見た。(レン)龍燕(シエン)の後ろに隠れ、頬を赤く染めた。

 

「どう、かな?」

 

 恥ずかしそうに言う(レン)にアルフが凄いよと褒めた。

 

「あと、二人共来てほしい」

 

 龍燕(シエン)は扉の前に立った。

 

「どこに?」

「ジュエルシードを回収している時も鍛練を出来るように」

 

 龍燕(シエン)は扉を開けると地下に続く階段があった。

 

「階段?」

 

 アルフが首を傾げた。フェイトも?を浮かべる。

 

「ついて来て」

「うん」

 

 階段を下りると大型空間モニターを正面と、右側に二つのモニターを備えた司令室のようなところに出た。空間モニターの前に(アカツキ)が座り、キーを叩いている。

 

「あ、龍燕(シエン)。フェイト、アルフもお帰り」

 

 気づいた(アカツキ)は言った。

 

「ただいま…て、ここは?」

「ジュエルシードを探すための仮施設のような感じに作ったの。今はまだ調整中で魔力反応のみだけと、そのジュエルシードってのを一つ見つければメインモニターに出せるようになるよ」

 

 フェイトとアルフは驚いていた。

 

「どこにそんな器材持っていたのさ?ほとんど手ぶらだったのに」

 

 フェイトがそう言うと龍燕(シエン)両籠手(リョウゴテ)を見せながら言った。

 

「全部俺の武己(ブキ)煉双暁(レンソウギョウ)』の収納機能にしまっていたのを出した。器材以外の材料なら大体は(レン)が生成出来る」

「何か凄いね」

「うん」

「あとフェイトとアルフの鍛練する場所だが、こっちだ」

 

 龍燕(シエン)は下りてきた階段の隣の部屋を見た。その部屋には壁に何か装置の様なものがあり、床には一つ、大きな八角形の魔法陣があった。

 

「その部屋でやるの?」

「いや、その壁に掛かった装置の中でやるんだ」

 

 二人は理解できていなかった。

 

「装置の中で?どうやって入るの?」

「八方陣の中に入って」

「うん」

 

 二人は八方陣に入る。龍燕(シエン)(レン)も中に入った。すると八方陣は輝き始め、光が周囲の景色を掻き消した。

 

「え?」

 

 光が消えるとさっきまでの景色とは全く違い、装置の付いていた壁は門に変わった。

 

「…ここは?移転?」

「でも魔力は感じなかった」

「ここは装置の中。そして──」

 

 龍燕(シエン)は高さ扉の高さが約三m以上ある目の前の門を開けた。中は広い庭があり、更に奥には高く、大きい城が建っていた。

 

「ようこそ。特務機動隊隊舎、『マスラオ』へ」

「ます、らお?」

 

 フェイトとアルフは驚愕していた。

 

「広い…」

「あそこの倍以上はあるよ」

 

 龍燕(シエン)(レン)は歩きだし、そのあとをフェイトとアルフが追う。

 

「シエン、ここは?」

「玄関口だ。履物(ハキモノ)はここで脱いで手に持ってくれ」

「靴脱ぐの?」

 

 アルフは驚きの表情を見せた。フェイトも同じだった。これは『文化の違い』と言うものだろう。龍燕(シエン)も時の庭園で居候し始めた時、自分のいたところと違うと思ったところも多く感じていた。

 

 四人は城の中を歩き始める。

 

「広い、ね」

 

 真っすぐ伸びる廊下。扉も幾つかあったが通り過ぎて行く。そして渡り廊下を渡ると建物があった。

 

「ここは?」

 

 龍燕(シエン)は扉を開けながら言った。

 

「ここは第二多目的室だ」

 

 中は外から見たこの建物の外見より遥かに広かった。

 

「どういう仕組みなの?」

 

 アルフは疑問を浮かべ龍燕(シエン)に言う。

 

「この建物内は空間領域を広くしている。それに」

 

 龍燕(シエン)は空間モニターを展開してキーを打った。

 

「空間設定をすれば」

 

 周りの風景が荒廃都市に変わった。

 

「景色が変わった?」

「幻術?」

「完全再現型の立体映像だ」

「立体映像?」

「明日からここで鍛練を始める。昼間はジュエルシードの捜索と回収だから早朝と夕方頃になるな」

「うん」

 

 

 

 

 そのあとは龍燕(シエン)はフェイトとアルフに空き部屋を案内し、また説明(時の庭園では寝台だったため敷布団の簡単な説明)。案内している間に(アカツキ)(レン)が用意した夕食を食べた。

 

「はい」

「何?」

 

 龍燕(シエン)は手拭いを二人に渡した。

 

(アカツキ)達と先に風呂に入って来るといい」

「ありがとう」

「さぁ行こう!」

 

 (アカツキ)がフェイトの手を握った。

 

「うん」

 

 四人は風呂へ行った。

 

「さて俺は多目的に行って、久しぶりに思いっきり鍛練するか」

 

 龍燕(シエン)は第二多目的室に向かった。

 

 

 

 

 


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