今はフェイトの訓練を見ている。今やっているのは
最初に比べフェイトの動きに無駄が少なくなり、技のキレやスピード、威力等もよくなった。それから
「うん。かなりよかったぞ。体勢の直しも早くなっていた」
「ありがとう」
「もう少しで私に追いつくかな?」
「そうだな」
最近は模擬戦が多いくなって来た。技の完成度が高くなったため、次の課題として実戦だ。実戦はその時々の判断や咄嗟に技を出すなども必要になる。練習では多少長く考えても問題ないが、実戦になれば思考の早さも必要となる。模擬戦の相手には今回のように
また戦いに二手、三手と先を読めるように
身体を休めながら今回の模擬戦を映像で流し、良いところや改善点などを
「お疲れ様です。そろそろ休憩にしませんか?」
「そうだな。フェイト、
「うん」
「はーい」
「今日の、何かな?」
休憩時にはいつもお菓子が出ていた。それでフェイトが今日のは何かと聞く。
「今日はクッキーを焼いたの」
「クッキー?」
「クッキーってなーに?」
「とても美味しいものですよ」
リニスが笑顔でそう言うと
「
「
「ほぅ楽しみだ」
食堂に入ると先に
「いい香りだ」
「どうぞ召し上がれ」
席についた
「
表面に描いたもの。それは
「よく出来ているな」
「…ありがとう」
クッキーを口に入れた。少し甘いが美味しい。始めての味だった。そして紅茶というお茶を飲んだ。うんと頷き、クッキーという茶菓子と紅茶はよく合うと
こういうお茶をする事は少なかった。以前は任務に行くか事務をするか、また教導に行くかだったため忙しかったからだ。だから平和ボケしそうなぐらい今は楽しい時間だ。
そう思っているとフェイトが口を開いた。
「ねぇリニス」
「なんですか?」
「このクッキー。お母さんにも…持って行ってあげたらダメかな」
「…ああ…」
リニスは少し困った顔を見せた。フェイトの母親は研究をずっと続けていて部屋から出てこない。
「わかりました、あとで私が届けてきましょう。プレシアも研究が忙しいですから…」
「うん…そうだよね。ごめんねリニス」
一気にフェイトの顔が暗くなった。
「ああ…いえ……」
言葉に困るリニスを見て、
「フェイトは悪くないだろう?それに、たまには何らかの息抜きをしないと何をしようにも出来る前に身体が持たないからな」
「そうです。謝らないでいいんです」
「うん…」
SIDE リニス
休憩が終わってフェイト達が訓練に戻り、私はプレシアにお茶を届けに行った。
「プレシア。お茶をお持ちしましたよ」
「入りなさい」
私は扉を開け、部屋に入った。
「失礼します」
「そこに置いておいて」
プレシアはいつものように、振り返りもせずに言ってくる。
私が「はい。今日はクッキーがあるんですが…」と言うが「要らないわ」と即答されてしまう。
「まあそう言わずに…。美味しいクッキーですからあなたにも食べてほしいとフェイトが」
「余計な気は遣わないでいいって言っておいて。あの子にはもっと大事なことがあるばずよ」
プレシアは視線を変えずに返してくる。
「娘が母親を思いやるのはもっとも大事なことですよ!」
私がそう反発気味に答える。
「そんなことより勉強はちゃんと進んでいるの?」
それを聞いた私は持っていたものをガシャンと机に置いた。
「勉強ですか?進んでますとも!」
そしてプレシアに近づきデスクに手をダンッと置いた。
「魔力トレーニングも魔導物理も魔法知識も!シエンがここに来てからは実戦に近い模擬戦も行って!フェイトは本当に一生懸命やってますからね!」
デスクから手を離しながらさらに話を続ける。
「遊びたい盛り、甘えたい盛りの子供なのに。本当に…一生懸命に。あなたはそれを!『フェイトが一人前の魔導師になること』を望んでいて、それを叶えたらあなたに褒めてもらえると思っているから!」
そして私は深呼吸をして、少し落ち着かせながら話す。
「私はやっぱりおかしいと思うんですよ。広いお屋敷とはいえ食事も一緒にとらない。会うことだって三日に一回あるかどうか」
「あの子を一人前の魔導師に育てるためよ。親への甘えが……あったらいけないわ」
私はポケットに入れていた、一枚の紙を取り出しながら言った。
「意図も理由もわかりますが、程度の話をしているんです。ついでに今日はこんなモノを見つけましたよ。あの子の昔の作文です」
そういうとプレシアのがピクッと反応し、キーを打つ手を止めた。
「あなたがうんと優しかったママだった頃の読んでて気持ちがあたっかくなる名文ですよ」
「…見せて頂戴」
プレシアは手を伸ばしたのではいとその紙を渡した。
「その作文、見たことは?」
「あるわ。…はじめて読んだ時は嬉しくてね。涙が止まらなかったわ」
気づくとプレシアの目に涙があった。
「あの子はこんなにも私を思ってくれてたんだなって」
プレシアは椅子に座り直す。
「ねぇプレシア。今日や明日とはいいませんから何か節目の日くらい、フェイトと一緒にいてあげてください。それぐらいで甘えて勉強をおろそかになるほどフェイトは弱い子ではないんですから」
「考えておくわ。もういいから下がって」
「ダメです。約束してくれるまでここを動きません。なんなら研究の邪魔もしてあげますよ?」
「リニス!」
「…冗談です」
私は被っていた帽子を手に取り、胸に当てた。
「でも本当に…お願いしますよ、プレシア」
SIDE OUT