とあるホテル。そこでは殺人事件が発生した。しかし事件はしばらくして解決。犯人は警察に連行されて行った。その事件があったホテルの一室で2人の女性が話している。
「しっかし、さすがママだね!コナン君の蝶ネクタイのメカ!すぐに使いこなしちゃうなんてさ!」
「ああ。ダイヤルに印が付けられていたからな。あの探偵の声を頻繁に使っていたのだろう。それにしても、あんな簡単な操作で色々な人物の声が出せるとは、様々な場面での使用が想像できて心が踊るな。」
「(心が踊るって顔してないけど。)」
「で?堀田が入手した情報は何か分かったか?」
「連行される前に古栗って人が言ってたよ。姿を消したボディーガードの浅香があの手鏡を持ってる所を見た人がいて、浅香は女だって事を堀田がつかんだみたいだって。羽田浩司の霊を呼び出して『女だーっ!女に殺されるー!!』って叫ぶつもりだったってね!」
「そんな事か。くだらん。それより荷作りをしろ!根城を変える。」
「え?もう!?せっかくコナン君にホテル教えられてラッキーって思ってたのに。」
「暗がりに鬼を繋ぐが如く。江戸川コナンに気を許すな。10年前に会ったあのボウヤとはまるで別人なのだから。」
「う、うん。」
どうやら、このホテルで殺害された被害者は羽田浩司の死の真相をテレビで公開しようとしていたようだ。だが不運にも真相が語られることなくこの世を去ってしまった。羽田浩司の死の真相を求め、ホテルに駆け付けた者は少なくはない。そしてその真相を追う者の1人であるこの男もまた事件現場に遭遇していた。
「浅香はボディーガードで女。黒ずくめの組織のNo.2だとしたら、灰原が言ってた『女のような男』っていうのは『女だけど中身は男のように強い』って意味か?17年前にボディーガードをやってたんなら、もう結構いい年になってるはずだけど、オレと同じ薬で中学生ぐらいまで年齢が巻き戻ったのなら、疑わしいのは、世良が『ママ』って呼んでた、この女。何者なんだ?」
男のスマホの画面には中学生くらいの女の子の画像が写し出されていた。そしてその真相を追う者はこの男の他にも数名いる。別の男もまたホテルの殺人事件の話を電話で聞いていた。
「堀田がテレビで公表しようとしていたのはこんな所ですね。」
「そうか。あまり期待はしてなかったが、収穫はボチボチか。」
「それよりも、もっと凄いビックニュースがあるんですよ!山猫さん!!」
「あ!?何だよ!?勿体振らずにさっさと話せ!!」
「今朝のその事件!何と解決したのはあの眠りの小五郎なんですよ!」
「眠りの小五郎だと?」
男の脳裏に浮かぶ眼鏡の少年の姿。男はタバコを吸うと笑みを浮かべて呟いた。
「面白ェ。俺も会ってみたくなったぜ。」
男はそう言うと電話を切り、懐からUSBを取り出しノートパソコンを起動した。どうやら先日の大企業の社長が殺された時に金庫に入っていたUSBとは別の代物を既に受け取っていたようだ。
「何々?」
男はUSBに保存されているメッセージを静かに読み上げて行った。
親愛なる怪盗探偵山猫様
君がこの文面を読む頃には私はこの世にはいないだろう。私はどうやらとんでもない奴等を敵に回してしまったようだ。私に残された時間はあとわずか。後は山猫。君に託す。私の金庫の中にUSBが入っている。だがそれは奴等を欺くためのダミーだ。本物はこのUSBに保存してある。時間がない。この謎を解いてくれ。
文面の下には羽田浩司殺害の記事が保存してあり、ガラスの破片が写っている写真が掲載されている。男が文面を読み上げると画面に映っていた物は全て消滅した。
「コンピューターウイルス闇の男爵。なるほど、読んだら自動で消える仕組みになってるのか。手の込んだ社長さんだねぇ。」
男はそう言うとパソコンの電源を切り、蓋を閉じた。
一方、警視庁にある管理官の一室。管理官が事件の整理をしている。そこへ補佐が姿を現す。
「管理官。少しお休みになられては如何ですか?」
「そうだな。今日の事件も眠りの小五郎が1枚噛んでたようだ。」
「ほう。眠りの小五郎ですか?」
「君は知ってるかい?眠りの小五郎の知恵袋を。」
「眠りの小五郎の知恵袋ですか?」
「いや、知らないならいい。忘れてくれ。」
「はあ。」
補佐はそう言うと管理官の部屋を後にした。
「眠りの小五郎の知恵袋か。」
眠りの小五郎の知恵袋。その言葉に何処か興味を抱いている補佐の姿がそこにあった。