異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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お久しぶりです、天の声です。

青葉「どもー、恐縮です、青葉です!」

16冬イベ跨いでの更新となります新章、お待ち頂いた方は申し訳ありません、そしてありがとうございます。

イベント時はイベントに集中する為にこちらの更新は基本的に止めます。攻略完了次第更新は順次再開しますので、提督活動日誌の方も併せてご覧頂けると、どの様な進捗かが分かるかと思われます。

青葉「はいはい露骨な閲覧稼ぎはいいですから。」

ひっでぇ・・・まぁいいや。今回は前章で編成表に顔を見せた水雷戦隊、「第十戦隊」についての解説でもと思います。


第十戦隊は、編成を見れば分かる通り水雷戦隊です。旗艦は長良・阿賀野・秋月・矢矧が歴任していました。軽巡旗艦の駆逐艦中心夜戦部隊を水雷戦隊とすると言う明確な決まりはない為、この名称でも問題はない。

所属していた主な部隊は四駆・六駆・七駆・十駆・十六駆・十七駆・六十一駆など。

この水雷戦隊が編成されたのはミッドウェー戦前の1942年4月の事。その任務は機動部隊の中核たる空母の直衛にありました。この点が、それまでの水雷戦隊と性質を異とする為に、第十戦隊の名称を与えられたものと思われます。ミッドウェー海戦での1航艦潰滅後は、新編された第3艦隊に転出し、再び空母部隊の護衛に当たりました。

第3艦隊への転出後は第2次ソロモン海戦・南太平洋海戦・第3次ソロモン海戦・マリアナ沖海戦、そして第1遊撃部隊指揮下で捷一号作戦を戦い抜いた後、1944年11月15日に解隊されました。


艦これに実装されている任務「海上突入部隊、進発せよ!」に於いて、比叡・霧島・長良・暁・雷・電によって艦隊を編成をするのは、護衛として第十戦隊の旗艦長良他、駆逐艦部隊が参戦したことを再現したと考えられます。因みにその当時響はドック入りしていた為参戦していません。艦これ風に言ってしまえば、暁の沈没を響は出渠後にそれを見届けた妹達から聞いた、という感じでしょうか。

また風雲実装までは知る人ぞ知る部隊だったものの、風雲が実装されて第十戦隊について言及したことで知られる様になったようです。どこまでかは疑問符ですが。


青葉「敗色濃厚でありながらもなお奮闘し続けた、日本海軍の名脇役の一つですね、司令官!」

全くその通りだ、二水戦の活躍は知られているが、第十戦隊は正に縁の下の力持ちと言えるだろう。因みに劇中に於いてもその任務は変わらず機動部隊直衛で、その設置経緯は空母機動部隊の為の専属護衛部隊を創設する必要があった為です。


さて、解説パートはこの位にして、本編に移っていこう。

ゲームシステムは現状大体説明が終わっているので、冒頭の解説は史実の簡単な説明がメインとなるやに思われます。

青葉「一応艦これ、艦娘達に絡めたお話しかしないので、どうかこれからもお付き合い頂けると、ちょっと賢くなれるかも?」

まぁそこは疑問符で正解だろうねぇ・・・。

青葉「普段役に立ちませんしね。」

今回の『制号作戦』は前・中・後の三編構成でお届けします。尺稼ぎなんかではないので御了承頂ければと思います。

青葉「それでは本編「スタート、だっ!」ちょっ、被せないで下さい!」

言わせねぇよ?^^#

青葉「アッハイ。」


第2部3章~制号作戦―前編―~

2052年12月25日午後11時22分、直人は舟艇で出動してはいたが、今だ本隊と共に、小笠原諸島の南南東約380kmの地点にいた。

 

提督「カフェインドリンクの配布も終わったし、少し休むかねぇ・・・。」

 

明石「了解です、では操縦代わりますね。」

 

提督「ん。」

 

そう言って席を代わる直人。カフェインドリンク配布をしている辺り相当な強行軍である事は窺がえるだろう。

 

ただ、この舟艇も艦娘機関を搭載している上戦場までは牽引前提である為普通に速い速度で走れる訳だが、それにしても2400kmを24時間以内に突っ切るには無理があった。そこで千早群像から出された提案により、1水戦と2水戦、それと一部の大型艦は本隊に随伴していない。

 

提督「それにしても、待ち伏せをするには遠すぎるんだよなぁ、いくら“艦娘ノット”の単位量が船舶のノットの単位量より多いとはいえ・・・。」

 

頭を掻いてそう言う直人である。

 

明石「アハハハ・・・」

 

提督「おめーは18ノットだろうが。」

 

明石「この舟艇だって28ノットじゃないですか。」(´・ω・`)

 

速度が出ないのはお互い様である。

 

提督「二の句も無いな、さ、寝よか・・・。」

 

明石「おやすみなさい。」

 

ここで解説しておくと、艦娘ノットというのは艦娘達の艤装が叩き出す速力を示す値の事。

 

彼女達は実艦の速力値を自身の速力として理解している為、その時速を計測し、その速力で割った値が1艦娘ノット「時速2.638km」である。これを吹雪型の速力38ノットで掛けると、その速度は驚異の時速99.978kmとなる。

 

彼女達が迅速に戦闘海面に到達出来るのは、ひとえにこの高速性能あってこその事である。因みに言っておくと、巨大艤装も全て艦娘ノット単位の速力が出せる。が、以前島風と直人の競争をした際の直人の瞬発力は機械的なものである。

 

提督「さて、こっちの予想通り網に飛び込んでくれればいいんだけどね・・・。」

 

榛名「大丈夫です、お姉さんなら、きっと。」

 

舟艇の傍らにいた榛名がそう言った。

 

提督「フッ・・・そうだな、そうに違いない。そう願うとしよう。」

 

榛名「フフフッ。」

 

提督「お前達にも苦労を掛けるが、もうひと頑張り頼む。戦場への展開は午前10時前だからな。」

 

榛名「分かっています。榛名は大丈夫ですから、提督はお休みになって下さいね?」

 

提督「ではお言葉に甘えて、そうさせてもらう。航空部隊の件はぬかりなく頼むよ、それじゃ。」

 

そう言って、直人は船倉へと潜ったのだった。

 

同じ頃、ある指示を受けて房総沖へ向かう深海棲艦、その中央に位置する重巡の艦上では、一人の女が思案に明け暮れていた。

 

 

 

「全く、なんだってのよ、この状況・・・海面上昇のデータが一致しないし、ジャミング波も薄くなってるし・・・。」

 

などと女はぼやく。状況が掴めていないのは霧とて同じことだった。彼女は自分達の旗艦から指示を受け、状況調査の為に横須賀を目指していた。

 

(状況調査、ねぇ―――本来はナガラ級がやる仕事の筈だけど、警戒するにしくは無いって事ね・・・“深海棲艦”とか言うよく分からない奴らを護衛に付けて貰ったけど、使えるの・・・?)

 

※(これから戦う相手に対しては使え)ないです。

 

タカオ「私は霧の重巡タカオ、どんな状況でも、必ず・・・!」

 

 

 

提督(必ず・・・勝つぞ・・・!)

 

何やら寝付けない模様。

 

 

 

12月26日午前7時19分 房総沖約24km

 

 

タカオ「やっとここまで・・・」

 

 

ヒュウウゥゥゥゥゥ・・・ン

 

 

タカオ「!?」

 

砲弾の飛来音が、大島と房総半島の双方の側から同時に周囲に鳴り響く。

 

 

バシュウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

 

直後周囲のナガラ級に侵蝕弾頭着弾の独特の音が鳴り響く。

 

タカオ「砲弾にタナトニウム反応!? 一体誰が・・・」

 

狼狽するタカオ。その時、タカオの船体に侵蝕弾頭の酸素魚雷が突き刺さった―――。

 

 

 

同じころ、大島北東岸では、先遣された横鎮近衛艦隊の一隊が、沖合の敵艦隊に最大射程ギリギリの砲雷撃を試みていた。

 

金剛「巡洋艦部隊も徹底的に撃ちまくるのデース!!」

 

川内「了解!」

 

高雄「“分かっています! 斉射!!”」

 

 

ズドドドォォォーーー・・・ン

 

 

横鎮近衛艦隊は奇襲に成功した。敵艦隊は算を乱して隊列を崩しており、その狼狽ぶりが見て取れた。

 

川内「明け方の砲戦も、悪くない!」

 

そう言う川内の両腕には14cm砲の影は無く、代わって両手に20.3cm連装砲が握られていた。イメージとしては白雪が持っている主砲の様な感じであろうか。

 

金剛「霧島! そっちの状況は!?」

 

霧島「“房総半島側も連続射撃中です、砲身が赤熱しても撃ちまくります!!”」

 

金剛「OK! オールファイアでお客様を歓迎してあげるのデース!」

 

霧島「“はい! お姉様!”」

 

 

 

タカオ「一体、何が起きて!?」

 

一方のタカオは困惑の度合いを深めていた。

 

タカオ「敵の艦影はない、砲炎も無い、熱源反応だってない・・・なのにどこから・・・!?」

 

艦娘達は、房総半島と大島の双方共に沿岸部に散在する攻撃痕に潜んで発砲を続けていた。そこに水が入り込み一種のリアス線のような地形を形作っていたのである。

 

しかもこの時の横鎮近衛艦娘部隊の炸薬は、その全てが白く発火するよう調合されている。その白い砲炎は、海面の反射に紛れて判別困難となっていた為、奇襲の効果を高める事に成功した。

 

熱源探知でさえも、2万を軽く越す距離からの攻撃である以上、地形に身を隠す艦娘の体温などを捉えるのは困難を極める。

 

大島沖の海戦は、横鎮近衛艦隊側の伏兵による奇襲攻撃によって幕を開けたのである。

 

 

 

午前8時11分 大島南方約412km

 

 

提督「急げ! 敵は待ってくれんぞ!!」

 

妙高「は、はいっ!」

 

摩耶「うおおおおおお・・・!!」

 

一方の直人は、内火艇では間に合わぬと見るや即座に艤装へと武装をチェンジし、洋上航行へと切り替えていた。

 

提督「金剛! 状況は!?」

 

金剛「“概ねグッドデース! デモ、そろそろ気づかれると思うネー。”」

 

提督「航空部隊は?」

 

金剛「“深海棲艦に半数以上ブレイクしていって、その部隊はスコアを上げたケド、霧の船に突っ込んだ子達は殆ど撃墜されるか追い散らされたデース。”」

 

提督「奇襲の効果は?」

 

金剛「“バッチリデース!”」

 

直人はそこまで聞き出すと素早く思考を巡らせる。

 

提督(このまま行っても到着は昼を過ぎる、ここは作戦変更か・・・)

 

直人は短時間で結論を導き出す。

 

提督「金剛、敵を大島の南方に200km程釣り出してくれ。」

 

金剛「“ヤッパリ間に合いませんカー・・・。了解デース、このことあるを見越して、策は考えてありマース!”」

 

流石老練の名艦であった。そう直人が言うと当の金剛が心外そうに口を差し挟んだ。

 

金剛「“誰がオバサンデース!?”」

 

提督「そう言う意味で言ってないっ!」

 

金剛「“そう聞こえマース!”」

 

提督「それだけ経験を積んでるって事だよ、金剛。」

 

金剛「“ム~~~・・・。そう言う事にしてあげマス。”」

 

窮地を脱した直人であった。

 

こんな時でも普段と変わらぬ掛け合いがあるのも、この艦隊の長所であったろうか、その是非を言えるのは、この艦隊に属した者達だけであろう。

 

 

 

第1航空艦隊より飛び立った第1次攻撃隊は既に帰途についており、深海棲艦の水雷戦隊は1個が全滅寸前、2個が半壊した。

 

また霧側にも、タカオの前方正面に座位して集中砲火を受けたナガラ級1隻が大破、その他のナガラ級もクラインフィールドにダメージを受け、タカオも飛び込んできた魚雷1本を受け手傷を負う始末であった。

 

この様な状況下、横鎮近衛先遣隊は射撃を継続した。

 

だがそもそもなぜ金剛達の先遣隊は間に合ったのか。それは、直人が一つ策を弄したからだった。

 

その直人が弄した手品の種を、諸氏にお見せしよう。

 

 

 

12月26日午前5時53分 房総南西沖約250km付近

 

 

この日、夜明け前の房総沖は凪いでいた。

 

 

ザザァ~・・・ン・・・ザバアアアァァァァーー・・・ン

 

 

海鳥も飛ばぬ未明の海に突如姿を現したのは、イ401であった。

 

その後部甲板のハッチが、音を立てて開かれた。

 

金剛「下船! 各艦ミーティング通りに展開して下サーイ!」

 

艦娘一同「ハイッ!」

 

イオナから降りたのは、伏兵として派遣された先遣艦隊であった。

 

 

~イ401・司令塔~

 

群像「間に合ったか・・・。」

 

そう呟く群像と、

 

イオナ「なんとか・・・。」

 

ちょっとくたびれた様子のイオナ。

 

杏平「全くあの司令官とやらも、とんでもねぇこと思いつきやがる。」

 

いおり「“全くよ! ヒュウガが整備しながら走らせてギリギリって所だったもの・・・。”」

 

ヒュウガ「疲れた~・・・。」

 

モニターの向こうにはイオナの技術担当四月一日(わたぬき) いおりと、疲れて床に突っ伏すヒュウガの姿が。

 

手品の種、それはイオナの持つギミックの一つである、『高速巡航モード』というものである。

 

これは通常リミッターを掛けて抑えている機関出力を、一時的にフルパワーで運転する事により水中での高速航行を可能とするもの。

 

その速力は60ノットに達するが、連続で使える代物ではない。

 

だが直人の発案でヒュウガが艦に乗り込み、機関部で連続的に補修を重ねると言う荒業によって、19時間の連続高速航行を可能としたのだった。

 

織部「しかし、紀伊直人という人物も中々大胆で破天荒な事を考え着く人ですね。」

 

杏平「そうだな。」

 

群像「全くだ。」

 

破天荒でも実現の可能性あらばこそ、直人も無謀な事を考え着く指揮官ではない。少しでも可能性があれば、あらゆる可能性を計算し演算し、リスクを承知ででも行動するタイプの指揮官である。

 

 

 

金剛(さて・・・やりますか・・・!)

 

金剛は腹をくくった。

 

霧島(ここからが本番、ですね・・・。)キラーン

 

金剛「伊401ヘ、オペレーションプランB-1へ移行しマース!」

 

群像「“承知した。”」

 

イオナ「“がってん。”」

 

霧島「“では、私も動きますね。”」

 

金剛「グッドラックデース!」

 

 

 

午前8時22分、房総半島側の第2水雷戦隊及び、戦艦霧島、重巡愛宕が、プランB-1に沿って伏兵地点から一挙全速力で南進を開始した。

 

同時に金剛ら大島側も大島の南側へと移動を始める、当然砲火は絶やさず可能な限り撃ちまくる。

 

金剛達は背後の島に紛れて後退するだけでよいが、問題は霧島隊である。完全に崩壊したとはいえ敵の艦列を掠める様に突っ切る事になっていた。

 

霧島「霧島艦隊、敵に砲火を集中しつつ戦場を離脱します! 全艦、続けぇ!!」

 

神通「2水戦全速前進、敵の後尾を掠めて離脱します!!」

 

愛宕「いよいよねぇ♪」

 

既に魚雷は撃ち尽していたが、主砲弾はその残弾を全て撃ちまくる勢いで斉射を続ける。

 

ホ級elite「ギュア・・・」

 

陽炎「邪魔よっ!」

 

 

ズドオォォォン

 

 

ホ級elite「アアアア・・・」ザバァァァ・・・ン

 

 

 

タカオ「あれが、あいつらの言っていた“艦娘”ね。散々コケにしてくれちゃって・・・許さないわよ・・・!!」

 

同じころ霧島隊の動きに気付いたタカオも、怒りをその目に湛えて動く。

 

タカオ「全艦あの艦娘を追いなさい! 必ず仕留めて私のところまで持って来ること、いいわね!」

 

※(横鎮近衛の精鋭相手にそんなこと出来っこ)ないです

 

ホ級Flag「ギャオオオオオオオ!!」

 

深海棲艦の僅かな残存が決死の追撃を試みる。しかしその大半は痛手を受けて全速で追う事は不可能であり、タカオがそれを知る由は無かった。

 

 

 

午前8時49分

 

 

霧島隊は高速で敵の脇をすり抜ける事に成功、追撃を引っぺがして航行を続け、タカオからは遂に視認されなくなろうとしつつあった。

 

タカオ「逃げ足だけは早いわね・・・。」

 

タカオはそろそろ追撃をやめるべきか、と考え始めた。任務はあくまで状況調査であった為である。

 

 

 

金剛「oh・・・追撃が緩んでいるネー。401へ、餌をチラつかせてほしいデース。」

 

群像「“硫黄島への偽装航路でいいな?”」

 

金剛「YES、アクティブデコイを一つお願いするデース。」

 

 

~イ401・司令塔~

 

群像「分かった。杏平! 魚雷1番、アクティブデコイ、発射!」

 

杏平「了解! アクティブデコイ、発射!」

 

杏平は素早い手さばきで端末を操作しアクティブデコイを発射した。このアクティブデコイは、イオナが操作するナノマテリアル製のデコイ(囮)で、イ401そっくりの外見と推進音を放つ。このため聴音だけでは区別がつかないと言う代物である。

 

織部「さて、食らいつきますかね・・・。」

 

群像「さぁな・・・。」

 

 

 

タカオ「401の推進音―――!? 401がこっちに来ているという事・・・!?」

 

タカオは401の推進音を探知した時にはむしろ困惑したが、困惑こそすれタカオは決断する。

 

タカオ「だったら・・・401をまず手土産に沈めてあげるわ・・・。」

 

タカオはVLS発射管を次々と展開していく。だが時としてとことん間が悪い事はあるようで・・・。

 

 

 

金剛「ファイアーーー!!」

 

 

ズドドドォォォーーーーー・・・ン

 

 

川内「ってぇぇぇっ!!」

 

 

ドォンドォン・・・

 

 

金剛「深追いはしないで、幾らか撃ったら引きます!」

 

流暢な口調で金剛がそう言い放つ。

 

高雄「更に南へ釣り出す、という訳ですね。」

 

金剛「その通りデス。突撃デース!!」

 

 

 

タカオ「またあいつらなの? しつこいわね―――今度こそ逃がさないわ!」

 

 

ダアァァァンダアァァァン・・・

 

 

タカオが主砲を連射しつつこれを猛追せんとする。

 

金剛「指示通りに後退するデース!」

 

すると付かず離れずの距離で巧妙に金剛が下がる。

 

タカオ「誘い込まれている・・・? 一度速度を緩めましょうか。」

 

そうすると金剛が逆撃を仕掛ける。

 

金剛「ちゃんとついてくるデース、ファイヤー!」

 

タカオ「くううっ!?」

 

艦娘の放つ主砲弾は実際の砲弾並の水柱を立てる。深海の物もそうであるが、金剛が積む主砲は46cm砲、その威力は至近弾でも想像を絶する。

 

ましてそれが霧の持つ侵蝕弾頭と艦娘の艤装技術の融合体であるならば是非も無い。

 

タカオ「なんなのよ・・・あいつらは・・・!!」ワナワナ

 

タカオのメンタルモデルは、怒りに震えていた。

 

タカオ「当てる気の無い砲撃、追えば逃げるし退こうとすれば攻撃してくる、一体何がしたいの・・・?」

 

苛立ちを募らせていくタカオ、それもその筈、金剛達の任務は単なる挑発と誘引であった為、正確に狙いを定めている訳では無い。

 

状況は言わば千日手の鬼ごっこの様相を呈していた。というよりは、金剛達が巧みにその状況を作り出しているような状況だった。かといってどちらかがその状況を打ち切れば、それは互いに自らの死を意味した。

 

タカオ「こうなったら徹底的に追いすがってやるわよ・・・今に見てなさい!!」

 

とうとうタカオがブチギレた。

 

そして―――そこからは簡便なものだった。

 

考える事をやめ猛追に移ったタカオの速度に合わせて距離を保って退く金剛達、時にわざと速度を落として追いつけるかと見せかけてはまた元の距離戻すなどして、タカオの焦燥感は次第に高まっていった。

 

それこそが、金剛と直人の策応とも、気付かぬまま。

 

 

 

策応、とは言うものの、実際のところ直人も全ての状況を把握している訳では無かった。

 

金剛艦隊の損害状況や残弾状況、燃料はどうかなどがそれにあたる。

 

 

 

12月26日午前10時26分 大島南方沖330km

 

 

金剛(そろそろ、デスネー。)

 

金剛はそう呟いた。

 

霧島「お姉様!」

 

そこへ霧島が麾下分艦隊の艦娘を引き連れて追い付いてきた。

 

金剛「霧島! 無事でしたカー?」

 

霧島「全艦壮健です、お姉さま。さ、御指示を。」

 

霧島も他の艦艇にも目立った損害はない。

 

金剛(弾薬は全体として既に切れかかっている、燃料も残量6割・・・ここからは敵の足止めと火力分散、デスネ。)

 

素早く考えると金剛は指示を出す。

 

金剛「霧島たちはこの位置で正面から敵にアタックして、その間に左右に私達が回りマース。」

 

霧島「敵の火力を分散させるのですね? 了解です。」

 

金剛「401、侵蝕魚雷の量はどのくらいデスカー?」

 

イオナ「“今ある分は6本、あとはサイパンで補給分を作って貰っている分だけ。”」

 

金剛「十分デース。敵の焦りを誘いマス、その内の2発と音響阻害デコイをお願いするデース。」

 

群像「“・・・成程、了解した。”」

 

それから少し間を置いて、タカオと艦娘達のソナーは使用不能となった。

 

金剛「oh・・・これは耳にきついネー・・・。」←さり気なくソナー使用可

 

川内「そうねぇ・・・。」

 

顔をしかめてソナーを切る二人。因みに一つ言っておくと、本来は戦艦もソナーは搭載している。メタく言えばゲーム内で戦艦がソナー搭載できないのはおかしいのである。(艦隊防空値宜しく艦隊対潜値新設すれば生きるのにね。)

 

霧島「撃てぇッ!!」

 

 

ドオオオォォォーーー・・・ン

 

 

金剛「高雄と第6駆逐隊は私と左翼へ、残りは右翼へ展開デース!」

 

高雄「はいっ!」

 

響「Понятно(パニャートナ)(了解した)。」

 

川内「OK! 皆、もうひと暴れだよ!」

 

初春「承知!」

 

白雪「全力で行きます!」

 

神通「ここで敵を抑えます、全力射撃を続けて下さい!」

 

愛宕「はーい♪」

 

陽炎「勿論!」

 

不知火「そのつもりです。」

 

黒潮「いくでぇ!!」

 

そこからその一帯には、連続して砲撃音が響き渡った。

 

その後方から、一つの影が接近しているのには気付かなかったが。

 

 

 

午前10時47分

 

 

しかし、相手は仮にも霧であった。その怒涛の猛攻を前に、艦娘達は図体の小ささと持ち前の火力で対抗する。が―――

 

金剛「くっ!」ザザザッ

 

高雄「そろそろ、しんどいですね・・・。」

 

金剛隊が徐々に音を上げ始め―――

 

 

霧島「残弾後僅か・・・援軍は・・・!」

 

神通「うっ―――ぐ・・・。」

 

霧島隊も弾薬欠乏間近、神通も大破という状況になって、戦線維持は絶望的となった。

 

陽炎「このっ、このっ!!」ドォンドォン

 

 

カチッ

 

 

陽炎「ッ!!!」

 

不知火「陽炎も弾が尽きましたか・・・。」

 

陽炎「不知火も・・・!?」

 

黒潮「うちもや・・・。」

 

陽炎「・・・!!」

 

第十八駆逐隊、戦闘能力喪失。

 

 

川内「いい加減、提督が来ないと持たない!!」

 

白雪「無い物ねだりしたって、弾は増えませんよ!!」

 

川内「分かってる、けど・・・!!」

 

 

 

金剛「まだデスカ・・・提督・・・!!」

 

雷「もう弾が無いわ!!」

 

電「私もなのです!」

 

響「私は後僅かかな。」

 

なんできっちり弾を保持してるんだ響よ。

 

高雄「私も、大破した2番砲の弾を入れてもあと少しです・・・。」

 

金剛「くっ・・・。」

 

思わず金剛が臍を噛んだ。

 

 

 

満潮「もう、だめなのかな・・・。」

 

夕立「諦めちゃダメっぽい!! 提督さんが必ず来てくれるから!」

 

神通「そう、です・・・私達を、信じてくれた提督を、私達が信じなくて、どうするんですか・・・。」

 

愛宕「神通、無理をしないで・・・!」

 

満潮「でも、もし来なかったらと考えちゃうと、ぞっとしない↘わね―――」

 

と言った満潮の声が最後の辺りで小さくなった。

 

時雨「・・・?」

 

神通「何・・・?」

 

 

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ン

 

 

それは最初、ほんの微かな、それこそ風にかき消されるような小さなエンジンの音。

 

 

 

高雄「この音って・・・?」

 

金剛「この音は・・・!」

 

 

 

ブウウウウウウウウウ・・・ン

 

 

しかし、その音は次第に近づいてくる。それにつれて音も大きくなる。

 

 

 

川内「これは・・・。」

 

白雪「やっと、来ましたね。」

 

 

 

ゴオオオオオオオオ・・・

 

 

神通「全く・・・」

 

霧島「来るのが遅いですよ・・・。」

 

夕立「た、助かったっぽい~・・・?」

 

時雨「気を抜くの早いよ夕立・・・。」

 

 

 

タカオ「今度は何だっていうのよ!?」

 

タカオが次々と起こる状況の急変に狼狽する。

 

 

 

こんなところに“4発機”で飛来する者など、一人しかいないであろう。

 

その4発機はタカオの正面から接近するや、その下面を左右に開く。

 

そして開かれたところから、一人の人影が舞い降りた。

 

 

 

提督「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

直人は金剛らが苦戦する事はお見通しであった。

 

であるが故に大急ぎで内火艇を呼びつけ、艤装を最低限必要なものに絞り、更に近接戦闘装備と、それと別にある武器を錬金して携え、連山改の爆弾槽に乗って前線へと馳せ参じたのである。そして今に至る。

 

因みにこの挺進は全く作戦の埒外に置かれていた。というのは、これはその場の思い付きに因る直人の独走だったからだ。後で本隊からの叱責は免れまい事は承知していたのだが。

 

そして降下を開始したこの時このタイミングで、タカオのクラインフィールドに二条の閃光がほとばしる。

 

金剛「あれはっ、401の侵蝕魚雷デース!」

 

 

 

イオナ「タカオのクラインフィールド、消失。」

 

この侵蝕魚雷は完璧な偶然だった。元々艦娘達が動けなくなればイオナ達の出番だったからだ。

 

群像「ドンピシャのタイミングで空から舞い降りようとするとは、無茶が過ぎるな。」

 

杏平「ま、間に合ったんだからいいじゃないっすか?」

 

群像(お手並み拝見、だな。)

 

 

 

思わぬ方向からの御膳立てに、直人は思わず顔をほころばせる。

 

提督「粋な事をしてくれたもんだ、よぉし、そんじゃ派手にやるか!!」ガチャッ

 

そう言って直人は持ってきた武器を構える。

 

SMAWロケットランチャー、米海兵隊他が採用している軽便な多目的火力支援火器である。対戦車榴弾や通常の榴弾の他、数種類の弾頭を運用できる。

 

提督「デケェの一発、持ってけ泥棒!!」

 

 

ドシュウウウウウゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~・・・

 

 

直人の裂帛の気合と共に、その一弾はタカオのメンタルモデルに向かった。

 

消失したクラインフィールドに、タカオはすぐにそれがイオナの仕業とは気づいたものの、空から迫る一弾の正体に、タカオは驚きを禁じ得なかった。

 

タカオ「タナトニウム反応、侵蝕弾頭!? まさか・・・ただの人間が、なぜ!?」

 

 これが錬金術の成果であった。尤も彼の場合、錬金術とは言葉のアヤでその正体はとどのつまり、構成因子を一度完全に分解し、不要な因子と必要な因子を外部から交換して再構築すると言う、高等魔術の最上位に近い魔術なのである。

故に空気を構成する酸素や窒素からも、物質を生成できるという訳である。無論貴金属などになると因子を集めるのも難しく、錬金に時間がかかるのは言うまでもない。

 

タカオ「重巡洋艦を、舐めるな!!!」

 

タカオが自分の正面にバリアを形成する。そのバリアに、直人のランチャーから放たれた侵蝕弾頭が直撃する。

 

 

バシュウウウウウウウウウウ・・・

 

 

タカオ「くっ・・・!」

 

タカオは顔をしかめるが、これを何とか防ぎきる。

 

提督「―――つむじ風。」

 

そう直人が呟いた瞬間、タカオの艦首に猛烈な上昇気流が起きる。それによって勢いを相殺した直人は、無傷でタカオの船首楼に着地した。

 

タカオ「っ!!」

 

タカオは侵蝕弾頭に気を取られるあまり、艦への侵入を許してしまったのである。

 

提督「ふぅ、上手く行ったか。」パッパッ

 

直人が純白の軍服に付いた埃を払う仕草をしてみせる。

 

 

 

金剛「oh・・・。」

 

金剛が顔を覆った。

 

高雄「無茶苦茶ですね・・・。」

 

何も聞かされていない艦娘達は一様に驚きを隠せない。

 

響「司令官は勝算の無い戦いはしない、そうだよね? 金剛さん。」

 

金剛「そ、そうデース。提督にはきっと、勝算があるのでしょう・・・。」

 

 

 

川内「あーっ! 長ドス1本で殴り込みって何楽しそうなコトしてるの提督ぅ!!」

 

と川内がずるいと言わんばかりに訴える。

 

提督「“お前も来るか~? 体力余ってればだけどね。お前確か昼にあまり強くないだろ。”」

 

川内「うぐっ・・・。」

 

二の句も無い川内である。実は昼間に弱い川内は、哨戒班でも夜間哨戒に回してもらうよう融通されているのだ。

 

提督「“分かったら今回は黙って人の戦いぶりを観戦するんだな。”」

 

そう言うなり直人はインカムの電源を切る。

 

 

 

提督「さぁて、やるかね。」

 

タカオ「人の庭に無断で、土足で踏み込むなんて、いい趣味してるじゃない。」

 

提督「そりゃどうも。ついでに言うと、俺達は戦うのが生業でしてね、あなた方の存在を許容出来ない以上排除せざるを得んと、こういう次第な訳です。」キュッ

 

言いながら直人は薄手の白い手袋をはめていく。その左手の甲には、淡い橙色に輝く魔法陣が。

 

直人が持ってきたのはDE2丁と極光・希光だったが、直人はこの時点でこれらを使う気はなかった。むしろこれより遥かに強力な攻撃手段を用意したのだった。

 

タカオ「私としても、あなたのような人は許容し得ないわね。」

 

提督「ならば是非も無し。正々堂々果たし合おうぞ。俺の名は紀伊直人、横鎮近衛艦隊司令官だ。一艦隊の提督と思って貰えばそれで結構。名を名乗って頂こう。」

 

タカオ「フン。私は霧、東洋方面第1巡航艦隊所属、重巡タカオよ。」

 

提督「タカオか、我が艦隊にも同名の艦娘がいるな。だが、その様な事は今はどうでも宜しい。」

 

直人が白金剣(双剣)を錬金する。

 

提督「我らはただ、力によって語らうのみ。」

 

タカオ「そうね・・・。」

 

2番砲塔の上に佇むタカオもナノマテリアルで剣を形作る。

 

提督「・・・。」

 

タカオ「・・・。」

 

数秒とも数瞬ともつかぬ時間が、両者の間を流れる。

 

提督「・・・。」ザッ

 

タカオ「・・・!」

 

直人が、身構える。

 

提督「いくぞ!!」ガシャン、タタタタタタ・・・

 

タカオ「ふん!」タン

 

直人が足以外の艤装を外して一気に走りだし、タカオが砲塔から艦首側に飛び降りる。

 

タカオ「簡単に近づけさせないわよ!」

 

そう言うとタカオは着地して、ヘキサゴン4つを組み合わせたバリアを直人めがけて撃ち出す。

 

提督「そんなちんけなもので・・・」ヒュッ

 

それで直人を吹き飛ばそうとしたタカオだったが直人は右手の剣を振りかぶる。

 

提督「止められる俺ではない!」ブン

 

バリィィィィィーーーン、とガラスが砕けるような音を立てて、バリアは砕け散った。直人の白金剣は―――――無傷。

 

タカオ「なっ・・・!!」

 

提督「やはりな。世界線が異なれば、その特異性を破る術はある訳だ。その程度のナノマテリアルは俺の白金剣には通じん!」

 

白金という物質は、耐久性は兎も角剛性はないが密度が大きいと言う特徴を持つ。しかし直人は錬金した白金剣に強化魔術を施す事で、実際の値からかなり水増しさせている。

 

分かりやすい所を言えば、モース硬度の値では白金は4~4.5である。(鉄が4、銅が3、タングステンは7.5。)

ところが直人の白金剣はモース硬度換算でおおよそではあるが、5.5前後相当である。即ち鉄よりも硬い白金が出来上がるのだ。

 

タカオ「そんなっ・・・!!」

 

その事を知る筈も無いタカオは驚愕して目を見張る。

 

提督「“ただの人間”とタカをくくったツケは高いぞ? セイヤァ!!」ヒュバッ

 

 

ガキィィン

 

 

直人は右の剣を横一文字に振り抜くと同時に左の剣を縦に振りかぶる。

 

タカオ「くっ!!」グラッ

 

スピードが最大に乗った最初の一撃をもろに受け止めてしまったタカオは態勢を崩していた。

 

提督「そこっ!!」

 

タカオ「まだよっ!」

 

 

ガイィィィン

 

 

直人の一閃は弾き返される。

 

提督「むっ、やるな。」

 

タカオ「当然よ、私は霧なのだから。」スタッ

 

直人が弾かれて態勢を崩した隙にタカオはバックステップで距離を取っていた。

 

提督「白兵戦闘ではらちが明かない、か。だが折角だ、本気を出すかね。」

 

そう言って直人は練成した剣を魔力へと還元し、左手に力を込める。

 

提督「結界制御術式弐式、解除。」ゴオッ

 

左の手袋に刻まれた魔法陣が、真紅の煌きを放つ。そして直人の背後に5本の白金剣の柄が現れる。

 

『白金千剣の重複発動』直人が自らリミッターを掛け封じた一手が、今再び炸裂する。

 

タカオ「な、何が・・・!」

 

提督「天と地の狭間には、誰もが思いもよらぬことがあるという事を知るがいい。」ダン

 

直人は一気にタカオの懐へ飛び込む。

 

タカオ「突撃一辺倒、そんな事で私には勝てないわよ!」

 

提督「いくぞ。」シュパッ

 

直人が背後の剣の内2本を取り出す。

 

次の瞬間―――――斬撃の嵐が起こった―――――。

 

提督「“殺劇舞踏剣”。」

 

 

ガキキキキキキキキキキキキキキキキ・・・

 

 

神速で放たれる直人の斬撃は白い剣閃をたなびかせ、必死にガードするタカオを滅多打ちにする。

 

タカオ「ぐううううう!!!」

 

タカオには退く術が無かった。退けばやられる、それが分かっているからこそ尚更であった。

 

提督「おおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

ヒュババババババッ

 

 

タカオ「はぁっ!!」

 

 

ガキキキキキキィィィン

 

 

例え直人の剣が砕けても、その還元された魔力から新たな剣が背後に練成され、それはまるで、無限に剣を生み出し続けるかのごとき眺めである。

 

タカオも剣が砕かれた先から再構築して防ぎ続ける。が、霧の演算能力にも限界は存在していた。

 

 

 

直人が本気を出して数分、激しい打ち合いは未だ続いている。

 

金剛「つ、強過ぎデース・・・。」

 

これにはさしもの金剛もたじたじである。

 

高雄「提督はご自身も武芸者だったのですね・・・。」

 

 

 

時雨「相変わらず凄いね・・・。」

 

夕立「白兵戦技演習、またやるのかな・・・っぽい。」

 

陽炎「あんな化け物と戦うなんて金輪際御免被りたいわね!」

 

不知火「そうですか? 私は鍛錬を怠っていませんが。」

 

朝潮「次は勝ちますよ・・・必ず。」

 

陽炎「ハ・・・ハハ・・・アハハハ・・・。」

 

その心意気に乾いた笑いしか出ない陽炎である。

 

神通「提督を化け物扱いですか・・・。」

 

18駆(いやいやあなたも例に漏れませんよ!?)

 

息はピッタリである。

 

 

 

提督「ぬぅ・・・!」

 

直人がバク宙3つで距離を取った。

 

タカオ「な・・・なんて、強さなの・・・。」

 

バリアを再構築しながら言うタカオ。攻撃が終わった事で漸く修復が余裕を持って出来ると言う様な有様であった。どうにか破らせない様にするので精一杯だったのだ。

 

提督「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・」

 

あの直人が息を切らしていた。川内や他のどの艦娘と戦っても整然としていた直人が、である。

 

提督「はっ・・・同じ化け物同士・・・強くて当然、だわな・・・。」

 

タカオ「人間からすれば、私達は化物でしょうね。最も、私から見れば、あなたも十分化物だけれど。」

 

提督「化物、ね・・・確かに魔術、それも錬金術なんて異質な代物を扱える人間なんてのが、化物でない道理も無いな。」

 

直人は強いて言うと、アルケミーソルジャーとも言うべき魔術師である。普段扱う分に彼の魔法は錬金術であるが、彼の錬金術は何の不自由なく戦闘へと転用できる。

 

更に言えば、彼の錬金術は戦闘にこそその真価を見出すタイプなのである、これを異質と呼ばざるして何と呼ぶのか。少なくとも私は他に適切な表現を知らない。

 

タカオ「魔術・・・ね・・・。」

 

提督「だが、敵に知られたからにお前は容赦無く潰す。完膚なきまでに、己が一撃を以って。」

 

そう言った瞬間、直人の左手に付けられた純白の手袋、それに刻まれた魔法陣が、より一層輝きを増す。同時に膨大な魔力が渦を巻き、大気がそれに釣られ風が起こる。

 

タカオ「な、なに―――一体・・・なにが・・・!?」

 

提督「俺の本気の剣を受け止めたことは褒めてやる、俺にここまでさせたこともだ。ならば俺の今の全力、受けてなお立てるかな・・・?」

 

 

――――こんなに愉しい事は、久しぶりだ・・・。――――

 

 

直人は心の底からこの戦いを愉しんでいた。その表情は酷薄な、残酷な笑みを浮かべ、その魔力はとめどなく溢れ出す。

 

提督「征くぞ・・・結界制御術壱式、参式、解放。」

 

この解放は、直人の総力の7割を解放したのと同義であった。

 

直人はその魔術を、複重封印によって能力を制限している。それが結界制御術式であるが、そのプロテクトは五重にかけられている。

 

その内最も攻撃的な3つを解放した、これの意味する事は――――――

 

提督「(つるぎ)の門よ開け―――!」

 その瞬間、弐式解放の時に起こった現象が、その規模を数十倍にして起こった。直人の背後に、次々と剣が現れる。それも、切っ先を前にして。

結界制御術式壱式が封じている能力は『結界内物質の物理的取り出し』。要するに直人の内的宇宙に貯蔵されている白金剣を、ひとつの物質として物質界に取り出す能力である。

 

提督「さて、千本の白金剣だ。霧と言えどこれを防げるか?」

 

直人は勝利を確信した。しかし彼は急速に醒めていった。

 

タカオ「そん・・・な・・・。」(負ける・・・!? この私が、人間ごときに・・・!!)

 

提督「終わりだ・・・。」スッ

 

直人が右腕を掲げる。

 

タカオ「くっ・・・!!」

 

タカオも慌てて正面に大きなバリアを張る。

 

「フルファイア。」バッ

直人が腕を正面に振り下ろす。それと前後して千の剣がタカオめがけて一斉に飛翔した。

 

タカオ「っ!!?」

その速度は亜光速に近かった。

 これが結界制御術式参式で抑制している能力『錬金武器の遠隔操作』によるものだ。これに関して言えば、抑制効果はある程度残し、全力は出せない様にしているという二重プロテクトだが、それを解放した場合最高速では、限りなく光速に近いスピードで剣が飛び行くと言う凄まじい状態になる。

 パリィンとまるで小さなガラスが砕けたような音を立てて、タカオのバリアはあっさりと破られた。

 

タカオ「っ―――!!!」

 アインシュタインの相対性理論はご存知であろうか。それによれば、物体は光速に近づくにつれ質量を増すとされている。それが期せずして立証された結果だったが、タカオには最早これを止める術はなかった。

 

提督「――――!」

 

タカオ(終わり、ね・・・。)

 

 

 

群像(やはり、その程度の器か・・・。)

 

群像は心中で失望を覚え始めていた。

 

杏平「ヒュ~ッ、つくづくトンデモねぇなあいつ!」

 

静「でも、これでタカオは・・・。」

 

 

 

タカオ「・・・?」

 

 

ヒュオオオオオ・・・

 

 

提督「―――フッ。」

 

タカオのメンタルモデルはおろか、他の船体にも、その剣は刺さってはいなかった。

 

タカオ「・・・何のつもり?」

 

タカオに向かった剣は、その全てがメンタルモデルを取り囲んでいた。それこそ少しでも動けば、刺さる位の隙間しかない。

 

提督「分からん、か。」

 

タカオ「・・・そうね。」

 

提督「ではこういう事だ。」

 

そう言って直人はインカムの電源を入れた。

 

提督「こちらノーライフキング、霧の重巡タカオを鹵獲した。全艦警戒体制に移行、状況終了だ。」

 

 

 

霧島「はぁ―――肝が冷えますよ、司令・・・。」

 

神通「やはりお強いですね、提督・・・。」

 

朝潮「終わりましたか・・・。」

 

陽炎「やったわね、不知火、黒潮!」

 

不知火「えぇ、そうね・・・。」

 

黒潮「バッチリやで!」

 

陽炎&朝潮「いや主砲飛ばされといてそれはない。」ビシリ

 

黒潮「うぐっ、そ、そんなとこ気にせんでええやろ!!」

 

実はタカオの実弾射撃を喰らった黒潮の主砲、大破して行方不明になっていた。むしろそれだけで済んだのが幸運だったとも言えるかもしれない。

 

 

 

金剛「ノーライフキングって、センスェ・・・。」

 

高雄「どう言う意味なんですか?」

 

金剛「英語で不死者という意味デス。」

 

響「まぁ、気分で変えてるみたいだし、いいんじゃないかい?」

 

金剛「違いないデース・・・。」

 

雷「終わったわねぇ・・・。」

 

電「弾丸も魚雷も無いのです・・・疲れたのですぅ・・・。」ウツラウツラ

 

眠たそうだ。

 

 

 

川内「ふぅ~、終わった終わった~・・・。」

 

白雪「今回ばかりは覚悟決めましたよ川内さん・・・。」

 

川内「まぁ結果オーライって事で!」

 

初雪「それより、早く帰りたい・・・。」

 

初春「同感、じゃな。それにしても無茶な事をやりおるのう、あやつは。」

 

若葉「それが、私達の提督だ。」

 

初春「ふっ、そうじゃな。」

 

 

 

群像「成程、寸止めか。」

 

群像はこの始末を見て、失望しかけていた自分の認識を改めるのだった。

 

杏平「どうします~? 艦長。」

 

群像「全艦警戒態勢、そのまま待機。」

 

杏平「了解。」

 

イオナ「了解。」

 

 

 

タカオ「私が容易く鹵獲されると思っているの?」

 

提督「死にたかったらいいんだよ? いつでも抵抗してくれれば。分かったら、サイパンまでご同行願おう。言っておくがね、君達がユニオンコアと呼ばれるコアが核である事は聞いてるんだ。」

 

タカオ「くっ・・・。」

 

それを知られていては手が出せない――と臍を噛むタカオである。

 

提督「それに自力で行くのが嫌なら曳航しても――」フッ

 

タカオ「分かったわよ! 行けばいいんでしょう?」ギャース

 

とうとうぶっきらぼうになって言ったタカオである。

 

提督「結構。では行こうか。」ガチャッ

 

そう言うと直人は置いた艤装を再装着して艦を降りたのだった。

 

タカオ「―――はぁ・・・、勝てないわね、私では・・・。」

 

タカオは最早そう分析せざるを得ないのであった。

 

こうして大島沖海戦は、横鎮近衛側にも大なり小なり損害が出た。しかしそれと引き換えにタカオという有力な敵艦を鹵獲する事に成功したのであった。

 

大破した艦は神通のみ、あとは艤装の一部を吹き飛ばされたり、被弾したが大して支障の無い程度の範囲で済んでいたことは、霧との交戦では幸運と言えたのだった。

 

 

 

明石「提督~!」

 

直人達が針路を南に取った頃、漸く本隊が追いついて来た。11時29分の事である。

 

提督「おーう!」

 

明石「御無事でしたか、よかったぁ・・・って、本当に鹵獲してたんですか・・・。」

 

タカオ「・・・。」プイッ

 

提督「ワタシテイトクウソツカナーイ。」(爆

 

棒読みで言った後何故かツボる直人である。

 

明石「ハハハ・・・大きいですね・・・。」

 

提督「そうだな・・・戻ったら造兵廠のドックに係留しておいてくれ。」

 

明石「わ、分かりました・・・。」

 

流石にたじたじとなった明石である。

 

島風「ごめんね提督、間に合わなくて・・・。」

 

長良「司令官聞いて下さい、この子ったら――――」

 

提督「一人で飛び出そうとしてた、か?」

 

直人には予想通りだったし予見もしていた事だった。

 

長良「そ、そうです、止めるの大変でしたよ・・・。」

 

そう愚痴をこぼす長良に直人はこう言う。

 

提督「いや、むしろ島風には単独で救援に向かった方が良かったかもしれんよ?」

 

長良「ど、どういう事ですか?」

 

提督「前線部隊の状態を見てみろ、弾薬を使い果たし万策尽きていたんだ。1隻でも増援が欲しかった筈だよ?」

 

長良「戦況を掴む事も大事、という事ですね・・・勉強になります。」

 

そう締めくくる長良だった。

 

蒼龍「何で置いて行くんですか!」

 

摩耶「そーだそーだ!」

 

ブーブーと文句を言う艦娘2名。

 

提督「いやまぁ・・・その、なんだ・・・すまなかった。」ペコリ

 

素直に頭を下げた直人、まぁ本隊を置いて一人で飛び出したのだから二の句も無いのだが。

 

摩耶「いっ、いやいやいや! 謝るな謝るな! 俺達は別に怒ってる訳じゃねぇんだからよ、なっ?」

 

蒼龍「そ、そうですよ! 一応聞いて置きたかっただけで別に怒ってるなんてそんな事は・・・。」

 

焦るご両名である。

 

扶桑「すみません、遅れてしまって・・・。」

 

提督「いや、いいんだ。今回本隊は予備部隊だったしな。」

 

扶桑「そう、なのですか・・・?」

 

提督「うん、今回はスピード勝負だったし、ああでもしなきゃ間に合わなかった。もし万が一の事があった場合に投入するつもりだったんだ。」

 

扶桑「そう言う事でしたら、いいのですが・・・。」

 

赤城「提督、申し訳ありませんでした。」

 

突然謝る赤城。

 

提督「ん? なぜ謝るんだ赤城。」

 

赤城「私達は航空隊に、目標の周知徹底を完遂できず、犠牲を増やしてしまいました・・・。」

 

提督「謝意は無用だ。一度の失敗は一度の成功で補えばよい、百戦して百勝という訳にも行かん。それに今回の事で航空隊の認識も変わるだろう。“触らぬ神に祟りなし”とな。」

 

そう。今回の戦闘でタカオは、自身に攻撃を加える航空機にしか迎撃をしなかったのだ。これは、深海側の霧との共戦協定の甘さ故の失敗であった。

 

赤城「は、はい・・・。」

 

しかしそれでも表情の晴れない赤城に、直人はこう言った。

 

提督「・・・赤城よ。」

 

赤城「はい?」

 

提督「世の中というのはままならぬものでな。人の心理という奴は、必然的により大きな功績を立てようとする物らしい。だが恐れを知らぬ者程命知らずな者もいない。恐れを知らぬという事はつまりそれを“慢心”という訳だ。」

 

赤城「つまり、今回はそれを晴らすきっかけ、と仰られるのですか?」

 

提督「そうだ。よって謝意は無用、今回の反省を生かし次回以降に期待させてもらう。以上だ。」

 

慢心によって戦に敗れるなら、それを晴らすきっかけさえ与えればよい。そしてその際極力小さな負けに留めるならば、授業料としては安い位である、という訳である。

 

榛名「提督、御無事で良かったです。金剛姉さんも。」

 

比叡「お姉様が心配で心配ですぐにでも飛び出したかったですよ~~。」

 

心配性な比叡である。

 

霧島「まぁまぁ比叡? こうして無事で帰ってこれたんだし、いいじゃない。」

 

比叡「それはそうですけど・・・。」

 

白露「どんな感じだった? 夕立!」

 

夕立「凄い弾幕だったっぽい~・・・。」

 

時雨「流石に、休みたいね・・・。」

 

提督「・・・そうだな、帰ったらみんなうんと休もうか。」

 

村雨「哨戒はどうするの?」

 

提督「航空隊に任せるさ。」

 

村雨「成程ね。」

 

摩耶「姉さん達、大丈夫だったか?」

 

愛宕「何とかね~。」

 

高雄「今は食事より睡眠が欲しい気分よ・・・。」

 

摩耶「だ、だろうなぁ~・・・。」

 

提督「・・・そういえば、だ・・・要領のいいお前達だ、どうせドロップ判定出来る様なのは拾ってるんでしょ?」

 

金剛「お見通しデシタカー・・・。」^^;

 

提督「はぁ~・・・。明石はもう少し休憩時間が遅くなりそうだな。」

 

明石「判定可能品と不可能品の選別、ですね・・・。」

 

提督「頼むわ・・・。」

 

その直人本人も、疲労がかなり蓄積していたのは確かであるが・・・。

 

 

 

――――???――――

 

タカオ「・・・。」

 

ヒュウガ「どうしたの~?そんなに不貞腐れて。その様子じゃ、余程悔しかったみたいね~。」

 

タカオ「当然でしょう? 生身の人間に霧が負かされたのよ?」

 

イオナ「タカオの敗因は、人間を甘く見ていた慢心によるもの。」

 

タカオ「401に言われなくても分かってるわよ・・・。」

 

ヒュウガ「でもなーんで大人しくついてきた訳?」

 

タカオ「それは――――」

 

 

 

実際の所、タカオは抵抗することが出来なかった。それは、今タカオと並走しているイオナの仕業、というよりはそれを指示した群像、果てはそれを依頼した直人のせいである。

 

 

 

提督「千早艦長、タカオの武装ロックというのは、出来るものなのかい?」

 

群像「“あ、あぁ―――可能だそうだが。”」

 

提督「ではお願いしたい、俺がよしというまでロックして置いてほしい。港で暴れられても困る。ドックであれば水を抜いて置けるが洋上ではそうもいかんし、武装ロックをしないと、ドックの隔壁ぶっ壊されても文句は言えん。」

 

群像「“了解した。”」

 

提督「戻ったらうちの設備でイオナを整備しよう、今回の様な無理は、もうしないさ。」

 

群像「“そう言って貰えると助かる。”」

 

 

 

タカオ「そっちこそ、なんであなたが401と一緒にいる訳?」

 

ヒュウガ「そりゃぁ勿論イオナお姉様を守る為よ。」

 

タカオ「・・・そう。」

 

これについては話しても無駄だと悟り話題を切り替える。

 

タカオ「ところで、なんであなたは、人間を―――千早群像を乗せているの?」

 

ヒュウガ「なぁに ?うらやましいの~?」ニヤニヤ

 

タカオ「そうじゃないわよ!/// で?401、なぜなのかしら。」

 

イオナ「それが、私の中にあった唯一の命令だから。」

 

タカオ「・・・そう。」

 

タカオは、ひとまずそれで納得するのであった。

 

提督「全く・・・最初は沈める筈が、とんだ大取物だったな。」

 

金剛「ハハハ・・・。」

 

比叡「お姉様、お怪我も無いようで安心しましたぁ~。」

 

 

 

タカオ「・・・。」

 

ヒュウガ「あなたいつまで不貞腐れてるつもりよ?」

 

タカオ「知らないわよ・・・。」

 

群像「まぁ、作戦は脇道に逸れたが、結果オーライって所か。」

 

イオナ「タカオの無力化という、目的そのものは成功している。」

 

群像「紀伊直人、中々豪胆な指揮官だ。」

 

タカオ「・・・。」

 

杏平「ま、あの部下達は肝冷やしまくりだろうけどな。」

 

 

 

タカオ(人間というのは、我々には理解出来ない思考をする生き物。でもその為に予想を超えた作戦を編み出してくる、という事ね・・・。)

 

事実その分析は正鵠を射ていた。直人はタカオに嫌がらせの攻撃をして逆上させる事で、タカオの思考を一本化し、超重力砲とフィールドのエネルギー放出を事実上封殺した。更に艦娘の速度を生かしたヒットアンドアウェイで更に怒りと焦りを増大させ、追撃の手を緩めさせなかった。

 

その総仕上げに、第1艦隊が飽和攻撃で耳目を引き付け、イオナで無力化できるだけの損害を与えるという手筈だったものを、直人が直接降下して決着をつける、という体裁を取ったのだった。

 

タカオ(じゃぁ、人間というユニットを乗せれば、私も強くなれるの・・・?)

 

 

 

提督(タカオに協力の依頼を出すべきだな、これは。)

 

一方の直人は今回の戦訓から、艦娘で正面から霧と渡り合うべきではないと見ていた。実際、弾薬が尽きるまで撃っても、タカオは沈まなかった。

 

提督(俺が駆けつけなかったら、今頃金剛達の艦隊は壊滅していた筈だ。その相手に本隊をぶつけても、撤退の時間稼ぎで精一杯だっただろう。航空攻撃は実質無効な以上、艦娘は霧に対し有効打になり得ない・・・。)

 

これも正確な分析だった。いくら本隊が強力な戦艦と重巡から成ると言っても、艦娘の戦艦2隻がかりでもあのクラインフィールド、しかも重巡級のそれを破るには至らなかったことから、例え本隊が来てもその効果の程は疑わしい。

 

しかも重巡級と違い、大戦艦級ともなればその強固さは比較の段ではない。重巡級は火力では引けを取らないものの防御面では一歩譲る程度のスペックだ。まして巡航潜水艦(イオナ)などでは比較するまでも無い。

 

提督(艦娘が霧と互角の一歩手前であるならば、やはり・・・。)

 

直人は結局の所、大局の勝利を望んでいた。つまり彼自身の手による戦略的勝利を、叶うならば、味方の血を、流させる事無く―――。

 

 

~ハワイ沖~

 

「鹵獲された、か・・・。」

 

「ふんふふ~ん♪」

 

ハワイ沖に静かに佇む二つの鋼鉄の城。片方は戦艦級、もう片方が重巡級。重巡級のメンタルモデルは、ご機嫌な様子でピアノを弾いている。

 

「ハルナ、キリシマ。」

 

キリシマ「“コンゴウか。”」

 

ハルナ「“何かあったのか?”」

 

コンゴウ「どうやらタカオが何者かによって拿捕されたようだ。マヤと共に行方を追い救出して来い。」

 

キリシマ「“分かった。”」

 

ハルナ「“もし仮に、タカオが『敵』に同調した場合は、どうする?”」

 

コンゴウ「それはアドミラリティ・コードに逆らったと見做し、その場合、撃沈して構わない。」

 

ハルナ「“・・・了解。”」

 

それは間接的とはいえ紛れも無い、直人達サイパン特根隊に対する追撃命令であった。

 

コンゴウ「―――聞いていたな、マヤ。」

 

マヤ「はいは~い、いってきまーっす♪」

 

マヤはピアノから立ち上がると、艦を動かし前進を始めた。

 

コンゴウ「艦娘、か・・・それほど侮れぬ敵なのか、それとも・・・。」

 

コンゴウは、目の前に現れた未知の敵に、思いを巡らすのであった。


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