異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、最近新小説草案作りに忙しい元疑似プラグマティズムの天の声です。

青葉「あ、これもう作者だってこと隠す気も無いわ。あ、どーも、青葉です。」

先日読者さんから誤字指摘を頂きました。ありがとうございます。

なんと言うかお恥ずかしい限りです、既に修正を終えております。誤字指摘、御座いましたらどしどし御投稿頂けますと、この小説のクオリティアップに繋がりますので、御協力願えればと思います。

コメントも一つ頂きましたので、それについて回答して行きたいと思います。

「着任2週間で21隻は多い様な・・・」

ごもっともで御座います、過去の自分をふんじばって操作したいくらいです。

青葉「アハハハ・・・」

聞きたくない方もおられるとは思いますが、敢えてコメントを頂いた方の為にご説明させて頂きます。

かつての自分は勝利の為に手段を選ばないタイプの人間でして、軍人気質と言いますか、一種のプラグマティズムに陥っていた節がありました。

21隻の沈没艦は全て2-4で戦没しておりまして、そのほぼ全てである20隻が、損害無視によるものでした。

中には空母飛龍や駆逐艦綾波、重巡利根も含まれております。

次々と艦を投じては沈め、投じてはまた沈めと言う日々を、私はただ淡々と続けていました。そうして2週間が終わろうとした着任14日目、21隻目の轟沈艦が出ました。

駆逐艦雪風の沈没です。

当時は最低値レシピでも雪風が出まして、その偶然に私は狂喜したものでした。無論のこと他の艦と違い大切にしようと思っていました。

しかしその日、2-4に出撃した雪風は、疲労蓄積も無く、HPが減っていた訳でもないのに、1戦目で敵の3連続攻撃を受けて轟沈しました。

復帰後その話をしたとき、それをバグであったと結論付けるに至ったのですが、その雪風轟沈を見た私は、艦これをすっぱりやらなくなりました。復帰はアルペイベ前の事です。

当時は1日に10回程度2-4に繰り出していました。攻略できず、手前で引き返す事と自分の面子を秤にかけていたのでしょう。そして雪風が沈んだとき、彼女達の地獄は終わりを告げたと言えます。心が折れたのですから。

青葉「復帰して此の方人が変わってましたものね・・・。」

まぁね。ともかくこう言った理由で21隻もの艦が沈んでしまいました。

自責の念に堪えません、今でもです。

この辺りで暗い話はお開きにしましょう、私のテンションが崩壊しそうだ。

青葉「そうですね。」

さて前章は愚行に走ったとある提督の後日譚的なお話でしたが如何だったでしょうか?

青葉「光ある所に必ず影の側面は存在する、ですか・・・。」

それらも全てひっくるめて艦娘艦隊の歴史がある訳です。影が付きまとわなかった歴史なんてありませんし。

青葉「確かにそうですね。」

さてこの章から遂に川内復活です。夜戦のエキスパートの活躍はまだ先の話ですが、その辺りのご期待も頂きたく、始めていきましょう。

青葉「どうぞ!」


第1部5章~夜闘将(夜戦バカ)川内~

6月22日木曜午前11時、直人は思う所があって大淀と話をしていた。

 

提督「大淀。」

 

大淀「はい?」

 

提督「そろそろ期限の筈だが・・・川内は、信用できると思うか?」

 

大淀「そうですねぇ・・・提督のお心内は、決まっておられるのでしょう?」

 

提督「俺は兎も角周りの目を、と思ってな。」

 

そう、直人自身がどう思うかなどは、大衆の目線からすれば些細な事である。

 

問題は周りが川内をどう見るかである。

 

6月28日には川内は拘禁を解かれて第1水雷戦隊旗艦として戦列参加する事が決まっている。彼は常設になった第1水雷戦隊の旗艦の名に、しっかり川内の名を書き記していたのである。

 

故にこの事は暗黙の内に司令官紀伊直人の命令として浸透していた。川内拘禁の事を知っているのは、高速修復剤の管理をしている明石、乱闘騒ぎの時駆けつけた5人と龍田、如月、金剛だけである。固く箝口令を敷いておいた甲斐もあったと言える。

 

大淀「成程・・・。」

 

そして大淀はその箝口令を敷いた一人である。

 

大淀「私としては、信用していいかと思います。」

 

提督「その心は?」

 

大淀「都合の良い様に使われていたというのでしたら、元に戻った以上忠義を疑う余地も無いと思います。」

 

提督「忠義ね・・・いい君主もいい臣下も欲しいとは思わんのだが。」

 

大淀「どういう事です?」

 

提督「友人なら、という事さ。」

 

大淀「成程・・・。」

 

専制君主制を暗に批判した名言がこのように使われるとはこれ如何に。

 

提督「ふむ・・・ま、大淀の意見は分かった。聞く機会があれば他の奴にも聞いてみるとしよう。」

 

大淀「そうですね。もう上がられますか?」

 

提督「そうだね、出撃が無いし、上がりだな。」スクッ

 

椅子から立ち上がる直人、さっさとどこかへ行きたいらしい。

 

大淀「お疲れ様でした。」

 

提督「お疲れ様~。」ツカツカツカ

 

で、さっさと行ってしまったのでした。

 

 

 

午前12時19分 食堂棟1F・食堂

 

 

他の艦娘の意見を聞く機会は、意外に近くに転がっていた。

 

提督「明日はカレーだけど今日はオムレツだったか~。頂きます。」カチャッ

 

この日のメインはトロトロのあんかけのかかったオムレツでした。(メシテロ乙)

 

雷「あら、司令官!」

 

提督「むご?」

 

後ろから雷が声を掛けてきた。

 

雷「隣いいかしら?」

 

提督「どうぞ~。」ムグムグ

 

基本的に直人は一人で飯を食う場合が多いです。

 

雷「いただきまーす!」

 

雷の取り柄はその元気さとポジティブさだが、ここでもそれは健在である。

 

提督「元気だねぇ~。中々どうして羨ましい。」

 

雷「ん? 司令官、何かあったの?」

 

提督「え?」

 

雷「いやいや、普段あれだけ駆け回ってる司令官がそんなこと言うなんて、ちょっと珍しいと思って。」

 

提督「あー、なるへそ。」

 

つまり駆けずり回るくらい元気な俺がって事ね。

 

提督「いやさ、ちょっと考え事をね。」

 

雷「ふーん、そんなに深刻なの?」

 

提督「・・・言っちゃうと、川内の事なのさ。」

 

雷「・・・そう言えば、もうすぐ拘禁解除ね。」

 

雷は小声でそう言った。

 

提督「あの事を知ってる君達がどう見るかって事なのさ。」

 

悩みの理由を聞いた雷は、少し考えてこう言った。

 

雷「・・・うーん、まぁ、司令官がいいならいいんじゃない?川内さんも、あの時はああだったけど、元に戻った川内さん、悪い人には見えなかったわ。」

 

提督「ははは・・・我らが小さなお医者様は人を観察する良い目をお持ちでらっしゃると見える。」

 

雷「人の傷を治す仕事ですもの、自然とそうなるわ。」

 

提督「まぁ、違いないな。」

 

それを聞いて直人は肩の荷を一つ降ろしたのだった。

 

 

バッタァァーーーン

 

 

提督「んお?」

 

誰かが派手にこけた音がした。

 

 

 

五月雨「いたたた・・・。」

 

すっ転んで涙目で座っていたのは五月雨だった。

 

潮「だ、大丈夫ですか?」

 

雷「どうしたの!」

 

駆け付けた雷に潮はこう言った。

 

潮「それが・・・私の座ってた椅子に、五月雨さんが足を引っ掛けたみたいで・・・。」

 

雷「それはまたなんとも・・・はぁ・・・。」

 

ドジだなぁ、とまでは言わなかった。言いかけて言葉を呑む。

 

五月雨「あううう・・・。」

 

雷「診せて五月雨ちゃん。」

 

五月雨「あ、はい・・・。」

 

五月雨の身体の各所に傷が無いか見ていく雷、技術局医療課管轄の本領発揮である。

 

雷「あら、おでこにたんこぶが。医務室に来て。冷やさないと。」

 

五月雨「はい、分かりました。」

 

雷は涙目になっている五月雨を伴って食堂を後にした。

 

 

 

提督「・・・ドジっ子ですねぇ・・・。」

 

と、遠巻きに一人呟く直人がいたのを、五月雨は知らない。

 

 

 

その日の夕方、何となしに司令部の敷地を歩き回っていた直人は、艤装倉庫の裏で佇む扶桑を見つけた。

 

なんで今日はこんなにあの事の関係者と会うのか、自分の強運に関心すらしながら、直人は扶桑の方に歩いていった。

 

 

 

提督「扶桑!」

 

扶桑「っ! あら、提督・・・。」

 

提督「何をしてるんだ?」

 

扶桑「何をしている、と言う訳でもないのだけれど、最近はどうしても、夕暮れの海が見たくなるんです。」

 

提督「そっか・・・。」

 

少々言葉に詰まった直人である。

 

扶桑「何か、御用ですか?」

 

提督「あぁ、うん。実は、川内の事なんだが・・・」

 

扶桑「なさりたい様に、なさって下さい。」

 

提督「えっ・・・。」

 

言い切らぬ内に扶桑は答えを述べた。

 

扶桑「あの時は、ただただ驚きました。でも、事情があったなら、川内さんを赦して差し上げても、いいと思います。」

 

提督「・・・そっか。ごめんな、わざわざこんな事聞きにきちゃって。」

 

扶桑「いえ。来られると思っていましたから。」

 

提督「・・・?」

 

その一言に直人は何と言っていいか分からなくなった。扶桑が次の句を述べた時、それは分かった。

 

扶桑「提督は、私達全員に、責任感を持っておいでになられます。一人一人が、ちゃんとここに居られる様に。それで来られたのでしょう?」

 

提督「・・・そうだね。ありがと、それじゃぁ。」

 

扶桑「えぇ、また。」

 

そう言って直人は去っていった。

 

 

 

タッタッタッ・・・

 

 

山城「姉様~!」

 

扶桑「あら、山城。」

 

山城「そろそろ冷えてきます、戻りましょう・・・あれは、提督?」

 

訝しむように山城が声を発する。

 

扶桑「えぇ、そうよ。」

 

山城「何を、話されたんですか?」

 

扶桑「川内さんの事をどう思っているのか、とお聞きになられたわ。」

 

山城「・・・成程。私も、扶桑姉様と、同じ気持ちです。」

 

扶桑「そう・・・行きましょうか。」

 

山城「はい!」

 

日が暮れた頃、扶桑と山城は、揃って宿舎に戻っていったのだった。

 

 

 

2052年6月24日(土)午前9時20分 中央棟2F・執務室

 

 

ウゥゥゥ~~~~・・・ウゥゥゥ~~~~・・・

 

 

提督「敵の偵察機?」

 

飛龍「“はい。現在上空哨戒中の戦闘機が迎撃に向かっています。”」

 

提督「そうか、なら結構だ。だがいつ敵の空襲があっても良い様、備えておけ。夜間戦闘機や単座戦闘機の数が増えているとはいっても、油断は禁物だぞ、いいな?」

 

飛龍「“承知しております。”」

 

そう言って飛龍は端末の回線を切る。

 

提督「ふぅ。」

 

金剛「相変わらず心配性デスネー。」

 

提督「最前線だからな。それに、金剛達が夜襲に行ってからもうすぐ1ヵ月だ。戦力を回復している可能性は高いからね。」

 

金剛「デスネー。油断は禁物、デス。」

 

提督「そう言う事だね。」

 

だが実際こうして時折偵察には現れる。レーダーによって大半は事前に察知され、偵察を許すことは無いが。

 

大淀「敵艦隊は、此処にまた来るでしょうか?」

 

提督「来ないだろうね。あれだけの被害を被って戦果は艦隊を壊滅させただけ、基地には何の手傷も無い。只事でない事はあっちも承知だろうさ。」

 

大淀「そうですね。」

 

戦果が無いのは事実だった。本来の目的である前進基地破壊は損害すら与えられずに失敗に終わっている事からもこれはよく分かる事でもあった。

 

この時の彼らはフィリピンで撃退した時と今の力では格段の差であったばかりか、攻撃した深海側に驕りがあったことも否定出来ないと言う。後に判明する事だが、この頃の深海側は、艦娘艦隊の為体(ていたらく)と無謀な作戦とそれによって艦娘艦隊に与えた損害から、慢心や驕りがあったと言われる。

 

その様な烏合の衆と同じではない、そう深海側指揮官が考えたとしても不思議はなかっただろう。その結果慎重になった深海側が偵察に終始している事からも、これは証明出来る。サイパン島の海を深海の血で染め上げる訳にもいかないのだ。

 

提督「今はまだ、此処に閉じ籠って様子を見るさ。海図も出来上がって来たし、もはやここは我々のホームグラウンドだ。」

 

大淀「守りに徹すれば敵も出てこない、来たとしても、全島要塞化と飛行場の部隊がかなり整って来た為に、撃滅は余裕を持って可能、ですね?」

 

提督「お? 分かって来たねぇ大淀。その通りだ。言わば我が艦隊はウニと同じさ。」

 

金剛「踏んだら痛いデスネー。」

 

大淀「中々触りづらいですし。」

 

提督「そう言う事さ。サイパン島がそのウニの棘(とげ)さ。」

 

大淀「私達はその中の身ですか・・・。」

 

提督「そんなとこだわね。まぁ、来るならくるで、撃滅するに越したことは無い。奴さんから勝手に出て来てくれるんだし、攻めるよりずっと経済的だ。」

 

大淀「経済的、ですか・・・?」

 

金剛「どうしてマネジメントの話になるんデース?」

 

二人揃って首を傾げた。答えは言わずと知れた事だった。

 

提督「戦争というのは一種の経済活動だ。そこに利益が無ければ攻め込んだりはしないからね。攻め込むにも軍隊がいるが、あれは一種、先行投資の株券なのさ。軍隊はその国の利益の為に戦い、死んでゆく。そして勝てば、攻め込んだ場所にあった利益を手に出来るが、負ければ損をしてしまう。」

 

大淀「成程、一理ありますね。」

 

提督「守る方は必死になって自分達が得ている利益を守ろうとする。防衛戦争の本質はそこだ。そして我々は高い必然性を持って受動的立場に立たざるを得ない。」

 

金剛「なにか、問題が・・・あっ。」

 

提督「資源だね。特にボーキサイトの払底が大きい。更に戦力と錬度の不足。航空隊の所有する機材が旧式である点も問題だ。」

 

大淀「守りを怠ったまま攻めるのは愚策という事ですね?」

 

金剛「でもアタックは最大のディフェンスともいいマース。」

 

お? 珍しく英語が出たな。そう思った直人だったが直人は金剛の発言の落とし穴を突く。

 

提督「資材がないのに出撃できるか?」

 

金剛「うー・・・。」

 

戦力の一斉投入と集中を主体とする横鎮近衛艦隊ではそこが最大の問題である。

 

提督「個人プレーに頼っては戦線が瓦解してしまうしな。」

 

夕立や時雨、金剛もそうだがこの艦隊には異能持ちが多い。

 

しかしそれらは運用をしてこそ真に活かされる類のものであり、好きにやれではダメなのだ。

 

提督「だから今は態勢を整えつつ守る。敵が来るならこのマリアナ海溝をして第2のアイアンボトムサウンドにするだけのこと。あぁ、海溝だからアイアンボトムトランチだな。」

 

金剛「流石に・・・笑えないデース。」

 

当然である。

 

提督「実際そうなったからなぁ・・・。ともかくにも、今はここを守る。本土は本土の連中に任せよう。その方が、何より楽でいい。」

 

大淀「っ・・・。」

 

金剛「oh・・・。」

 

大淀と金剛とは、二人揃って顔を覆うのだった。

 

 

 

6月26日午後2時41分 技術局

 

 

この頃珍しく、局長が呼び出してきた。

 

局長「オウ、来タナ?」

 

提督「来たぜ。それで、出来上がったのか?」

 

局長「無論ダ。シッカリ仕上ゲサセテ貰ッタ。」

 

得意満面で言う局長である。

 

提督「・・・期待しても、良さそうだな。」

 

局長「アァ、コレダ。」

 

そう言って差し出したのは、赤い椿の意匠をあしらった漆塗りの黒い鞘に納められた1本の脇差。鞘の中からでも強烈な霊力を発する、ただものではない力を感じる逸品だった。

 

提督「これは・・・」

 

想像の範疇に無い出来に絶句する直人。

 

局長「深海棲艦ノ艤装ニ使ワレテイル金属、便宜上『深海合金』ト呼バレテイルソウダガ(無粋な名だ)、コレヲ再度鋳造シ、不純物ヲアラカタ取リ除イタ後、一週間ヲカケテ霊力ヲ入念ニ注ギ込ンデカラ打ッタンダ。」

 

・・・再鋳造ってそんなこと出来るのか、うちの造兵廠も凄いな。あとその心の声には賛同だ。

 

提督「ふむ・・・」チャキッ

 

鞘から少し抜いてみると、極光で見慣れた黒色だが光を当てると紫に輝く、深海合金の特徴的な光り方をする刀身が姿を見せた。

 

その霊力の量と密度は、極光の比ではない。

 

提督「ほう・・・何とも噎せ返るような霊力密度だな。」

 

分かりにくい比喩ではあるが的を射ていた。

 

局長「極光ハ明石ノ打ッタ刀ヲ再加工シテイルカラアノヨウナ出来ダッタガ、私ニ打タセレバコンナモノダナ。切レ味ハ太鼓判ヲ押シテオコウ。」

 

提督「極光よりか!?」

 

極光でさえ容易く深海棲艦の装甲を切り裂く。金属が金属を切り裂くのだからその切れ味は凄まじい。

 

局長「無論ダ。」

 

それを超えると言う。それこそ名槍蜻蛉切(とんぼきり)の様に、触れた物が否応なく斬り裂かれるのでは無かろうか。それはもはや人間技でないと言っていい。

 

局長「斬撃ヲ放トウモノナラ極光ノ比デハナイゾ? 刀トシテ使ッテモ霊力ガ追加デ相手ニ傷ヲ刻ミ付ケル程ノ霊力ヲ含有サセテオイタ。」

 

最早、文句の付けどころなどなくむしろツッコミどころ満載である。

 

提督「・・・よくぞやってくれた。」ガシッと

 

局長「オ褒メニ預カリ光栄ノ至リ。」握手!!

 

がっちり握手を交わす二人であった。

 

ともかく盛大に局長がやらかした、というのは間違いない。

 

如月「司令官。」

 

そこに声を掛けて来たのは如月だった。

 

提督「どうした如月?」

 

如月「明後日よね、川内さんの拘禁解除。」

 

提督「!」

 

如月の話は、川内の事であった。

 

如月「提督は、川内の事を信用しているの?」

 

提督「信用しない訳には行かない。でないと戦えない。」

 

如月「彼女個人をどう思うかよ。」

 

提督「川内が俺に恭順の意志が無ければ、川内は今頃死んでいるさ。」

 

如月「・・・成程ね。」

 

提督「或いは俺が死んでいるかもな。」

 

如月「!?」

 

提督「一度牢獄に行ったとき、川内にナイフを渡した。「そのナイフで俺を刺すか? 俺は逃げも隠れもしない」と言ってな。だが俺を刺すとは言わなかった。鍵さえ開けてやると言ったのにな。」

 

如月「――――そう、施術が成功していて、よかったわ。」

 

提督「俺はあいつを信じる。だから重要な1水戦旗艦を任せたんだ。釈放が明後日なのに今更変えられんし、他に適任者もいない。」

 

局長「ダガ仮ニモオ前を殺ソウトシタンダゾ? ソウ簡単ニ信用出来ルノカ?」

 

提督「・・・。」

 

そう言われれば、彼には否であったが、結論は別にあった。

 

提督「戦場に於いては過去何があったかは無関係だ。一度仲間にした以上信じなければ、それは自分が死ぬ時だ。」

 

局長「全幅ノ信頼デハナイノカ、ダト思ッタ。ナラバ私ノ言イタイコトハナイ。」

 

如月「あなたが信頼すると言うのであれば、私にも異存は無いわ。」

 

局長と如月は揃ってそんな事を言う。

 

提督「・・・そうか、よかった。局長、脇差、ありがとね。」

 

局長「銘ハ、決メテアルノカ?」

 

提督「・・・ない。」

 

局長「―――ナイノカ。」

 

ないのである。

 

提督「そうだな・・・“希光”、にしよう。」

 

局長「希光?」

 

提督「“希”望の“光”ということさ。」

 

単純だった。

 

局長「・・・ホウ、即興ニシテハ上々ダナ。」

 

提督「ありがと、じゃぁね。」

 

局長「タマニハ遊ビニ来イ。茶ト菓子位用意シテ待ッテイルカラナ。」

 

提督「ん・・・ま、気が向いたらね。」

 

そう言って直人は技術局を去っていった。

 

局長「・・・ラシイト言エバ、ラシイナ。」

 

如月「そうね。」

 

直人はまぁ、誰かをすぐに信頼することは無い、信用する事はあってもである。むしろすぐに信用するお人よしでもないとは言えなくはない。故に上層部には嫌われ放題だが。

 

 

 

6月28日午前10時 司令部地下牢

 

 

コツーンコツーンコツーン・・・

 

 

川内「!」

 

提督「やぁ、久しぶりだな。」

 

川内「本当にね。」

 

提督「今日は6月28日だ。あれからもうひと月か。」

 

川内「そうね、早いものだわ。」

 

提督「軽巡川内、拘禁を解く。大淀!」

 

大淀「はい。」

 

 

ガチャガチャッ

 

 

大淀が牢屋の鍵を開ける。

 

 

キイイィィィィーーーッ

 

 

その扉を直人が開け放つ。

 

提督「直ちに戦列に復帰し、訓練に参加、第1水雷戦隊旗艦の任に就くように。」

 

川内「承りました。」ビシッ

 

川内は敬礼して応える。

 

提督「今年中は多分実戦は無いだろうが、勘弁してくれ。」

 

川内「そうですね、承知しています。」

 

これは致し方のない事であった。既に公言しているからである。しかしこの言葉はあっけなく覆されることになるが、それは少し後の話だ。

 

提督「すぐに行ってやるといい、旗艦代理の夕立がドックで待ってる筈だ。」

 

川内「はい!」

 

この日から、1水戦の訓練は夜襲をメインにかなりハードになったと言う。夜闘将川内の活躍の裏には、駆逐艦の血反吐を吐くような激しい訓練があった。適応したのは夕立を含め一握りだけだった。

 

 

 

6月29日午前10時40分 屋外演習場

 

 

たまに20日越した頃から月末にかけて何かやらかす習性のある直人、案の定今日もやってしまった。というのは・・・

 

提督「白兵戦技訓練を行う。」

 

全員「・・・。」

 

提督「返事はどうしたァ!!」

 

全員「はっ、はいっ!!」

 

叢雲「まぁ確かに私なんかはいるかも知れないけど・・・。」(槍使い)

 

龍田「そうねぇ・・・。」(槍使い)

 

菊月「一つ聞いていいか?」

 

提督「どうぞ?」

 

菊月「普通艦艇で白兵戦はしないと思うのだが。」

 

確かに中世海軍ではあるまいに敵艦への強襲揚陸と白兵戦は、ほぼ想定しないと言ってもいいだろう。

 

提督「あのな、船と違って人は素手で戦う場面も多いんだ。艦艇だからと白兵戦を想定しないのか? それは戦場を舐めすぎてるな。うちは秘密艦隊故に何でも屋だ。それこそやるなら敵基地への潜入工作、敵前上陸、敵基地制圧作戦、敵艦に対する近接戦闘もこなせないといかん。うちにも天龍姉妹や伊勢姉妹を筆頭として近接戦闘出来る奴はいるが、そいつらが破られたらどうする? 自分の身を自分の拳で守ると言うのも重要なんだ。」

 

菊月「・・・聞いて悪かった、その通りだ。具体的に何をするんだ?」

 

そこが肝心であるが、艦娘達にとっては地獄待った無しである。

 

提督「俺とサシで、つまり1VS1で戦って貰う。」

 

全員「・・・。」

 

 

えええぇぇえぇぇぇえぇええええええぇぇぇぇえええええ~~~~・・・!?

 

 

直人の強さは司令部中に知れている。

 

赤城や加賀を圧倒し、天龍を秒殺し、龍田を一撃で倒し、川内を互角の戦いの後に圧倒し(これについては流布されていないが)、艤装も無しに30cm砲2門と霊力刀1本だけで3000を超す深海棲艦をたった一人で薙ぎ倒した。

 

更に艤装の有無を問わず超兵器を破った。化物以外の何物でもない。

 

それとサシで戦えと言うのだから、彼女らの絶望感たるや凄まじかったろう。

 

金剛「正気デスカー?」

 

提督「狂気でモノを言ったことは一度も無いぞ。」

 

榛名「本気ですか・・・。」

 

提督「無論だ。」

 

蒼龍「・・・でもそれ位しないと、超兵器には勝てないって事よね。」

 

提督「!」

 

菊月「ワールウィンドを倒した張本人だからなぁ。」

 

提督「?」

 

長月「オブラートに包まなくてもいいだろう、化物が相手なんだから。」

 

提督「その言い方やめて、マジで傷付くから・・・。」

 

長月「嘘つけ、この程度で傷つく司令官じゃないだろう。」

 

提督「どういう意味だおい・・・。」

 

愛宕「あらあら・・・。」

 

高雄「駆逐艦に口で負けますか・・・。」

 

ざっくり言われる直人であった。

 

川内「あんまりみんなピンと来てないみたいだし、一つエキシビションマッチでもやっちゃう? 提督!」

 

提督「え、あー、いいけども。」

 

おおおお!?

 

今度はどよめきが起こった。

 

実力未知数の川内と、化物クラスの提督直人の一騎打ち、しかも川内から言い出したのだから当然だ。特に着任して一度も出撃をしていない叢雲なんかは興味津々である。

 

青葉「エキシビションと聞いてきました!」シュタッ

 

川内「おぉっ!?」

 

天空から舞い降りてくる艦娘なんてレア過ぎるわ。

 

提督「お前審判と実況!」

 

青葉「アイアイサー!」

 

特に驚きもせず即座に指示を出す直人。

 

全員「「「どこから来た!?」」」

 

青葉「たまたま近く(近海)を通りかかったので。」

 

 

 

そんなこんなで・・・

 

 

 

青葉「さぁ間もなく始まります紀伊元帥VS川内さんの1戦! 実況は青葉、解説は局長ことモンタナさんと龍田さんでお送りします!!」

 

局長「ヨロシク。」

 

龍田「よろしく~。」

 

なんだかんだ3人ともノリノリである。

 

青葉「さて、今回二人はどちらも刀を使うようですが、どうでしょうか?」

 

龍田「天龍ちゃんを秒殺する事は出来ても、川内ではそうはいかないと思うわぁ。」

 

局長「二人トモアア見エテ殆ド互角ダ。川内ガドコマデ奮戦出来ルカガミドコロダナ。」

 

青葉「互角の勝負ですか、異常な実力を持つ紀伊元帥に匹敵する実力者が現れたという事ですか?」

 

局長「ソウナルナ。」

 

龍田「元独立監査隊トップの暗殺者の実力は、生半可じゃないわ。」

 

青葉「それは凄い一戦です! 全艦娘の耳目が集まる中、間も無く試合開始です!」

 

 

 

提督「本当にいいんだな?」

 

川内「・・・勿論。」

 

提督「ならば手は抜かん。あらゆる手段を使ってでも勝つ。」チャキン

 

川内「そうでなくちゃ、その上で勝つ、それでこそ意味があるというものよ。」

 

提督「・・・そう言うと思った。では俺の本来の太刀を見せようか。」

 

そう言って直人は更に霊力刀“希光”を抜く。

 

極光と希光の二刀流、直人は本来二刀流の担い手なのだ。無論一刀流も出来るのはこれまでで立証済みであるが。

 

川内「・・・面白いわね、二刀流か・・・。」

 

 

 

青葉「あぁっと!? 紀伊元帥、二刀流だ!!」

 

龍田「天龍ちゃんとやった時は、長刀だけだったわねぇ。」

 

局長「私ガ打ッタ脇差“希光”ダ。実力ハ今ニワカル。」

 

青葉「ではその点にも注目しましょう!」

 

 

~観客席~

 

伊勢「なに!?」

 

天龍「二刀流だと!?」

 

伊勢「天龍、前やり合ったって・・・。」

 

天龍「あの時は太刀1本だった。それが二刀流とはな・・・。」

 

伊勢「何の考えがあるんだろうね・・・。」

 

二人がこんな会話をしているのは、二刀流の難しさ故だ。

 

二刀流はアニメで見る様なショートソード2本でやるのを見たことがあるかも知れないが、あれは西洋の両刃剣だからこそで、日本の剣術の場合は異なる。

 

日本の剣術の場合、二刀流は刀と脇差のセットで行う。刀は大抵2.4㎏以上ある為、それを片手で操るには相当な腕力が必要になる他、左右で重さが違う為、取りまわす際にコツがいる。体のバランスもズレてくる。

 

一刀流と二刀流の大きな違いは、立ち回りもさることながら必要な腕力も違う点である。一刀流を修めても、流派によっては二刀流は使えないのだ。

 

天龍「おいおい、提督大丈夫か・・・?」

 

伊勢「どうなんだろうね・・・。」

 

 

 

提督「さて、始めようか。」

 

この司令部で、二度目となる直人と川内の激突が、今始まる。

 

川内「えぇ。」

 

いずれに勝敗が帰してもおかしくはない対決。直人は端から負ける気は無かった。

 

提督「・・・こい!」

 

直人は極光を前に構える。

 

川内「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」ダッ

 

川内が一気に距離を詰める。

 

ここで一つ補足しておこう。

 

「互いに真剣試合」である。

 

提督「スピードは悪くない・・・」ボソッ

 

川内「やあああああっ!!」ヒュバッ

 

互いに間合いに捉え、川内は左払いに直人の首筋を狙う。

 

提督(太刀筋も悪くはない。だが、)「はああああっ!!」ヒュッ

 

 

カシイイィィィィーーーン

 

 

直人は左手の希光で川内の刀を防ぎ弾く。

 

提督「そこだっ!!」ヒュバッ

 

直人は完全に空いていた川内の懐に極光をねじ込む。

 

川内「はあっ!!」

 

 

ガシイイィィィィーーーーーン

 

 

だが川内は弾かれた刀を強引に体の左側に持って来て、極光を防いだ。

 

 

ガチガチガチ・・・

 

 

提督「むぅ・・・やるな。」

 

川内「そっちこそ。」

 

 

ガキィンキィンカシィィンキィンガイィィンカシイイィィン・・・

 

 

 

~観客席~

 

伊勢「ほう・・・やるね。」

 

天龍「それどころか慣れ過ぎだ。まさか・・・」

 

 

 

青葉「序盤から一進一退の激闘です! 希光と極光の二刀流でも、その力は衰えるどころか増している様に見受けられます!!」

 

実況もいきなりヒートアップしてやがる。

 

龍田「これは驚きねぇ、調べたらタイ捨流は一刀流のはずなのだけれど・・・。」

 

局長「恐ラクハアイツガ加エタ“アレンジ”トヤラノ1ツダロウナ。」

 

青葉「なんと!? 紀伊元帥の剣術は我流の域にまで達していた!! 川内さんはどこまで拮抗できるのでしょうか!!」

 

龍田「川内ちゃんもかなりの腕前だから、期待したいわねぇ。」

 

 

~再び観客席~

 

金剛「提督ゥ~~~!! ファイトデェェェ---ッス!!」

 

皐月「司令官、頑張って!!」

 

文月「ふぁいとぉ~!」

 

五十鈴「川内! やっちゃいなさい!!」

 

球磨「頑張るクマ!」

 

多摩「畳みかけるにゃ!!」

 

観客席はと言うと、「直人の実力を知っている」為に「直人が勝つ」グループと、その逆のグループとが応援合戦になっていた。特に前者には単純に直人を慕うグループまで参戦してヒートアップしていた。

 

無論第3のグループもある。それは・・・

 

神通(まぁ司令官さんですし・・・)

 

天龍(提督が勝つな。)

 

日向(まぁ、そうなるな。)

 

伊勢(そうなるね。)

 

「直人がどうせ勝つだろうし傍観しよう」というある種の達観を抱えたグループだった。

 

無論ノリのいい連中もいる。

 

 

 

木曽「さぁ~一口100円だ、どっちが勝つか、さぁ張った張った!」

 

まぁ、こうなる。

 

飛龍「じゃぁ提督に一口賭けとくかな。」

 

那智「私もだ。」

 

陽炎「私もー!」

 

黒潮「ウチは川内はんに一口賭けときまっか。」

 

不知火「はぁ~・・・。」

 

朝潮「そうですね、川内さんに一口。」

 

荒潮「提督に一口よ~。」

 

如月「川内さんに一口賭けておくわ。」

 

叢雲「私も。」

 

暁「私も!」

 

木曽「いいねいいねぇ~!」

 

雪風「私は司令に一口賭けます!」

 

川内サイド(あっ、これ負けた)

 

 

 

提督「ぬうう!」ズザザザザッ

 

川内「おっとと・・・!!」ズザザァァ~ッ

 

互いに弾き飛ばされた模様。

 

提督「好き勝手言ってくれちゃってまぁ・・・。」

 

川内「だねぇ・・・。」

 

かれこれ15分は拮抗している。互いに息が乱れた様子は一切ない。

 

提督「ほんと強いね川内。」

 

川内「近接戦闘の訓練は人一倍受けたからね。」

 

何が近接戦闘だ暗殺術の間違いだろ、急所を的確に狙ってきやがって。

 

提督「名うての暗殺者だったって話だったしな。龍田に聞いたよ。」

 

川内「その名が伊達じゃないって、証明して見せるわ。」

 

提督「されても困るんだが・・・。」コオッ

 

川内「!」

 

川内は気付いた。

 

極光と希光の刀身が、“白く”輝いている事に。

 

 

 

青葉「おぉっと!? 何やら紀伊元帥から霊力が放散されているように見受けられますが・・・。」

 

龍田「・・・いよいよ本気って訳ね。」

 

局長「希光モアイツノ霊力波形ニアワセタ霊力ヲ纏ウ。白ク輝ク刀身ハ、アイツノ霊力ト刀ノ霊力ガ共鳴シテイル証明ダナ。来ルゾ、ヤツノ本気ガ。」ニヤリ

 

 

 

川内「霊力を攻撃転用というのは、些かズルよねぇ・・・。」

 

提督「そーでもねぇだろうが。」

 

霊力使いの常套手段である。

 

川内「でも、勝ちにいかなきゃ。」

 

提督「安心しな。」

 

“近づけもさせねぇから。”

 

その言葉と同時に一挙に霊力が増す。

 

川内「!?」

 

提督「おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

ヒュババババババババババババッ

 

川内「んなっ!?」バッ、ババッ

 

ズドドドドドドドド・・・

 

(光路・一閃!!)ヒュバッ

 直人は霊力刃の弾幕の最後に希光を横に凪いだ。川内に降り注いだのは斬撃の弾幕、更にそこへ希光の横一文字の斬撃が飛ぶ。

それは極光のそれより遥かに巨大で、広範囲を薙ぎ払い川内に迫る。

 

川内「くぅっ!」ダン

 

川内の逃げ場は空中にしかなかった。それが真の狙いだった。

 

提督(五突!!)ヒュヒュヒュヒュヒュッ

 

直人は極光を使って、サイコロの5の目に霊力の槍を飛ばす。

 

提督(取った!)

 

確信した、その時である。

 

川内「フフッ♪」クルッ

 

川内は足場もない空中で更に上に飛び1回転して見せたのだ。

 

提督「は!?」

 

直人は素で驚いた。彼女に異能や特異点は無いと思っていたからである。

 

そう、川内に特異点が無いという彼の予想は間違いであった。それどころかとんでもない異能を隠し持っていたのである。

 

今頃言うのも何だと思うが、疑似洗脳などを行うと改造ランクがワンランク下がる。という欠点がある。彼女も例に漏れなかったのだ。

 

彼女の真の姿、『川内改二』の実力であった。

 

川内「同じ手は食わない、はあああああっ!!」ヒュオオオオッ

 

川内は空中を直人に向けて自由落下で突進する。

 

提督「五突を躱すか、褒めて遣わす。」ニヤリ

 

だがまだ彼は余裕を残す。

(斬技・皐月!!)ヒュバババッ

直人は極光でバツの字で斬撃を放ち、希光でバツの交点に霊力の槍を飛ばす。

 

槍の先端と斬撃の両端を結ぶと四角錐に、頂点が五つになるので「皐月(5月)」である。

 

川内「はっ!」ババッ

 

しかし直人の渾身の対空迎撃さえも、彼女は空中を飛んで回避して見せた。

 

提督「くそっ!」(十文字!)ヒュヒュッ

 

さらに十の字に斬撃を飛ばすもこれまた回避された。むしろその斬撃のせいで、川内は直人の直上を『飛び越えた』。

 

提督「なっ・・・!?」

 

川内は全く想定外の、上面逆進背面展開をやってのけたのである。

 

川内「ふふっ。」スタッ

 

提督「宜しい、本懐である。」カッ

 

直人は希光を鞘に納めて一瞬で180度その場で反転、そのまま一気に距離を詰める、僅か4mをそれこそ一瞬で詰める直人の敏捷さは並外れていた。縮地の奥義を彼は会得していたのだ。

 

川内「!!!!」

 

身構える隙も与えない高速の動きは、どの艦娘にさえ不可能の芸当だった。

 

提督「ワン!!」ピッ

 

 

ズバァァッ

 

 

川内「くああああ――」

 

一撃加え直人は一旦すり抜け、川内の背後で再び進行方向を反転させる。

 

提督「ツー!!」ヒュピッ

 

 

ズバアァァァァァン

 

 

川内「――ああああああっ!!」

 

そしてもう一撃、そのまま川内の脇をすり抜ける。

 

この間、僅か0.8秒

 

提督「ふぅーーー・・・。」ズザザザザザァァァァーーーッ

 

直人は地面に足を立て減速しつつ鞘に刀を納刀する。

 

提督「我流、燕返し。」チャキン

 

川内「っ・・・。」ドシャアアァァッ

 

 

 

青葉「え・・・あっ・・・決まりました!! 勝者、紀伊元帥!!」

 

局長「フッ、流石ダナ。」

 

龍田「そうねぇ。」

 

青葉「お互いに死力を尽くした一戦でした!! 二人ともお強いですね。」

 

龍田「そうねぇ、空中を飛べるとは、川内も中々侮れないわねぇ。」

 

 

~そしてやっぱり観客席~

 

金剛「イエーッスヴィクトリィィィーーー!!」

 

五十鈴「あっちゃぁー、負けちゃったかぁ・・・。」

 

皐月「やっぱりすごいね、司令官は!」

 

文月「うん! 凄い凄い!」

 

 

~賭博サイド~

 

木曽「スゲェな、司令は・・・。」

 

雪風「やりました!」

 

川内サイド(やっぱしな・・・。)

 

伊達に幸運艦ではない、それが雪風である。雪風の幸運は、それに便乗した者にまで分け与えられるという。その一端が、垣間見られる出来事だっただろう。

 

 

~達観サイド~

 

神通「ですよねぇ・・・。」

 

天龍「だろうなぁ・・・。」

 

伊勢「まず勝つね、提督。」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

4人揃って9文字のコメントである。

 

神通「でも、あれだけのことをやるってことですよね??」

 

天龍「ない、絶対ない! ・・・とは言い切れないのが辛い・・・。」

 

伊勢「流石に竹刀だろう。」

 

日向「あるいは素手かだな。」

 

4人「そうなることを祈ろう。」

 

まぁ、そうなるな。

 

 

 

川内「相変わらず・・・馬鹿げた強さね・・・。」

 

提督「お前が言うな、空中飛ぶなんて聞いてねぇぞ。」

 

川内「あー・・・やっぱり気付かれちゃったか。まぁ言ってないからねぇ。」

 

提督「む・・・。」

 

まぁそりゃそうだが、と言葉に詰まる直人だった。

 

青葉「お疲れ様です、お飲み物どうぞ!」

 

差し出したのはスポーツドリンクの入った水筒である。

 

提督「ありがと・・・」ゴクゴク

 

青葉「流石に皆さんあれはやりませんよね?」

 

全員が聞きたいであろう事を聞く辺り、流石パパラッチである。

 

提督「うーん、取り敢えず全員相手して見てからに依るけど、取り敢えず真剣じゃなく木刀なのは間違いない。」

 

青葉「ですよねー・・・。え? なんで木刀?」

 

聞いてみると答えはシンプルだった。

 

提督「竹刀だと何本折っても足りん。」

 

青葉「・・・」←絶句

 

川内「だ、だろうね・・・。」

 

つまりそういうことだった。

 

 

 

最初の全員の反応からお察しの方もいたかもしれないが、その後順に試した結果は、近接武器を持った者を除いて散々だった。

 

全員基礎に近いところまではやれるのだが、そこから先がほぼなかった。

 

但し、一部に完全に適応できる可能性のある艦娘はいないでもなかった。そのせいで終わった後はフラフラだったが。

 

その適応出来そうな艦娘も一人ではない。数名いる。

 

 

 

提督「はぁっ!!」ヒュッ

 

 

ピタッ

 

 

黒潮「うっ!?」

 

提督「こいつら~、武器使って素手の俺に負けたら割と話になってないぞ。」

 

はい、長刀や短刀使って素手に勝ててません。割と情けない話である。

 

黒潮「うぅ~・・・面目ないなぁ。」

 

提督「次!」

 

朝潮「お願いします。」

 

朝潮か。

 

提督「おう。来い!」

 

朝潮「はいっ!」ダッ

 

朝潮は素手で直人の懐を目指し一挙に距離を詰める。

 

提督「単純だ、ハッ!!」

 

直人は脇から右の拳を放つ。

 

朝潮「フッ!!」カクッ

 

しかし、朝潮は駆逐艦特有の小柄さ(と言っても身長140ほどあるが)を使い、かがんで躱して見せた。

 

提督「うぐっ!?」しまっ――――――

 

懐は完全にがら空き、その懐を埋める様に朝潮が入り込む。そして右アッパーが・・・

 

 

ズガアアァァァッ

 

 

提督「ガフッ!?」

 

 

ザワザワッ

 

 

直人はモロに一撃を貰った。気付けばこれが艦娘がこの近接戦闘演習にて初めて与えた痛打だった。

 

ギャラリーがざわつくのも道理だろう。

 

提督「ぐううっ!?」ドシャアアァァッ

 

実は素手で相手しているが、そこまで得意ではない。

 

精々見様見真似のマジカル八極拳もどきが使える程度である。(え

 

朝潮「どうしました、素手ではこの程度ですか?」

 

提督「ほう・・・言うねぇ?」

 

立ち上がりながらそう言う直人。

 

提督「ここまで相手した奴がアレだったから少々油断したが、やるな。」

 

朝潮「私は戦う術に関して、日々研鑽は惜しみませんから。」

 

提督「そうか、では仕切り直すか、少々芸を見せてやろう。」

 

朝潮「では、参ります!!」キッ

 

朝潮は先程より鋭く殴り込む。

 

提督(狙い通り、朝潮は一撃必殺型の速戦系ナックラーか!)ニヤリ

 

朝潮「ハッ!!」ヒュバッ

 

凛とした声と共に放たれる右ストレート。だが・・・

 

提督「ハッ!!」ヒュバッ

 

直人も右ストレート、しかしクロスカウンターではなく朝潮の拳を狙った。

 

朝潮「っ!?」

 

敏感にそれを悟った時には既に遅かった。

 

 

ガッ・・・ズドオオオオォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

朝潮「あああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

朝潮は一撃で吹き飛ばされた。直人が右腕から魔力と霊力の複合したエネルギー流を、拳から勢いよく叩き付けたからである。

 

一時に狭い範囲に膨大なエネルギーを叩き付けた場合、この複合エネルギーの時はエネルギージェット噴流が発生する。朝潮はその噴流で弾き飛ばされたのである。無論ノーダメージじゃ済まされない。

 

朝潮「く・・・う・・・。」

 

提督「若干自信過剰が過ぎた様だな。次!」

 

しかしあの動きとキレ、もの凄かったな。

 

そんな感嘆と共に、審査を続けていくのであった。

 

 

 

電「やああぁぁっ!!」ヒュバッ

 

電が使ったのは長刀だった。が

 

提督「筋はいいが太刀筋ブレ過ぎ、出直せ!」ピッ

 

直人はその木刀を指一本で止めた。

 

電「はにゃああああああっ!?」

 

 

・・・カラァァァーーーン

 

 

止めるどころか直人はその木刀を吹き飛ばしてさえ見せた。

 

電「・・・。」ヘタッ

 

指の先から指向性を持たせた霊力を放出して勢いを止めただけの簡単なマジック、ガンド撃ちの霊力版である。勢い余って木刀を吹き飛ばしたが。

 

提督「おいおいこれ位でへたり込むなよ・・・。」

 

直人本人にすれば全力の欠片も無い程度である。

 

時雨「いや、ガンド撃ちは無茶苦茶だと思うよ? どのレベルまで出来るの?」

 

電の前に出て来たのは次に試験する時雨だった。

 

提督「そうだなぁー、やったことはねぇけどインフルクラスの高熱出させてベッドの上でうならす位は出来る、と思う。」

 

時雨「それ相当な威力だよね?」

 

なんで魔術知識こんなに豊富なんだ。因みにガンドというのは、所謂簡単な呪術の一種である。特に彼の様に指先からそれを放つ使い方をガンド撃ちと言う。因みに普通できる事はせいぜい風邪と同じような症状を付帯する程度である。

 

因みに攻撃に使うと拳銃並の威力があるが、直人のレベルならマグナムクラスである。

 

提督「かもなぁ。電、大丈夫?」

 

電「あ、はい、大丈夫なのです。」

 

時雨「あっちで休んできたら?」

 

電「はい、そうするのです。」

 

電はそう言って立ち上がり、ギャラリーのほうに戻っていった。

 

時雨「さて、僕の魔術の事はもう知ってるよね?」

 

提督「・・・あぁ。」

 

時雨「あれを使ってもいいけど、僕は僕の持つ実力の“全て”で相手になろうと思う。」

 

提督「ほう。」

 

掌を返せばそれは、あんなものは序の口という事である。

 

時雨「始めよっか。」ゴオオオッ

 

提督「・・・来るといい。」

 

直人は身構える。無論素手だ。

 

ここで時雨の能力についてざっとおさらいしよう。

 

時雨の主な戦闘能力は魔術で賄われている。直人の見立てであれば相当な魔術の素養がある。

 

そして思い出してほしい・・・時雨は、「指ぬきグローブをはめている」。

 

その指ぬきグローブの甲は、硬化のルーンが浮かんでいた。ルーン魔術の一つで、北欧に由来を持つこの時代希少化した類の魔術である。

 

提督「魔力・・・!」

 

時雨「やっ!」ヒュッ

 

一瞬で間合いを詰める時雨。

 

提督「ぬっ!」バッ

 

直人は一気に後ろに飛び退る。

 

時雨「ふっ! ふっ! はぁっ!」ヒュッヒュッヒュッ

 

時雨はそれを追いつつ素早くパンチを繰り出していく。

 

提督「・・・!!」スススッ

 

それを的確に回避して行く直人、表面上は時雨が有利に見えるが、実はかなり余裕であった。

 

時雨(一筋縄ではやっぱり行かない、ならば!)「はああああああっ!!」

 

普段の大人しそうな風貌からは想像もできない凛とした声と共に拳から放たれたのは、全てを押し流す大海の荒波。

 

提督「メイルシュトローム!?」バッ

 

慌てて魔術障壁を展開しようとするが、遅かった。

 

提督「ぐうううううううう!!!」ザッバアアァァァァァァーーーーン

 

 

 

川内「へぇ、やるねぇ。」

 

雷「・・・時雨って、凄かったのね。」

 

電「なのです。」

 

摩耶「おいおい、あいつ、なにをやった!?」

 

天龍「・・・種の見えない手品か、しかし時雨が押してるな。」

 

大淀「あらぁ~・・・二人とも全力ですね。」

 

観客衆は時雨の実力に唖然としていた。まぁそうだろうが。

 

 

 

提督「ぐううううう!!」

 

時雨「やあああっ!!」キュイイイイイ・・・

 

更に時雨が氷の魔力を放つ。その魔力は渦を巻き、水を凍らせていく。その一撃は大海を凍てつかす覇道の一撃。

 

提督「何―――ッ!?」カチカチカチ・・・

 

 

カキイイィィィーーーー・・・ン

 

 

時雨「ふぅ。」

 

(まさか氷漬けにされるとはな。と言うか、魔術を使うんじゃないよお前さん。)

見事氷中に閉じ込められた直人、だが思いの外冷静である。

「トレース・・・!」

時雨も追撃とばかり更に魚雷型ミサイルを投影する。

「これでトドメだよ。」

 

(・・・おおっと、流石にやばい。でもこれ不解の魔術がかかってねぇな。なら溶かせるし錬金行ける!)コオオオッ

直人は瞬時に錬金術式を展開し、氷を錬金し始める。

「撃て!!」

時雨の一声と共に放たれたミサイルは13発。

(間に合え!!)

 

ズドドドドドドドド・・・

 

時雨(獲った!)

 

 

ザワワッ

 

天龍(獲られたな・・・)

 

龍田(だめね・・・)

 

川内(そんなことが・・・)

 

金剛(提督・・・!!)

 

大淀(だめですね・・・。)

 

 

ゴオオオオオ・・・

 

 

時雨「・・・。」

 

煙が・・・

 

時雨「・・・?」

 

徐々に・・・

 

時雨「っ!!」

 

晴れる・・・

 

観客「!!」

 

 

 

ヒュッ

 

時雨「うっ―――!?」バッ

 

時雨が煙の中から飛んで来た白金剣を紙一重で何とか躱す。

 

提督「間一髪、だな。」ババァァァァァァァァァン

 

直人はしっかりと立っていた。多少黒ずんだ軍服を着て。いつも通りの余裕を含ませた笑みを湛えて。そしてその突き出された右掌の先には、銀色の液体の様な物が浮かんでいた。

 

時雨「そんな・・・どうやって・・・?」

 

提督「あの氷を錬金しただけさ。水銀にね。」

 

時雨「水銀・・・。」

 

 水銀は常温だと液体になる。金属と液体両方の特性を併せ持った唯一にも等しいだろう物質であることを知ってる方もいる事だろう。

やったことは単純で、錬金した水銀を弾頭に叩き付けただけ、あとは水銀膜を張って出来るだけダメージを抑えただけである。信管を発動させるのであればそれで十分である。

 

提督「甘く見たツケだな。一時とはいえ俺を圧倒したことは褒めて遣わす。が、」ヒュッ

 

時雨「!!?」(消えた!?)

 

直人は驚くべき機動をした。100m以上ある距離を一挙動で詰めたのである。

 

ズババッ

 

時雨「ぐあぁぁっ!!」

 

そして正面から横薙ぎに、背面に抜けてその背を下から上に薙いだ。

 

(我流二刀十字斬・改。)シュウウゥゥゥゥン

 

直人は呼集していた白金剣を戻す。その瞬間時雨も崩れ落ちた。

「硬化のルーンが陽動とは恐れ入った。しかも拳からあのような魔術の使い方、一流以上だ。だがまぁ、今度からは人前では使うな、魔術は秘匿されるべきものだ。いいな?」

 

「う、うん・・・。」

時雨に釘を刺す事も忘れない直人であった。

「御託はいいから・・・」

その横からとんでもない勢いで突っ込んでくる艦娘が一人。

「ん―――!?」

 

「早くやるっぽおおおおおおおおおい!!!!」

時雨との激闘に中てられ、焦れて突っ込んできた夕立であった。

「少しは待つことも覚えないと・・・」グイッ

直人は夕立の一撃を躱すと夕立の襟首をむんずと掴む。

「えっ。」

 

「そおおおおおりゃああああああああ!!」

 

ズドオオオオォォォォォォォーーーーーン

 

「キュゥ~~・・・。」クタッ

一本背負い投げ、一丁上がり。

 

提督「こうなるぞ?」

 

夕立「あ、あいぃぃぃ~~~~・・・っぽい。」ガクリ

 

 いくら徒手での格闘技が苦手と言っても、一撃でダウンさせるだけの実力は、直人にもあるのだ。じゃ無ければ初めて海に出た頃を生き抜くのは困難だったろう事は必定である。因みに土方仕込みであったと言う。

 

(ま、夕立はそれはそれで筋はいいが、相手の状況を把握できる能力に秀でるようだ。)

そう評価する直人でした。

 

因みにヘロヘロになった原因の人は時雨だったり他の面子ではない。大淀も審査はしなかった為除外される。実は・・・

 

ガッ、ガッ、バシッ、ズドッ、ドムッ・・・

 

提督「ぐ、ぬううう!!」シュシュッ

 

鳳翔「まだまだ、ですね!」シュッ

 

ズドムッ

 

提督「カハッ・・・!!」

 

ドッ・・・

 

直人は膝を突く。

 

鳳翔「素手での戦闘も、少し学ばれては?」

 

提督「いや、中々向いてなかったんですよ・・・ゲホッゲホッ・・・」

鳳翔さん、なんと空手でなら有段者レベルの強さでした。そりゃ無理である。

「ならばせめて短刀ならどうですか?」

 

「それなら行けます、けどね・・・。」

結局直人は両手を上げたのだった。

 

 

 

天龍「・・・マジかよ。」

 

龍田「提督が降参するとはねぇ・・・。」

 

軽くのされた二人もこれには驚いた。直人と鳳翔の素手の戦闘に於ける相性も加味して評価する必要もあるが。

 

川内「・・・空母?」

 

赤城「空母ですよ。ああいう戦い方が出来たらカッコいいでしょうねぇ・・・。」

 

加賀「まず似合いませんよ、蒼龍さんなら中々いい感じでしょうけれど。」

 

赤城「―――今日は辛口なんですね・・・。」

 

観客(過去に敗北歴有り)の面子などは衝撃が大きかっただろう。まさか鳳翔が直人に勝つなんて下馬評ではまず出ないであろう組み合わせである。

 

柑橘類「お艦・・・マジか・・・。」

 

勝った当人の航空隊長も唖然である。

 

まぁ、最後フラフラになったのは大体この人のせいでした。そしてもし鳳翔を怒らせればこの二の舞になると、艦娘達も覚悟したのでありましたとさ。

 

 

 

何にもめでたくねぇよ!!(直人談)




※川内のステータスが更新されました※

艦娘ファイルNo.69

川内型軽巡洋艦 川内改2

装備1:20.3cm(3号)連装砲
装備2:20.3cm(3号)連装砲
装備3:零式水上偵察機(958空)(対空+2 爆装+4 対潜+3 索敵+6 命中+2)
装備EX1:隠密作戦用着(回避+10)

土方が嶋田から仲介されて直人に託した艦娘。8人の中で唯一横鎮預かりではない。後に夜戦ジャンキーでもあり夜戦をその本分とすることから夜闘将と呼ばれる。
元は独立監査隊諜報部内で随一の技量を誇る最強の暗殺屋で、独立監査隊上層部の手によって疑似洗脳と擬似記憶置換の施術を施され、裏で暗躍していた。
独立監査隊独自のルートで入手した装備を持っており、それをそのまま近衛艦隊が譲り受ける事になった事はある意味での皮肉であろう。
嶋田の命により、『紀伊直人が反抗した場合即刻始末せよ』と言う命を受けて横鎮に送り込まれ、嶋田の直人殺害命令を受けそのまま近衛艦隊に潜り込む事に成功し着任2日目に動き出すと、見回り中の直人を暗殺せんと試みるも失敗し逆に捕縛、翌日疑似洗脳等の解除装置の実験台に供され、元の人格と記憶、そして力を取り戻す。
自身の戦闘術は超一流であり、暗殺を試みた際は一時互角に競り合い、また格闘戦技講習のエキシビションマッチでは、本来の力をフルに生かして縦横に立ち回って見せた。が、元々暗殺術だったものを発展させたものであった為今一歩で届くことは無かった。
空中跳躍と言う稀な能力を持ち、これを使用した際の機動力は他に類を見ない。
速度でも火力でもなく、機動力に特化した艦娘と言うもの自体が珍しいのも事実である。


川内固有スキル

空中跳躍 ランク:A+

ある世界には魔力を1カ所に固定して、それを足場にジャンプする魔術師がいると言うが、こちらはその霊力版で、沢山の霊力子を1カ所に固着させ、それを足場にして空中で跳躍を行う。夜戦で使えば隠密戦闘用着と併せて、闇に溶け込んで空中から砲撃が出来るというある種のチートである。
疑似洗脳等で一度封印されたが、解かれた事で封印も一緒に解けた。

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