異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、3日連続で睡眠時間削った強行スケジュールをやった天の声です。

青葉「ご無理なさらないで下さいよ? あ、どもー、恐縮です、青葉です!」

友人宅訪問と近所の祭りに行ったのね、眠いのなんのったらありゃしねぇ。

青葉「ちゃんと寝て下さいね?」

分かってます。さて今回も独自設定の方を紹介していく訳ですが、今回は超兵器級深海棲艦が生まれる原因ともなった兵器、『超兵器』について解説していきます。

この作品に於いては独自解釈によって超兵器の設定が組まれています。

そもそもなぜ超兵器と言うものが作り出されたのか、発端は1932年に遡る。

日本の富士山系で、日本が採掘作業を行っていた時のこと。ある坑道の奥から、当時の科学では解明出来ない未知の動力機関が発見される。

極秘裏に行われた調査の結果、当時の艦艇用機関でさえ到底太刀打ち出来ない程のパワーがある事が判明、日本はこれを軍事転用する事に決め、これを用いた最初の超兵器戦艦、播磨が建造された。これ故播磨は、世界最初の超兵器と呼ばれる事になる。(当時はまだ“超戦艦”と呼ばれていた。)

燃料補給も無しに底無しの膨大なパワーを生み出し、分解しても全く変わらずエネルギーを生み出し続けるその機関を用いた最初の兵器が超兵器だったことから、超兵器機関と後に便宜上名付けられた。それは人類の夢を実現する、文字通りの永久機関であった。

播磨の登場に戦慄した列強各国は、直ちに自国領内の火山帯を採掘調査、超兵器機関を掘り当てるとそれを使った超兵器を作り上げると言った形で、超兵器建造ラッシュが起こった。

1938年、第2次大戦勃発と同時に、各国の超兵器は行動を開始する。

ナチス・ドイツ海軍のシュトルムヴィント級は、大西洋を荒らしまくり連合国商船を尽く破壊、イギリス海軍の超巨大潜水戦艦ドレットノート級も通商破壊を行うと言う端的な言葉からも、超兵器が全面投入されたことは想像に難くない。

41年の日本宣戦からは、元祖超兵器のプライドをも賭けた日本軍が参戦、アメリカ軍の超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイターや、超巨大高速潜水艦ノーチラスなどと激闘を繰り広げた。播磨が太平洋を股に駆けて奮戦していたことは以前榛名が語った通りである。

このような激闘の中で超兵器は徐々にその数を減らし、1945年8月15日、遂に新造されたものでは1隻の超兵器も残らぬまま、戦争は連合国の勝利に終わった。超兵器機関発見の当時はまだ帝国主義全盛の時代であり、軍拡は基本であった。故にこうした発見は全てが軍事利用されてしまった。

超兵器機関の正体とは元々、かつて存在した超古代科学文明に於いて、都市の地下に設置されエネルギーを街に供給する、一種のナノマシンで出来たエネルギープラントであったに過ぎない事が、戦後の研究で明らかとなっている。

それを知らぬ内に兵器転用していたのが、超兵器であった、と言えるだろう。

余談だが超兵器は「超常兵器級艦艇」の略称で、縮めて超兵器もしくは超兵器級と呼ばれており、「超兵器級深海棲艦」と言う名称はそれに依る。

こんなとこっすかね。

青葉「お疲れ様です。」

うん。因みに第1部はこの章からではなく次の章からになります。

この章は序章の別伝という事で、14章の時のサイパン司令部の様子という事になります。

青葉「私の出番はあるんですか?」

忘れて無かったらね。

青葉(忘れられてたんだ・・・。)

ではどうぞ。


第14章別伝~主将無き司令部~

5月25日午前11時14分 提督執務室

 

 

大淀「ふぅ・・・。」トントン

 

大淀は直人がいつも使っている執務机で、書類処理をしていた。今しがた片付いたところであったが。

 

榛名「大淀さん、この書類のこの部分は、これでいいんですか?」

 

大淀「ええと・・・えぇ、これで大丈夫です。」

 

榛名「ありがとうございます。」

 

秘書艦席には榛名が座って、普段金剛が処理している何のたわいもない資源管理系の書類などの重要度の低く誰でも処理出来る類の書類を片付けていた。

 

 

コンコン、ガチャッ

 

 

雷「近海警備から戻ったわ!」

 

やって来たのは近海警備部隊第3班旗艦、雷であった。警戒任務から戻った旨の報告である。

 

榛名「お疲れ様です、次の当直組に出発を伝え、休んでいいですよ。」

 

雷「分かったわ! お疲れ様!」

 

榛名「はい、お疲れ様です。」ニコリ

 

微笑みながら榛名も労いの言葉をかけ、それを聞いた雷も去っていった。

 

榛名「・・・ふぅ。お姉さんは普段こんなにお忙しかったのですね。やってみて分かりました。少しも疲れを見せずに・・・。」

 

大淀「あら、金剛さんも普段それなりにお疲れでいらっしゃいますよ?」

 

榛名「え、そうなんですか?」

 

そう言って見て分かるほど驚く榛名。

 

大淀「金剛さんは普段、皆さんの前では疲れている様子を見せようとはなさいません。私達だけの時ならまだしも、ですが。」

 

それが総旗艦として気を付けている事だと、金剛に大淀が語っていたのだと言う。

 

榛名「・・・お姉さん・・・。」

 

大淀「戻ったら、榛名さんからも言ってあげて下さい。あまり無理をされると、金剛さんのお体にも障りますから。」

 

本人がいないからこそ明かせる大淀の心配に、榛名は憂いた。

 

他ならぬ自分の姉だからである。

 

榛名「分かりました。お話しする様にします。」

 

きっぱりと言い切ったが、どこまで通じるかは分からない榛名であった。

 

 

 

5月25日午後2時56分 艦娘寮駆逐・軽巡寮

 

 

白露の部屋

 

夕立「もうすぐおやつっぽい?」

 

そんな事を切り出してみる夕立、この日白露型艦娘は全員集合していた。

 

白露「そうねー、何食べる?」

 

時雨「僕、間宮アイス券、5枚持ってるんだけど、どうする?」

 

4人「えっ!?」

 

夕立「なんでそんなに持ってるっぽい!?」

 

時雨「活躍してくれたからって提督から貰ったんだ。」

 

論功行賞としての意味もあるらしい。

 

夕立「白露型全員で行くっぽい!」

 

時雨「そうだね、それに賛成だ。」

 

白露「いいねそれ、そうしよう!」

 

夕立「じゃぁ誘いに行くっぽい!」

 

白露型は提督不在でも本調子です。

 

五月雨「ふんふふ~ん♪」

 

 

ガッ

 

 

五月雨「ふわっ!?」

 

 

バッタァーーン

 

 

重い段ボールの角に躓いてこける五月雨を含めて。

 

 

 

長良の部屋前

 

由良「うーん、いないのかな姉さんは。」

 

名取「どうしたんですか? 由良ちゃん。」

 

由良「ちょっと姉さんに用事があって何度もノックしてるんだけど、返事がないのよ。」

 

名取「それなら・・・お昼が終わった後、司令部の外に出る姉さんを、見ました。」

 

由良「またトレーニング・・・出直しましょうか。」

 

長良さんは日々研鑽を欠かさない人のようです。

 

 

 

朝潮の部屋

 

朝潮「160・・・161・・・162・・・」

 

こちらもトレーニング中の朝潮。

 

スクワットのようです。

 

 

コンコン・・・

 

 

朝潮「170・・・ん? 誰でしょう?」トテトテ

 

朝潮は肩にかけたタオルで顔の汗を拭いながらドアを開ける。

 

満潮「・・・はぁ、今度は何をやってるのよ・・・。」

 

ちょっと呆れすら見せる満潮が来ていた。

 

朝潮「長良さんを見ていて、私も少しでも鍛えた方がいいのかなと思ったから。」

 

満潮「はぁ・・・鍛え過ぎは逆にダメらしいから、気を付けなさいよ?」

 

朝潮「そうね・・・。で、どうしたの?」

 

満潮「大したことじゃないけど、おやつでも一緒にどうかなと思ってきたのよ。」

 

この時間帯駆逐艦娘が思いつくのは大抵おやつの事である。

 

朝潮「それなら私が間宮アイスの券を2枚持ってるけど、どう?」

 

満潮「そうね・・・間宮さんの所に行きましょ。」

 

朝潮「じゃぁ早速行きますか。」

 

因みに朝潮には普段頑張っていると言う理由で渡された様子。士気高揚かよ。

 

 

 

午後3時11分 造兵廠内

 

 

明石「あづい~~~・・・」

 

日本で言えば梅雨前な訳だが、緯度が日本より南な為気温条件が変わる上、ほぼ密閉空間の造兵廠ではその材質も相まって熱が籠りやすい様子。

 

水色のタンクトップにツナギと言う格好だった。

 

局長「マァ確カニ暑イナ。」

 

暑い原因は貴方でもあるぞ局長。と言うのは局長が機械動かしている為。

 

明石「まぁ弾薬作らないといけないのは分かりますけど・・・。」

 

局長「ツイデニ直人ノ分ノ弾ヲ作ッテヤロウト思ッテナ。」

 

直人が心置きなく紀伊の艤装火力をフルバーストできる秘密がここにあった。

 

局長「ソレニ、直人ノ為ニ新シイ武器モプレゼントシテヤロウト思ッテルンダ。」

 

明石「だから金属加工までやってたのね・・・。」

 

余計排熱がやばいパターンでした。

 

 

 

同時刻 技術局

 

 

荒潮「戻ってこないわね局長・・・。」

 

ワール「まさか本当に造兵廠で作業中?」

 

雷「許可降りたのね・・・。」

 

如月「訓練で髪が傷んじゃったわね・・・」

 

話の流れをぶった切っている様に見えて独白なので問題のない如月。

 

ワール「はぁ・・・ここの機材じゃ効率は今一つだけどねぇ・・・。」

 

雷「まぁ、いいんじゃない?」

 

荒潮「ね~。」

 

如月「あとでしっかりケアしないと・・・」

 

ブレない如月であった。

 

 

 

大淀「こうやる事が無いと、流石に暇ですね。提督のお気持ちも分かります。」

 

榛名「そうですね・・・。」

 

提督執務室では榛名が大淀と二人で話していた。

 

しかし、この二人に暇を与えるほど、現実は甘くない・・・

 

 

 

午後3時24分 サイパン島南西海面

 

 

皐月「静かな海だねぇ。」

 

文月「ねー。」

 

長月「まぁこれ位な方が、ありがたいんだけどな。」

 

皐月「だね。」

 

夕方のサイパン西側海域の警備を任される第22駆逐隊、当直第7班は、任務時間も半ばに差し掛かっていた。

 

その時である。

 

長月「それに・・・おい、皐月!」

 

皐月「どうしたの?」

 

長月「空を見ろ。」

 

皐月「空って・・・あれは!!」

 

日も傾いてきた空を飛ぶ深海棲艦の偵察機、サイパン島に向かって一直線に飛んでいく。

 

文月「知らせないと!」

 

皐月「そうだね!」

 

 

 

司令部中央棟1F 無線室

 

 

皐月「“こちら第7班、深海棲艦の偵察機がサイパンに向かってる!”」

 

大淀「なんですって!?発見した場所は?」

 

皐月「“サイパン島南西35km地点だよ。”」

 

大淀「分かったわ、ありがとう。」

 

報告を聞いた大淀は、一つ溜息をつくと無線機のチャンネルを変えてマイクに怒鳴る。

 

大淀「サイパン飛行場管制塔!」

 

飛龍「“はっ、はい!!”」

 

大淀「第7班の皐月さんが敵偵察機を発見しましたけど、そっちはどうです?」

 

飛龍「“あ、はい、既に迎撃機が飛び立っています。管制塔のレーダーは凄いですね、位置まで特定できるし、効果範囲も広いので。”」

 

管制塔のレーダー画面には、1つのエネミーマークと、今風に言うならスクランブル発進した友軍機が20機映っていた。

 

大淀「そうですか、それなら防空は安心ですね。」

 

飛龍「“問題は海だと思います。これは哨戒機を飛ばす他ありませんから。”」

 

大淀「そうですね、何か検討しましょう。兎に角敵の偵察を受けたという事は、この基地の場所自体は割れている筈です。艦隊および防御部隊に、臨戦態勢を発令して下さい。」

 

飛龍「“はい。”」

 

飛龍は航空部隊を初めとしたサイパン守備部隊の司令官と、2航戦旗艦を兼任していたりする。

 

何気に主力部隊の一翼を担い尚且つ司令部防衛の二つを兼ねると言う重要なポストである。

 

 

 

サイパン飛行場管制塔

 

 

飛龍「サイパン島全島、臨戦体制に移行、防空部隊配置に付け!!」

 

 

 

神通「臨戦態勢、ですか。」

 

陽炎「臨戦態勢って?」

 

何故お前が一緒にいるんだ陽炎よ。と思ったがお前元2水戦か。

 

神通「我々の場合は、常時出撃/戦闘可能な状態にしておくという事ですね。」

 

陽炎「実質の戦闘配備ってこと!?」

 

素っ頓狂に驚いて見せる陽炎。

 

神通「そうですね、何かあったのは間違いないでしょう。」

 

陽炎「不知火達にも知らせないと!」

 

神通「えぇ、新配属になっていた艦娘達に伝えてあげるといいでしょう。」

 

陽炎「はい、じゃぁ!」

 

陽炎は軽く手を振ると、艦娘寮に向かって走り出したのであった。

 

 

 

明けて26日の午前10時、丁度直人達が買い物をしている頃、鎮守府は物々しい雰囲気に包まれていた。

 

~提督執務室~

 

 

プロロロロロロロロ・・・(上空を飛ぶ編隊のエンジン音

 

 

大淀「なんでこんな時に限ってぇ・・・」ゴゴゴゴ・・・

 

電文を握りつぶして言う大淀、内容はこんなところであった。

 

 

『こっちで皆に1日休み取らせるから、

それまでよろしくー。

 

            紀伊 直人』

 

 

榛名「・・・。」(普段色々されてるお返しを食らいましたね、これは。)

 

それだけではないのだが、この面々の誰しもそれを知る余地はない。

 

臨戦体制への移行に伴い、全艦娘艤装装着済みである。無論それだけではない、全島を挙げての防衛戦準備が行われていた。

 

そして、そんなときに戻ってきた艦娘が一人。

 

 

 

午前12時前 司令部正面水域

 

 

青葉「おやおや? 何やら物々しいですね。」

 

白雪「えぇ、なにかあったみたいですね。」

 

横鎮広報部で近衛艦隊所属の青葉と、なぜかいる白雪。

 

青葉「提督に聞きに行きましょうか。」

 

 

提督執務室

 

大淀「あら? なぜ白雪さんがここに?」

 

青葉「私もいますよ。」

 

大淀「成程。」

 

青葉「あ、提督不在なんですね。それで、何かあったんですか?」

 

大淀「実はですね・・・」

 

 

 

―――司令官代行説明中―――

 

 

 

青葉「成程、敵襲への警戒ですか。」

 

大淀「提督がいない間、司令部は私達で守らなければ。」

 

青葉「ですね。」

 

大淀「貴方達こそどうしてここに? 白雪を連れてくるような用事なのですか?」

 

青葉「いえいえ、こちらのお引っ越しもひと段落ついたので、司令官の御厚意でお手伝いに来て頂いていた白雪ちゃんをお返ししに来たんです。」

 

移転後白雪がいなかったのはそのせい。あと青葉もサイパンへの回航時に同行していなかったりする。

 

大淀「そうでしたか。」

 

白雪「特型駆逐艦白雪、これより戦列に復帰します!」

 

大淀「ありがとう。用事はそれだけですか?」

 

青葉「いえ、提督の様子を密着しようと思ってたんですがね。」

 

大淀「今日は戻ってこないそうです。」

 

青葉「では、待ちましょうか。」(スクープ! スクープ!)

 

青葉型重巡洋艦青葉、やはりブン屋であった。

 

 

 

大淀「でも程々にしておかないと、知りませんよ?」

 

青葉「こ、心得てますって。」

 

 

 

午前12時9分 サイパン飛行場

 

 

バルルルンバルルルルルルルルウウウウウウウウウ・・・ン

 

 

零戦21型と97式3号艦攻の栄エンジンと、99式艦爆の金星エンジンの爆音が、辺り一帯に響き、サイパン飛行場からテイクオフしようとしている航空部隊がおよそ80機。

 

これは飛龍の独断である。

 

 

 

サイパン飛行場管制塔

 

 

飛龍「第二〇一・五〇一・五〇三航空隊各機、順次離陸。指定方位へと飛行し偵察を行え!」

 

第二〇一は、零戦27機からなる戦闘機部隊、五〇一は99艦爆の内の11型27機よりなる艦爆部隊、五〇三は97艦攻27機よりなる艦攻部隊で、飛龍が旧帝国海軍航空隊の番号附与基準に沿って命名し編成した部隊である。

 

太平洋戦争緒戦に於いて真珠湾を奇襲攻撃したこの3機種に与えられた命令は、マリアナ諸島南方方面への偵察任務。

 

3機種それぞれ1機ずつで3機の小隊を組み、27組の偵察隊を構成してそれぞれに偵察を行わせると言うものである。

 

その範囲は、南はニューギニア方面、西はパラオ基地近傍、東はトラック諸島西方海面と幅広く目標としていた。戦闘機を付ける理由はひとえに偵察隊を護衛する為である。

 

飛龍(お願い、提督の為に少しでも多くの情報を・・・。)

 

多聞「果たして、上手く行けばいいな。」

 

飛龍「・・・えぇ。」

 

飛龍には嫌な予感がしていた。敵の基地の場所が分かれば攻撃は出来る。が、その位置が問題となるのであれば、それはお隣のパラオ泊地にも無関係ではないのだから・・・。

 

 

 

1時間半後、全偵察隊は帰路に就いた。一部は敵戦闘機に出くわすも被害は無かった。

 

そして、有力情報は、その内3つの偵察隊から打電されてきていたのである・・・。

 

 

 

5月26日午後9時11分 グアム島北東海面

 

 

陽炎「私達が寝ずの番とは聞いてないよぉ~・・・」

 

不知火「愚痴を言っている暇は、ありませんよ?」

 

陽炎「分かってるわよ・・・。」

 

黒潮「夜までお勤めはなぁ、女が夜更かしはしたらあかへんでホンマ・・・。」

 

陽炎「肌に悪いしねぇ・・・。」

 

陽炎型1~3番艦からなる当直第10班は、この日まさかの寝ずの番。

 

陽炎「臨戦態勢の次は寝ずの番なんてぇ・・・。」

 

不知火「集中なさい、陽炎。」

 

姉に対しての態度とも思えない件、但しこれが普通だったりも。

 

陽炎「ぶぇーう・・・。」

 

不満げな表情を見せる陽炎。

 

破局は突然であった。

 

不知火「はぁ・・・ん!? 推進音5時方向! 魚雷、黒潮!!」

 

黒潮「えっ!? ギリ間に合わ―――――」

 

 

ドオオオォォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

黒潮「くあああぁぁっ!」

 

陽炎「黒潮! 大丈夫!?」

 

黒潮「な、なんとかな・・・けど駆動系をやられてもうた・・・。」

 

不知火「司令部! こちら哨戒10班、黒潮中破につき、撤退許可を求む!」

 

陽炎「一体どこから魚雷なんて――――!!」

 

 

 

大淀「潜水艦の雷撃ですって!?」

 

不知火「“偵察をしていた敵の潜水艦と思われます。”」

 

大淀「前哨戦のつもりかしら・・・分かりました、戻って下さい。」

 

不知火「“了解。”」

 

大淀「・・・こんな時に提督がいれば・・・。」

 

帰投命令を出した大淀だったが、心の内では困惑の度合いを強めていた。

 

 

 

~トラック棲地~

 

 

「ソウカ、敵基地ノ所在ハ掴メタカ。」

 

「“ハイ、如何シマショウカ、泊地棲鬼サマ。”」

 

泊地棲鬼「今ノ内ニ叩イテオケ。ストレインジデルタ33ヨ。」

 

デルタ33「“ハッ。”」

 

 

 

大淀「・・・明日、提督が戻って来るまで、守り抜かなければ・・・。」

 

その決意とは裏腹に、滅びの荒波は、すぐそこに迫っていた。

 

 

 

2052年5月27日午前5時2分 サイパン飛行場管制塔

 

 

睦月「むにゃ・・・」ムクリ

 

管制室でお目覚めの睦月。昨夜は飛龍の手伝いに来てそのまま寝ていたものであるらしい。

 

飛龍「スコー・・・」

 

その傍らで壁にもたれて寝ている飛龍さん、基本常駐しているご様子。

 

睦月「えへへ・・・寝ちゃったかぁ・・・。ん?」

 

ふと睦月はレーダーディスプレイを見た。その瞬間、異変に気付いた。

 

睦月「・・・これって!! 飛龍さん、起きて下さい!!」

 

飛龍「う、うーん・・・あぁ、おはよう睦月ちゃん。」

 

睦月「挨拶なんてしてる場合じゃないですよ! レーダー見て下さい!」

 

飛龍「え・・・?」

 

状況が呑み込めないまま飛龍もディスプレイを見る。

 

画面には、南西と南東の方角から接近する敵機を示す赤いエネミーマークが大量に表示されていた。

 

飛龍「これは・・・! 空襲警報! 睦月も艦隊へ!」

 

睦月「は、はい!」

 

 

ウゥ~~~~~~~~・・・ウゥ~~~~~~~~・・・

 

 

飛龍「サイパン飛行場、稼働全機発進、急いで!!」

 

 

 

午前5時6分 横鎮近衛艦隊司令部

 

 

司令部にも空襲警報の残響が響き渡る。

 

大淀「空襲警報ですって!?」

 

榛名「何事ですか!?」

 

司令部の玄関先で驚く大淀の元に榛名が駆けつける。

 

大淀「分からないわ、訓練の予定なんてないし・・・。」

 

榛名「とにかく防空の準備をしないと!」

 

大淀「そうね、空母の皆さんを起こして来て頂戴!」

 

赤城「既に起きていますよ、大淀さん。」

 

大淀「!」

 

艦娘寮側から、赤城達空母部隊がやってきていた。

 

鳳翔「いつまでも演習という訳にも参りません。私たちの居場所は、私たちで守りましょう。」

 

鳳翔ら空母部隊はこの事態を正確に把握していた。航空戦のエキスパートである自負は、虚構ではない。

 

大淀「・・・えぇ、お願いします!」

 

大淀もその言葉に事態を把握し、決断した。

 

柑橘類「久しぶりに腕が鳴るな。」

 

鳳翔「そうね。私達の力、見せてやりましょう。」

 

何時にも増して鳳翔の表情が引き締まっている。

 

赤松「実戦かぁ、グァム沖以来だな!」

 

加賀「そうね。1航戦の力、見せてあげましょう。」

 

赤松「勝ったらチチもませろよ!」^^

 

平常運転過ぎる松ちゃん。

 

加賀「冗談も、程々にしなさいよ?」ゴゴゴ・・・

 

赤城「まぁまぁ・・・。」

 

赤松「ガハハハハハッ、んじゃ、いくか!」

 

全く怖気づかない松ちゃんと、慌てて加賀を宥める赤城。

 

赤城「そうですね、食べるだけではだめですものね。」

 

自覚はあったらしい。

 

飛鷹「軽空母だってやれるってことを、しっかり見せてあげるわ!」

 

蒼龍「まだまだ1航戦には負けられません!」

 

千代田「お姉に自慢出来る位頑張るんだから!」

 

空母部隊、士気十分である。しかしそこへ突如グアム東端にある砲台から、追い打ちをかける報告が入る。

 

大淀「ん・・・? はい、こちら大淀・・・え!? 沖合に敵艦隊!?」

 

蒼龍「えぇ!?」

 

それは、敵艦隊来襲を告げる一報だった。

 

大淀「はい・・・わかりました、砲撃準備をお願いします。」

 

大淀は即座に指示を出す。

 

赤城「敵大編隊に敵艦隊、どうしましょう・・・。」

 

不安を抑えきれない赤城。

 

榛名「敵艦隊は私達が。」

 

そこに名乗り出たのは、総旗艦代理の榛名だった。

 

大淀「お願いします。既定の防衛ラインに沿って迎撃をお願いします。」

 

榛名「攻撃はしないのですか?」

 

大淀の策に疑問を覚えた榛名。司令部防衛の際には効果的に防御が出来る様、防衛ラインが策定されている。その防衛プランに則ると言う策だったからだ。些か消極的とも取れなくはない。

 

大淀「出来るだけ戦力は温存します。私達の仕事は、提督が来るまでここを守り抜く事です。」

 

榛名「そうですね、分かりました。榛名に・・・私達にお任せ下さい!」

 

榛名は大淀の考えを飲み込み、指示を了承した。

 

そして、各々が各々の責務を全うすべく、出撃してゆく。

 

航空部隊が次々と飛び立ち、水上部隊は一路敵艦隊との決戦の為に進撃する。陸上砲台は既に砲撃を始めている。

 

新たなる戦いの序曲、それは深海棲艦による、司令部への黎明攻撃から始まってしまったのである・・・。


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