異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

16 / 66
どうも、天の声です。

青葉「どもー、青葉です。」ゼェゼェ

・・・どったの青葉ちゃん?

青葉「仕事先へ移動中に急に呼ばないで下さいよ!!」

あー、めんごめんごww

青葉「・・・覚えてやがりなさいよ・・・?」

記憶力悪いからどうなりますやら。

さて、今回の章頭はコメ返しです、やったぜ。

青葉「念願叶うとは思いませんでしたね・・・。」

それです、本当にありがとうございます、幾つか別々の場所にコメント出来るってのが面倒ですが極力全て返していきます。(エブリスタ時代の感謝を忘れない為にそのまま移植させて頂きます、お付き合いください。)


まず一つ目

「ついに飛龍もやって来て……二航戦も出揃いました!」(134ページ)

そうですね、マジで物欲センサーって怖いです。というのは始めたばかりの頃に偶然ポロリと来てしまったお方なんですよね。南雲艦隊の空母(1・2航戦)では最後でしたが。

青葉「初代は2-4に消えてしまったんですよね・・・。」

言わないで・・・黒歴史再燃させるのだけは勘弁。

青葉「あ、はい。」


続いて二つ目

「資材がマッハだ・・・」(132ページ)

何を今更(迫真

青葉「何もない海域でいきなり2個艦隊出撃してるあたりでもうお察しですねこれは。」

ほんとそれですよ、大型艦だらけ過ぎてマッハで消えますよ、一発で勝たないと大損ですはい。


では3つ目

「これぞ夕立無双っぽい~~~☆」(157ページ)

駆逐艦とデストロイヤーは別物ですえぇ。

青葉「・・・あれを見た後だと何も言えないです・・・。」

うちの夕立は最強だという自負が夕立をああさせました。時雨と並んで最強格です、次点の連中もかなりの無双ぶりになる予定です。

青葉「駆逐艦とはいったい・・・」

闇に紛れ完膚なきまでに敵を粉砕する無敵の軍艦、それでよかろうが。

青葉「・・・戦艦は?」

ロマン! 圧倒的ロマン!!

青葉「アッハイ。」


4つ目

「提督も中々頑張っていらっしゃいますね……頭が上がりません(-_-;)
金剛姉様も龍田さん達も、どうかあの人を支えて貰いたいです

PS
飛龍の紹介も見ましたが、今回は多聞閣下もついてくれているのですか……だとしたら、かなりの戦力が期待できそうです(多聞閣下の声が、何故だか石塚運昇さんみたくイメージしてしまう今日この頃。」(シリーズへのコメント)

・・・長いので一つづつ。


『提督も中々頑張っていらっしゃいますね……頭が上がりません(-_-;)』

いやいや、ランカーとかじゃないので、むしろさぼりまくりののろけ提督ですよ。金剛や大淀には痛烈に毎日怒られますえぇ。活動日誌の1日単位の更新量が少ないのもそれが原因です、ごめんなさい。
まぁ、この作品の提督は相当に頑張ります、活躍にご期待ください。


『今回は多聞閣下もついてくれているのですか……だとしたら、かなりの戦力が期待できそうです』

正に正鵠を射ていますね。ただまぁ、あの飛龍の現状では当面出撃も無い感じですね、残念な事に。


『多聞閣下の声が、何故だか石塚運昇さんみたくイメージしてしまう今日この頃。』

ごめんなさいそう言うの詳しくないんで分かりません!ww


青葉「盛大にオチをつけんで下さい提督!!ww」

あはは~wwまぁ声優やら俳優やら全く分からんので仕方ない、余程有名じゃないとね。

青葉「そりゃぁまぁそうですが・・・。」

コメントなどは随時募集中です。こんな感じでコメ返しはするので、ドシドシ色々コメントしちゃって下さいww

青葉「皆様の様々なお声をお待ちしています!」

それでは次の章へと参りましょう。

青葉「どうぞ!」


第14章~直人の反抗~

5月24日(金)正午12時 食堂

 

 

 

グウウゥゥ~・・・

 

 

提督「腹減った・・・」

 

夕立「ねー!」

 

食堂で並んで座る夕立と直人だったが、直人には若干疲れの色が見えた。

 

理由は単純である。

 

 

 

~約30分ほど前~

 

 

提督「おおおおおおおりゃあああああああああああ!!!」ブン

 

 

ギュオオオオオッ

 

 

夕立「絶対に、取るっぽい!!」

 

 

ガシィィッ

 

 

提督「なにっ!?俺の全力の一球が!?」

 

夕立「今度は私の番、ぽおおぉぉぉぉぉ----い!!」ブン

 

 

ギュオオオオッ

 

 

提督「負けるかああぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 

ガシィィッ

 

 

 

村雨「・・・いつまで続くのこれ・・・。内野もうあの二人しか残ってないわよ?」

 

白露「残念だけど、“ドッジボール”じゃ一番じゃ無かったみたいね、悔しい。」

 

時雨「ブレないねぇ、白露姉さん・・・。」

 

電「なのです・・・。」

 

雷「なんの、練習して強くなればいいわよ!」

 

雪風「そうです!」

 

 

 

金剛「駆逐艦があんなに強いナンテ、聞いてないデース。」

 

榛名「姉さん、抑えて抑えて・・・。」

 

伊勢「でも凄すぎるわね本当に・・・。」

 

長月「改めて規格外だな。」

 

菊月「そうだな。」

 

天龍「敵だったら恐ろしいな。」

 

 

 はい、ドッジボールに付き合わされました。チーム提督とチーム夕立の対決です。なおチーム夕立は7人中5人が規格外という、なんとも言い難い様な状況であった。戦略的不利を自覚しながらも受けた辺りは直人も人がいいと言うものだが。

 ことの発端はさらに2時間半前、午前9時にまで遡る。

 

 

5月24日午前9時 提督私室

 

提督「うー・・・ん。」

 

ベッドの上で伸びをする直人、書類は既に完了済みだった為ゆっくりとしていた。

 

 

バタバタバタ・・・

 

 

提督「・・・?」

 

廊下の足音が近づいてくるのを感じ、気になる直人。

 

「っぽおおぉぉぉぉい!!」

 

 

ドッカアアァァァァァァァーーーン

 

 

突如独特な掛け声と共に吹っ飛ぶドア。

 

提督「ファッ!?」

 

夕立「フフ・・・。」

 

やって来たのは最強格筆頭の駆逐艦夕立改2。

 

提督「・・・夕立、ドア後で直せよ?」

 

夕立「わかってるっぽい。そんなことより・・・」

 

提督「ん?」

 

夕立「ドッジボールで勝負するっぽい!!」

 

提督「・・・へ? どうしたやぶからぼうに。」

 

夕立「ドッジボールの対戦相手が見つからないっぽい!」

 

提督「・・・暇だからと言ってドア破壊して襲撃まがいの勧誘やめて? 神通さんに言いつけるよ?」

 

夕立「そ、それだけは勘弁っぽい!?」

 

鬼教官ポジを確立させた神通さん、名前だけでこの効果である。

 

神通「言われなくとも聞いていますとも。」

 

そして当然来ちゃう神通さん。

 

夕立「うへぇ・・・っぽい。」

 

提督「・・・あとで夕立に特別訓練よろしく。」

 

夕立「今日の訓練もう終わってるっぽいよ!?」

 

神通「分かりました。」

 

夕立「そんなぁぁぁぁ!?」

 

提督「フフフ・・・。で? そっちチーム集まってるの?」

 

夕立「いつも一緒にやってるメンバーで行くっぽい。」

 

提督「・・・まいったな・・・。」

 

直人は頭を掻いた。夕立たちがこの所いくつかのチームを相手にドッジボールで運動能力向上に努めている事は知っていたものの、それに直人が付き合わされることになるとは思いもよらなかったのだ。つまりあては無いに等しい。

 

 

 

で。

 

 

 

~金剛の部屋~

 

 

金剛「ドッジボール、デスカー?」

 

ダメ元で集めにかかる直人であった。

 

提督「うん、6人集めないとらしい。ダメかな?」

 

金剛「勿論提督の頼みならOKデース!」

 

提督「ありがとう!」

 

 

 

~食堂の一角にて~

 

 

長月「夕立達とドッジボールか・・・。」

 

菊月「おいおい、正気か提督?」

 

提督「え? なんで?」

 

長月「夕立のドッジボールグループは最強の呼び声すらあるんだ、私達じゃ勝ち目が・・・。」

 

提督「でも暇そうなの集めるしかなくてさ・・・。」

 

長月「・・・わかった、やらずに無理と言うのもおかしいしな。」

 

菊月「・・・仕方ない、共に征こう。」

 

 

 

~艤装倉庫~

 

 

榛名「ドッジボール、ですか?」

 

天龍「相手は夕立か、面白れぇじゃんか。」バシッ

 

金剛「お願いシマス、榛名。」

 

榛名「・・・分かりました、榛名で良ければ、お相手します。」

 

天龍「勿論やるぜ、いっぺんやり合ってみたいと思ってたとこだ。」

 

 

 

~造兵廠~

 

 

明石「いやいやいや! 私じゃ無理ですよ!?」

 

提督「だよねぇー・・・。」

 

局長「私モ遠慮シテオク。」

 

提督「あーたはまだ改造とか色々あるでしょうに。忙しいのに無理は言わんよ。」

 

伊勢「お? 何々何の話?」

 

提督「かくかくしかじか。」

 

伊勢「成程、ならそのドッジボール、私も混ぜて貰おうかな。」

 

提督「ほんとか!?」

 

 

 

てな感じでかき集めた面子だったが・・・

 

 

 

2時間半後、両チームともリーダー以外外野へ追い出され、見事に夕立と直人によるガチ勝負になっていた。

 

 

 

午前11時半 中央棟玄関前

 

 

ギュンバシッギュンバシッギュンバシッギュンバシッギュンバシッ・・・

 

 

12人(際限ないわね・・・。)

 

提督「はぁ・・・はぁ・・・」

 

夕立「はぁ・・・はぁ・・・提督さん・・・強すぎるっぽい・・・。」

 

提督「これではキリがないな・・・ならば、この一球で、決める!!」キッ

 

夕立「!!」

 

直人は大きく振りかぶり、そして・・・

 

提督「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」ブォン

 

満身の力を込めて投げた。

 

夕立「えっ!?」

 

金剛「ジャイロボール!?」

 

時雨「さっきまでより早い!!」

 

夕立「―――“面白いっぽい”。」

 

しかし、夕立は笑みを浮かべ全く退かなかった。自らのプライドに賭けて。それが敵をして『ソロモンの悪夢』と呼ばしめさせた少女の意地だった。

 

提督「いけええええぇぇぇぇぇっ!!」

 

夕立「うぐっ―――!? ぽいいいいいい!?」ズドォォン

 

夕立が受け止めた直人渾身の一撃は、夕立の身体を弾き飛ばすのには十分すぎた。しかし夕立も寸刻とはいえ耐えて見せた。この一点だけでも、称賛に価したのは間違いなかった。

 

そして、ボールの行方は・・・

 

 

 

夕立「うああああっ!!」ズシャアアァァッ

 

時雨「夕立!!」

 

 

タァァァーーーン、ターン、ターン・・・

 

 

金剛「!!」

 

白露「なっ・・・!?」

 

夕立「きゅぅ~~~・・・」

 

一瞬の沈黙が流れ、そして・・・

 

 

 

金剛「ヴィクトリーデーッッス!!」

 

天龍「やったな提督!!」

 

榛名「提督、榛名もお役に立てましたか?」

 

提督「あ、あぁ・・・そうだな・・・。」フラフラッ

 

直人は歩くのもやっとの有様、すぐに膝を突いた。

 

菊月「おいおい・・・」

 

長月「大丈夫か司令官!!」

 

伊勢「今提督の水筒持ってきますね!」

 

はい、熱中病と夕立のボールのダメージです。

 

 

 

時雨「夕立、大丈夫?」

 

雪風「夕立ちゃんでも届かないんですね・・・。」

 

白露「完全に伸びてるわね、技術局へ運びましょ。」

 

村雨「そうね・・・それにしても、提督、強すぎないかしら?」

 

雷「なのです・・・。」

 

夕立側(提督、容赦ないわね・・・。)

 

直人は水筒に入れた水を飲み、夕立は搬送されていきましたとさ。

 

因みにこのあと夕立は技術局に到着するなり即座に目を覚まし、お腹が空いたと言って食堂に行ったところ直人がおり、ちゃっかり隣に座って冒頭に戻る。

 

 

 

提督「そういや今日カレーか。」

 

夕立「金曜日っぽい! カレーっぽい!」

 

回復早い! そしてテンションたけぇww

 

提督「鳳翔さんのカレーいっつも旨いからな!」

 

お前もかい。

 

鳳翔「ふふふ、皆さんによく言われます。」

 

そこにカレーやらなんやらの器を乗せたトレーを持った鳳翔さんが現れた。

 

提督「ありゃま、持ってきてくれたの?」

 

見れば夕立の分もある。

 

鳳翔「お姿が見えましたので。」

 

提督「おおう・・・鳳翔さんみたいな人を嫁に持った男は幸せなんだろうなぁ、きっと。」

 

鳳翔「まぁ! うふふ。」

 

金剛「悪かったデスネー、気が利かなナクテ?」ゴゴゴゴ・・・

 

間が悪すぎる金剛さん。

 

提督「別にそう言う意味じゃない!!」(焦

 

金剛「そうなんデース?」

 

提督「うん、ただ単にふとそう思っただけだよ、誰とも比べてないし、お前と比べるなんて、それこそおこがましい事だしさ。」

 

金剛「・・・ならいいデース♪」

 

夕立(ちょろいっぽい・・・。)

 

鳳翔(ちょろいですねぇ・・・。)

 

柑橘類(ちょろい・・・。)

 

こっそり鳳翔さんの持っていたトレーに乗っていた柑橘類隊長すらそう思うレベルでした。

 

鳳翔「さぁ柑橘類さん? 戻りますよ。」

 

柑橘類「ま、ばれてるよな・・・。」

 

提督「当然だろう。」

 

金剛「提督ゥー、隣いいデスカー?」

 

提督「どうぞー。今日は左右に挟まれるのかぁ、少し狭い・・・。」

 

夕立「美味しいっぽーい!」

 

この日は美女二人に板挟みにされる直人でした、リア充爆発しろ。

 

 

 

その日の夕方、直人は提督執務室に呼び出される。

 

 

 

ガチャッ

 

 

提督「どうした大淀。あれ? なんで明石さん?」

 

明石「ど、どうも。」

 

大淀「関係なかったら呼んでませんよ。」

 

提督「流石に大淀だからな、無駄な事はしないか。それで要件は?」

 

大淀「はい、実は先程、大本営から通信が届きました。こちらです。」

 

大淀が1枚の紙を手渡す。

 

提督「どれどれ・・・」

 

直人はそれを受け取り目を通す。実際内容はこのようなものだった。

 

 

『発 大本営幹部会

 宛 横鎮近衛第4艦隊

 

本文

 

横鎮近衛第4艦隊は、3か月後に行われる大規模作戦に先立ち、作戦予定海面の偵察並びに、敵戦力の漸減を行われたし。

なおこの作戦についての打ち合わせを行うに付き、紀伊直人元帥は出来る限り早い時期に大本営に出頭されたし。』

 

 

 

提督「・・・。」

 

大淀「要約すると、我が艦隊を前哨作戦部隊として投入し、同地にいると推測される超兵器級などを掃滅させる、という事ですね。」

 

提督「・・・はぁ、どうしても厄介払いをしたい訳だ。」

 

明石「正直なところを言います。ワールウィンドさんの性能を見るだけでも、艦娘とはかけ離れた性能です。それに艦娘をぶつけた所で、掠り傷を負わせるのがやっとかと。」

 

提督「それは分かってる。だが艤装に大改修を施したところで結果は見えているだろう。」

 

明石「はい。せいぜい2割増しがいい所です。」

 

提督「・・・つまり、明石は反対だと。」

 

明石「はい。」

 

大淀「我が艦隊の戦力も万全とは言えません。たとえ出撃しても、フィリピンの時の様にはいかないと考えます。」

 

提督「うん。俺も二人に賛成だ。」

 

大淀「では、返信しますか?」

 

提督「いや、しない。返答は俺自ら出向いてする。出頭命令だしな。」

 

明石「しかし危険では?」

 

提督「いざという時は実力行使だ、でなければ何の為の権限だか分からんからな。」

 

大淀「分かりました、何時頃行きますか?」

 

提督「うーん、取り敢えずはサーブ機の改修完了次第だな。」

 

大淀「というと・・・明後日ですか?」

 

提督「いや、突貫させよう。明日夕方には向かいたい。」

 

大淀「分かりました。」

 

 

 

局長「突貫作業ダト?」

 

提督「あぁ。燃料補給も加味して明日の昼頃には作業を終えて貰いたい。飛ぶこと自体には不要な装備は後回しで構わんから、頼めんか?」

 

局長「イヤ、作業自体ハホボ完了シテイル。機銃座ノ追加ニ手間取ッタダケダカラナ。」

 

提督「へ? 機銃座?」

 

局長「アァ。艤装倉庫ニアッタ25mm3連装機銃ヲ1ツ拝借シテ中間銃ヲ撤去シテ旋回機銃ニ、取リ外シタ銃ヲ機首固定機銃ニシテオイタ。万ガ一ノ場合ニモ対応可能ダ。」

 

提督「え!? 艦載機銃積んじゃったの!?」

 

局長「オウ!」

 

やりやがりました。この局長見事やらかしました。

 

提督「じゃぁ残ってる作業というのは?」

 

局長「固定機銃ヘノ回路接続ダケダ、ソレサエナケレバ燃料ヲ入レテスグニデモ飛ベル。」

 

エンジン出力22%増・燃費9.8%向上・重量7.1%減、改造後の性能カタログは性能向上を明らかに示していた。武装搭載等による重心のズレは燃料タンク増設で対応し航続力を向上、要求をクリアしていた。

 

提督「じゃぁ明日早速出る、燃料補給頼めるか?」

 

局長「分カッタガ、テストモマダダゾ?」

 

提督「飛びながらやればよし。」

 

中々のガッツである。

 

局長「・・・ソウイウコトナラ任サレタ。」

 

直人はその答えを聞いて頷くと、技術局を去って私室へと戻っていった。

 

 

 

この時点で、直人、大淀、明石の三人の間で合致していたのは、「作戦実行反対」の意見だった。

 

しかしその日の夜思案していた直人は、その意見とは少し違う結論がふつふつと湧き起っていたのである。

 

 

 

5月25日午前9時41分 サイパン飛行場

 

 

サイパン飛行場では、サーブ340B改造機の低く重みのあるエンジン音が響き渡っていた。

 

提督「ではいってくる。大淀、明石。留守を任せる。」

 

その下には、今まさに乗り込もうとする直人の姿と、随行する護衛役の艦娘、留守を任される艦娘達の姿があった。

 

大淀「はい!」

 

明石「お任せ下さい!」

 

提督「訓練中すまないな神通。恐らく1泊はすることになると思う。訓練は怠りないように。」

 

神通「心得ております。」

 

提督「うん。榛名!」

 

榛名「はい!」

 

提督「金剛不在の間、総旗艦代行を命ずる。」

 

榛名「は、はい・・・。拝命します!」

 

榛名は不安げな表情を改めそう言った。

 

提督「うん、では。いってくる。」

 

大淀「くれぐれもお気をつけて。」

 

大淀と直人は敬礼を交わし、コックピットに乗り込んでいく。

 

金剛「総員搭乗!!」

 

5人「はい!」

 

今回の護衛担当は、金剛・伊勢・天龍・龍田・夕立・電の6人。金剛を除いて近接戦闘に定評がある。無論艤装は携行する。

 

 

 

~サーブ340B改コックピット~

 

コックピットでは、直人が管制塔に向けて連絡を入れるタイミングであった。

 

因みに通常旅客機は機長と副機長で操縦するが、この機体は局長によって一人で操縦するよう改められている。

 

提督「――――管制塔へ、こちら・・・“バルバロッサ”、離陸許可を求む。」

 

飛龍「“管制塔から、バルバロッサへ。離陸を許可します。・・・お気をつけて。”」

 

提督「ありがとう。バルバロッサ、離陸する。」

 

その2分後、直人を乗せたサーブ340B改「バルバロッサ」は、サイパン飛行場を離陸して厚木へと向かった。

 

 

 

~飛行中の機内~

 

金剛「~♪」

 

やたらと上機嫌な金剛さん。

 

天龍「・・・?」

 

やたらといいのでみんなが不思議に思っているほど。

 

伊勢「・・・どうしたの金剛? 妙に機嫌がいいけど。」

 

金剛「ナイショ、デスネー。」

 

龍田(・・・これは、提督と何かあったわね? いい方向で。)

 

日向「まぁ、そうなるな。」(成程な・・・何も言うまい、成り行きを見守ろう。)

 

日向と龍田は察しがいった様子である。

 

電「ほ、本当に飛んでいるのです・・・。」

 

日向「まぁ、“元は”とはいえ、船が空を飛んでいると言うのも、滑稽な話だが。」

 

天龍「お、おう・・・。」

 

まぁ確かにその通りだが。

 

提督「“えー、客室にいる艦娘に連絡。”」

 

そこに唐突に流れる機内放送、全員耳を傾ける。

 

提督「“今日は仕事だけど明日は金剛以外休みにするから、好きに楽しんでくれ。厚木出発は明後日の朝という事でよろしく~”」プツッ

 

夕立「お休みっぽい!?」

 

伊勢「でもなんで金剛さん以外なんだろう?」

 

金剛「“きっと”提督にもお考えがおありなのデース!」

 

日向「まぁ、そうなるな・・・。」

 

一部にバレてるのに擁護を入れる金剛。

 

天龍「急に休みっつったってなぁ・・・。」

 

龍田「買い物でもする~?」

 

天龍「そうだなぁ。」

 

 

 

そんなこんな考えている間に、機は厚木飛行場に辿り着いた。

 

風に乗せて低速飛行(つまり燃料の節約)をしなかった為、所要3時間と少しで到着できたのであった。

 

 

 

午前12時49分 厚木飛行場

 

 

提督「ふぅ~、着いた着いた。」

 

地に足を付け、直人はそう言う。

 

伊勢「お疲れ様です、提督。」

 

伊勢が労いの言葉をかける。

 

土方「紀伊元帥!」

 

提督「土方海将! 迎えに来てたんですか!?」

 

来るとは思っていなかった人が現れ驚く直人、やって来たのは土方海将であった。服装は夏服でもある海軍第2種軍服。

 

土方「遠路ご苦労だったな。」

 

提督「いえいえ、そちらもお忙しいでしょうに。」

 

土方「部下に任せて少しだけ抜け出してきたのだ。君の車をここの駐車場に回してあるから、誰か一人を連れて大本営に行くといい。」

 

提督「残りの5人はどうするのですか?」

 

土方「私の車で横鎮防備艦隊の寄宿舎に、責任を持って送らせてもらう、心配するな。」

 

提督「・・・分かりました。ではそうだな・・・伊勢、一緒に来い。」

 

伊勢「お供します。」

 

金剛「ヘイ提督! ワタシは!?」

 

 

提督「なんというかな・・・うん、口が軽そうで尚且つ何か言われた時逆上しそう、だから駄目。」

 

金剛「そ、そんなこと・・・う~・・・。」

 

否定できず唸る金剛でした。

 

土方「まぁまぁ、一応とはいえ上に対する体面は大事だ、紀伊元帥がそう言うのだから、此処は抑えた方がいいのではないかな?金剛。」

 

金剛「土方サンまで~・・・むー、分かったデース。」(今日の分はきっちり明日返してもらうのデース・・・。)

 

土方海将にまで諭されようやく諦める金剛、しかし心中は微妙にご機嫌斜めである。

 

提督「明後日朝に立ちますので、それまでお世話になります。」

 

土方「おや? すぐ戻らなくて大丈夫なのか?」

 

提督「向こうは大淀と榛名に任せてきましたし、たまには休み位あげないと、皆過労でぶっ倒れた日には目も当てられませんから。」

 

土方「正論だ、では行こう。」

 

提督「はい。」

 

直人達は駐車場で二手に分かれ、直人と伊勢は大本営へ、土方海将と残り5人は横鎮本庁へと向かった。

 

 

 

~直人 ラフェスタ車内~

 

提督「はぁ~・・・幹部会め~、今度は何の用だ・・・。」

 

伊勢「え? 前にもこんなことが?」

 

提督「前回は査問会です。局長の事で呼ばれました。」

 

伊勢「あちゃ~・・・話は通してあったの?」

 

提督「横鎮にはね、それ以外には通さなかった。横鎮経由で伝達する様になってるから。」

 

伊勢「まぁ、それは致し方なしですね。」

 

提督「まぁ今回は作戦についての討議だそうで。それならそっちから来いと言う話なんだが、呼び出すような用事があるらしい。」

 

伊勢「なんでしょうねぇ・・・。」

 

提督「どーせ、碌な事じゃありませんよきっと。」

 

伊勢「ぇぇぇー・・・。」

 

 

~土方 レクサス車内~

 

金剛「む~・・・」

 

電「あの・・・土方さんって、横鎮の長官さん、なんですよね?」

 

土方「そうだが?」

 

電「土方さんも、艦隊を指揮しているのですか?」

 

土方「艦娘艦隊も指揮しているし、自衛隊の護衛艦も指揮している。」

 

電「楽しみなのです! どんな子がいるのですか?」

 

土方「戦艦長門、空母加賀・祥鳳、重巡だと愛宕や古鷹、駆逐艦なら島風や深雪と言ったところか。うちにも沢山の艦娘達がいる。もしかすると横鎮敷地内で会う機会もあるかも知れんな。」

 

電「あるといいですね・・・。」

 

天龍「やっぱ俺もいるのか?」

 

土方「同位体の話か、勿論いるな。」

 

天龍「結構同位体って多いんだな。」

 

土方「どこにでもいるがなぁ。」

 

天龍「マジかよ・・・。」

 

龍田「フフフ。」

 

天龍「あ? どうしたよ龍田?」

 

龍田「別に~?」

 

天龍「お、おう。」

 

 

 

そんなこんな車を飛ばして1時間半程度で、直人と伊勢は大本営に到着した。

 

提督「はぁ~、こんな足労かけさせてまで来させるんだから、まともな用であってくれ・・・。」

 

伊勢「ははは・・・。」

 

直人のぼやきに苦笑する伊勢だったが、大人しく直人についていく。

 

 

 

受付に行くと、23階の小会議室に通された。

 

部屋の中は明かりは付いていたがカーテンが閉じられ、様々な書類や本棚が並んでいた。

 

牟田口「紀伊君か、よく来てくれた。最初は来ないものかと思っていたよ。」

 

提督「・・・曲がりなりにも、上司ですから。」

 

嶋田「なっ・・・」

 

同席している嶋田が声を荒げようとしたが牟田口が制止する。

 

牟田口「・・・まぁいい。かけたまえ。」

 

牟田口の目も、笑ってはいない。

 

提督「失礼します。」

 

彼はその瞳をあえて見ることなく、席に着く。

 

牟田口「さて、君を呼び出したのは他でもない、先の電文の件についてだが、その前にもう一つある。」

 

先の電文の件について――――そこで口を開きかけた直人は、続く言葉を聞いて口をつぐむ。

 

嶋田「どうやら君は戦力面で困窮しているようだ、主に練度の観点に於いてはそれが著しいと聞いた。」

 

提督「・・・龍田ですか。」

 

嶋田「さぁな。」

 

提督「・・・まぁいいでしょう、で?」

 

嶋田「そこでだ、今土方の横鎮預かりの艦娘の中から数隻、貴官に託そうと考えた訳だ。」

 

提督「・・・数と艦種は?」

 

嶋田「重巡2・軽巡2・軽空母1・駆逐艦3だ。詳しい事は土方に任せてある。」

 

提督「・・・ご配慮に感謝します。」

 

嶋田「なに、君は君の仕事をせねばならん、その手助けだと思ってくれればいい。」

 

提督「そうですか。ところで、牟田口陸将。本題へと移りましょうか。」

 

牟田口「そうだな。近くソロモン方面への攻勢作戦が企図されているとの電文は既に読んだな?」

 

提督「それは無論です。SN作戦ですか?」

 

牟田口「そうだ。ソロモン方面に橋頭保を確保したい。」

 

提督「・・・目的こそ違え、やる事は出兵ですか。」

 

心中ではうんざり来ていた。こんな時期に大規模出兵を強い消耗を増大させる事はないと思ったからである。

 

牟田口「だがソロモン方面ともなれば敵の有力な艦隊がいる可能性が高い。超兵器級の存在も想定される状況下だ。そこで―――」

「我が艦隊はその前段階作戦として各司令部艦隊の進発前に敵情強行強襲偵察を敢行し、有力と見做される敵勢力を排除し、本作戦遂行を容易ならしむる事。」

「・・・その通りだ。よく分かったな。」

遮る様に言った直人に感心するような言葉を牟田口陸将が口にした直後、彼は即答する様に言った。

「我が艦隊はご協力できません。」

 

牟田口「!!」

 

嶋田「なに!?」

 

直人は言下にそう言い切った。

 

『作戦への参加拒否』、これが直人の腹案であった。その理由は以下の討議に依る。

 

嶋田「何のつもりだ紀伊元帥! これは大本営からの命令だぞ!」

 

提督「忘れたとは言わせませんよ嶋田海将補。我ら近衛艦隊は大本営からの直接命令であろうと、それを取捨選択できる権限を持つ。全体発令の命令であろうとも、我が艦隊はそれを一蹴する事が出来る権限がある。」

 

嶋田「ぐっ!!」

 

牟田口「では他の司令部の艦隊はどうなる? むざむざ危険な場所に未熟な艦隊を―――」

 

提督「未熟なのは我々とて同じことです。我々はサイパン移転後基礎作りの段階です。防衛態勢も固まらぬ今日では出撃どころか長距離訓練航海すらおぼつきません。海図すらないのですからな。」

 

ここで言う“海図”とは「海底地形図」のことである。

 

牟田口「・・・基盤づくりと訓練にどれ程かかる?」

 

提督「まず以って半年は待って頂く。それ以前に我々は、必要に迫られる何らかの事態が生じ得ぬ限り、作戦することはない。」

 

牟田口「しかし、それは少々長すぎやしないかね?」

 

提督「私からすれば妥当なラインです。」

 

嶋田「紀伊元帥、君は君の勝手な主張を、司令部の基盤固めと艦娘共の未熟さにかこつけて正当化するつもりか!?」

 

伊勢「なっ!!」

 

提督「戯言を・・・。」

 

嶋田「・・・なに?」

 

提督「貴官は何を戯言をほざいておられるのか、と言っています、嶋田海将補。」

 

嶋田「戯言だと―――?」

 

嶋田のこめかみがぴくぴくと震え、次の瞬間怒号が飛んだ。そしてそれは直人と伊勢にとって、到底許容し得ないものだった。

 

嶋田「何が戯言か、艦娘は兵器だ! 兵器に感情はいらん! そんなものは無視して然るべきであろう!!」

 

提督&伊勢「―――!!!」

 

直人と伊勢の心中に激情が沸騰しかけた、伊勢などは拳を握りしめ、今にも掴みかかろうと身を乗り出しかけていた。

 

提督(待つんだ伊勢!)

 

直人は伊勢を左腕で制止し小声で言う。

 

提督(抑えろ伊勢、今此処で激情すれば逆効果だ。頼むから、抑えてくれ。)

 

この時ばかりは膝を屈し頭を地につけてでも頼みたかった直人である。

 

伊勢(・・・はい。)

 

激発しそうになった伊勢を必死に抑えさせた後、直人は嶋田に対して物申した。

 

提督「艦娘は感情を持ち、生殖する兵器であります。そして彼女らは曲がりなりにも人間、それも女性がベースです。彼女らの心は、正当に保護されて然るべきであり、蔑ろにされるべきではありません。彼女ら艦娘達が、訓練によってその技能を向上することが出来る以上、その完熟を待って、我々は行動します。それまで我々は、限りなく危急な事態が生起しない限り、一切作戦行動は執りません。これは我が艦隊の既定方針であります。例え幹部会の命令であろうと、応じかねます。」

 

嶋田「艦娘に人権が適用できるとでも思うのか!? ただ単に心を“持ってしまった”だけの兵器に!」

 

提督「我々は人道に則り、人権を以て彼女らを保護する責任があります。提督たる者全員そうです。それが出来ぬ者に、提督たる資格は無いと断言しておく。仮にそうなのであれば嶋田海将補、あなたもだ!」

 

艦娘達を蔑ろにする発言を続けざまに糾弾する直人、更に嶋田が逆上する。

 

嶋田「貴様っ、上官に対してその様な―――」

 

提督「階級上上官は元帥たるこの私だ! それを弁えて貰おう。必要とあらば、この幹部会の不忠を世間に公表しても構わんが、如何に!!」

 

嶋田「―――!!」

 

伊勢(フッ・・・流石というか、痛快だ。)

 

嶋田は苦虫を噛み潰したような顔をして悔しがる。明らかに嶋田の負けであった。

 

統括してしまえば『横鎮近衛はまだ準備が不足故行動は起こせない。』といった所であった。

 

牟田口「紀伊くん、落ち着き給え。君の意見は了解した、好きにしたまえ。」

 

嶋田「!」

 

提督「了解しました。ではこれにて。行くぞ伊勢。」

 

伊勢「はい。」

 

直人が席を立ち、そのまま伊勢を伴い立ち去る。

 

 

―――バタン

 

 

牟田口「・・・。」

 

嶋田「―――よかったのですか議長? 作戦を強要しなくて?」

 

牟田口「今権限を剥奪した所で、他の近衛艦隊からボイコットを食うだろう。それに、反逆の名目で追討した所で勝てる者はおるまい。」

 

嶋田「は、はぁ・・・。」

 

 嶋田は額の汗をハンカチで拭うが、彼に対する憤りたるや激しいものがあった。

しかし実際には、牟田口陸将の言う通りであった。提督が専用の巨大艤装を保有し、尚且つ数度の激戦を経験した直人ら近衛第4艦隊の練度は、他の艦隊と比べれば目を見張るものがあるからだ。故に簡単に手は出せない。

幹部会と言うものの存在とその力の程を知る彼の狙いは、その持てる力を強固にすることによって、幹部会の束縛をはねつける事だったのである。

 

 

大本営の食堂で昼食をとった直人と伊勢が、横鎮本庁に辿り着いたのは午後3時半の事だった。

 

提督「むー、若干道が混んでた・・・。」

 

伊勢「遅れてしまいましたね、少し急ぎましょうか。」

 

提督「取り敢えず司令長官室に行こうか、多分いるでしょ。」

 

伊勢「そうですね、行ってみましょう。」

 

若干投げやり気味にそう言って直人は本庁舎に入っていった。伊勢も続く。

 

 

 

5月25日午後3時40分 横鎮本庁・司令長官室

 

 

コンコン、コンコン・・・

 

 

提督「・・・。」

 

伊勢「・・・。」

 

 

コンコン・・・

 

 

3度ノックして誰の返事も無い。

 

提督「・・・いないのかな?」

 

土方「おぉ、戻っていたか。」

 

提督「・・・土方さん、なんで右の廊下の奥から出てくるんですか。」

 

土方「すまんな、少しお手洗いに行っていたんだ。」

 

そういうことか。と納得した直人は土方海将に用件を告げる。

 

提督「嶋田海将から、土方海将に我が艦隊に配属になる艦娘を預けてあると聞いたんですが。」

 

土方「あぁ、そうだったな。まぁ、入りたまえ、長官室の奥部屋に待たせてある。」

 

提督「失礼します。」

 

伊勢「どんな子達でしょうね。」

 

提督「そうだな~、どんな艦娘か気になるな。」

 

直人と伊勢は土方海将について長官室に入る。土方海将は奥部屋のドアを開けて、そこにいると思われる艦娘達に声をかけた。

 

土方「さぁ、来たまえ。彼女たちが、今回君の麾下に編入される事になった艦娘達だ。中には解雇された提督の麾下にいた者もいるから、メンタルケアはしっかりやってくれ。」

 

提督「分かりました。」

 

つまりは、横鎮のお荷物持ちと、不祥事隠蔽か、何にせよ戦力増加は有難い、何とかするか。

 

提督「では自己紹介を頼めるかな。」

 

川内「軽巡、川内です。」

 

む? 噂じゃもっとはつらつとしていると聞いたが、随分不愛想だな。

 

高雄「こんにちわ、高雄です。よろしくお願いしますね。」

 

加古「古鷹型重巡の2番艦、加古ってんだー、よっろしくぅ!」

 

五十鈴「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ、全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね。」

 

あれぇ~? 導くのは俺の役目・・・まぁ彼女らの働き如何だしなぁ、あってる・・・か?

 

叢雲「あんたが“新しい”司令官ね。ま、精々頑張る事ね。」

 

大潮「駆逐艦、大潮です! 小さな体に大きな魚雷、お任せ下さい!」

 

島風「駆逐艦、島風です。スピードなら誰にも負けません!」

 

祥鳳「軽空母、祥鳳です。」

 

提督「また大型艦が増えるなぁ、資源が大変だ。ともかく、よろしく頼むよ。」

 

土方「ハハハハ、お前らしいな。」

 

提督「まぁ、これで少しでも勝てない戦いは減るといいんですがね。」

 

土方「1個艦隊でソロモン方面威力偵察、断ったのか?」

 

提督「無論です、無理があり過ぎる。我が艦隊に轟沈艦は出させないつもりですから無理は慎みたいのです。それに―――『死ぬ為』の戦いはしない主義ですから。」

 

土方「そうか・・・。」

 

提督「・・・?」

 

意味ありげに言葉を切る土方海将に、直人は首を傾げた。

 

土方「・・・直人、死ぬな。必ず生き抜いて、この戦いを終わらせてくれ。世界の人々が、静かに笑顔で暮らせるように。」

 

提督「・・・心得ていますとも、土方海将。」

 

川内「・・・。」

 

そのやり取りを、鋭い目線で見る川内。

 

その瞳の奥に映るものが何であるのか、彼はまだ知らない。

 

 

 

~横鎮・艦娘艦隊寄宿舎~

 

横須賀鎮守府は横須賀に在泊する第1護衛艦隊(※)と、艦娘で編成された横鎮防備艦隊を統括指揮する司令部で、尚且つ提督達の艦娘艦隊を管理指揮する管理組織でもある。

 

※第1護衛隊群を改変、横須賀を定係港とする第1護衛隊・第6護衛隊・第11護衛隊、更にこの時系列までに新設された第18・第21護衛隊、合計護衛艦20隻と、横須賀防備の第24・27護衛隊(護衛艦6隻・補助艦艇2隻)、潜水艦部隊の第2・4潜水隊群の潜水艦16隻からなる海上自衛軍主力の一つ。

 

敷地内には艦娘艦隊のスタッフ向けの寄宿舎があるが、直人達はそこで二日泊まる事になっていた。

 

提督「で、寮監に鍵貰ったけど何処だろなっと、あったあった。」

 

なお荷物はちゃんとキャリーバッグで持ってきている模様。休暇用の私服もだが。

 

提督「~♪」カチャリ

 

 

ドタドタドタドタ

 

 

提督「ん・・・?」

 

誰かが直人に向かって走ってくる。

 

金剛「ヘーイ、提督ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」ダン

 

提督「えっ、金剛ううううううううううう!?」

 

金剛が思いっきり右フックを放つ。

 

直人は必死に躱そうとする、顔面直撃は無かったが・・・

 

 

ガッ

 

 

提督「カハッ!?」

 

その外れて直角に曲がっていた腕が首をひっかけた。

 

金剛「ラリアットォォォォォォォォォゥ!!」

 

提督「ガッ・・・!?」ドッシャアアァァァァァァァァァァァッ

 

右フックはフェイントで、避けさせてのフライングラリアットが狙いであった。

 

提督「ゲホッゲホッ、こ、金剛・・・なんで・・・」

 

金剛「昼間の腹いせデース。」ビキビキ

 

きっちり言うところがいやらしい。

 

提督「あ・・・あの、そのー・・・ごめんなさい。」

 

そして素直に謝るのでした。

 

金剛「宜しい。」

 

提督「でもほら・・・もし、そうして連れて行って、もしだぞ? お前が暴言を吐いたら、艦隊の皆にも迷惑がかかるかも知れないし、お前にも・・・。それが、怖かったんだ・・・。」

 

金剛「ッ・・・。」

 

必死に弁明する直人に、金剛は二つの事を思った。

 

一つは、遠回しかつ他人の心意を踏み躙るやり方であるとはいえ、艦隊全員の事を思っての事であったこと。

 

もう一つは、この男にも恐れるものはあるのだ、という事だった。

 

金剛「・・・もう。次は許さないんダカラネー?」

 

提督「はい・・・。」

 

<大丈夫デース?  な、なんとか・・・>

 

怒らせたら一番怖い女、それの筆頭はもしかしたら金剛じゃなかろうか。

 

 

 

5月26日(日)午前7時 横鎮本庁駐車場

 

 

提督「・・・。」

 

私服姿で自分の車にもたれて誰かを待つ直人。因みに基本早起きである。

 

チョイスしたのは左袖に斜めに2本赤いラインの入った白いスリークォーターズ袖のシャツに青のジーンズ、白のスニーカーと黒いアンクレットソックスと、お気に入りの黒レンズ赤フレームのサングラス。

 

割とチョイスが雑なのは金剛のファッションセンスがいまいち分からなかったからである。

 

金剛「お待たせネー! 提督のコーデもグッドデスネー!」

 

提督「っ、別にそう待っちゃいないぞ~金剛。あと、ありがと。」

 

そう言いながら直人は内心、「しまった」と毒づいていた。

 

金剛の選んできたのは白いワンピにベージュのショートブーツ+白のハイソックス、ベージュ縁のハンドバックだった。

 

髪型はいつも通り。(言わないといけない気がした。)

 

因みにどういう状況か、発端は出発直前にまでさかのぼる。

 

 

 

5月25日朝 提督私室

 

 

提督「1種軍服、はいいか。あと入れるもんはないはずだから・・・。」

 

 

コンコン

 

 

提督「どうぞー。」

 

金剛「失礼しマース。」

 

やって来たのは金剛。

 

金剛「荷造りですカー?」

 

提督「そんなとこだな。そっち荷造り終わったのか?」

 

金剛「まだデース。そんなコトより、横浜観光とかないんデスカー?」

 

そんなことを言い出す金剛。

 

提督「え、横鎮に一泊して帰ろうと思ってたんだが・・・。」

 

金剛「そんなぁー・・・残念デース。」シュン

 

それを聞いて落ち込む金剛だったが、それを見た直人が重々しく口を開く。

 

提督「・・・はぁ、荷物が増えるなぁ。」

 

金剛「え・・・?」

 

提督「仕方ない。観光と言わず、デートでも・・・するか?」

 

少々照れながらそう言う直人である。

 

金剛「本当デスカー!?」

 

案外言ってみるもんである。

 

 

 

てな感じで、機内で機嫌が良かったのもこの事があったから、察しがついた人もいるかも知れないが。

 

言いだしっぺがまさかの直人だった件。

 

金剛「似合ってマスカー?」

 

提督「もうバッチリですはい。で、どこ行く?」

 

金剛「そうデスネー、ショッピングでもしたいデース!」

 

提督「・・・。はぁ、よーし付き合ったろ!!」

 

完全に嫌な予感しかしてはいない。

 

そんなこんなで二人は横浜市街へと繰り出した。

 

 

~とある服屋さん~

 

提督「お、このTシャツいいな・・・む、ちょっとお高い・・・。」

 

金剛「提督ゥ!」

 

提督「ここで提督はどうかと・・・。」

 

金剛「じゃぁ、ナオト!」

 

誰から聞いた俺の名前を!

 

てかなんというか・・・

 

提督「・・・なんというかしっくりこないね。」

 

金剛「デスネ。」

 

提督「そんでどうした?」

 

金剛「この服欲しいデース!」

 

おおう、フリル付きときましたか・・・しかも普通に似合うな。が・・・

 

提督「・・・値段ェ・・・」

 

ざっと2万と3千飛んで60円でおます。

 

金剛「・・・ダメデスカー?」(上目遣い+涙目

 

提督「買ったる!」

 

金剛「センキュー提督ゥ~!」^^

 

提督(おおう、テンションたけぇなおい。)

 

意外にちょろい直人でした。

 

 

 

~昼食~

 

 

金剛「~♪」ズルズル~

 

提督「・・・どうだ?」ドキドキ

 

金剛「美味しいデース!」モゴモゴ

 

提督「おー、よかった。しっかし相変わらず旨いな~。」ズルズル

 

昼飯は安価に済みました、だってス○キヤだったんだもん(ぇ

 

 

 

~午後・映画館~

 

提督「・・・。」^^;

 

金剛「ワーオ・・・。」

 

何故か土方海将の指揮した海戦を題材にした映画見てます、俺知ってるのに。

 

このあと買い物行ったりお土産買ったり色々してるうち日が暮れた頃にやっと帰り着きました。(只今午後7時半でおます。

 

 

提督「・・・。」(焦

 

金剛「今日は楽しかったデース!」

 

提督「おう、そいつはよかった。明日からまた日常に戻るんだな・・・。」

 

何とか買い物の荷物を持ちながら、直人が言う。なお大半は金剛の荷物である。

 

金剛「頑張りまショー、提督!」

 

提督「また少々頭が痛いことだ。まぁ、お前となら何とかやれそうだ。」

 

そんな事を言いながら、二人は寄宿舎に向かった。

 

 

勿論この日使ったお代は直人の官給から、つまり本人のお財布から出ています。

 

 

「・・・ほう? それで、近衛艦隊の現状は?」

 

龍田「かなり厳しいみたいねぇ。“苦し紛れに”艦娘の艤装を砲台にしたり、工夫はしてる“つもり”みたいね。」

 

龍田と話す黒い人影、人相も服装も、暗がりでは分かりようもない。

 

「そうか、これからも情報伝達は頼むぞ。」

 

龍田「フフッ、分かってますよ、それが任務ですものね。」

 

「そうだ、ではな。」

 

龍田「そういえば・・・」

 

「・・・なんだ?」

 

龍田は黒ずくめの男を呼び止めてこんな事を聞いた。

 

龍田「嶋田海将はどんなお考えなのかしら?」

 

「・・・どうやら、密かに監視を近衛艦隊全てに送り込み、必要とあらば消せるようにはしているらしい。」

 

龍田「そ~ぉ、提督達も哀れねぇ、好きな時に切れる駒同然だっていうのにねぇ~♪」

 

男の口ぶりに合わせて龍田もそう言った。

 

「そうだな、そちらも任務を怠るなよ。」

 

龍田「分かってるわぁ、じゃぁね~。」

 

黒い人影は闇へと消え、龍田のみが残される。

 

龍田「フフフ、貴方達に本物の情報をあげる訳ないじゃないの、馬鹿な男達ねぇ~。」

 

そう言って、龍田も横鎮本庁の方角に去る。

 

直人に身の危険が及ぶ前に、この情報を伝える為にも。

 

 

 

直人の持つ装備は貧弱の一語に尽きる。

 

キャリーバッグに詰め込めたのは、対人用護身装備として土方海将に手渡されたSIG P229が1丁と、マガシン2つのみ。いざとなれば魔法もあるが、正直深海棲艦でも来た日には詰むような貧弱さである。因みに銃に関しては帰る時に返却するが。

 

更に言うと直人の射撃は、ある程度高速で左右に動く標的に5分5分で当てられる程度の技量しかない。風を読むのは得意だが、それと命中率はまた別である。

 

提督「はぁ~、渡されて持ってきたはいいが、こんなんでどうしろってんですかねぇ。」

 

故に直人は、割り当てられた部屋で、持ってきたことを後悔していたのだった。

 

提督「何あるか分からんからホントは自前で持ってこないとダメだけどさ・・・。」

 

その後で理屈をこねてみる。が、納得は行かなかったようである。

 

 

 

時は少し遡って午後8時頃、直人は単身、横須賀に戦艦三笠を訪れていた。

 

土方海将に頼み込んで特別に開けて貰ったのである。と言うのも、八島入江にいた頃、落ち着いたら三笠を見に行こうと考えていたからだった。

 

提督「・・・こうして実物を見ると、改めてすごい大きさだな、戦艦と言うものは・・・。」

 

戦艦三笠、日露戦争に於いて、海の戦いを勝利へと導き続けた大殊勲艦である。

 

ヴィッカース社で建造されているので、金剛の大先輩とも言えるだろう、当時の最新鋭戦艦でもある。

 

深海棲艦による日本本土攻撃の折、三笠は辛うじて被害を免れていた、原因は不明であるけれども、むしろ幸いであったかも知れない。なぜならもう1隻の日本海海戦参加の現存戦闘艦、帝政ロシア海軍装甲巡洋艦アヴローラは、深海棲艦によって破壊されていたのだから。

 

提督「そして時は移ろい、砲は換装され、機関も置き換えられ、強大な力を手にした。」

 

「えぇ、そうね。」

 

提督「!!」バッ

 

いきなり聞こえた背後の声に、振り向きざまに身構える直人。

 

声の主は女であった。

 

上和装下スカートと言う金剛のような服装の上から、元帥の軍服を模したロングコートを羽織り、腰には元帥刀を提げ、金剛改2のような形状の艤装(主砲左右1基づつ)を装着している。素足は晒さず黒のタイツを履き、膝の辺りには装甲の様なものを取り付けている。

 

提督「・・・お前は誰だ?」

 

「あなたの周囲を見渡せば、自ずと分かるでしょう?」

 

女はそう言う。

 

提督「・・・まさか、“三笠”なのか?」

 

そう告げる直人、女は首を縦に振った。

 

三笠「そうね、私は戦艦三笠。沢山の船を沈め、今こうして世の移ろいを見守り続けてきた存在。」

 

提督「それが今、艦娘としてここにいる。か。」

 

三笠「えぇ。何かの意志に導かれ、私はこうしてあなたと出会った。」

 

提督「・・・。」

 

三笠「それにしても・・・」

 

提督「―――?」

 

品定めをするように見回す三笠、唐突にこう言った。

 

三笠「あなた、面白いのね。」

 

提督「え・・・?」

 

三笠「あなた、人間でありながら艦娘達と共に戦う力を備え、数多の深海棲艦をその手で沈めたのね。」

 

提督「な―――!?」

 

突然言われたその一言に、二の句が出ない直人、高々ジロジロと見られた程度でどうしてここまで分かるのかと疑問になる。

 

三笠「精進なさい? 私は“原初”を知る者、戦艦三笠。覚えておくと、良いかも知れないわね。」

 

しかし問おうとした時三笠は、踵を返し去るところであった。

 

提督「戦艦、三笠・・・。」

 

思わぬ出会い、その名を、直人は奥歯で噛み潰すように呟いた。

 

 

 

~幹部会~

 

 

牟田口「あの紀伊とかいう奴も存外の阿呆であったか。大人しく従えばいいものを。」

 

どうやら上層部の無能はいつの時代も変わらぬようである。

 

嶋田「よ、よろしかったのですか?殺害命令を出しても?」

 

牟田口「構わん、飼い犬にならないのであれば死んでもらうだけだ、近衛艦隊など所詮我らの飼う狗に過ぎんのだからな。」

 

嶋田「・・・はっ。」

 

嶋田海将はハンカチを取り出し、その場で汗を拭く。

 

牟田口「さて、これで死んでくれれば楽なんだがな。」

 

 

 

~寄宿舎・直人の部屋~

 

 

提督「さて、そろそろ寝るか・・・ん?」

 

 

スタッ

 

 

直人の部屋の片隅に、天井から人が舞い降りた。

 

提督「・・・龍田か。」

 

龍田「えぇ、デートは楽しめたかしらぁ?」

 

提督「だ、誰にも言ってないのに・・・。」

 

龍田「街中で見かけちゃったわぁ~。」^^

 

あ、これ地味にばれてましたわ。(※飛行中の段階でモロバレである)

 

提督「で? わざわざ天井裏からということは、そんな用で来たんじゃないんだろう?」

 

龍田「・・・そうねぇ。」

 

提督「手短にな。」

 

龍田「あなた、命を狙われてるわよぉ?」

 

提督「・・・何?」

 

龍田「特別監査隊は幹部会の指示で監視を潜り込ませ、意に沿わない提督を消すつもりの様ね。」

 

提督「―――成程、暗殺者か。」

 

龍田「明日連れて帰る艦娘達、あの子達に注意なさい? じゃないと、その命は永遠に失われるわよ?」

 

提督「・・・留意させて頂こうか。」

 

誰と言わなかったのは、彼女のせめてもの良心か・・・

 

 

 

翌朝早々、直人達一行はサーブ340B改でサイパン島へと飛び立った。

 

それが、直人の身を危険に晒すとは誰も彼も夢にも思わぬまま、飛行機は一路サイパンを目指したのである・・・。

 

序章 ――完――




横鎮近衛艦隊保有機材紹介


サーブ340B改

機種:武装旅客機
乗員:20名
航続距離:2510km
エンジン:GE社製CT-7-9A/9B型ターボプロップエンジン不法改造型×2
エンジン形式:牽引式双発
武装:25mm機関砲 機首固定1門
   25mm旋回機関砲 連装銃架1基

覚えておいでだろうか。KHYシリーズ第2弾である。
コードネームは『バルバロッサ』、赤をメインに塗装された鮮やかな見た目が特徴。
機体上面に25mm3連装機銃を連装に改修した旋回機銃を装備、取り外した1門は機首下部に固定装備した。
キャビン床面には空挺降下用のハッチがあるなど、スペックに出ない面でも改修された部分が多い。
これだけの改造をしつつも性能は据え置き、一部向上しており、局長の手腕たるや既に常人の域でない事は疑いない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。