異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、だらだら書きなぐってたらいつの間にやら30ページも書いてた天の声です。(1000文字1ページ区切りだったエブリスタ時代の話です。)

青葉「ちょっと、作者だってばれてますよ! あ、どーも恐縮です! 青葉です!」

どーせばれてるでしょもういいでち。

青葉「あらら・・・」

時雨と電ちゃんの本気の方、如何だったでしょうか?地味にとてつもないデストロイヤーですが。

青葉「艦娘でも魔術は使える物なんですか?」

そりゃ勿論素養があれば誰だって使えます。因みに時雨の場合はちと特殊ですが。

青葉「私もですか?」

お前は既にその能力が魔術だっての。

青葉「デスヨネー・・・。」

えー、今回特に説明する事は無い、と思い込んでたら色々あったのでやっていこうと思います。今回は近代化改修(合成)です。

青葉「そう言えば解説してませんでしたね。」

うん。あれは明石さんに聞いて来たんだが、建造した艦娘の艤装には大体どこかに優れたパーツがあるらしく、そのパーツを取り出して集積、その後にその集めたパーツでカスタマイズとチューニングを施す事を言うんだそうです。普通は妖精さんがやるそうで。

青葉「なるほど・・・。」

因みに改造もそう変わらないらしい。ただ単に蓄積したデータを基に艤装の内部構成を変更して、必要な方向に能力の上限を引き上げてやるだけ。でもそれじゃ足りない場合ワンオフの艤装になるそうです。

青葉「私の改2・・・いつですかね・・・。」

・・・いつか、くるさ。

青葉「・・・ですね!」

では12章、横須賀から居を移す事になった直人達、これからどうなるのでしょうか。どうぞ。


第12章~サイパン特別根拠地隊~

提督「その資源は向こうの2番倉庫に搬入! 開発資材は4番に! え? 山城の入渠完了? んじゃ最上を代わりに入渠させて!」

 

雷「司令官、第2班哨戒から戻ったわよ!」

 

提督「よし、時雨の第3班に交代出動を伝達!」

 

雷「分かったわ!」

 

大淀「どうですか? 提督。」

 

提督「あぁ、大淀さんか。どうもこうもないな、まだまだ損害の修復には時間を要する。」

 

大淀「そうですか・・・。」

 

大井「提督、建造ダブったわ。」

 

提督「明石さんの所に艤装搬入急いで! 装備も格納しておいて!」

 

大井「は、はい!」

 

 

 2052年5月18日、土曜日の午前を迎えた横鎮近衛艦隊では、未だに艦艇修理が急ピッチで行われており、書類を仮設本部テント内で金剛が代行し、榛名と霧島がそのサポートに、そして直人は日差しの下で陣頭指揮を執っていた。

 なぜこうなっているのかと言うと、それは二日前の午後の事である。

 

 

6月16日午後3時 司令部中央棟・執務室

 

提督「・・・マジで?」

 

大淀「はい。横須賀鎮守府から、土方海将の名で基地移動命令です。」

 

提督「・・・場所は?」

 

大淀「・・・北マリアナ諸島、サイパンとのことです。」

 

提督「・・・ちょ・・・。」

 

まじかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?

 

屋根に止まっていた鳥さえ驚き飛び去るほどの絶叫が響き渡った・・・

 

 

 それから2日間、保有する資材の移動準備と、移動に備えて艦娘達を万全の状態に戻す作業が続いていた。

造兵廠も移築するとのことで、明石さんは明石さんでまた忙しいご様子、既に基地を移設する為の輸送船も到着済みである。

 因みに資源を倉庫に搬入する理由は、そこで資源を纏めているからである。

 

提督「ゴクッゴクッゴクッ・・・」

 

スポーツドリンクのペットボトルを一気飲みする直人でした。

 

提督「それにしてもなんでこんな時期に移転なんだ? 今でなくてもよかったろうに・・・。」

 

大淀「うーん、なぜでしょう・・・?」

 

提督「また今度土方さんにお伺い立てるよ。」

 

大淀「そうですね。」

 

明石「提督! 出港準備出来ました、護衛艦隊をお願いします!」

 

提督「おう、早かったな、資源輸送船の準備出来次第出港だ! 入渠も確か最上で最後だな!」

 

雷「そうね!」

 

何時の間にやら入渠ドックに戻ってきている雷。

 

提督「よし、入渠完了次第全艦出港準備!」

 

 因みに先に言って置こう。提督、再びお引っ越しである。

ついでにサーブ機も旧サイパン空港にお引っ越し、燃料は放棄されたものが残っているそうなので安心であるが。(妖精さんに改造してもらうつもりでいる。)

 

雪風「あの、しれぇ。私達はどうするんですか?」

 

飛龍「そうですよ、そこ説明して貰わないと。」

 

提督「ん? 厚木から空路でサイパンへレッツゴーですよ?」

 

大淀「あら? サーブ340の航続距離(1735km)・・・片道ならなんとかって所ですか?」

 

※足りません

 

提督「そうだな。ついでに俺の引っ越し荷物も運ばにゃならんし。」

 

伊勢「提督!」

 

日向「来たぞ。」

 

大淀「あれ? お二人は船団に回る筈では?」

 

提督「同乗者として呼んだんだよ。」

 

その二人は艤装を装着せず、軍刀をそれぞれ提げていた。

 

提督「天龍や龍田でもいいんだが、あの刀や槍は艤装を着けんとしっかり機能しない分、伊勢達は安心できる。」

 

日向「そうとも、任せてくれ。」

 

大淀「はぁ・・・」

 

戦艦2隻を機上に持って行く辺り慢心と言えなくはないが、そこは自信の表れであったかも知れない。

 

提督「と言うか大淀さん、あなたもですよ。」

 

大淀「え、あ・・・そうですね。」

 

どうやら失念していた様子の大淀さん。

 

大淀「それにしてもお車はどうするんですか?」

 

提督「昨日の内に土方さんに話を付けてあるので預かってもらいます。」

 

手回しが鮮やかかつ早すぎる件。

 

大淀「ということは・・・?」

 

提督「横鎮本庁から土方さんに送ってってもらいます。」

 

大淀「あー・・・。」

 

合点は行った様子でした。

 

 

 

5月18日午前11時20分 国道16号

 

 

提督「~♪」

 

提督、七○のニ○ニ○動画オーケストラアレンジ聴いてノリノリになりつつ運転中。

 

(作者)おー、伏字仕事した・・・。

 

一応この道路は横須賀通っているので使うのは止む無しであろうか。

 

 

 

その間特に会話も無く到着。

 

 

 

午前12時過ぎ 横鎮本庁前

 

 

提督「ふぅ。」バタン

 

土方「おぉ、直人か。」

 

提督「土方さん!」

 

土方「おいおい、人前でその呼び方はやめてくれ。」

 

苦笑して言う土方海将だったが、まんざら悪い気もしない様子だった。

 

提督「おっと、ついついさん付けにしてしまうな・・・。」

 

土方「ハハハッ。まぁいい、乗りたまえ。」

 

提督「あぁ、はい。」

 

大淀「あの、ご迷惑じゃないですか?」

 

土方「なぁに、このくらいどうという事も無い。さ、君達も乗りたまえ。」

 

大淀「では失礼して・・・」

 

促されるまま彼らは土方海将の私有している車に乗り込むと、厚木飛行場に向けて一路走り出すのである。

 

 

13時8分 厚木飛行場

 

 

提督「ふー、まさかこんな形で日本を離れる事になろうとは。」

 

デートしづらくなるじゃないか、そう考えて直人は少しこっぱずかしくなる。

 

土方「牟田口の手からお前を守る為だ、許せよ。」ボソッ

 

直人に耳打ちする土方海将、直人はそれで裏の事情を知る。

 

提督「―――成程、そう言う裏が。そう言う事であれば、赴きましょう。」

 

土方「あぁ。サイパン特別根拠地隊として、あの島を頼むぞ、紀伊元帥。」

 

提督「承知しております。では。行くぞ~!」

 

5人「はい!」

 

元気な返事が返ってくる。

 

伊勢「サイパンかぁ、今はどうなってるのかな。」

 

日向「確か、無人化してしまったと聞くが・・・。」

 

そう、棲地化する少し前、マリアナ一帯に深海棲艦の襲撃があった時、マリアナの住民は一目散に逃げ去っていた。今は誰も住まない無人島である。

 

雪風「誰もいない常夏の島、ですか・・・。少し、寂しい気もしますね。しれぇ?」

 

提督「そうだなぁ・・・まぁ、お前達がいるから、多少賑やかになるさ。」

 

雪風「そうですね!」

 

(ただまぁ、確かに寂しい気もするな。)と思った直人でもあった。

 

提督「早く乗れよー。」

 

飛龍「分かってまーす!」

 

 

 

数分の後、直人の操縦するサーブ機は、厚木飛行場を後にした。

 

棲地に取り込まれ、深海棲艦の巣となり無人となったサイパン島。

 

そこで何が起き、どの様に動くのか、彼らはまだ知るところでは無かった。

 

 

 

21時21分 サイパン飛行場

 

 

夜半の無灯火の滑走路に、1機の双発機が着陸してきた。

 

言うまでもなく直人のサーブ機である、さらりとやってる様に見えるがとんでもない技術である。更に言うと既に燃料切れかけている。

 

それもその筈、サーブ340Bは元々短距離機である為、本来航続距離外である。ではどうやったものか。

 

提督「妖精さんいなかったら500km手前でやばかった・・・。」

 

飛龍「航続力延伸しなかったの?」

 

提督「設計からやり直しでしょうが。」^^;

 

飛龍「妖精さんの念動力しかなかったのね・・・。」

 

提督「今度局長に改造してもらうか。」

 

はい、妖精さんにエンジン駆動アシストしてもらいました、燃費が下がったよやったね!ww(超無理矢理なのは気にしない。)

 

提督「妖精さん休ませよ。」

 

飛龍「ですね・・・。」

 

ま、ぶっつけ本番だったのは否定しない。

 

それもかなり強引な手段なもんで妖精さんが10人くらいまとめて疲弊してる訳ですわ、えぇ。

 

提督「そういや施設、無いんだったな・・・。」

 

大淀「言われてみれば・・・。」

 

提督「うーん・・・どうしよ。」

 

雪風「流石に寒いですね・・・。」

 

提督「うむ・・・錬金術でいっそ作るか、鎮守府。」

 

5人「え?」

 

侵入方向は北東からだから・・・

 

提督「よし、飛行機の機首の逆方向にダッシュ! 海岸まで競争だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ

 

そう言いつつ割と容赦なく走り出す直人。

 

雪風「ちょ、しれぇ! ・・・もう、負けませんから!」

 

飛龍「私と足で勝負なんて、まだ早いんだから!」

 

大淀「全く・・・仕方ないですね!」

 

伊勢「しょうが無い、行きますか。」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

因みに一番足の速い艦娘、この5人だとこうなります。

 

大淀「どうしました? この程度ですか、提督。」

 

提督「マジかっ!?」

 

大淀「で? 何をお考えですかね?」

 

提督「・・・喋ると疲れるぜ?」ダン

 

大淀「・・・っ!」

 

急加速で一気に追い抜くのでした。なお大淀さん行き足付かず。

 

 

 

提督「やっほーい、森の中も軽快に抜けていくぜぇ~!ww」

 

クンカクンカ、これは潮風の香り! 前方200m先崖だな! ではこの辺で。

 

提督「大模倣錬金、魔力最大ッ!!」

 

軍港に適さないなら、その地形ごと作り変えるっ!!

 

見る見るうちに森が、地面が、崖が鎮守府へと作り変えられていく。

 

なお高低差が生じる為後続5人は必然的に落下である。

 

大模倣錬金、錬金術を広範囲適用し、その範囲内を脳裏に記憶した物へと作り変える大魔術の一つである。

 

想像による錬金である場合、イメージが固まっていない抽象的な錬金しか出来ない為、木刀だったり小さな家電程度しか作れないのだが、模倣する場合であるなら風景を見ずに明確な記憶を元に模写をするのと同じことである。

 

つまり今錬金術により顕在するのは、八島入江の奥に佇んでいた司令部『そのもの』である。

 

 

 

伊勢「なんなんだぁぁぁ!?」

 

飛龍「地形が、作り変えられている?」

 

雪風「わわわわわっ!?」

 

大淀「どう考えても提督の仕業ですよねこれ!?」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

若干2名冷静に分析してるんですがこれ如何に。

 

 

 

提督「全工程コンプリート、司令部施設いっちょ上がり!」スタッ

 

5人「わああああああああ!?」ドサドサドサドサッ

 

伊勢「キュゥ~・・・」

 

雪風「た、助かった・・・って、皆さん大丈夫ですか!?」

 

伊勢が一番下、大淀を真ん中に雪風が一番上、流石幸運艦。

 

提督「おいおい・・・大丈夫か~?」

 

雪風「え? ここって前の司令部、ですか?」

 

提督「まぁそうだな、一種の手品でこそあるが。」

 

雪風「!?」

 

伊勢「・・・重い・・・。」

 

雪風「あぁ、ごめんなさい!!」

 

雪風がするりと降り、飛龍達も立ち上がる。

 

飛龍「へぇ~、凄いね、雰囲気以外は完全再現してないかなこれ。」

 

提督「そうだね・・・ただまぁ・・・流石に疲れた・・・。」

 

大淀「無理は禁物ですよ? 提督。」

 

提督「うん、分かってるよ。」

 

大淀「でも、艦娘寮には・・・」

 

提督「うん、何にもないよ、何があるか知らないしな。」スットボケー

 

大淀「そ、そうですか・・・。」

 

あえて一部白を切る直人でありました。

 

提督「・・・俺は仮眠室のハンモックで寝よう。荷物は明日当たり届く筈だ、あっちは高速貨物船だしな。」

 

皆お休みー   おやすみなさい!

 

直人達は各々部屋に行って休んだのであった・・・。

 

 

 

直人「スピー・・・」

 

寝付きが宜しゅうござんす。

 

この頃のサイパン島は前述の通り無人である。これについてはグァムやテニアンも同様であったが、特にグァムは、負の霊力による土壌浸食が顕著で居住不能と言う有様であり、アメリカも領有を放棄しているほどの惨状であった。

 

サイパン島にしても辛うじて野鳥がいる程度であり、テニアン島には何者も寄り付かぬ有様である。

 

 

 

2052年6月19日 午前7時

 

 

提督「・・・うーん・・・朝、か。」

 

ハンモックの上で目覚める直人、寝起きは悪くない。

 

大淀「提督、起きてますか?」

 

ドア越しに大淀が声を掛けてきた、ノック無しで。

 

提督「あぁ、起きてるよ。」

 

大淀「失礼します。提督、無線等の準備はどうしましょうか?」

 

提督「うん、運用準備は急いで進めてくれ。入渠ドックの使用や建造なども出来る様に。」

 

大淀「分かりました。」

 

提督「そういや電力ないのはどうしよう?」

 

模倣錬金である為実の所電力は元よりない。発電機の模倣は彼には出来ないからである。

 

大淀「確か荷物の中に発電機、ありませんでしたっけ?」

 

提督「あぁ、そういえば。ほんのちいせぇのがあったけど、あれじゃ到底賄えんぞ?」

 

小さい=電球を幾つかつけられる程度の小型発電機、テント用とかそのレベル。

 

大淀「ですよねぇ・・・。」

 

 

ドカドカドカ

 

 

飛龍「提督!」バタン

 

提督「な、なんだどうした!?」

 

いきなり飛龍が飛び込んできたのに驚く直人であったが、その答えはすぐ帰ってきた。

 

飛龍「船団がもう近くにいます!!」

 

その言葉にキョトンとする直人、それもその筈、船団が来るのは2日後の午後の筈である。

 

提督「・・・え? 嘘だろ?」

 

飛龍「本当です、司令部裏ドックに来てください!」

 

提督「あ、あぁ、わかった。」

 

事情がよく呑み込めなかったが、とりあえず行くことにした直人はそこで驚くべきものを見た。

 

 

 

午前7時10分 司令部裏ドック

 

 

提督「えーと・・・ん・・・―――え!?」

 

飛龍「ね?」

 

本当にいました、サイパン東岸にある司令部からきっちり見えます、艦娘達も全員一緒です。

 

提督「どうやったんだおい!?」

 

大淀「そうですね・・・どうやったのでしょうか・・・。」

 

3人とも流石に首を傾げるばかりであった。

 

 

 

船団は午前8時に全て岸壁に接岸し、直人は艦娘達から事情を聞いたのだが・・・

 

夕立「皆で引っ張ってきたっぽい!」

 

提督「・・・。」

25ノットは余裕で出た計算なのであるが、その辺どうなのかと問いただすと、

 

金剛「27ノットぶっ続けでお腹が空いたのデース・・・。」

 

白雪「私も・・・」

 

鳳翔「お恥ずかしながら、私も・・・」

 

提督「・・・。」

 何をやっているんだと直人は無言で顔を覆ったが、こうなってしまった以上仕方のない事ではある為、渋い顔ながら指示を出していく。

 

提督「鳳翔さん。」

 

鳳翔「なんでしょう?」

 

提督「食堂稼働に必要なものはちゃんとあるんだよね?」

 

鳳翔「それは勿論です。」

 

提督「結構。急いで準備してくれ。間宮さんも手伝いに入って欲しい。」

 

鳳翔「分かりました。」

 

間宮「了解しました。」

 

提督「局長! 発電設備修理用の資材は?」

 

局長「抜カリナイゾ。」

 

今回この輸送船団には、島内に残された発電設備復旧用の資材も積載されているのである。詳細は追って話す事にするが。

 

提督「では急ぎ修理を。明石さん!」

 

明石「なんでしょう?」

 

提督「造兵廠と修理用ドックの稼働準備、お願い。」

 

明石「了解です!」

 

提督「技術局スタッフも運用準備を急いでくれ。」

 

電「分かったわ!」

 

ワール「仕方ないわね・・・。」

 

荒潮「はぁい♪」

 

如月「なら早速始めないと、ねぇ?」

 

局長「アァ、ソチラハ任セルゾ。」

 

提督「よし、各自荷物搬入後作業にはいる様に、解散!」

 

一同「了解!」

 

船員「あの、私達はどうすれば宜しいですか?」

 

提督「あぁ、各種資材と資源の搬入をしてくれ、その後はそちらで動いて貰って構わない。」

 

船員「分かりました、そう伝えます。」

 

提督「うん。金剛! 飛龍! 雪風! あとで俺のところに来てくれ!」

 

金剛「OK!」

 

雪風「はい!」

 

飛龍「了解!」

 

提督「あとの者は適宜各作業の支援に回る様に! ・・・ふぅ。」

 

一通りの指示を出し終えた直人は、執務の準備を整える為執務室へと向かったのであった。

 

 

 

各自荷物搬入、とどのつまり艤装と引っ越し荷物である。

 

そして、そこに一つのダウトがあったのである。

 

 

 

2052年5月19日午前8時半 司令部裏ドック

 

 

赤城「おっとと・・・よっと・・・。」

 

加賀「赤城さん、いけますか?」

 

赤城「なんとか・・・。」

 

ドックに入っている輸送船から、デカいダンボールを運ぶ赤城が、加賀と共に下りてくる。

 

提督「うん・・・よし、搬入していいぞ。」

 

白雪「はい。」

 

前で白雪が提督の検問を受ける中、赤城がそれに臨む。

 

提督「さて次・・・赤城、二人揃ってその大荷物はどうした?」

 

赤城「服の着替えや私服、掛けておくハンガーなど日用雑貨です。」

 

提督「・・・。」ジロジロ

 

訝し気に赤城と段ボールを見る直人。

 

赤城「な、なんですか?」

 

提督「・・・食い物じゃねぇだろうな?」

 

赤城「何を仰ってるんですか、そんな訳ないじゃないですか・・・。」

 

提督「そうか、では搬入してよろしい。」

 

赤城「では。」

 

赤城が加賀と共に去ろうとする。

 

その時、赤城の方から直人の方に、今まで無風であったのに東向きのそよ風が吹いた。

 

そしてそれは、段ボールの中の物に含まれていた、ある物の匂いを、直人の鼻に届けた。

 

提督「・・・!」フワッ

クン・・・むっ、これは、カ○ビーのうすしおのポテチ!

「そこの大食艦、ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!」

 

赤城「!!?」

 

すごすごと逃げるように去ろうとしていた赤城を呼び止める直人。

 

加賀「まずいです、気づかれました。」ボソッ

 

赤城「まさか食べかけの―――!?」ボソボソ

 

なぜ直人が匂いのみでピンポイントに当てたのかが疑問である。

 

加賀「逃げましょう。」

 

赤城「えぇ。」

一航戦、無言でダッシュにて逃亡を図るのだが・・・

「逃げられると、思うなぁぁぁ!!」ダァン

 それを直人はたった数歩で追い抜く、ダンボールを掻っ攫いながら。実はこの男、足の速さなら自信があるどころの騒ぎではなく、跳びの大きい独特の走法とその脚力で、陸上での追いかけっこでは島風などよりよっぽど足が速いのだ。

 

加賀「なっ!?」

 

赤城「あ、あれ!? 段ボールが・・・。」

 

「中身を検閲だぁぁぁぁ!」シャキーン

カッターナイフを取り出し

「~♪」

 

赤城「ま、待ちなさい!!」

封をしている紙テープを切り

「御開帳~!!」

勢いよく段ボールを開く。

 結果、赤城の言っていたことは、確かに嘘では無かった。しかしハンガーは入っていたがたった3本だけ、あとは服だけだがこれも数着のみ。

「こっ、これは!?」

 その下には、無数の保存食品が。カップ麺、缶詰、お菓子など多種多様であった。我、密輸物品を差し押さえたりと勝ち誇る直人である。

 

赤城「くぅっ・・・!!」

 

提督「ハァ~ッハッハッハッハ!! このポテチが命取りだったな!」

 

赤城「何故・・・気づいたのですか・・・?」

 

提督「さっきのそよ風に紛れて匂ったのだよ、残念だったな! 差し押さえさせてもらうぞ。」

再び一航戦、完全☆敗北。

 

加賀「完璧だと思ったのに・・・。」

 

提督「それこそ慢心だよ、慢心はダメ絶対、だ!」

 

赤城「くっ・・・完敗です・・・。」

 高らかに鼻歌を歌いつつ軍靴を鳴らして差し押さえ物品を持って去る直人なのでした。

直人自身元からこれを警戒していたのだが。内地でさえその手の製品は不足しているのだ、それをそんな形で持ち込むなど言語道断である、と言う事だ。

 

 

提督「鳳翔さん、これ管理おなしゃっす。」

 

鳳翔「え? あぁ、そういうことですね。了解しました。」

 

遠い目で呆れたと言いたげな鳳翔さん。

 

提督「ありがと。」

 実の所検閲を始める前に鳳翔に話はつけてあったのだった。ただ送り返したい所ではあったが、如何せん航路の安全性を考え、横鎮本部と協議する事にしており、それまでの間管理をお願いしてあったと言う訳だ。

 

柑橘類「お? なんぞ? 食っていいの?」

そんな所にひょっこり現れる飛行隊長。

「・・・おい。」

駄目に決まってるだろ、と言いたげな直人ではあったが敢えて口に出さないのだった。

 

 

午前9時3分 司令部正門

 

提督「ふーむ・・・」

 

足元に台車4つ積んだ直人が、正門脇に立っていた。

 

金剛「提督ゥー!」

 

提督「ヲッ、来たな?」

 言いながら目をやると、何気ない物真似に後ろの方からついて来ていた雪風が思わず身構えながらきょろこよろ辺りを見回していた。

 

飛龍「ヲ級の声真似ですか~?」

 

提督「よく分かったな。」

 

雪風「思わず身構えちゃいましたよ、しれぇ。」

 

提督「反射的に身構えられるのは良い事だ。」

 

金剛「それで、なんですカー?」

 

提督「うん、ちと荷物を飛行機に取りに行くの。手伝ってちょ?」

 

金剛「おぉ!? 提督の私物デスカー!?」キラキラ

 

雪風「おぉ!?」キラキラ

 

「お手伝いします!」ビシッ

聞いた瞬間飛龍が直立姿勢になった。

 

提督「いくぞー。」

 

3人「はい!」

 

そうして直人達は、正門正面のトンネルに入っていった。

 

 

 

ついでに解説しておこう。

 

この司令部は司令部正門出た正面に防空壕兼務のトンネルがあり、サーブ機を停める為の掩体(機体を爆撃時の爆風から防護する為の構造物、土嚢などで作られる。)の背後に出る様になっている。まぁ地面を思いきり下げた為の代替移動手段だが。なおトンネル全長2km。

 

なお南の島=ビーチであろうが、飛行場の南側にラッダービーチと言う小さな浜があるので問題ない。いずれここが物語の舞台ともなろう。ただ司令部正門から直線で5km程離れているのが泣き所ではあるが、マラソンの範囲内じゃかまへんかまへん!(実際通るルートは約6km(爆

 

 

 

2052年5月19日10時前 司令部前トンネル内

 

 

ガラガラガラ・・・と、台車を押しながら来た道を戻る一行。

 

金剛「暑いデース・・・。」

 

提督「だな、戻ったら水分補給しとけよー。あと金剛、トンネル出るまでに服装戻しとけ。」

 

金剛「分かってマース・・・。」

 

思いきり胸元はだけてて見づらいwww

 

飛龍「サウナの中ですかここは・・・。」

 

飛龍も服をつまんで引いたり戻したりしている。

 

だから目のやり場に困るんだっつーの!

 

雪風「お荷物一杯ですねぇ・・・。」

 

提督「台車持ってきて正解だったな。」

 

一応私服と支給されてる制服の残り(冬服とかね)とハンガー、あとは趣味の小説なりDVDなり銃器弾薬ですね。

 

雪風「早くトンネル抜けたいですね、司令?」

 

その雪風は全身汗だくでバッチリ透けまくり、ブラつけてないのも丸分かり過ぎて一瞬見ただけで目を逸らしたわ畜生めぇ・・・。

 

男って、つらいです・・・。(結論

 

 

 

一つ言っておこう。如何わしい物は何も入っていない、全て金剛にチェックされました。

 

入っててバレたら(100%バレる)今頃血まみれでぶっ倒れてるでしょうが。どっちかが。

 

 

 

因みに中央棟は6つの部屋に分かれてます。

 

エントランスホールを左右に挟んで一階に2つ、二階に2つと、2階廊下の左右突き当りに一つづつ。

 

今回の移転に乗じて部屋の配置が変わり、一階右部屋は大淀さんの管理する無線室、その真上(二階右部屋)が明石や間宮などの特務艦寮、一階左部屋が空室(剣道場)、その真上が提督仮眠室となる。

 

二階廊下突き当りの部屋の内、左突き当りが執務室なのはご存じの通り。ではその反対側はと言うと、実は用途未定で空室になっていた。

 

直人の引っ越し先について、寮の管理人室と予想した人は一人じゃないとは思うが、そんなもの元々ない。どこのハーレムゲーですか? まぁ艦これってハーレムゲーに雰囲気近いけど。(ぶっちゃけ&マジレス&作者の持論)

 

ではどこなのか、答えはその執務室の反対側の空室である。

 

理由は空室である事が一つ、加えて寝たい時すぐ寝られるのと、プライベートスペースに出来るという事。(仮眠室は誰でも立ち入りOK)

 

 

 

午前11時半 提督私室

 

提督「ふぃー。」

 

直人、家具設置完了。

 

提督「・・・そう言えばDVD持ってきたのはいいが、テレビねぇや・・・。あと布団どうしよ・・・。」

ドタバタしていた事もあってその辺りの事は完璧に忘却していた直人である。何分官給品を持ち出す訳には行かなかったからである。

 

コンコン

 

提督「開いてるぞー。」

 

最上「提督、ちょっといいかな?」

 

提督「・・・どうした?」

最上は必要以外直人の所には来てくれない(些か寂しい思いをしてるのは内緒)ので、少々姿勢を正す。

 

最上「提督宛に大荷物があって、下まで持ってきてるんだけど・・・。」

 

提督「ん? 分かった、すぐ行こう。」

直人は最上に続いてエントランスに向かった。

 

 

~司令部中央棟・エントランスホール~

 

「あれだよ。」

最上が直人を連れてきたのはエントランスホールだった。ここまでは運び込んだのだと言う。

 

提督「えーっと・・・って、デカいな。」

 

最上と一緒に荷物を運んで下まで来ていたと言う扶桑が中身について触れる。

 

扶桑「ベッドやテレビみたいですよ?」

 

提督「・・・よし、二階上がって右の突き当りの部屋に運んでくれ。」

 

扶桑「わ、わかりました・・・。」

そう言いながら直人は、

(土方さん、こっそり積荷に紛れ込ませてたな? 官給のベッドやらテレビやらを・・・。)

と心中では結論に至っていた。一体どこで知ったのだろうと本気で思いながら。

 

 

~横鎮本庁~

 

「フフフ、サプライズプレゼント、喜んで貰えるかな?」

 と自分の執務室で一人ごちる土方海将。

土方海将は、輸送船の積み荷の中に官給品であるダブルベッドやテレビなどをこっそりと紛れ込ませ、サイパンに運ばせたのである。

直人が官給品の持ち出し厳禁を留意する事を知る彼なりの、せめてもの気遣いであった。到底そんなものを用意している暇など無かろう事は分かり切ってもいたからだ。

「―――まったく、頭が上がらないな・・・。」

そう呟きながら、ハンガーラックの箱を運ぶ直人でした。(クローゼットなんてないです。)

 

 

その頃(12時過ぎ)、赤城の自室では・・・

 

赤城「クッ・・・今度は別の手段を考えなくては・・・。」

 

「赤城さん、これを見て。」

悔しがる赤城の下に段ボールを持って現れる加賀さん。赤城は疑いなしに渡されたダンボールを覗いた。

赤城「こっ、これは・・・!?」

 

加賀「フフフ、やりました。」

 

赤城「流石ね・・・。」

そのダンボールの中には、僅かながらカップ麺や缶詰などが入っていた・・・。

 

 

 

提督「・・・やらかした気がした。」

 

そんな気がした直人でした。


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