異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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最近更新ペースが不安定化してますが、そんな事は気にしない天の声です!(またもエブリスタ時代の昔話です)

青葉「どもー、青葉です! ていうかそれは気にしてください!」

つってもアイデア有無で変わるしモチベとか色々とね。

青葉「うー、それはそうですけど・・・。」

前章で出た睦月型に睦月如月いないじゃないかとか思われるかもしれませんが、まぁ、追々という事で今回の解説事項、陣形について行きます。

これまでは正面切っての砲戦だった為陣形等出てきませんでしたが今回からは戦術面にも留意した形となります。

で、艦これでは単縦陣・複縦陣・輪形陣・梯形陣・単横陣の5つが設定されていますが、この世界では基礎知識として梯形陣以外の4種が基本陣形として提督達に教練されておりますが、特に決まりはありません、当然だね。

各地で作為工夫しておる段階、と申しておきましょう。

まぁこれら陣形に意味があるかは提督の戦術次第ではあるのでここでは言及しません。ついでに言うと梯形陣と言うのは存在しません、運営がどこの情報でこんな陣形を組んだのか知りたい。

青葉「まーた随分メタい・・・」

ここまででも様々な艦娘が登場してはおりますが、まぁ、暁、電などの出番は当分先の事になるので、それは勘弁してください、俺も出したいだって可愛いもん!

青葉「アッハイ。」

それでは続きに参りましょう。

この章で直人の提督人生は早くも一つの分岐点に差し掛かります。

フィリピンに向かう横鎮近衛艦隊は、そこで何を見、どの様な結果を得るのか。ご注目下さい、どうぞ。


第9章~サンベルナルディノの悲劇~

2052年5月2日6時40分 フィリピン・ルソン島東160km地点

 

 

提督「・・・。」

 

金剛「どうデース?」

 

提督「うーん、まだ捕捉できんな。もう少し沿岸に接近してみよう。」

 

直人自ら陣頭に立つ横鎮近衛艦隊は、一度事前連絡して置いたパラオ泊地駐在の防備艦隊の施設を借りて補給を行い、一夜を明かしたのち再出港してフィリピンへ向かった。

 

そして今は直人がレーダーを使って敵の探知に努めている所であった。

 

補足しておくが、この艦隊は28ノット以下の低速艦を複数含むが、それらの艦は高速戦艦や紀伊などが牽引し、更に高速戦艦を複数艦で牽引する事で、パラオまで2500kmを越える距離を一昼夜で強行軍してきたのだ。中国大返しをやった秀吉もびっくりの速度である。

 

摩耶「ここに敵がほんとにいんのかぁ?」

 

提督「一時期はここを取り巻くように敵の梯団が居たそうだが、マニラの提督達が奮戦した結果、随分と減ったそうだ。」

 

摩耶「ちったぁ残しとけっての。」

 

提督「だが、敵が泊地にしてるレイテにならわんさかいるかも知れんぞ。」

 

摩耶「レイテ・・・捷一号作戦・・・潜水艦・・・うっ、頭が・・・。」

 

捷一号作戦に始まる海軍のフィリピン方面での作戦行動で最大規模のものがレイテ沖海戦であるが、これには摩耶も参加していたのだ。

 

しかし出港直後のパラワン水道で、敵潜水艦の雷撃を受けて呆気無い最期を遂げてしまったのだ。救助も進軍を急ぐ栗田艦隊司令部の意向を受けて中途で打ち切られ、生存者は少なかったと言われる。

 

愛宕「そう考えると、ここは私と摩耶にとっては因縁の場所でもあるのね。」

 

提督「場所は随分と違えども、そうなるな。」

 

綾波「ソナー感あり、潜水艦です!!」

 

摩耶「ゲッ・・・」

 

何とも因縁的な事ではないか。最初のお出迎えはやはり潜水艦らしい。

 

提督「対潜水艦戦闘用意! 扶桑、山城、瑞雲を出せ!」

 

呼ばれた二人は無言で頷き、瑞雲を滞りなく発進させてゆく。

 

雷「いきなり潜水艦なんて、えっ、夕立!?」

 

雷の驚きの声にその方向を見ると、夕立が思い切り突っ込んでいた。

 

それも潜水艦のいる方向に、躊躇いなく一直線に。

 

提督「夕立、何をするつもりだ!」

 

夕立「夕立、突撃するっぽい!」

 

その両手のそれぞれの指の間には爆雷が2個ずつ。

 

提督「よせ! 的になるだけだ!」

 

響「雷跡12、夕立に向かう!」

 

提督「下がれ、夕立!」

 

夕立「・・・任せるっぽい。」ニヘッ

 

夕立が数瞬の間だけ提督の方に振り向き笑って見せる。自信に満ちた、それでいて戦いを喜ぶかのような笑顔だった。

 

提督「――――。」コクッ

 

赤城「よしなさい、無茶よ!」

 

提督「待て、やらせてみよう。」

 

赤城の制止は状況としては正しい、直撃すれば轟沈は免れない。

 

赤城「―――提督ッ!?」

 

だが直人は、先程の夕立の目に、何かあると踏んだ。その直人の視線の先で、夕立に魚雷が迫る。いや、見方を変えると『夕立が魚雷に迫って』いた。

 

夕立「とりゃぁぁぁーーー、っぽい!!」ザバァァァァーーン

 

・・・夕立は想像の範疇にない荒業をやってのけた。

 

否、人間である直人なら一度は考えそうなことではあった。

 

即ち――――

 

提督&摩耶「と、飛んだぁぁぁぁ!?」

 

一瞬後、夕立は宙に浮いていた。それを把握できたのは、直人と摩耶のみ。

 

それも踏み台無し、強いて言うなら水と、夕立の突進針路上で衝突した魚雷の爆圧を足場にして――――

 

夕立「よりどりみどりっぽい、えいえいえーーいっ!」バシャバシャバシャッ

 

その夕立は空中で宙返りしながら見た感じやたらめったらに爆雷投下。

 

提督「あ、あんなの当たる訳―――」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

提督「―――えっ。」

 

当たりました。タネは簡単、ソナー探知で距離、魚雷の雷跡で方向を見抜いただけである、そこからは直感だったようだが。

 

更に・・・

 

夕立「敵艦隊見つけちゃったっぽい! 魚雷投射するっぽい!」

 

空中で更に敵発見の夕立、言うが早いか発射管から魚雷8本全てを抜き取ってぶん投げていた。

 

提督「なにぃぃぃぃ!?」

 

直人が驚きの声を上げる。魚雷は正に投げ槍の如く敵に向かって飛ぶ。

 

金剛「どこデース!?」

 

綾波「電探感あり、敵艦! 方位2-3-5、距離約9,200!」

 

提督「せっ、戦闘準備!」

 

驚きもつかの間、慌ただしく砲を準備する近衛艦隊。

 

夕立「さぁ、素敵なパーティーしましょ!」バシャァァァァーーーン

 

着水と同時に全速行進、もの凄い水飛沫が上がる。

 

提督「なっ!?」

 

最上「うおおおおお!?」ザバァァァァァッ

 

そして飛沫を頭からモロに被ってしまった最上さんでした。

 

提督「も、最上、大丈夫か?」

 

最上「ちょっと、寒いね。」

 

お察しの通り頭からずぶ濡れでした。

 

提督「どないしましょ・・・。」

 

流石にこればかりは困ったという様子の直人であった。

 

 

 

夕立が発見したのはホ級エリート2隻にロ級エリート1、ハ級エリート2、無印1の水雷戦隊。

 

そこへ突如やって来た破局は、一撃で力を根こそぎにするには十分すぎた。

 

 

ドドドドォォォォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

ハ級eliteA「ギュアアアアアオオオオオォォォォーーー!?」(轟沈)

 

ハ級「ギャアアアウウウオオオオオオオーーーー!!」(残HP1)

 

ホ級eliteA「ギュオオオオオオオオォォォォ!?」(轟沈)

 

ロ級elite「キュアアアアアァァァァァァァーーーーッ!!」(轟沈)

 

ホ級eliteB「・・・!?」

 

ハ級eliteB「・・・!」

 

狼狽する辛うじて被害を免れた2隻。そして魚雷が突き刺さり次いで爆発し、見るも無残な状態の4隻。

 

なんとさっき投げた魚雷でこの大戦果である、恐るべきはその自由度の高さであろう。無邪気さというかなんというか、純粋すぎてめっちゃ自由に駆けずり回る性質にあるようです。

 

ハ級「・・・!」

 

その時ハ級が見たものは、紅の眼光を放ち、その火砲と魚雷で敵を尽くその鮮血で朱(あけ)に染める悪魔の行進であった。

 

 

 

夕立「まず何から、撃とうかしらッ!」ダァンダァンダァンダァァァァン

 

 

ズドドドォォォーーー・・・ン

 

 

夕立の砲撃は寸分の狂い無く当たり、深海棲艦の残りは声すらあげられず水底へ沈んだ。

 

摩耶「・・・ウソだろ?」

 

雷「凄すぎる・・・。」

 

提督「あいつ、マジで何者だよ・・・。」

 

驚愕するしかない圧勝劇に一同が言葉を出すので精一杯の有様。

 

夕立「全部倒したっぽーい!」ニコニコ

 

白いマフラーをたなびかせた夕立が笑顔満面で戻ってくる。

 

提督「無傷かよ・・・。」

 

摩耶「いや、わりかしそうでもねぇ。ほれ。」クイッ

 

提督「え?」

 

摩耶が指差した先には、脚部艤装から煙を出している響がいた。どうやら先程夕立の躱した魚雷の1本が、水中で軌道を逸らされたものらしい。

 

提督「響! 大丈夫か?!」

 

響「なんとかね、まだいけるよ。」

 

雷「無茶しちゃダメよ?」

 

響「分かってるさ。」

 

どうやら艤装が損傷したのみで外傷も無さそうだったので、ひとまず安心した所で、直人達は再び進み始めた。

 

 

 

それから10分後に偵察機の触接を受けた直人達は、先に艦載機による一斉攻撃を企図、目につく敵艦全てを薙ぎ倒さんと、艦載機を発進させようとしていた。

 

提督「・・・よし、偵察機からテ連送がドシドシ送られてきてるな。」

 

ほんとは来ちゃダメだけどね。

 

赤城「私の索敵機からも逐次敵情報が来ています。」

 

飛龍「提督、攻撃隊発進を具申します。」

 

提督「・・・よし、いこうか。全航空隊発進、急げ!」

 

飛鷹「よーっし、久しぶりの実戦ね! 全機発進!」

 

山城「提督、私たちも、ですか?」

 

提督「無論だ。連続だが頼むぞ。」

 

扶桑「頼まれますとも。皆さん、お願い!」

 

提督「よし、各空母の攻撃隊はそれぞれ発見した敵艦隊を叩け!俺の艦載機はレイテ湾を叩く!」

 

空母&航戦一同「はい!」

 

提督「発艦始め!!」バシュバシュバシュバシュ

 

因みに紀伊の艦載機発艦機構は弓では無くボウガン、それもフルオートの連射ボウガンである。

 

それを左右に一つづつ、秒間7本の射出速度を誇っている。

 

矢は片方のボウガンに54本、計108本、総勢540機の多数に上る。

 

史実で言えば大戦末期に活躍した米・エセックス級(搭載機108機)5隻分に相当する。

 

更に赤城82機・加賀93機・蒼龍64機・飛龍73機・飛鷹58機・千代田36機・扶桑と山城23機ずつの計432機が加わって992機の大攻撃隊、空母航空隊はこれを6つに分散し軽空母2隻と航空戦艦2隻で共同攻撃、残る空母は単独でそれぞれの敵に当たるとなっていた。

 

そして要塞戦艦紀伊の540機の大編隊は、これら母艦隊を別働ないし陽動とした上で、レイテ湾の敵艦隊に対し、乾坤一擲の総攻撃をかけ、それに呼応する形で艦隊も一点突撃するのである。

 

これは、出撃前に既に作戦要綱として決定された、航空戦術の全容である。

 

空海同時の立体機動戦術であり、立体包囲戦術でもある、しかし練度向上の進んでいないこの艦隊には連携の難しい戦法である。

 

提督「果たしてうまくいくかな・・・。」

 

金剛「信じてみまショー、提督ゥー。」

 

提督「・・・そうだな。俺の策を、皆を信じて勝利にBETするとしよう。」

 

直人が憂慮するのも実はこの練度不足の可能性であり、連携が失敗すればその分勝利の可能性は損なわれ、最悪敗北する危険すらあった。その際の損害は予想不可能という結論すらあったのだ。

 

摩耶「気前のいい天のディーラーに、全て委ねる訳か。」

 

提督「ハハッ、言い得て妙だな。では、状況開始!」

 

 

しかし、その帰趨を予見し得たのは、唯一直人だけであったかも知れない―――

 

 

 

5月2日 13時過ぎ カタンドゥアネス島北100km付近

 

 

カタンドゥアネス島は、サンベルナルディノ海峡から約100km北にあるフィリピンの島々の一つである。

 

グーグルマップなどで見ると分かるが、パラオからレイテに行く場合、わざわざルソン島の北東側から遊撃するのはかえって遠回りになる。直行した方が早い。

 

高雄基地でもよかったのだが、機密保全上(上海基地が途中航路近くにある為)断念してパラオへ寄らざるを得ず、フィリピン北部海岸掃討を行うのに余計な時間ロスをしていたのであった。

 

話を戻し、レイテ島へ向かう横鎮近衛艦隊は、盛んに攻撃隊を繰り出し、外洋に韜晦する敵艦隊を次々と撃沈していた。

 

紀伊の攻撃隊は迂回進路を取って大回りにレイテ湾に接近していた。

 

攻撃予定は16時丁度、そろそろ駆け足で行かなければ間に合わない位だが、始めから全速力である為問題なし。

 

ただ・・・

 

 

ザアアァァァァァァァァァァァァァァァァァーーー・・・

 

 

提督「熱帯特有のスコールかぁ・・・」

 

猛烈にっ、どしゃ降りのっ、雨ッ!!!

 

補足しておくと、彼らはこのスコールを利用して、攻撃隊が戻って来るまで敵の攻撃を避ける腹積もりで自ら飛び込んだのである。こうする事で上空からの敵の目を避けることも出来るのだ。

 

金剛「雨は嫌いデースッ!」

 

提督「同意見だね、雨は嫌いだが、まぁ~この際仕方ないか。」

 

雷「敵機が来ない様に、と分かってても、やっぱり嫌よね夕立?」

 

夕立「うぅ~ん、気持ちいいっぽい!」

 

雷「えっ・・・」

 

その他艦隊一同「えっ・・・。」

 

夕立「え・・・? 夕立、何かおかしい事言ったっぽい?」

 

綾波「うーん・・・音はそんなに嫌いじゃないけど・・・実際こうして濡れるのはちょっと・・・。」

 

扶桑「私も嫌いじゃないけれど、少し陰鬱な気分になりますね・・・。」

 

山城「姉様と同意見です・・・。」

 

雪風「うーん・・・私はどっちでもないです!」

 

提督「夕立の発想の転換がまたすごいね・・・。」

 

加賀「そうね・・・。」

 

赤城「私は、こんな雨の中にいると、真珠湾攻撃の時を思い出します。」

 

提督「確か、開戦を告げる電文が来た時もどしゃ降りだったんだっけ?」

 

『ニイタカヤマノボレ 一二〇八』の電文が南雲機動艦隊に届いたとき、その海上は大しけかつどしゃ降りの大雨という悪天候だったそうで。

 

蒼龍「よくご存知ですね。」

 

提督「なに、その方面の知識をかじってただけだよ。」

 

加賀「・・・またの機会に、一度提督と語らってみたいものです。」

 

提督「その時は、一つお相手願おうかな。」

 

加賀「望むところです。」

 

加賀が微笑みを湛えつつ言う。

 

赤城「加賀さんが笑うなんて、珍しいですね。」

 

飛龍&蒼龍(言われてみれば・・・)

 

千代田(そうなの?)ヒソヒソ

 

飛鷹(まぁね・・・。)ボソッ

 

提督「そろそろスコールも抜ける筈だ、空母全艦、収容準備!」

 

空母組「はい!」

 

スコールを抜けた後、艦隊は偵察機の触接等も無く、カタンドゥアネス島東岸を南下してゆくのであった。

 

 

 

しかし彼らは思いもしなかった。

 

彼女らの動きは、最初から敵に察知されていたのである・・・。

 

 

 

13時43分 ルソン島南端部・バルセローナ沖合7.3km

 

 

バルセローナはルソン島南端部に位置する小さな町で、サンベルナルディノ海峡の出口に程近い場所にある。スペインのバルセロナとは多分無関係と思われる。

 

その沖合に、今正にサマール島を正面に迎え、それを太平洋側に迂回しレイテに向かわんとする横鎮近衛艦隊の壮健な姿があった。

 

提督「よし、サマール島の東側に迂回するぞ。海峡出口中央の小島に注意!」

 

金剛「了解デース!」

 

その時、その小島の輪郭に閃光が走った。

 

提督「!」

 

 

ガアアァァァァァーーーン

 

 

綾波「きゃああああああっ!!」

 

提督「綾波っ! 敵襲、響は綾波を守って一旦後退! その他の艦は左舷回頭、右舷砲雷撃戦用意! 敵の伏兵だ!!」

 

一同「了解!!」

 

榛名「電探に感あり! 方位1-9-6、距離9,100!!」

 

比叡「ひえぇぇっ! 私の電探も新たな敵艦隊を捕えました! 方位1-0-1、距離8600!!」

 

雷「水上電探感あり! 方位0-9-1、距離10,100!!」

 

響「対空電探感あり! 方位1-8-0、機数600以上!!」

 

提督「謀られたか―――ッ!!」

 

報告を突き合わせれば、サンベルナルディノ海峡と海峡出口のサマール島側にある小さな島の影、更に迂回して南下する艦隊の左側面に敵がいる、つまり退路以外はすべて塞がれた状態にある事になる。

 

さらに直人が驚愕の報告を受け取る。

 

提督「レイテに敵がいないだと!?」

 

金剛「どう言う事ネー!?」

 

提督「偵察機からで、レイテ湾内は少数の戦闘艦と空母しかいないとのことだ。」

 

木曽「それじゃこの作戦は!!」

 

提督「作戦は失敗だ! 動きを察知されていたと見るべきだろう・・・待ち伏せだ! 空母は艦載機を全力出撃!! 俺の攻撃隊をレイテ偵察の景雲改に誘導させる!」

 

羽黒「わ、私たちはどうするんですか!?」

 

提督「第1水上打撃群は海峡へ! 第1艦隊は正面の敵に当たれ! 1水戦は俺と一緒に左側面の敵を叩く! 空母は上空に飛来する敵機を1機でも多く叩き落とせ!!」

 

一同「はい!!」

 

提督「各艦隊単縦陣を組め! 突撃する、但し頃合いを見て退くぞ!」

 

 

必要な指示を出し終えると、直人達は三群に分かれて戦闘を開始した。

 

 

~1水戦&提督~

 

提督「お、多くね!?」

 

神通「多い、ですねぇ・・・。」

 

因みに先頭は神通で、響・雷・雪風・初春・夕立、最後尾に直人が位置する。

 

夕立「私に先陣切らせて欲しいっぽい!」

 

提督「さっき十分勝手な行動をしたんだから我慢しろ。」

 

夕立「うー、暴れたりないっぽい!」

 

提督「落ち着けし。」(猛犬かこいつは―――猛犬と言えばケルト神話のクー・フーリンだな、割と皆知らないけど、あの英雄も『クランの猛犬』の異名を持つんだよな。)

 

何の話だと。

 

雷「距離7,000!」

 

提督「近いな、よし、ファイエル!!」

 

雷「てーっ!」

 

神通「主砲斉射!」

 

 

ダダダダダダダダダダダダンダダダダダンダダダ・・・

 

 

提督「流石にこの数の連続射撃だと凄いな、音が被ってる。よーし俺も、いっけぇぇぇ!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

ズドドドドドドドォォォォォーーー・・・ン

 

 

夕立「ひゃっ!?」

 

主砲射撃のブラスト圧の余波で夕立がつんのめる。

 

提督「おお、ごめんごめん。」

 

夕立「いいっぽい、それより敵を撃つのに集中するっぽい!」

 

よっぽど素直ないい子なのかそれとも暴れたくて構ってられないか、どっちかかな。

 

(※なお両方の折衷案だった模様)

 

提督「ではお言葉に甘えさせて頂きましょう!」

 

響「敵第1斉射、来るよ!」

 

 

ドドドドドドドドォォォーーー・・・ン

 

 

雪風「ああっ! 至近弾です!」

 

提督「大丈夫か?」

 

駆逐艦は装甲が無きに等しい。故に至近弾でも被害を生じるケースが珍しくない。

 

雪風「まだいけます!」

 

提督「よし、取り舵45度! 敵にイの字にかぶさる形で雷撃戦をやるぞ!」

 

神通「雷撃戦法、ですね。」

 

提督「そうだ、いそげ!」

 

敵には戦艦がいるし、即応はしにくい筈だ。

 

提督「よし、さっきの第1斉射で合計12隻は沈んだな。」

 

うち9隻が俺の戦果ですがね、一撃必殺は王道だと思います。

 

 

~第1艦隊~

 

扶桑「2列縦陣に組み替えて下さい、隊列を短くしたいので。」

 

そう言いつつT字有利の状況を作り上げて行く扶桑さん。

 

最上「分かった!」

 

筑摩「単縦陣という命令では?」

 

赤城「あれは提督のパッと思いついた指示です、ある程度の裁量がありますから、大丈夫です。」

 

伊勢「なら、異論はないね。」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

第1艦隊の陣形は、左列に扶桑・最上・伊勢・比叡・赤城、右列に山城・筑摩・日向・加賀・千代田の順、左列の間から右列が撃つ体制である。

 

因みに筑摩は直人の判断で第1艦隊に臨時派遣された増派である。

 

山城「距離、6,200です!」

 

扶桑「では、砲撃戦、始めて下さい!」

 

伊勢「ってーっ!」

 

赤城「撃ち方、始め!」

 

比叡「撃ちます! 当たってっ!」

 

 

ッドドォォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

この編成で組むのが初めてとは思えない列毎統制砲撃を行う第1艦隊、その効果は絶大であった。

 

比叡「敵リ級エリートに直撃弾4! 沈黙!」

 

扶桑「敵ル級クラスに命中3、大破です!」

 

山城「敵敵駆逐艦群に至近弾9、命中1、深海棲駆逐艦2隻撃沈、2隻に損傷を与えました!」

 

最上「敵重巡リ級に命中7、大破だね。」

 

筑摩「うーん、私は至近弾だけね。」

 

日向「私もだ。」

 

伊勢「敵軽空母ヌ級に命中弾5! そばにいた駆逐艦に命中弾1、2隻撃沈だね。」

 

近距離遭遇戦であるだけあって、流石に砲撃に失敗する距離ではない、全艦が砲撃を夾叉弾着させる。

 

赤城「敵駆逐艦ハ級1隻撃沈です。」

 

加賀「お見事です、赤城さん。私は命中弾無しです。」

 

砲撃可能な空母までも撃ちまくっている。

 

日向「敵の反撃、着弾来るぞ!」

 

 

ドドドドドドドドォォォォォーーーー・・・ン

 

 

最上「くっそぉ、直撃かよぉ、冗談じゃないよ!」

 

千代田「飛行甲板に火災!? 消してぇ!!」

 

日向「思わぬカウンターだな。」

 

扶桑「ですが退けません! 第二射、撃て!」

 

第1艦隊の奮戦と相前後して、艦隊主力たる第1水上打撃群も戦闘へ突入した。

 

 

~第1水上打撃群~

 

金剛「行きマスヨー! 摩耶サンは空母の護衛と敵機迎撃をお願いシマース!」

 

摩耶「任せとけ!」

 

的確な指示を飛ばす金剛、同時投入できる戦力は減るがこの場合は適切である。

 

金剛「よーし、全砲門、ファイア!!」

 

榛名「砲撃開始!」

 

羽黒「撃ち方、始めてくださぁーい!」

 

 

ドドォォォンドドォォォンドドォォォンドドォォォォーーー・・・ン

 

 

第1艦隊とは打って変わって各艦順次射撃での時間差攻撃を仕掛ける金剛達。

 

 

ドォォォーーーン

 

 

木曽「うおっ!?」

 

榛名「木曽さん、大丈夫ですか!?」

 

木曽「あぁ、至近弾だ。さて、俺に勝負を挑む、馬鹿はどいつだぁ!!」

 

 

ダダダダダダダァァァァァァーーーン

 

 

木曽が裂帛の気迫と共に彼女を狙った敵艦に順次砲撃を放つ。

 

この部隊の砲撃中の艦娘はたった4人、だが、それぞれが榛名や千代田も含めてたたき上げのベテランである。

 

金剛などは1斉射ごとに2隻は沈めている有様である。

 

榛名「金剛お姉さん、相変わらずお強いのですね・・・。」

 

金剛「まだまだこれからデース! ファイアー!!」ドドドドォォォーーー・・・ン

 

摩耶「近づく敵機は、あたしが全部叩き落とす!!」ドドドドォォォォーーーン

 

羽黒「私だって、負けられませんね・・・!」

 

金剛と摩耶に触発され、この部隊の士気は第1艦隊や1水戦より高かった。

 

多聞「金剛、攻撃隊を突入させる、一旦後退してくれ。」

 

いつの間にか飛龍の肩の上に乗っていた多聞丸が指示を出す。

 

金剛「Oh、山口提督直々のご指示ですカー。OK! では一旦後退デース!」

 

榛名「はい!」

 

摩耶「了解!」

 

飛龍「よーし、皆、やっちゃって!」

 

その言葉と共に飛龍攻撃隊が蒼空を切り裂くように降下、蒼龍と飛鷹の攻撃隊がこれに続く・・・

 

 

 

序盤は近衛艦隊のペースで戦闘は推移した。

 

各艦隊ともに寡兵よく奮闘し、敵艦隊と互角に砲火を交えていた。

 

しかし、破局はすぐそこに、既にやって来ていたのである・・・。

 

 

 

~1水戦&提督~

 

神通「魚雷発射!」

 

提督「副砲斉射ぁぁぁ!!」ドゴオォォォォォォーーーー・・・ン

 

神通達が魚雷を一斉に放ち、直人は副砲を一斉射撃する。

 

凄まじい轟音は敵の目を欺くのに十分であり、魚雷発射は気付かれなかった。

 

数秒後、まず80cm砲弾が敵先頭に降り注ぎ、密集していた軽巡3隻と駆逐艦2隻を瞬時に葬る。

 

その次に神通達の放った魚雷が殺到し、水柱が何本も立ち上るのが視認できた。

 

提督「・・・流石神通、よくここまで鍛え上げてくれた。」

 

神通「皆の飲み込みが、早かったからですよ・・・。」

 

提督「それは教え方も良かったという事だ。」

 

神通「私なんてそんな・・・恐縮です。」

 

この状況でも余裕を見せる直人である。

 

雪風「しれぇ! 私の魚雷も当たりましたよ!」

 

提督「はしゃぐな雪風、慢心は禁物だ。」

 

雪風「はい!」

 

提督(元気な奴だ・・・)

 

響「敵弾来るよっ! 雪風!!」

 

雪風「ふえっ!?」

 

 

ドドゴォォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

雪風「うっ、もーっ、でもっ、し、沈みませんから!」

 

雷「雪風、大丈夫!?」

 

初春「敵弾、更に来るぞ!」

 

 

ドドドドズガアアァァァァァァァーーーン

 

 

雷「きゃああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

雷の周囲に多数の砲弾が弾着する。その内一つは火柱だった。

 

提督「雷!!」

 

雷「なによもう! 雷は大丈夫なんだからっ!」

 

提督(くっ、敵が急に勢いづいた、一体何が!?)

 

直人は急激な状況変化の中で考えうる可能性を急いで思案した。

 

神通「雪風さん、雷さん! 下がって下さい!」

 

雷「わ、分かったわ!」

 

初春「退かねばまずいぞ! ここままでは押さえきれぬ!」

 

提督「分かってる―――ッ!? 9時半方向雷跡! 雪風避けろ!!」

 

雪風「えっ?」

 

雪風が気付いたときには遅かった。損傷を負った雪風では緊急回避は不可能だったのだ。

 

提督「雪風――――!!」

 

 

ドオオオォォォォォォォォーーーーーー・・・ン

 

 

 

 

魚雷が命中する、雪風の小さな体は宙に吹き飛ばされた。

 

雪風(もう・・・ダメ、なのかな・・・しれぇ、皆・・・。)

 

“さよなら”

 

 

 

 

直人らの事前の入念な作戦立案の中で提起された危惧は、現在その最悪を行っていた。そして、同じような惨劇は別の艦隊でも起こっていた。

 

 

~第1水上打撃群~

 

金剛「な、何デスカー!? アレは!!」

 

金剛達の眼前には、巨大な3連装砲塔を幾つも持った巨大なシルエットの深海棲艦がいた。

 

ライトブルーの瞳は薄氷を思わせるような冷たい目、瞳と同じ髪色のショートヘアに、白黒で裾がスカート仕立ての巫女服、そして膝より高いブーツの様な黒い装甲を纏った長身の深海棲艦。

 

???「海ノ底ヘ、沈メェ!!」

 

 

ズドドドドドドドドォォォォォォーーーー・・・・ン

 

 

その主砲は56cm60口径砲であった。

 

金剛「オオオオオオオオ!?」ドドドドォォォォォーーーー・・・ン

 

 

ドガガガアアアアアアァァァァァァァァーーーー・・・ン

 

 

飛龍「キャアアアァァァァァァァァァァッ!!」

 

摩耶「飛龍!! くっ!!」

 

金剛「飛龍サン!!」

 

金剛が被弾した飛龍に駆け寄る。

 

飛龍「金剛、さん・・・あいつを・・・倒さなきゃ・・・。」

 

金剛「何を言ってるんデース! 提督、紀伊提督聞こえますカ!?」

 

 

 

~第1艦隊~

 

 

ドガァァァァァァァーーーー・・・ン

 

 

最上「ああああっ!!」

 

日向「最上!!」

 

加賀「なっ、あれは・・・!」

 

 

ドガアァァァァァーーーー・・・ン

 

 

赤城「きゃああっ!!」

 

加賀「赤城さん!!」

 

赤城「くっ・・・。」

 

赤城は、自分を砲撃した相手を睨みつけた。

 

背は低いが、尻尾の武装は戦艦級のそれ、いや、空母のそれすら併せ持つハイブリッド戦艦。

 

青い眼光を放ち、その口は不気味な笑みを浮かべる。

 

山城「あれが、噂に伝え聞くレ級深海棲戦艦、ですか。」

 

量産型超兵器級、とまで呼ばしめるレ級の一撃が、瞬く間に彼らの戦意を削ぎ取りつつあった。

 

加賀「赤城さん、大丈夫!?」

 

 

普段鉄面皮を崩さない加賀もかなり動揺している。

 

赤城「一航戦の誇り、ここで失う訳には・・・!」

 

扶桑「提督、提督! 許可を、撤退のご許可を!」

 

 

 

~1水戦&提督~

 

雷「雪風ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

雷の絶叫が、辺りに響き、虚空に吸い込まれてゆく。

 

猛煙と水柱が晴れてきたその向こう・・・

 

 

 

 

 

 

その向こう側に、『雪風を抱きかかえた直人』がいた。

 

 

雪風「・・・う、うう・・・ん・・・。し、しれぇ?」

 

提督「全く、お前は大した幸運艦だよ、脚部艤装が全部壊れただけで、素足に傷一つないなんてな。」

 

確かに雪風の脚部艤装は吹き飛んでいたが、その露出した素足に傷は無かった。

 

雪風「ごめんなさい、私がはしゃぐからこんな事に・・・」

 

提督「戦場ではよくある事さ、気に病む事は無い。それに・・・」

 

雪風「・・・?」

 

提督「俺はバッドエンドは嫌いなんだ。俺の司令部に来た以上、是が非でも生き残って戦ってもらうぞ。そして、最後に全員揃って笑って終わりたいんだ。」

 

雪風「司令・・・。」

 

神通「提督!」

 

神通に呼びかけられた直人はこくりと頷くと命令を発した。

 

提督「撤退する! 無事な艦は敵を牽制しつつ後退しろ! 可及的かつ速やかに現海域を離脱する!!」

 

金剛「“提督、紀伊提督聞こえますカ!?”」

 

扶桑「“提督、提督! 許可を、撤退許可を!”」

 

無線で撤退命令の具申をしてくる二人、腹は既に決まっていた。

 

提督「各艦隊急ぎ撤退しろ! ルソンの北で落ち合おう!!」

 

金剛&扶桑「“はい!”」

 

提督「ん! 俺の攻撃隊からト連送だ、今の内に逃げるぞ!」

 

1水戦各艦「はい!」

 

 

~第1水上打撃群~

 

金剛「私が殿を引き受けマス! 早く!!」

 

羽黒「でもそれじゃぁ金剛さんが!」オロオロ

 

金剛「羽黒サン。」

 

羽黒「え?」

 

金剛「私を、信じて下さい。」ニコリ

 

金剛はこの様な絶望的状況で笑って見せた。最早勝算など無きに等しいこの状況で。

 

羽黒「・・・は、はい。」

 

摩耶「安心しろ羽黒。金剛はああ見えても強いんだよ。」

 

金剛「『ああ見えて』は余計デース!」ムキーッ

 

摩耶「落ち着けって・・・。さ、行こう。」

 

羽黒「―――はい!」

 

羽黒は摩耶に諭され、飛龍に肩を貸しつつ離脱していく。

 

金剛「サテ、後退の時間は、稼がないとネー?」

 

摩耶「―――全く、アタシの腹の内までお見通しだったか。」

 

金剛「当然デース、手伝ってもらいマスヨ?」

 

摩耶「仕方ねぇ、付き合ってやるよ!」

 

 

 

~第1艦隊~

 

加賀「私の攻撃隊で気を引きます、その間に逃げましょう。」

 

山城「そうね。」

 

扶桑「お願いします。撤退します!」

 

加賀「千代田さん、筑摩さん、赤城さんを安全な所に。」

 

二人「はい。」

 

 

 

こうして、3つの艦隊は四分五裂の有様で、何とかルソン島の北岸へ向かい退却を始めた。

 

いずれの艦隊も負った損傷は大きく、一部は沈没の危機に見舞われたが、金剛と摩耶の奮戦と加賀の牽制攻撃、無駄に終わるかと思われた紀伊航空隊の急襲により、それでも何とか離脱に成功したのであった。

 

 

 

17時半になって、艦隊はようやくルソン島北岸のアパリ沖合60km付近、フーガ島とカミギン島の中間地点の海域に集結を終えた。

 

提督「手酷くやられたな・・・。」

 

こんな事なら修理装備までパージして出撃するのではなかったと後悔する直人である。

 

損害状況を集計すると以下の通りになる。

 

 

大破:綾波・雷・最上・赤城

中破:金剛・山城

小破:日向・千代田・扶桑・初春

艤装全損:雪風・飛龍

 

 

反論の挟みようのないような敗北であった。

 

中には追撃中に姉をかばって損傷したり(山城)、流れ弾に当たって損傷を受けたり(初春)と、割とシャレにはなっていない状況だった。

 

提督「・・・。で? いるんだろ青葉、出てこい。」

 

一同「!?」

 

直人の言葉に驚く一同、数瞬の静寂が訪れる。

 

・・・。

 

青葉「あはー、バレてましたか。」

 

フーガ島側の闇の中から現れる青葉。

 

提督「逆に何故隠れられると思ったのかが気になる。確か別の鎮守府に行ってるんじゃなかったっけ?」

 

前章の編成表に青葉がいなかったのはそのせい。

 

青葉「その別の鎮守府というのがマニラ基地でして。」

 

提督(迂闊だったな・・・。)

 

青葉「だって、正体不明の深海棲艦と聞いたんじゃ居ても立ってもいられませんよ!!」

 

その声に直人は

 

提督「出たのか!?」

 

と言い、

 

金剛「そういえば・・・」

 

榛名「確かに・・・」

 

羽黒「言われてみれば・・・」

 

摩耶「いたな・・・。」

 

第1水上打撃群の面々が口を揃えてそう言った。

 

提督「マジか!?」

 

青葉「バッチリ撮ってきました!」ペロッ

 

舌を出しながら自慢げな笑顔で言う青葉。

 

提督「・・・よく無事だったな・・・。」

 

全く以て、持つべきは優秀な部下である。

 

青葉「艤装なしで陸地から撮りましたから、そうする分には人間と同じ隠匿行動が出来ますよ!」

 

提督「という事は水平角で・・・ハッ、見せてくれ!」

 

青葉「ギャラはいくら貰えますかね?」

 

提督「え、ギャラ取るの?」(焦

 

青葉「冗談です♪」

 

提督(こいつは・・・)^^

 

青葉「ギャラ取らないのは提督だけですからね?」

 

俺以外にはギャラ取るのか・・・。

 

提督「そ、そうか・・・ありがと。」

 

青葉「いえいえ。んで、えーっとですね・・・あっ、これです。」

 

提督「どれどれ・・・?」

 

金剛「・・・」ニュッ

 

直人の肩越しに金剛もカメラの液晶を見る。

 

そのスクリーンには、間違いなく金剛達の見た巨大深海棲艦が。

 

金剛「アアアァァァァァァァァ―――ッ! コイツデース、飛龍を撃ったのは!」

 

提督「~~~~~!?」キーン

 

耳が飛びました、はい。

 

 

1分後

 

 

提督「金剛、声の加減を覚えてくれ・・・。」

 

金剛「ソーリーネー。」^^;

 

そう言いつつも直人は深刻な表情になる。

 

提督「―――こいつは・・・、金剛、こいつは何か話したか?」

 

金剛「確かに何か言ってマシタ、それがどうしたんデース?」

 

提督「片言で? それとも流暢に?」

 

そう聞くと金剛は

 

金剛「カタコトデース。」

 

と言った。それを聞いてないとは一つホッとした。

 

提督「そうか、そいつは運が良かった。」

 

金剛「・・・? どう言う事デース?」

 

おう読者の声代弁すなや(クッソメタい作者の声)

 

提督「・・・端的に言えば、こいつは超兵器級と呼ばれる深海棲艦だ。」

 

金剛「じゃぁまさかコレが・・・!?」

 

提督「そうだ、超兵器級深海棲戦艦『播磨(はりま)』だ。だが片言だという事を加味すれば、こいつは劣化クローン版だな。」

 

深海棲艦にもオリジナルとクローンがいる事がこの時点でも分かっている。オリジナルとなり得るのは上位知能体と呼ばれる上級個体で、複製する場合その能力は一段劣るとされている。

 

提督「そうか、こいつが謎の巨大兵装を持ったとんでもない強さの艦の正体か、なら合点がいく、播磨は56cm60口径3連装砲塔を11基装備していた超巨大双胴戦艦だったからな。」

 

金剛「播磨・・・、あの艦は美しい艦(フネ)デシタ・・・。」

 

榛名「そうですね・・・それがあんな姿に変わってしまうなんて・・・。」

 

提督「かつての播磨を、今でも覚えているのか?」

 

と問うてみた。

 

榛名「はい、トラック泊地にもその姿を浮かべ、第3次ソロモン海戦ではワシントンとサウスダコダを一瞬で屠り、第4次ソロモン沖海戦では単独で敵陣を食い破ってガタルカナル島を砲撃、レイテ沖海戦では米超兵器戦艦リヴァイアサンを食い止め艦隊の撤退を援護、その後刺し違えて沈みました。」

 

提督「そうか、伝え聞く通りなのだな。」

 

榛名「帝国海軍最強の戦艦でした。」

 

間違いないわな。

 

まぁ、播磨より強力な艦砲を持つ超兵器なんてごまんといた、つまり火砲面では中の下だったんだよね、怪力線とか80cm砲とか波動砲とか重力砲とか枚挙に暇無し。

 

提督「そう言えばさっきから深海棲艦の負の魔力の気配が微かにするんだが・・・。」

 

金剛「あー、これですネー?」

 

と言って取り出したのは深海棲艦の残骸。

 

一同(青葉&雪風除く)「皆拾ってますよ?」

 

提督&青葉「ええええええ!?」

 

直人は声を抑えつつ叫んでいたが。

 

提督「よくそんな隙があったな・・・。」

 

こいつらスゲェなと思う直人でした。

 

初春「そんな事より、ここからどうするつもりじゃ?」

 

提督「撤退しかあるまい。雪風はこんな有様だし、飛龍を始め負った損害も大きく、戦える状態であるとは、お世辞にも言い難い。」

 

お姫様抱っこで抱きかかえている雪風に視線を落としながら告げる直人。

 

雪風は安堵からか眠っていたが。

 

初春「しかし、敵前撤退は危険も大きい筈じゃが、勝ち目はあるのかえ?」

 

そう、敵は現在もこちらへ向けて追撃中なのだ。

 

提督「ある。」

 

だが確固たる自信で言い切る直人。

 

初春「ほう、で、その根拠は?」

 

提督「俺は無傷だ。」

 

初春「―――貴様まさか!」

 

その、まさかである。

 

提督「俺が殿張ってる間に逃げろ。横須賀に、真っ直ぐな。」

 

初春「貴様、何を言っておるのか分かっておるのかえ?」

 

提督「無論だ。一度死に損なった命だ、失うのも惜しくはない。」

 

金剛「・・・分かりマシタ。」

 

摩耶「んじゃ、行くか。」

 

提督「!」

 

二人のその一言に驚く直人、そしてその一言に驚き振り返って金剛を凝視する初春。

 

初春「金剛!?」

 

金剛「但し!」

 

叩き付ける様に声を出す金剛、一拍置いて二の句を告げる。

 

金剛「必ず、必ず生きて帰るコト、いいですネ?」

 

それを聞いた直人はこう答えた。

 

提督「・・・フッ、艦隊総旗艦のお前に言われてしまったら、死ぬ訳にもいかんか。」

 

金剛「私の為だけじゃアリマセーン。」

 

提督「・・・?」

 

疑問符3つ浮かべて首を傾げる直人だったが、その答えはすぐに返って来た。

 

金剛「私達『全員』の為に、帰ってきて下さい。」

 

提督「・・・!」(・・・フッ、そうだな、死なば諸共だが、死ねばこいつらが悲しむ、か。)

 

そう思い至り、皆を見渡しながら直人は言った。

 

提督「・・・あぁ。誓って必ず帰る。だから俺を信じて、行ってくれ。雪風を頼む。」

 

金剛に眠っている雪風を託す直人。その瞳にはそれまでの暗く弱い光ではなく、覚悟を決めた鋭い光が宿っていた。

 

金剛「了解デス。皆サン、行きますヨー!!」

 

初春「じゃが・・・」

 

金剛「提督の命令デス、置いて行きますヨ?」

 

初春「・・・致し方ないの。」

 

そして金剛を最後尾に艦娘達が離れていき、直人はそれに背を向けて立つ。

 

提督「・・・金剛!」

 

ふと思い出した事があり金剛の名を呼ぶ。

 

金剛「―――なんですカー?」

 

提督「前に、帰ったら紅茶御馳走してくれるって言ってたよな。」

 

それは、南西諸島沖の一件の際、金剛が大破していた為流れた約束だった。

 

金剛「・・・忘れてマシタ。」

 

提督「そうだな――――この海戦が終わって、俺が帰ったら、お前の紅茶、御馳走してくれ。とびっきり旨いのを頼むぞ!」

 

一言一言紡ぎ出すように言う。

 

金剛「・・・分かりました! カップとスコーン用意して、待ってるネー。」

 

そう言って優しい笑みを浮かべる金剛であった。

 

直人はそれを自分の肩越しに見やり、日暮れの水平線に現れた敵に向き直る。

 

金剛「グッドラックデース!」^^)b

 

提督「サンキュ!」(`・ω・´)b

 

そうして二人は分かれ、一方は彼女らの家に、もう一方は硝煙の渦に、それぞれ突撃した。

 

 

超巨大機動要塞戦艦「紀伊」と、数千の深海棲艦との戦い、『アパリ沖退却戦』の火蓋が、こうして切って落とされた。

 

 

 

5月2日17時06分 アパリ沖

 

 

直人「フルオープンアタック!! 蛟龍達も頼む!」

 

艦載機も全力で放ち、海中、海上、空中三正面からの立体航空砲雷撃戦体制を敷く。今回は景雲改も80番(800㎏)爆弾1発を装備して爆撃に向かう。

 

先手を取ったのは直人、30cm速射砲を皮切りに主砲も副砲も全火器を総動員して、密集突撃してくる敵先頭集団に対し攻撃を加える。

 

 

ドドドドドドドドドド・・・ォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

数知れぬ爆音と共に、1斉射50隻単位で沈んでいく深海棲艦だったが、その勢いは衰えない。

 

提督「オラアアアアアアアアアアアア!!」ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・

 

発せられた砲煙が、次から次へと放たれる砲の起こすブラストで渦を巻く。それだけで彼の姿までも覆い隠す程だ。

 

提督「フッ、横須賀の時より多い! が、的を絞らずとも勝手に当たるっ!」

 

その言葉通りであった。別に見えずとも、彼の艤装に組み込まれた射撃指揮管制は、視界を必要としない艦娘のそれより遥かに進んだシステムである。しかし薙ぎ倒されていく敵の前衛は、どれも軽巡や駆逐艦クラスばかり。

 

提督「指揮統制が取られている様だな、だが関係は、無い!」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドォォォォォォーーーー・・・ン

 

 

 

17時12分 バシー海峡

 

 

雪風「う・・・ううん・・・?」

 

金剛「お目覚めですカー?」

 

雪風「金剛、さん・・・? しれぇは?」

 

金剛「提督は今、私達を逃がす為に、一人戦ってマース。」

 

雪風「そう・・・ですか・・・。」

 

雪風は不安を覚えた様で、表情を暗くした。

 

夕立「うう~~~・・・」

 

唸る夕立に神通が声をかける。

 

神通「夕立さん、どうかしましたか?」

 

夕立「~~・・・、やっぱり我慢できないっぽい。」クルッ

 

そう言って身を翻す夕立、それに同調する艦娘がもう一人。

 

摩耶「俺も戻るぜ。心配だしよ。」

 

初春「馬鹿者ッ、戻れ!!」

 

初春は止めるが金剛がそれを遮った。

 

金剛「いえ、行かせてあげまショー。」

 

初春「なに?」

 

金剛「アノ二人は、指示に従うよりも自由に動いた方が戦える子ネー。それに、一人じゃやっぱり心配デース。」

 

初春「はぁ~・・・。」

 

一人顔を覆って深くため息をつく初春。しかし金剛の見る目は、確かに二人の本質を見抜いていたのだった。

 

 

 

17時19分

 

 

播磨「ソコマデヨ!」

 

提督「おっと、おいでなすったか。」

 

現れたのは写真にも写っていた深海棲艦、播磨。但しクローンではあるが。

 

播磨「随分トヤッテクレタヨウネ・・・。」

 

提督「生憎と俺たち提督はそれが仕事なもんでね。」

 

間違ってはいない。(提督がこの場にいる事がおかしいだけ。)

 

播磨「貴方ガ噂ノ『紀伊』ネ?」

 

提督「ふーむ、俺の事は深海でも有名であると見える、こいつは参ったな、ちょっとした人気者か。」

 

照れるなぁ、と言いたげに頬を掻く直人。

 

播磨「イイ噂ナンテ無イワヨ?」

 

提督「そりゃそうさな。こんな感じで深海棲艦を何度も大量虐殺した犯人だし。」

 

播磨「自覚ガアルトハ性質ガ悪イワネ。」

 

提督「そりゃ、お互いさまじゃないかな?」

 

そっくりそのままその言葉を返したい直人である。深海棲艦も過去幾人殺した事か、被害者リストでも作ろうものならA3判でも数百枚は下るまい。

 

播磨「・・・ソウネ。私達の『目的』ノ為、ココデ死ンデモラウ!」

 

提督「その目的とやらを話して貰えれば、生かして帰すんだけどねぇ。」

 

播磨「ゴタクハココマデヨ。」

 

提督「そうかい、少しは話せると思ったんだが、残念だね。」ジャキッ

 

数瞬の沈黙の後、両者は同時に戦端を改めて開く。

 

 

ドドォォォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

ズドオオオオォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

直人の120cm砲、播磨の56cm砲、二つの巨砲が轟音を響き渡らせる。

 

提督「ここは退かぬ、あいつらを無事に帰す為に!!」

 

 

ドドドドドドォォォォォォーーー・・・ン

 

 

播磨「私達ハ勝ツ!私達ノ目的・・・イエ、悲願ノ為ニ!」

 

 

ドオオオオォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

提督「ッ!!」ザバァッ

 

咄嗟に危険を感じた直人がバーニアも点火して後ろに飛ぶ。が・・・

 

 

ドガアアァァァァァァァァァァァーーー・・・ン

 

 

提督「くあああっ!!」

 

 

避けきれず被弾する直人だったが、姿勢を整えて後方へ着水する。

 

提督(ぐっ、左舷に1発貰った・・・!! 飛行甲板は大丈夫、左舷潜航艇発着口か・・・!)

 

しかしすぐに反撃する。

 

 

ドドガアアアアァァァァァァァァァァァァ・・・ン

 

 

播磨「アアアアアアアアッ!? グアアアアアアアアアアア!!」

 

少し遅れて播磨に120cm砲弾2発と複数の80cm砲弾が弾着する。

 

提督「フッ、まぁ、どっこいどっこいじゃ済まさんがね。」

 

播磨は56cm砲弾を想定した防御しか施していない為、80cm砲弾はまず受け止めきれない。120cmならなおさらである。

 

巨体故に轟沈しないのが超兵器でもあるが。

 

提督「ぶっ飛べぇ!!」

 

 

ドドォォォォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

播磨「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

ズドドドォォォォォォォーーー・・・ン

 

 

播磨は先の一撃で戦闘力を既に3分の1失い、一斉砲撃も出来なくなるほど理性を喪失していた。

 

まぁ必死ですわな。

 

提督「2度は食わぬ。」キイィィィィィィィィ・・・ン

 

 

ザバアアアァァァーー・・・ン

 

 

播磨「―――ハ!?」

 

播磨は虚を突かれた。夕立に倣った戦法だ。

 

提督「これでも・・・」ガシャンガシャンガシャン・・・ガコン

 

直人がウラズィーミルの射撃体勢を整える。空中で。

 

その真下では播磨の砲弾が着弾し水柱を挙げる一方で播磨は再び120cm砲を被弾していた。

 

提督「食らっとけえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

ドォォンドォォォォーーーン

 

 

播磨「ソンナモノニ当タルカ!」グッ

 

播磨が回避に移る為に足に力を込めたその瞬間・・・

 

 

ズドドドドォォォォォーーーー・・・ン

 

 

突如播磨を襲う雷撃、その威力は回避行動を阻止するに足りた。

 

播磨「グアアアアアァァァァァァッ!! ナッ、ナンダッ!!?」

 

提督「いけええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

播磨「ナッ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオ・・・

 

 

横須賀沖の火焔地獄再び。

 

それも今度は爆心地に手負いの超兵器を巻き込んでの一撃、効果は絶大であり、一帯が紅一色に染めあがる。

 

提督「・・・うーん、熱帯ではそこまで温度上がらないか。」

 

どうやら湿気までまとめて蒸発させるという事は無いらしい。

 

 

ゴオオォォォォーー・・・

 

 

提督「ふぅ、やったかな?」ザバアァッ

 

爆炎に包まれた敵を見遣る直人の傍に、1隻の小さな潜水艦が浮上する。

 

提督「お、蛟龍ちゃん、お疲れさま。」

 

蛟龍妖精「!」ビシッ

 

蛟龍ちゃんは敬礼を交わすと無傷で残る紀伊の右舷甲標的発着口に入っていく。先程の不意の雷撃は、この甲標的の後を継ぐ特殊潜航艇『蛟龍』達によるもの。完璧な連携である。

 

 

―――が

 

 

ドドドドドオオオオォォォォォォーーーーーー・・・ン

 

 

爆炎と煙が立ち上り、轟音と衝撃が大気を揺らす。

 

そしてその中心にいたのは・・・

 

提督「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

他ならぬ直人であった。

 

直人「ガホッ、ゴホッ・・・!!」

 

喀血する直人、負った損傷は手酷いものであった。

 

左舷腰部艤装半壊、右舷副砲の大半が使用不能、左の120cm砲が使えなくなり、更にブースター全てが動かせず、本人の体にも一発直撃して左のアバラが2本骨折、更に衝撃で体内にまで損傷を生じていた。

 

提督「くっそ―――カッコつけなきゃよかったかな・・・。」

 

播磨「フン、ドウヤラ、コレマデノヨウダナ、紀伊ヨ。」

 

提督「―――ヘッ、沈没寸前の癖に粋がりやがって。」

 

息も苦しい状態で直人が言う。

 

播磨「デモ、ワタシタチノ勝チヨ。」

 

提督「貴様の部下も全滅してるがな。」

 

播磨「1個艦隊ハレイテニ戻シタワ。」

 

提督「っ!」(先程から急激に敵が減ったのは、それか―――!!)

 

直人は自らの失策を知った。

 

播磨「サァ、ソロソロ死ンデモラウワ。」ガシャ

 

提督「ただでは―――死なん!」ガコッ

 

互いにその主砲を構える。

 

そのまま寸刻の静寂が訪れた―――その時

 

夕立「提督さんの事は、私達が守るっぽい!!」バシャバシャッダンダンダンダン

 

摩耶「深海棲艦風情が、粋がってんじゃねぇ!!」ドドドドォォォォーーーン

 

ダイナミックな立体機動で魚雷を投げつつ砲撃を繰り出す夕立と、主砲で牽制しながら直人に近づく摩耶。

 

播磨「ナッ!?」

 

提督「お前達!」

 

摩耶「提督、大丈夫か!」(あぁ~、こういうセリフ一度言ってみたかったんだよなぁ♪)

 

提督「馬鹿野郎! なんで戻ってきた!」

 

そう言う直人であったが、怒鳴り方に勢いがない。

 

摩耶「全く、こんなヒデェザマの癖によ、素直に礼を言えばいいのに。それよりあいつを撃て!」

 

提督「あっ、あぁ!」

 

直人は、残された1門の120cm砲―――それも給弾機構の壊れた最後の一弾を放つ。

 

 

ドオオォォォォォーーーーー・・・ン

 

 

夕立「おっと!」バッ

 

射線上にいた夕立は紙一重でこれを躱す神業を披露する。

 

播磨「ソンナッ・・・!!」

 

播磨は突如として現れた夕立の身軽さに動きを封じられていた―――

 

 

ドガアアアアアアァァァァァァァァァーーーーー・・・ン

 

 

一際大きな爆発、それが播磨の断末魔であった。

 

播磨「イツカ、青イ・・・静カナ海ヲ・・・見タかった・・・」

 

18時丁度、超巨大双胴戦艦播磨、沈没・・・

 

提督「・・・。うぐぅっ!?」ズキイィッ

 

今まで嘘のようになかった痛覚が突然復活し、目を白黒させながら膝をつく直人。

 

摩耶「提督!?」

 

そして慌てて駆け寄る摩耶様でした。

 

 

 

同刻 台湾東北東沖

 

 

金剛「提督達、大丈夫なんですかネー?」

 

最上「大丈夫、と、思いたいのは皆、一緒だと思うよ。うぐっ・・・!」

 

榛名「最上さん、無理して喋らない方が・・・。」

 

赤城「信じましょう。提督を。」

 

加賀「そうね・・・。」

 

 

 

割と大丈夫じゃないけど生きてるからまぁよし。(良くねぇぞオイ)

 

 

 

18時08分 バシー海峡

 

 

摩耶「提督~、しっかりしろって。痛むのか?」

 

提督「そ、そりゃぁな。」

 

夕立「もうあんな無茶しちゃダメっぽい!」

 

満身創痍の身でありながら、直人はいつもの態度を崩さない。

 

提督「フッ・・・お前が言うか。」

 

夕立「こっちこそ提督さんには言われたくないっぽい!」

 

提督「自覚があるなら、結構。」

 

夕立「提督さんは自覚あるっぽい?」

 

提督「終わってみればね。」

 

結局自力航行は無理だった為、摩耶の肩を借りて曳航してもらう直人。

 

提督「すまん、心配かけたみてぇだな、助けてくれてありがとな。」

 

摩耶「ほんとだぜ。アタシ達が間に合って無かったら、今頃死んでるぞ。」

 

提督「確かにな・・・。けど、何より大切なお前達の事を考えたら、いつの間にか腹括ってたんだ。」

 

摩耶「そうか・・・。」(大切!? 今大切っつったか? あたしに向かって!?)

 

夕立「提督さん、嬉しいっぽいけど、あんな無茶はもうやめるっぽい。」

 

提督「ハハハ、肝に銘じておこう。」

 

折れた左の肋骨の辺りが痛むのを必死で我慢している直人でした。

 

摩耶「・・・ヘッヘヘヘヘ・・・///」デレデレ

 

そして何やら妄想に耽っている摩耶さんでした。

 

夕立「ん? 摩耶さん、どうかしたっぽい?」

 

摩耶「なっ、なんでもねぇよっ!」

 

 

 

強行軍で再び直人達が司令部に帰り着いたのは22時少し前になった。

 

ドックには金剛を始め主だった艦娘達が詰めていた。

 

金剛「見えましター! って、提督ゥー!?」

 

大淀「提督・・・ご無理をなさって・・・。」

 

天龍「おいおい・・・。あんなボロボロにされた提督を見たことねぇぜ俺は。」

 

白雪「皆そう、だとおもいます。」

 

大淀「そうですね・・・。」

 

そう言葉を連ねてはいたが、心底その生還に安堵していた事は事実だった。

 

初春「全く・・・紀伊直人、貴様という奴は・・・。」

 

局長「オーオー、マタ手酷クヤラレタモンダナ。」

 

今回もどこからともなく現れた技術局。

 

ワール「直せるかしら?」

 

局長「直スシカナイダロ。」

 

雷「提督の治療は私の担当ね。」

 

生体保全/医療課統括として雷と白雪(後方勤務兼務で雷のアシスタント、普段技術局の仕事は無い)が加入していたが。

 

ワール「まぁ、その辺は任せるわ。」

 

明石「あちゃぁー、あんな立派だった艤装がボロボロじゃないですか。」

 

雷「あ、明石さん!」

 

明石「確か図面はあるから何とかなると思う。資源の消費が少ない、とは言えないけど。」

 

そりゃぁコスト対効果はそれなりに高いが代償が比べ物にならないほど重い。

 

通常の艦娘機関ではなく局長が超兵器用艦娘機関に改修して、燃費が下がったとはいえ修理コストは若干増大したのだ。

 

局長「ヨシ、デハ一仕事始メヨウカ、明石。」

 

明石「え、えぇ!」

 

金剛「提督!」

 

提督「よぉ金剛、約束通り、帰ったぞ。見ての通りのザマだがね、ハハハ・・・。」

 

金剛「命あってのなんとやらデース、雷サン、お願いシマース。」

 

雷「えぇ。妖精さん達担架を、司令官を技術局の病棟に、急いで!」

 

白雪「私は治療の準備を。」

 

雷「お願い。」

 

結局直人はその豪運を以って、今回“も”命を長らえたのだった。

 

天龍「よっしゃお前ら! 艤装『紀伊』を造兵廠まで運べ!」

 

陸戦隊の出番がここでもあった。

 

ペンギン【私たちに何か出来る事は無いです?】

 

ひょっこり現れたのはペンギンさん。と、綿雲ちゃん。

 

明石「・・・じゃぁ造兵廠の機械の準備、お願い!」

 

ペンギン【ラジャー!】

 

綿雲【分かりました。】

 

造兵廠の方に歩き去る(飛び去る)2体。

 

一同(明石以外)「・・・。」

 

そして唖然となった一同。

 

響「・・・、あのペンギン達、機械使えるの?」

 

明石「可愛い弟子です。」^^

 

響「そ、そうか・・・。」

 

なんでペンギンがメカニックなのかと思わず聞きかけた響だったが敢えて聞かないでおいた。突っ込んだら負けな気がしたのだ。

 

蒼龍「それにしても、帰ってきてよかったねぇ、提督が。ん?」

 

金剛「うぐっ・・・ひっぐ・・・」

 

蒼龍「ちょ、金剛さん、どうしたの?!」

 

話を振る相手を間違えたかと思う蒼龍さんだったが、次の言葉で安心する。

 

金剛「よかっだぁ・・・提督に何かあったら、私どうじようかど・・・グスッ・・・」

 

べそかいてそう言う金剛、そしてその思いを悟った艦娘が一人。

 

蒼龍「あー・・・。」( -∀-)

 

 

 

そもそもこの作戦立案に際して引き合いに出された、マニラ基地移転の理由は、このマニラ基地自体がパラオ基地の分署的な意味合いしか持たなかった為で、フィリピン方面の戦闘が一段落すればすぐにでもパラオに向かう予定だったのだ。

 

だがその矢先にレイテに強力な敵が来援した事でそれが不可能となった為、横鎮近衛艦隊へ出撃命令が出たのである。

 

直人は心の内では反対であったがものの、命令であれば致し方ない為、その不安要因である練度不足を戦術で補おうと企図し、見事なまでに失敗したばかりか、自身も重傷を負うと言う結果に終わった。

 

それと引き換えに深海側のフィリピン方面増援艦隊の大半をアパリ沖で討ち取った事が大きい部分はあるが、横鎮近衛艦隊の負った損害は、修復に多大な時間を要することは明らかであった。

 

更に直人の作戦が失敗した原因は、実はパラオに至った段階で、敵の監視網に引っかかっていた事、この一点に尽きた。これはパラオ基地の動静を探る為のものだったが、それが偶然にも大物を捉えたのである。

 

結果、彼らの行動は逐一報告され、最終的には完全な伏兵による奇襲によって、これを打ち破る事に成功した。

 

結果的に見れば、直人を仕留め損ない、彼一人をして最後に完全勝利を逃し、あまつさえ旗艦を沈められたレイテ艦隊の敗北と見る事は出来る。だがそれでも、彼らの艦隊は1個艦隊を取り逃した。敵の過半を全滅させても、これでは作戦の意味は3割ほど失われたも同然であった。

 

そして、彼らの損害は、未曽有の大戦果と比較しても釣り合わない悲惨なものとなった。

 

彼をして後にサンベルナルディノの悲劇と呼ばしめた一連の海戦は、こうして幕を下ろした。この戦いは、彼らが初めて洋上で超兵器級と対峙し戦闘を行い、且つそれを打ち破ったものとして、以後の戦闘に際し貴重な教訓を齎した。

 

しかしながら、艦隊の半壊と司令官負傷、更には敵哨戒網の推定の甘さを含む敵を見くびっていたツケは、余りにも大きかった。これらの事象はこの後の、彼の手腕にそれなりの変化を齎す事になるのである。

 

2052年5月初旬、紀伊直人と近衛艦隊は、自らの重ね重ねの失態により、癒え難い傷跡を刻む羽目に陥ったのである。




艦娘ファイルNo.0

超巨大機動要塞戦艦 紀伊

装備1/2:120cm超巨大要塞砲(火力+110 命中+5 回避-20 射程:極長 速度:低速)
装備3/4:80cm3連装要塞副砲(火力+85 命中+6 回避-15 射程:極長)
装備5:51cm連装要塞砲(火力+40 命中+4 対空+9 回避-1 射程:超長)
装備6:五式15cm高射砲+ウルツブルグレーダー(火力+5 対空+20 命中+10 索敵+13 回避+2 射程:中)
装備7:三式高射装置(対空+4 回避+2)
装備8:特殊潜航艇「蛟龍(こうりゅう)」(雷装+16 命中+1 索敵+1)
装備9:三式弾改(火力+1 対空+8)
装備10:一式徹甲弾改(火力+12 命中+2)
装備11~15:機動バーニア(回避+25 速度:高速)
装備16(搭載180):噴式震電(西沢隊)(対空+20 命中+3 索敵+2)
装備17(搭載180):流星改(友永隊)(対空+5 雷装+17 索敵+3 命中+3 対潜+7)
装備18(搭載180):流星改(江草隊)(対空+3 爆装+16 索敵+2 命中+3 対潜+8)
装備19(搭載60):噴式景雲改(第四飛行隊)(索敵+13 対空+2 命中+4 対潜+4)
装備20(搭載270):四式中戦車 チト(第十一戦車連隊)
装備21:海軍特別陸戦隊+二等輸送艦
装備22:応急修理施設&乾ドック

とある計画に基づき、超兵器級深海棲艦に対抗する意図で建造された艤装。
元は装備1~7・11~15と複数のバルジを擁していたが、呉鎮近衛艦隊の造兵廠で、艦娘との共闘を念頭に入れて改装が施された結果、妖精さん達が加わってよりハイレベルな武装になった。
適合者は紀伊直人(提督)。
某計画で建造された4体の艤装の中核を担う超巨大な機動要塞である為、主砲は120cmの単装要塞砲を2つ、担ぐように装備している。また背面は巨大な艦娘機関が核融合炉と交換に取り付けられたバックパックとなっている。120cm砲もこれに接続されている、正に時雨風デンドロビウムの拡張版。
その他にも多数の副砲塔(80cm砲:3連装×10 51cm砲:連装×6)がバックパックからアームに繋がれた台座に備え付けられ、また腰部に取り付けられている半円形の下部構造には滑走路や修理施設、揚陸用ハッチなどが揃っている。脚部艤装は何ともごついのだが、かつては妖精さんの力添えなしでこれを動かしたのだから、当然と言えば当然である。また必要に応じて装備はパージできる。
またこの巨大艤装を作る上で妖精さんの超技術が導入されている。
最初にこの艤装を見た際に大淀と金剛がこの艤装から妖精の気配を感じ取れなかったのは、この艤装が妖精に依存しない人造巨大兵装として作られていた為で、ちゃんと妖精さんは乗っている。

因みに江草・友永隊が乗っているのは単なる偶然で蒼龍・飛龍にも搭乗しているが、指揮官役の妖精は2つの艤装を行ったり来たりする様で、時に2つの部隊をまとめて指揮する場合もある。


深海棲艦級紹介
今回は直人を苦戦させた深海側の超兵器2隻目を紹介します。


播磨型超兵器級深海棲戦艦

ステ(カッコ内はクローン版)
HP:720(630) 火力:411(372) 雷装:0(0) 対空:197(153) 装甲:480(400)

装備 22inch3連装砲 22inch3連装砲 対空ミサイルVLS 5inch30連装噴進砲

肩書は超巨大双胴戦艦、巨大な3連装砲が2つ載った艦首型艤装を両サイドに、背面には複数の巨大砲塔を備えた重武装な深海棲艦。
対空値が戦艦であるにも拘らず異常に高いのは、この播磨が米軍機100機と交戦し、無傷で全機撃墜したというエピソードに基づく。誇張無しで事実、米軍記録にも残っている。
日本軍が生み出した、新造されたものでは世界で最初の超兵器で、この間をきっかけとして、超兵器の建艦競争が勃発することになる。
主砲は56cm65口径3連装砲を11基33門搭載、さらにミサイルや多連装噴進砲、高角砲、機銃などを搭載していた。

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