ZOIDS ~Era Travelers~   作:Raptor

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ファルコフが死んだ。
今でも信じられない。

あいつの嫁さんに俺はなんて言ったらいいのだろう。

必ず俺が守ると約束したのに………。

第3機甲師団第7中隊 シュン・タキハラ 戦闘日記より抜粋。





第2話 この世界のこと

月明かりだけが頼りの漆黒の世界で鋼色をした謎のゾイドは、通常とは違うカラーリングのブレードライガーと対峙していた。

 

両者は睨みをきかせるようにじっと動かない。

だが沈黙を破ったのはブレードライガーの方であった。

 

「グォォォォォン!!」

 

まるで威嚇するかのように雄叫びをあげると、単身で謎のゾイドの群れに飛び込む。

謎のゾイドも応戦するように口から火球のようなものを吐き出すがブレードライガーにかすりもしない。

当たり前だ、いくら旧式といえども運動性能が根本から違い過ぎる。

パイロット次第ではライガーゼロシュナイダーとも互角ともいうことをシュンは知っていた。

 

だがそれにしても

 

「あのブレードライガー、速い………。」

 

あのブレードライガーをあそこまで乗りこなせているということはパイロットはかなりの手練れということになる。

 

ブレードライガーは謎のゾイドに肉薄すると背中に搭載されたロケットブースターを噴射させ、レーザーブレードを展開する。

レーザーブレードは左右に展開するとまばゆく輝き始めた。

ブレードライガーの主武装の一つであり、固定振動により敵を切断するというものである。

ゆえ、『ブレードライガー』という名称もこのレーザーブレードからきているとされている。

 

すれ違う刹那、レーザーブレードは謎のゾイドの装甲を紙切れのように引き裂く。

叫び声すらあげることをできずに崩れ去る謎のゾイド。

反転し、背中にレーザーブレードを収納したブレードライガーはもう一度雄叫びをあげる。

まるで縄張りに入り込んだモノを追い出すかのような叫びはライガーゼロに乗っているシュンですらビクッとしてしまった。

 

「グァ………。」

 

力の差を感じたのか、謎のゾイド達は一歩ずつ後ずさりを始める。

 

するとモニターに通信がはいった。

 

「ライガーゼロのパイロット、聞こえるか。君たちを保護したいと思っている、ついてきてほしい。心配はいらない、衛生兵と急病人は医療班が回収をしている、安心していい。」

 

通信モニターの異常なのか、画面は嵐のようだが音はしっかりと入っていた。

おそらくあのブレードライガーのパイロットだろう。

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

敵では保証はなかったが謎のゾイドを退けてくれた事、そして何よりも僚機と同じ共和国のゾイドということが彼を安心させていた。

 

「よし、こっちだ。」

 

ブレードライガーのパイロットに言われるがままに後に続く。

しばらく歩くとブレードライガーと同じカラーリングのグスタフとこれもまた同じ色の護衛と思わしきコマンドウルフと合流した。

 

「ここまでくれば追っては来ないだろう。」

 

再び通信が入る。

 

「一度君と話がしたい、降りてきてくれないか?」

 

ブレードライガーのパイロットはそうシュンに問いかけてきた。

 

「今、ここでですか??」

 

辺りを見回せば高い崖がいくつもそびえる渓谷のような場所だった。

あの崖の上に仲間が隠れていないとは考えにくい。

 

助けてくれたとはいえ素性のわからない集団だ、降りた瞬間に拘束なんて事もありえる。

 

だがこちらはライガーゼロのみ、抵抗したところでやられるのが目に見えている。

 

「そうだ、君の素性を知らないままアジトには案内できないからな。」

 

おそらく向こうも警戒している。

 

「わかりました。」

 

短くそう言うとライガーゼロを止めてゆっくりとかがませる。

 

キャノピーを開くとシュンはバレないように対人用の携帯火器を腰に忍ばせて立ち上がった。

 

「俺は共和国第3機甲師団第7中隊所属シュン・タキハラだ。」

 

そう言ってシュンはライガーゼロから飛び降りる。

 

「階級は?」

 

「少尉だ。」

 

そこまで答えると正面にいたブレードライガーも同じようにかがみ、キャノピーを開いた。

 

「共和国のタキハラ少尉か、今の共和国じゃ随分と若いパイロットもライガーゼロに乗れるんだな。」

 

皮肉げにそう言ってブレードライガーから現れたのは白髪の生えた壮年の男性だった。

顎髭も立派に生やし褐色の肌の左頬には大きな傷跡があった。

 

「俺の名はオスカー・アルバーン。お前も共和国のライガー乗りならちっとは聞いたことがあるだろう。」

 

そう言うと彼もブレードライガーから飛び降りてこちらに向かって歩いてきた。

 

もちろんシュンは知っていた。

 

いや、おそらく彼の言う通り共和国のライガー乗りなら知らない者はいないだろう。

 

「え、嘘だろ………。」

 

シュンは目を見開く。

 

目の前に現れた大柄の壮年の男はレオマスターの中でも“伝説(レジェンダリー)”と称される男。

あのアーサー・ボーグマンと肩を並べたほどのゾイド乗りである。

だが5年前、輸送任務の護衛中に消息を絶った。

その理由はまだ解明されておらず、つい先日捜索活動が打ち切られたばっかであった。

 

「よぉ、シュン。見ない間にちっとは男前な顔つきになったんじゃないか?」

 

そしてその男は、最もシュンが慕う上官だった。

 

「オスカー中佐、生きて、生きておられたんですね!」

 

涙が溢れそうだった。

 

捜索を打ち切られた時にもう会える事はないだろうと思っていたからだ。

 

「とりあえずお前で安心した。アジトに来い、話はそれからだ。」

 

オスカーは踵を返してブレードライガーの方に歩き出す。

 

「はい、中佐。」

 

シュンもライガーの方に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切り立った崖のをいくつも通り過ぎ、森の中を少しだけ進むとぽっかりと穴が空いた岩肌が姿を現した。

 

入り口にはゴドスが二体、大きな槍を持ちながらまるで門番のように仁王立ちしていた。

だが細かいところまで目を向けると岩肌の隙間から対ゾイド88ミリ砲などが顔を覗かせており、ここが堅牢な要塞であることがうかがえた。

 

「こっちだ。」

 

オスカーに先導されて、その中へと脚を進める。

 

「ここが俺たちのアジトだ。」

 

中に進んで行くと大量のゾイドが駐機してある場所へと辿り着いた。

天井の高さも驚くほど高く、壁もしっかりとコンクリートで補強してある。

 

「こんなにゾイドが・・・。」

 

主に小型ゾイドやコマンドゾイドが多いがその数は50機を超えるだろう。

カラーリングはブレードライガーと同じようにサンドイエローで統一されている。

 

「どうだシュン、俺の仲間達は?」

 

呆気を取られていたシュンであったがそのオスカーの一言で我にかえる。

 

「これが中佐の今の仲間達・・・。でも仲間なんて何をしているのですか。」

 

あの中佐のことだ、仲間というからには何か活動しているに違いない。

 

「まあな、でも今は怪我人の手当てが先だ。詳しい話はそれからにしよう。」

 

そう言ってグスタフを指差す。

そこからストレッチャーに乗せられたスチュアートと医療班の仲間が降りてきていた。

 

「リサ、その怪我人の処置を頼む!」

 

オスカーはブレードライガーのキャノピーを開けると下にいた赤十字の腕章をつけた女性にそう命じる。

 

「団長、かしこまりました。怪我人を奥の集中治療室に!」

 

青い髪を後ろで1つに結んだその女性はそう答えるとスチュアートのストレッチャーを押しながら奥の方へと消えて行った。

 

「これで、スチュアートは大丈夫そうですね。」

 

シュンは通信モニター越しに安堵の表情を見せる。

 

「ああ、とりあえず後はリサに任せておこう。それよりシュン、詳しい話を聞きたい、下に降りてきてもらえないか?。」

 

「はい、わかりました。」

 

そう言って2人は互いの愛機から降りる。

 

「あの、中佐 「団長、今おかえりでしたか。」

 

オスカーに対して問いかけようとしたタイミングで誰かにそう遮られた。

 

「おおバッカニア、今戻ったぞ。」

 

片手を上げながら、オスカーは奥の方からやってきた男性にそう答える。

 

「誰だろ?」

 

銀色の短髪にゴーグル、身長はシュンと変わらないぐらいだが年齢はシュンよりも上に見える。

 

 

「シュン紹介しよう、彼はこの解放戦団で団長補佐を務めているバッカニアだ。歳はお前と変わらないぐらいだろ、仲良くしてやってくれ。」

 

「初めまして、反ディガルド組織、解放戦団で団長補佐及び参謀を務めているロキ・バッカニアです。」

 

オスカーに紹介されたバッカニアという男はそう言って小さく会釈をする。

 

「あ、はい……。」

 

別に何かあるわけではないのだがそっけない返事になってしまった。

なにぶん一度に入って来た情報量が多すぎたからだ。

 

団長、反ディガルド組織、解放戦団

わからない単語が多すぎる。

 

「すみません中佐、話が全く読めないんですけど……。」

 

「そうかそうか、そりゃそうだよな。俺だって最初この世界に来た時は全く何も理解できなかったからな、順を追って話そう。」

 

オスカーは顎に手を当てながら、うんうんと頷く。

だがオスカーの言った『この世界』というのがまた気になる。しかし、いちいち考えても何も始まらないのでとりあえずオスカーの話を聞いてみるとしよう。

 

「はい、お願いします中佐。」

 

「OKOK。だがシュン1つだけな、ここでは階級では呼ばないんだ。俺のことはオスカーか団長と呼んでくれ。」

 

オスカーは苦笑いをしてそう言うと話を続ける。

 

「まずはどこから話せばいいかな…。」

 

オスカーは目を細めながらポツリポツリと話し始めた。

 

 

 

ヘリック共和国、ガイロス帝国、ネオゼネバス帝国。そしてその先の未来。まだ見たことも聞いたことのない国々が争い、発展を遂げていったそんな世界。

文明は著しい進化を遂げ、現代の我々には想像もつかない文明を築いていた。

しかしそんな世界が永遠に続くことがある訳でもなく、ついに終わりを告げようとしていた。

この惑星Ziに神々の怒りと言われる大規模な地軸変動が起こり、それによってかつて栄えていた高度な文明は壊滅した。

それからいくつもの長い年月が経った。その大変動を辛うじて生き延びた人々はかつての文明を捨て独自の文明を築いていた。

相変わらずゾイドは人々にとって無くてはならない存在だったが、残念ながらゾイドを製造する技術は残っておらず、その供給はかつて存在したゾイドが大変動の際に地中や海中に埋もれていたもの発掘するしかなかった。

だが幸いにも過去の記録を解読することができた彼らは「戦争」とういうものの悲惨さを知ることができていた。

ゾイドを戦争の道具に使うことなく平和的な国家を築こう、そういう動きからこの大陸にはいくつかの町や村を統括する「藩」というものが出来上がり、その藩を統括するものとしてエルファリア家を女王とする「ガンダーラ王国」というものが誕生した。

王国による統治は平和的なものであり、多くの民が豊かな暮らしを送っていた。

だがしかし。

大陸とほど近い別の大陸に鋼色のゾイドが支配する国ができたとその大陸から亡命するものが何人も現れたのだ。

その国の名は「ディガルド武国」。

国王ララダ三世が治める国でキダ藩や近隣の街、村を武力攻撃によって侵略し、徐々に各地へと勢力を広めていった。

 

「というのがこの世界のおおよその話だ。」

 

ひと仕事終えたかのように大きく息を吐くとオスカーはニヤリと笑う。

 

「そ、その、つまり俺が今いる世界は元いた世界よりも未来の世界という訳で、この世界はその鋼色のゾイドを持つディガルドって国に支配されているってことですか??」

 

オスカーにそう投げかけるが質問している自分でもよくわからない。

 

「そうだ、ヘリックとネオゼネバスが争っていた世界よりも未来の世界に俺たちはいるんだ。不思議だろ。」

 

未来の世界。

たしかに空想モノの小説なんかでは時空を超えるなんて珍しい話ではないのだがここは現実の世界だ。

 

「俺だって最初は不思議だったさ、変な黒い空間に入ったと思ったら僚機とは逸れるわ、バイオゾイドに襲われるわでよ。」

 

オスカーの言った黒い空間という言葉を聞いた途端、脳裏を何かが駆け巡っていった。

シュンがスチュアートやファルコフ達と連絡が取れなくなり逸れたのも黒い謎の空間だった。

 

「中佐、あ、いえ団長。団長も黒い空間からこの世界に……?」

 

「もってことはお前もやはりあの空間に入ってこの世界にやってきたのか………。」

 

オスカーは渋い顔をしながらシュンにそういう。

 

「はい。その空間の中で俺も通信が使えず僚機と逸れ、あの鋼色のゾイドに襲われたんです………。」

 

シュンはそう呟くと拳を強く握りしめる。

怒りか、悔しさ、憎しみか、不甲斐なさか。なんだかはわからないが何かがシュンの中に込み上げてきていた。

あの謎のゾイドに一瞬にして仲間を奪われた。

 

「団長、あいつはなんなんですか。あのディガルドが作り上げた鋼色のゾイドはなんなんですか。射撃武器が一切効かず、仲間達を一瞬で葬り去ったあいつは一体なんなのですか!!」

 

声を荒げて立ち上がる。

こんな感情初めてだった。

当然だ、次期エースパイロット候補と言われながら平和的な考えを持っていたため前線に出ずにいた彼にとって、先に散った彼らは良き理解者だった。

そんな大切な仲間達を初めての戦闘で失ったのだ。

 

必死で涙をこらえながらそう訴えるシュンにオスカーは悟らせるように話し始める。

 

「あれはバイオゾイド。ヘルアーマーと呼ばれる特殊な金属で身を包んだ悪魔のゾイドだ。俺もお前と同じくあいつらに、ディガルドに多くの仲間を奪われた。」

 

そういうとオスカーは立ち上がって踵を返すとただ「ついてこい。」とだけ言ってすぐ横にある穴の中へと入っていった。

 

大人1人がかがんで入れるぐらいの小さな穴をオスカーを追うように入ると中は薄暗い空間だった。

 

「これは………。」

 

中には小さなろうそくが所狭しと並び静かに灯をともしていた。

 

シュンにはその一本一本がかつての熱い魂の宿る戦士達であったことが痛いほどわかっていた。

 

「そうだ、ここにあるのはかつての俺の仲間。解放戦団の誇り高き戦士達の魂だ。」

 

そういってオスカーは静かに目を瞑り手を合わせた。

 

 

 

 

他の地域を次々と侵略し、勢力を拡大していったディガルド武国。しかしそれをよしとしないモノ達がいるのも当たり前のことで、反ディガルド組織というものは各地にできていった。

ディガルドの侵略を最初に受けたキダ藩の元藩主ラ・カンとその一行もズーリという街に拠点を置き、ディガルド討伐軍を立ち上げていた。

ララダ三世の亡き後その王位継承を受けた武帝ジーン一世になったことにより侵略はさらに激しさを増し、高度な文明を持ったかつての人類『ソラノヒト』の住むソラをも侵略。

ディガルド内部の離反などもありついにジーン一世は自由の丘でディガルド討伐軍改め、ジーン討伐軍と名を変えたラ・カン達と全面衝突を迎えた。

 

ジーン一世操る大型バイオゾイドに討伐軍は苦戦する中、ラ・カンの仲間であった進化すると言われているゾイド「ムラサメライガー」の活躍により大型バイオゾイドゾイドのコアを破壊。

ジーン一世は戦死したと思われ、他のディガルド軍も統率を乱し戦闘不能に、これによってディガルド武国は壊滅、討伐軍の勝利となりその大陸には平和と安寧が再び戻った。

 

「というのが5年と半年前の出来事だ。」

 

ろうそくの火が揺らめくその部屋でオスカーはこの世界の成り行きを説明してくれた。

 

「でも5年前にディガルドが滅んだのになんでまたバイオゾイドが現れたんですか。」

 

「シュン、それはあくまでその大陸の話だ。俺たちが今いる大陸はまた別の話なんだ。」

 

「ってことは………。」

 

「そうだ、ディガルドはこの大陸にもやってきていたんだ。」

 

 

 

事の始まりは3年前。

自由の丘で破れたジーン一世の軍勢は敗戦によりディガルド武国首都ディグに撤退。

しかし城下都市の反乱やキダ藩再興などの影響を受けてディガルド武国からの撤退をを余儀無くされていた。

当時の幹部はその状況を打破すべく他の大陸に移動することを決意。

かつてジーン一世が極秘に計画していた『異大陸制圧作戦』のために用意していた海上を移動できる超弩級のゾイドを使い、残存している兵力、エンジニアなどを積載し大陸を離れた。

半年の航海の後にこの大陸に到達した。

ディガルドは持ち前の高いテクノロジーを駆使しわずか1年で国を復興させた。

そして同じように周辺都市や村を襲撃、同じように勢力拡大し首都ヴァルハラでは多くのバイオゾイドが製造されるまでになった。

 

そしてついにガンダーラ王国へと侵攻。

 

鉄壁の護りを誇る城塞都市と呼ばれるガンダーラ王国であったが、ヘルアーマーの仕組みを知らない王国は為すすべもなくわずか半日で陥落した。

 

「というのがこの大陸の話だ。」

 

そう言って立ち上がりろうそくの方を見つめる。

 

「ディガルドは各地を侵攻し、占領した。今ではこの大陸の半分はディガルドの占領下だ。だからこそラ・カン達のような反乱軍がいくつも出来上がっていった。」

 

「じゃあ、団長の言っていたこの組織は………。」

 

「そうだ、俺の率いるこの解放戦団もその反乱軍の一つだ。」

 

オスカーの言っていた仲間というものは反ディガルド組織であった。

 

だがまだ疑問はたくさんある。

 

なぜオスカーがこの反ディガルド組織のリーダーなのか。

そしてなぜその特殊な金属にダメージを与えられるのか。

疑問がいくつも浮かんでは消え浮かんでくる。

 

「あのいくつも聞きたいことがあります。」

 

「なんだ?」

 

「まず、なぜ中佐がこの反ディガルド組織を作り、そして団長となっているのですか。」

 

率直な疑問だ。

さっきの話が正しければオスカーはシュンと同じようにバイオゾイドに襲撃を受けたことになる。

彼が誰の説明もなく、その謎のゾイドを倒すための組織を作るなんて考えられなかったのだ。

 

「シュン、ちょっと違うな。確かに俺は解放戦団の団長だが、作ったのは俺じゃない。」

 

「え………。」

 

拍子抜けだ。ではオスカーが作っていないのであれば、一体誰が作ったのか。

 

「さっき会っただろう。バッカニアがこの組織を作った、彼が最初はリーダーだったんだ。」

 

彼はそういうと話を続ける。

 

話はこうだ。

 

オスカーは護衛していた積荷と一緒にあの謎の空間に飲み込まれ、シュン達と同じようにこの世界にやってきた。

出口での襲撃はなかったのだが、その晩に大量のバイオゾイドによる襲撃を受けた。

護衛のためのゾイドで迎撃に出るがヘルアーマーの仕組みなどわかるわけがなく、オスカーのブレードライガーのみになってしまう。

その時、両者をまるでシュンの時のオスカーのように割って入ってきたのがバッカニアの乗ったコマンドウルフだった。

謎の音とともに機能を停止させたバイオゾイドからオスカーと積荷を先導しこのアジトに逃げ込んだという。

 

「ということは、中団長も解放戦団に助けられたのですか?」

 

「そういうことになるな。あと呼び名が混ざってるぞ、呼びにくかったら今まで通り中佐でいい。」

 

オスカーは苦笑いしながらそう言った。

 

「あ、すみません。では中佐のままでお願いします。」

 

シュンは恥ずかしそうにポリポリと頭をかく

 

「俺はバッカニア達に助けられ、そして自らの仲間を多く失ってしまった。残ったのは数人の仲間と積荷だけだった。この世界の話をバッカニアに聞いて俺も死んで行った仲間のために戦いたい、そう強く願いこの解放戦団に加わったんだ。」

 

オスカーがそういうとしばらくの沈黙が流れた。

 

「まあ、今日は疲れているだろう。ゆっくりと休むといい。こっちにベッドがある。」

 

オスカーはそう言うと小さな穴をくぐって出て行った。

シュンも星のようにきらめくその灯火に手を合わせ一礼するとオスカーのあとに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドに横になってどれぐらい経ったであろうか。

なんだか側頭部に頭痛がしたのでシュンは顔を少し歪ませながら起き上がる。

 

しかし目の前に広がるその空間は先ほどのアジトの中ではなく、ただただ真っ白な空間であった。

 

「あれ………。」

 

目の前に広がる空間に自分は寝ぼけているのではないかと思い目をこするがやはり変わらない。

 

「こ、ここはどこだ………。」

 

前後左右上下、全て見渡しても真っ白な空間が広がるだけで他には何も見えない。

するとシュンの真上ぐらいから急に声が聞こえてきた。

あまりに突然であったので一瞬ビクッとしてしまう。

 

『シュン、こんにちわなのですよ。』

 

聞こえてきたのは変な喋り方をする若い女性の声だった。

まるで鈴を転がしたようなその声はなんだか心が穏やかになってしまいそうである。

 

「こ、こんにちわ。………というかお前は誰なんだ、ここはどこなんだ!」

 

思わず挨拶してしまうが冷静に考えたら挨拶している場合ではない。

 

『そんなにいっぺんに聞かれてもわからないのですよ。まあ、とりあえずここがどこだかは言えないですが私はそうですね………光の精霊とでも言っておきましょうか。』

 

「光の精霊………。」

 

『そうなのですよ。時代(とき)の旅人を守護するモノなのですよ。』

 

光の精霊と名乗った不思議な声がまたもや知らない単語を発してきた。

さらに光の精霊は話を続ける。

 

『あなたは選ばれたのですよ、この全ての戦争を終わらせるために。』

 

シュンには一体なにを言っているのかがわからなかった。

 

 

 

 

 

 





反ディガルド組織との出会い。

少しずつこの世界のことを知っていくシュンはこの世界に飛ばされる前のことをふと思い出した。


そして謎の光の精霊に告げられた言葉。


物語は加速していく。


次回 ZOIDS EarTravelers

第3話 『時代の旅人』





次の話に一ヶ月もかかってしまいました。

ついに反ディガルド組織『解放戦団』のと出会いです。

そして謎の光の精霊。

次回も気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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