ZOIDS ~Era Travelers~   作:Raptor

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第11話 魂の技術

 

 

静かに闇を演出していた夜の帳が徐々に上がり、耳をすませば鳥たちの声が聞こえて来そうな朝が、惑星ziにも訪れていた。

 

そんな清々しくも静かな朝を彼らも当然ながら迎えており、ここがディガルド領内なのを忘れてしまいそうなぐらいである。

 

だがしかし。

 

「シュン、それはマジかよ!!」

 

彼らは朝からハイテンションである。

 

モニターに映るケイトの顔は驚きに満ちている。

まるで初めてゾイドを見た少年のようだ。

 

「だからほんとだって、霧の谷(ミストバレー)で魔物にあったんだよ!」

 

実は一緒に話しているシュンも興奮しているのはいうまでもない。

 

「全く………。」

 

後ろに座っているミズハは呆れ顔である。

 

なんせこの会話、霧の谷(ミストバレー)を抜けてみんなと合流してからもう5回目だったりするからだ。

 

「ほんと男の子ってこうなんだから。」

 

目をキラキラと輝かせながら話す目の前の二人を見て小さく溜息をついた。

 

「まあまあ、男の子ってこんなもんよ。」

 

後ろの小さなモニターには今度はレイの顔が映る。

 

呆れているミズハを見かねたレイが通信をしてきたのだ。

 

「そろそろローグに着くわ。無邪気な少年達にも伝えてくれる?」

 

レイはいたずらっぽく笑うと通信をきる。

 

「シュン、ケイトそろそろローグに着くって。」

 

 

「「はーい。」」

 

 

 

 

 

 

それからしばらくすると何やら門のようなものが見えてきた。

 

「無事に戦闘禁止エリアに入れたようね。」

 

レイは安堵の表情でそう言葉を漏らす。

幸い一度もディガルドに遭遇することはなくローグまで来ることができた。

 

「戦闘禁止エリア………?」

 

またも聞きなれない言葉である。

 

「…………ローグ周辺では戦乱を避けるために戦闘禁止エリアを設けているんだ。ディガルドだろうが、レジスタンスだろうがもし戦闘をおこなおう者がいれば粛清される。まあ、実際に見たことはないんだけどな。」

 

「な、なるほど………。」

 

なんとも怖い話である。

霧の谷(ミストバレー)といい、ローグといいこの世界には怖い噂話しかないのだろうか。

 

「なあ、レイ姐。ローグに行く前にちょっとタケルと二人で寄り道してきていいか?」

 

ローグの入り口に着く直前、ケイトがそんなことを言い出す。

 

「え、まあ、いいけど大丈夫なの?」

 

大丈夫というのは二人でという意味だろう。

確かにグスタフにコマンドゾイドではなんとも心もとない。

 

「大丈夫だって、ちょっとそこまでだからさ。」

 

「わかったわ、気をつけてね。」

 

タケルのグスタフはケイトを乗せたままルートを外れて行く。

 

「俺も護衛で付いて行こうか?」

 

やっぱり心配だ。

もし必要なら付いて行ってもいい。

 

「シュン、心配してくれてありがとね。でも大丈夫よ、いつものことだから。」

 

レイは笑いながらそういう。

 

「それよりも早くローグに入ってお茶でもしましょ。気を張ってたから疲れちゃった。」

 

そう言って顔をしかめる。

 

「そうだね、そうしよう。」

 

 

 

 

ローグの中に入るとそこは解放戦団のアジトのような駐機場だった。

 

「す、すげぇ。」

 

その広さは一番端が見えるか見えないかというところだ。

 

シュンがいた共和国の基地よりもはるかにでかい。

 

「大陸のありとあらゆるところから人がやって来るのよ。ちなみにこっちは一般フロア、これよりも少し小さいけどディガルド専用のフロアもあるわ。」

 

「ま、まじか…………。」

 

ライガーゼロを降りたシュンは思わずキョロキョロとしてしまう。

 

大陸中から集まるというだけあって多種多用なゾイドがいる。

 

大半はバラッツと呼ばれるこの時代のコマンドゾイドのような小型のゾイドが多いが、中には大型ゾイドもいる。中には見たことのない種類のゾイドだっている。

 

「これはなんだろう、ベアファイターみたいだけど………。」

 

シュンは一体の中型ゾイドの前で足を止める。

 

四つ足をついたその白いゾイドは形こそはシュンの知っているベアファイターに類似していたが全く別物だった。

 

まず一番目につくのは背中に背負われた大量の緑色のミサイルのようなモノだった。

しかし一般的な格納されたものではなく、弾頭がむき出しになっている。

 

そして前足についたパイルバンカーとブレード。

 

「どんな戦い方するんだろう。」

 

きっと何十年、何百年後に開発されるであろう機体をただひたすら眺める。

 

「ほらシュン、行くわよ!」

 

いつの間にか遠くに行ってしまっていたミズハがシュンの名を呼ぶ。

 

「ああ、ごめん!」

 

シュンは勢いよく駆け出し前から歩いてくる一組の男女を避けてレイの元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「あの子、あなたのゾイド眺めてたわよ。」

 

すれ違った一組の男女の紺色の髪ショートの女性は隣にいたハットを被った茶髪にメガネの男性にそう声をかけた。

歩くたびにガシャガシャと無機質な金属音を奏でているのはおそらく女性の両足が義足であるからに違いない。

 

「そりゃあ僕のゾイドは珍しいだろうからね。」

 

はははと笑うその男は愛機の前で立ち止まった。

 

「なぁ、さっきすれ違った子似ていなかったかい。」

 

「似てるって?」

 

「ルージくんだよ。」

 

その名前を聞いた女性は思わず吹き出してしまう。

 

「なによロン、今の子の方が何倍も大人よ。」

 

「いやいや、外見じゃなくてさ。なんというか、僕はいつかあの子と一緒に戦いそうな気がしてさ。」

 

「またそんなこと言って。」

 

「そのためには僕らも強くならないとな。いい加減君もバイオゾイドじゃなくて普通のゾイドに慣れてもらわないと。」

 

ロンと呼ばれた男は愛機の横に止められた白いストームソーダーを指差した。

 

「そんなのわかってるわよ。」

 

「頼むよフェルミ、敵に制空権がない以上空戦ゾイドは作戦の要なんだから。」

 

フェルミと呼ばれたショートカットの女性はうんざりしたようにため息をつく。

 

「はいはい、わかりました。」

 

「わかればよろしい。それじゃ帰ろうか。」

 

「全く、義足で空戦ゾイドに乗るのがどれだけ大変だかロンはわかってるのかしら。」

 

フェルミはロンに聞こえないようにそう小さく呟く。

 

そうして2人は自分の愛機に乗り込み、ローグを去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「まさか街に入るのにエレベーターが必要だなんて。」

 

 

シュンは今、街に入るためにエレベーターに乗っていた。

 

「ここは鍛治職人と技術の街だからね。街のいたるところに様々な技術が埋め込まれているのよ。それとゾイドを地下に置くことで街の安全性も高めているってわけ。」

 

 

レイいわく、このようにゾイドの乗り入れ場所と街を分けることによって外的危険を街に持ち込まないという理由らしい。

 

「まもなく、ローグに到着いたします。」

 

エレベーターの案内嬢がそういうとゆっくりととびらが開いて陽の光が差し込んでくる。

 

「うわぁ……………。」

 

目の前に広がる光景はシュンがこの世界にやってきて初めて見た世界だった。

 

正直な話、まだシュンは街というものを見たことがなく、いくつかの村しか見たことがなかった。

それでもこの街の規模がどれほどすごいかは身をもって感じることができていた。

 

まっすぐに伸びる石畳、建物はコンクリート、もしくはレンガで建てられたものばかりでいくつもの長い煙突が伸びている。

エレベーターの中からでも聞こえる鉄と鎚の激しくぶつかる音はその街が賑わっていることを教えてくれた。

 

「すごいわね………。」

 

初めてローグに来たというミズハもその賑わいに圧倒されたらしい。

 

「2人とも絶句って感じね。」

 

レイは口元を手で押さえながら笑う。

 

「さ、行きましょ。」

 

「え、でも行き先決まってるの?」

 

「もちろん、いつもお世話になってる人のところに行くのよ。付いて来て。」

 

レイはシュンとミズハの手を引いて街の中を小走りで駆け抜ける。

 

すると1分もしないうちに大通りの突き当たりにたどり着く。

 

「ここよ。」

 

レイは屋根に掲げられた看板を指差してそう言う。

シュンはその指につられて顔を上げるとそこには「何でも屋さん」とだけ書かれていた。

 

「何でも屋さん………。」

 

なんだか拍子抜けである。

入り口はもといお店の規模も小さそうだ。

こんなところに腕の立つ職人さんがいるのだろうか。

 

「まあ、中に入って。」

 

シュンとミズハはレイに背中を押されて何でも屋さんの中へと入って行った。

 

家屋の中も外見からの予想通りで小さなテーブルが一つと椅子が二脚しか置いていないような狭い店内だった。

 

「ディル、いるかしらー?」

 

暖簾のかかった部屋の奥に向かってレイは何やら声をかける。

 

どうやらディルというのがここの店主の名前らしい。

 

「きっと下の作業場ね。まったく………。」

 

はぁ。と大きくため息をつく。

 

「2人ともついておいで。」

 

レイはそういうとまるで従業員のごとく暖簾をかき分けその奥へと入って行った。

 

シュンとミズハはその後を追うようにして部屋の奥へと向かう。

 

だが、そこには新たな部屋はなく、下へと続く階段があるだけであった。

 

「ず、随分と長い階段ね。」

 

後ろから覗き込んだミズハはそう小さく呟く。

 

「ディルの作業場は地下にあるのよ。ちょっと長いけどついておいで。」

 

真っ暗で先が見えない階段を、彼女は恐れる様子もなく降っていく。

 

「いや、ついておいでって言われても………。」

 

2人は思わず顔を見合わせる。

 

「し、シュンが先に行きなさいよ!」

 

やはり怖いのだろうか、ミズハは回れ右して階段に背を向ける。

 

「わ、わかったよ。」

 

階段を踏み外さないようにゆっくりと歩いていく。

 

その真っ暗な階段を50段ほど降り切ったところでようやく灯りが見えてきた。

 

「ふぅ、なんとか下まできたみたいだ。」

 

灯りの掲げられたドアをみて、そこが作業場の入り口だと確信した。

 

 

コンコンコンと小さく三回ノックすると扉を開ける。

 

「「うわぁ…………。」」

 

そこは作業場というよりも格納庫だった。

 

駐機場にいたような大小の様々なゾイドが並べられ、多くの作業員が工具をあるいはゾイドのパーツを持って作業していた。

 

「シュン、ミズハ、こっちこっち!」

 

あまりの驚きに揃ってキョロキョロとしている2人をレイが手を振りながら呼ぶ。

 

レイは誰かと話しているみたいだがおそらく彼がディルと呼ばれていた人間に違いない。

 

「お主がライガーゼロのパイロットか。」

 

近くまでよるとレイと話していた男性がシュンに声をかけた。

 

髪も髭も白く染まった壮年の男性だった。

小柄な身体ながらまるで別人のような太い腕は鍛治師特有のものに違いない。

 

「そうです、シュンと申します。」

 

「まだ若いな。その若さでライガーゼロを乗りこなすとはなかなかだ。」

 

まるで値踏みをするかのように足下から頭の先まで眺める。

 

「とりあえずライガーゼロを見せてもらおうか。」

 

そう言うとサイレンとともに警告灯が鳴り響き、入り口のシャッターが鈍い音を立てる。

 

「おっとすまねぇ、客人だ。少しそこにでも座ってまってな。」

 

シャッターが開くとそこには見慣れたグスタフが現れた。

 

「なぁ、ミズハあれって………。」

 

「タケルのグスタフね。」

 

サンドイエローに塗装されたグスタフ。あれは紛れもなく解放戦団のものだ。

 

遠目からなのでわからないが、後ろの荷台には何かが積まれている。

 

グスタフはある程度中まで入ってくると速度を落とし、ゆっくりと止まった。

 

「ディル!」

 

キャノピーが開くとそこには案の定タケルとケイトが座っていた。

タケルはディルの名前を呼ぶとコックピットから勢いよく飛び出し、彼の元へと駆け寄る。

 

「タケルか、どうした慌てて。」

 

「……瀕死寸前のゾイドだ、早く見てやってくれないか。」

 

そう言うとタケルはグスタフの積み荷を指差す。

どうやら積み荷には瀕死寸前のゾイドが積んであるようだ。

 

ディルは無言で頷くと積み荷に向かって歩き出す。

シュン達もディルの後を追い、積み荷には近づいた。

 

「これ、モルガか………?」

 

所々焼け焦げたそのゾイドはモルガだった。

 

だが、その色はケイトが鹵獲したコマンドゾイドと同じ色だった。

 

「これもディガルドが鹵獲したものね。」

 

後ろに立っていたレイがそう補足してくれる。

 

「4番ドッグへ運べ!緊急のオペだ!」

 

ディルはモルガの状態を見ると作業員にそう伝える。

 

「レイ、話の途中で悪いが先に宿で休んでいてくれ。こいつにはちょっと時間がかかりそうだ。」

 

「ええ、わかったわ。いつものとこで泊まってるから。」

 

 

2人はそう短く会話を交わす。

ディルは駆け足で4番ドッグと呼ばれた場所へと向かった。

 

「さて、私たちは宿に向かいましょうか。」

 

「………俺とケイトは少しモルガを見てから向かう。」

 

「ええ、わかったわ。場所はいつものとこだから。」

 

「………わかった。」

 

タケルとケイトは作業場に残り、レイ達は宿に向かうために作業場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ………………。」

 

並んだ三つのベッドの一番右に後ろから倒れ込んだシュンはだらしない声を出す。

 

『全く、おっさんじゃないんですから。』

 

光の精霊もこの呆れようである。

 

「仕方ないだろ、こっちは夜通し緊張しっぱなしだったんだからよ。」

 

ミストバレーの通過、ディガルド領内の進行。

普段から行なっているなら別であるが、初めてとなるとどうしても緊張する。

 

『全く、時代の旅人なんだからしっかりして欲しいのですよ。』

 

はぁ、とため息をこぼす彼女。

まぁ、毎度のことなので気にはしないが。

 

『そういえばシュン、この世界にやって来てそろそろ1ヶ月経つのですがどうなのですか?』

 

「もうそんなかぁ………。」

 

慣れない世界だからか、色々とあったからか、1ヶ月という時間をこんなあっという間に感じたのは久しぶりだ。

 

「まだまだわからないことだらけだし、バイオゾイドに対抗できるようになったかなって思ったらなんか相性悪いって言われるし。」

 

思わず苦笑いだ。

フィクションの世界ならきっとバッサバッサ敵を倒していくチートがあるだろうに。

 

『まあまあ、シュンはその平凡さがいいのですよ。』

 

なぜだろう、褒められているはずなのになんだかしっくりこない。

 

「だぁぁぁぁ………タケル早く風呂に行こうぜ。」

 

ふと入り口の方から声がすると思うと、扉が開き、そこには油やチリで汚れた男が2人で立っていた。

 

「あ、2人ともおかえり。」

 

「おお、シュン。ちょうどいいところにいた、風呂に行くぞ!!」

 

「え、風呂??」

 

風呂とはなんだろう。

 

「もしかしてお前、風呂を知らないのか!」

 

ケイトは目を見開いてタケルと顔を見合わせる。

 

「………知らなくても大丈夫だ、ついてこい。」

 

珍しくタケルも楽しそうにニヤリとしている。

 

「ほらぁ、行くぞシュン!!」

 

油まみれの手で掴まれると部屋の外へと連れていかれた。

 

宿を出るとそこはもうすっかり日が落ちており、空高くには2つの月が顔を覗かせていた。

 

しかしまだ鉄を打つ音は消えはしない。

 

「すごい、まだ工房開いてるんだ………。」

 

音の鳴る方へ視線を向けるとまだ工房の中には灯りがともっている。

 

「まだじゃねえぜシュン。ここの工房は一日中開いてんだ。」

 

「え、一日中!?」

 

「…………正確に言うと一日中作業している、だな。ここローグの鍛治技術は大陸一だ、それゆえその技術を求めて大陸中から人が訪れる。まあ、俺たちみたいにな。」

 

タケルはそう補足説明をしながらさらに話を続ける。

 

「…………だから競争率は激しい。有名な武器工房の作るパーツや武器は一瞬でなくなるし、改造専門の店では予約で3年待ちなんてのもある。」

 

「さ、3年!?」

 

3年だなんて、待っている間に気が変わったらどうするのだろうか。

 

「…………そんな世界だ、有名な工房でないもの達は技術とその精度で勝負するしかない。だからこそ時間をかけ顧客のニーズに合わせたものを作る。ディルだって最初は小さな工房だった。でもゾイドの整備にすごい細かくてな、ふらっと立ち寄った王国の近衛隊隊長が絶賛して、『ここでチューニングしてもらえば10年整備がいらない』なんて言ったんだ。そんなこと言ったもんだから大陸中からゾイドの整備の依頼が来て大きな工房になった。」

 

タケルはニヤリと笑いながらケイトに向かってなあ?と声をかける。

するとケイトはなんだか恥ずかしそうに顔を背ける。

 

「あん時はそう思ったんだよ、でもそのおかげでディルの工房はあんだけ大きくなったんだろ。」

 

「え、もしかして………。」

 

「…………ああ、そうだ。ふらっと立ち寄った王国の近衛隊隊長はケイトだ。」

 

「え、そうだったの!?」

 

王国の近衛隊といえば大統領直属の部隊だ。そこの隊長を務めるなんて栄えあるものである。

ケイトの操縦の技術はかなりのものだ。その技術はそこでの鍛錬の賜物かもしれない。

 

「王国にいた時は何に乗ってたのさ?」

 

大統領の直属で乗っていたゾイドだ、一体何に乗っていたか気になる。

共和国なら最低でもライガーゼロやブレードライガー、下手したらゴジュラスガナーなんてこともありえるくらいだ。

 

しかしケイトから帰ってきた返事は驚くべきものだった。

 

「何言ってんだよシュン。俺はモルガ一筋だぞ。」

 

「え!?」

 

「お前、モルガを見くびってるだろ。あいつはかなり出来のいいゾイドだぞ。姿勢が低いから狙いをつけづらいし、頭部の装甲が硬いおかげで無理な突撃しても十分戦えるしな。」

 

ケイトは勝ち誇ったようにそういうが、そもそもモルガであのような戦いができるのは彼だけだと思う。

 

「…………まあ、そういうことだシュン。ここの人間は鎚を振るい鉄を打つことに命をかけている。いわば聞こえてくるあの音はここの漢たちの生命(いのち)の鼓動だ。」

 

生命(いのち)の鼓動………。」

 

「…………ああ、その漢たちの魂の技術が今俺たちに戦う力を与えてくれているんだ。」

 

珍しくタケルが感慨深そうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、一同はディルの作業場に集まっていた。

 

「とりあえず、ライガーゼロのデータは集まった。すぐにとは言えないが定着させる方法を見つけるから安心しな。」

 

ディルはそういうとシュンの肩を叩く。

 

「ありがとうございますディルさん。」

 

シュンはディルに向かって頭を下げた。

 

「じゃあオスカーへの報告よろしくね。」

 

「はい。」

 

昨日の夜の打ち合わせでシュンとミズハはアジトに帰ることが決まっていた。

本当はもう少し滞在して色々な物を見たり、風呂に入ったりしたかったが、オスカーが報告を待っているということだった。

 

レイ、ケイト、タケルの3人は修理しているモルガが修理でき次第帰るという手はずになっていた。

 

「ディルさん、お世話になりました。」

 

彼は再度一礼すると、ミズハと一緒にライガーゼロに乗り込んだ。

 





ローグの街でモルガを整備して貰うという事でケイト、タケル、レイを街に残して帰路につくこととなったシュンとミズハは霧の谷を抜けた先でディガルドの部隊が移動している光景を目の当たりにしてしまう。

1人ではかなわないが、どこに向かうかわかれば応援を呼んで戦えるかもしれない、そう考えたシュンは後をつけることに、しかし行き先はなんとリアン村だった。

応援を呼んでくるかという時にバイオゾイドと応戦しているもの達を発見、それは解放戦団の面々と村の用心棒『アーバイン』だった。


次回 ZOIDS EarTravelers

第12話 『隻眼の用心棒』

その『キズ』はきっと大切ななにかのために

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