おまえをオタクにしてやるから俺をリア充にしてくれAnother!   作:ゆかりムラサキ

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はじめまして。こちらはライトノベル『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』の二次創作作品となります。

かなりマイナーな作品なので読んで下さる方がいらっしゃるかは分かりませんが、もしも数少ないオタリアファンの読者さまがいらっしゃいましたら、もしよろしければご一読下さいませm(__)m




プロローグ

 

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「柏田〜! あんたなにグズグズしてんのよぉ! あんたが遅いから鈴木君発見出来なかったじゃない!」

 

「はぁ? うっせーな! お前がいつまでも化粧に時間掛けてっからだろうが!

 そもそも今日鈴木が開店と同時に新刊買いにアキバ行くって教えてやったのは俺だろ!?

 感謝されこそすれ、罵倒されるいわれなんかねーぞ!」

 

「うっさい! 結局会えなかったんだから意味ないじゃん!

 このキモオタ役立たず! あ〜……もう帰っちゃったかなぁ、鈴木君……」

 

「だから俺なんかより鈴木の方が遥かにガチなオタだっつってんだろうが!

 ……まぁアイツ今日の発売心待ちにしてたからなぁ。戦利品抱えてとっとと帰っちまったかもな」

 

「くっそー……せっかく偶然を装って遭遇しようかと思ってたのになぁ……

 あ〜あ! 柏田のせいで貴重な時間無駄にしちゃったじゃない!」

 

「だから人のせいにすんじゃねーよ! このスイーツ(笑)ギャルが!」

 

「だからなんなのよそのスイーツ(笑)って……

 しゃーない。せっかくアキバ来たんだからこのまま帰っちゃうのも勿体ないか。

 ほら柏田。しょーがないからどっか寄ってこうよ。私お腹空いちゃったし」

 

「あ? ……ああ、まぁしゃーねぇな。

 んじゃとりあえずマックでも寄ってから、とらのあなのボカロコーナーでも見に行くか」

 

「オッケー。じゃあとっとと行きましょ」

 

 そうして俺達は当初の目的を果たすことなく、休日のアキバでオタライフを満喫するのだった。

 

 

 *

 

 

 俺、柏田直輝は都内の藤見高校に通う高校一年生だ。

 成績も並み、顔面レベルも並みの、なんてことないどこにでもいる男子高校生なのだが、実はいわゆる隠れオタクなのである。

 

 中学の時はコミュ障で暗い、キモいオープンオタだったのだが、密かに心を寄せていた女子・及川絆が陰でキモオタである俺を馬鹿にしている場面に偶然遭遇してしまい、それ以来さらにコミュ障になった。

 

 そんな黒歴史な中学時代を卒業するため、同じ中学からは誰も行かない藤見高校を受験・見事合格し、晴れて高校生となった俺は、夢のリア充生活を叶える為に隠れオタクの道を選んだ。

 

 

 だがひょんな事からある一人のビッチギャルにオタクという事がバレてしまい、そこから俺の平穏な高校生活は崩壊し、そのビッチギャルに振り回される事になってしまう。

 

 

 恋ヶ崎桃。こいつは俺と同じクラスの美少女ギャル。

 

 学年どころか2年や3年にもファンが多数居るらしいこの見るからにビッチそうなギャルなのだが、実は派手なのは見た目だけで、中身は真面目で身持ちが超固い乙女思考のスイーツ(笑)ギャルだったりする。

 そしてさらに実はビッチどころか男が苦手というオマケ付き。男の前に立つだけでも緊張してしまいマトモに会話する事も出来ず、ちょっと身体が触れただけでも顔面蒼白鳥肌全開という筋金入りの男性恐怖症なのだ。

 ちなみにかかわり合いになりだした当初から、なぜか俺だけは平気だったらしい。

 恋ヶ崎曰く、あんたはヘタレなキモオタだから、私の中で男と認識しなかったんじゃない? との事。おい、失礼すぎんだろ!

 てかビッチでギャルで乙女でスイーツ(笑)で男性恐怖症ってどういう事だよ!?

 

 そんな訳の分からんギャルは、入学当初からとある男子に恋に落ちていたらしいのだが、その相手というのが軽音部で爽やかな超イケメンの鈴木爽太。

 だがそれだけならまだ良かったのだが、実はこの鈴木が俺でさえ引く程のガチオタだからもう大変!

 しかも超ロリ方面のフルオープンガチオタ!

 これでモテモテなのだから、『ただしイケメンに限る』と言うのは現実に存在するんだなぁと、ある意味感心してしまうほどだ。

 

 

 そんな変態オタな鈴木に、スイーツ(笑)な恋ヶ崎が恋に落ちてしまった訳だが、じゃあなぜここで俺が関わってくるのか?

 答えはさらに意味が分からない……。

 

 俺がオタクという事が知られたくなければ、私に協力して私をオタクにしなさい。私がオタクになれば、鈴木君とお話がしやすくなるから、と。

 ……ホント言ってる意味が分かんねーよ!

 

 

 しかし実は俺にも入学当初から恋をしている相手が居るのだ。

 それは同じクラスの長谷川翠。美人で成績優秀。クラス委員も勤める正に俺なんかには高嶺の花。

 

 俺が長谷川に密かに恋をしていると知った恋ヶ崎は、俺にこんなトンデモ提案をしてきたのだ。

 

 『だったら私があんたをリア充にしてやるわよ!

そのダッサい見た目からヘタレ根性までを叩き直してね。今のままじゃ長谷川さんに興味なんて持ってもらえる訳ないでしょ!』

 

 

 と。

 

 こうして俺、柏田直輝と恋ヶ崎桃の『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ』という奇妙な協定関係が完成したのである。

 

 

 

 

 そんな恋ヶ崎との出会いから早5ヶ月近く。こいつに関わってしまってから、本当に色々な事があった。

 

 オタクを隠していたとは言え、それでも地味でヘタレなモテない男であるという事実は変わらない俺は、密かな想い人・長谷川と、友達どころか会話さえも出来ない状態であったはずなのに、リア充な恋ヶ崎の協力を得たおかげで見た目もかなりマシになったし、多少の根性も付いてきたように思う。

 そして恋ヶ崎の更なる協力により、長谷川と一緒に勉強したりカラオケに行ったり、そして夏休みには二人でお台場デートなんて夢みたいな事さえも経験できた!

 そして今や長谷川から友達だと言われる程の存在にもなれた!

 

 一方恋ヶ崎と言えば、鈴木に合わせる為にエロゲをやってみたり夏コミに行ってみたりとかなりの努力をしたが(もちろんエロゲ購入や夏コミ参加は俺が強制連行された……)、こっちは中々うまく行かない。

 そもそも鈴木がビッチが大嫌いだというのが主な原因のひとつだろう。あいつ昔なんかあったらしいんだよなぁ……。

 

 まぁそんなこんなで俺は恋ヶ崎との協定関係を結んでからというもの、今まで経験した事のないような出来事ばかりを経験し、ほんの少しずつだが成長出来ているような気がする。

 

 

 *

 

 

 ……成長出来ているような気がする……のだが、ここにきて俺にはとんでもない問題が浮上してきてしまった……。

 

 

 俺は確かに長谷川に想いを寄せている。その気持ちは変わらないはずなんだ。

 だけど……俺はここ最近、他に気になる人ができてしまっていた……。

 俺の気持ちなんてこんなものだったのか? と、正直自分で自分が情けなくなる程だが、どうしてもあの人の事が頭から離れなくなってしまっていた。

 

 

 ――その人の名は……狭川紫(さがわゆかり)さん。通称ムラサキさんと言う、たぶん二十歳くらいの女子大生の美人なお姉さん。

 恋ヶ崎を連れて夏コミに行った際に、偶然出会った大手壁サークルの有名同人作家さんだ。

 

 ムラサキさんは初めて会ったただの一般参加者の俺達にとても優しくしてくれた。

 体調が悪くなってしまった恋ヶ崎を偶然見付けて、なんと初対面の相手をブースの中で休ませてくれたのだ。

 

 その時恋ヶ崎とは連絡先を交換したらしく、その後もLINEやスカイプで連絡を取り合っていたらしいのだが、ひょんな事から恋ヶ崎が同人誌(小説)を書く事となり、その製作に協力してくれたり、なんと挿絵まで描いてくれたりしたのだ!

 超有名同人作家さんが無名の女子高生の処女作小説の挿絵を描いてくれるなんて、普通ありえねぇっての!

 

 そんな訳でいつの間にかムラサキさんとは交流を持っていたのだが、先日新宿でのバイトの帰りにたまたまムラサキさんと出会ってしまった。

 

 ムラサキさんは、女友達に騙されて連れていかれた合コンの帰りだったのだが、早く帰りたいのに、ムラサキさん狙いのオサレ大学生の引き止めにあって困っていた。

 そこへたまたま通りかかった俺に気付いたムラサキさんが、俺を彼氏だと言ってその場を逃れた。

 その後「急に巻き込んでしまって申し訳ありませんでした……」と謝罪を受けたのだが、合コンから早く帰りたがっていた理由を聞いて、なぜか俺はムラサキさんのマンションへと行くことになってしまった!

 なんと同人誌の印刷期限が明日と迫っていたらしい。

 

 俺は同人誌製作なんてした事も無いし役に立てるとも思えなかったのだが、消しゴム掛けだけでも助かるとの事で急きょ手伝いをする事になり、なんと美人女子大生の一人暮らしのマンションで一夜を共にしてしまった……。

 いや、もちろん純粋に漫画の手伝いしただけだから!

 

 ただこのムラサキさん。美人で優しい女子大生という姿とは裏腹に、描いてる内容が激エロい!

 それを二人っきりで仕上げるというのだから、そりゃもう色んな意味ですげー修羅場だ。

 

 しかもこの人、本当に人当たりの柔らかい良い人なクセして、ホント小悪魔なんだよな……。

 どうやらモテない童貞男子高校生の俺をからかうのが楽しいみたいで、なにかというとすぐからかってきやがる……!

 

『今日のお礼は必ずしますから!』

 

『そうですね、今日のお礼に……原稿が終わったら……何でも一つ言うことを聞く、っていうのはどうです?』

 

 なんて、小悪魔的笑みを浮かべてからかってくんだぜ!?

 そのからかってきてる時の小悪魔笑顔が……そりゃもう可愛いのなんの……。

 

 

 結局エロ同人誌を仕上げたりからかわれたり途中二人して寝落ちしちまったりと(ソファーで座ってたら気付いた寝ちゃってて、起きたらムラサキさんが俺の上に乗っていた……童貞男子を殺す気かっ!?)、とにかく色々な修羅場をくぐり抜け、なんとか印刷に間に合わせる事が出来たわけだ。

 

 いや! 別に美人女子大生と一夜を共にしたからといって、長谷川への一途な想いからムラサキさんに移り気をした訳では決して無いんだ。

 じゃあなぜかって? それは……その一晩を経て、ムラサキさんの今まで見たこと無かった一面を垣間見てしまったからだろう。

 

 美人で優しく小悪魔なお姉さん。

 そんな印象だったムラサキさんだけど、実はこんな一面があるんだな……って知ってしまった。

 

 友達に騙されて合コンに付き合わされてしまったドジなムラサキさん。

 

 イケメンでチャラいオサレ大学生をくだらない男性だと心から軽蔑して怒っていたムラサキさん。

 

 同人作家としてのプライドをしっかり持ち、自分の仕事に妥協を許さないムラサキさん。

 

 なぜ同人誌を描くようになったのか、自分の作家としての原点を語ってくれたムラサキさん。

 

 思わず添い寝状態で寝てしまい、起きた時に真っ赤になっていたムラサキさん。

 

 どれもこれも、今まで持っていたムラサキさんのイメージとは違った。

 今までは完璧美女ってイメージが強かったのに、なんていうかとても可愛らしく、さらに尊敬出来る存在になった。

 

 

 そして、二人で頑張って同人誌を完成させた後のあの一言とあの笑顔。

 

『お礼の件、ちゃんと考えておいて下さいね!……あら、もう忘れてるんですか?何でも一つ、言うことを聞くという件ですっ!……本当に何でも構いませんから……ねっ』

 

 疲れ切っているはずなのに、とびっきりの小悪魔笑顔でウインクをしながら投げキッスをしてから颯爽と印刷所へと向かったムラサキさんのあの笑顔……。

 

 からかわれてるって分かってるはずなのに、あの日からその笑顔がどうしても頭から離れずにいた。

 

 

 

 ――そしてそんな悶々とする毎日を過ごしていたあの日、バイト帰りのコンビニで見てしまったんだ。俺が絶対に見てしまってはいけないものを……。

 

 それが、俺が本当の意味でムラサキさんが気になりはじめてしまったきっかけだったんだ。

 

 





今回はこの作品の紹介を兼ねてのプロローグでしたが、次回から本編に入ります。


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