「田中 正人様。あなたは死んでしまいました」
俺の名前は田中 正人。男子高校生だ。
今俺は、目の前にいる背中から翼が生えた女性に死んでしまったと告げられている。
なぜ、こうなったか。
それは時を遡ることになるだろう。
俺が帰路を歩んでいると。
『危ない!』
といって、巨大な大木がこちらに倒れてきた。
その下敷きとなって、死んだ、とのことらしい。
未練はないが死に方が災害というなんとも未練タラタラに残りそうな死に方をしていた。
「田中様。あなた、異世界に興味はありますか?」
「異世界ぃ?」
異世界って、剣と魔法の世界か?
そんな世界があるなら一度行ってみたいな。
「異世界って、異なる世界ですか?」
「はい。その異世界です」
「ぜ、ぜひ行きたいです!」
剣と魔法の世界があるのなら、是非とも行ってみたい。
無双したい気分だ。
やはり男といえば探検とか冒険に憧れるものですよ。
魔王もいるかもしれない。
勇者になるのも悪くはない。でも、勇者にはならなくていいや。
単なる遊びで、異世界では遊びつくそうと思う。
「わかりました。では、この中から転生特典を選んでください」
「転生特典ん?」
「はい。転生した後にまた死なれたらこちらも対処できません。死なないように一つだけ強力なものを与えているのです」
「へえ……」
それはすごい。
チートを一つ貰える、というわけか。
これはワクワクしてくっぞ。
「聖剣エクスカリバー、豪腕、グリンガムの鞭に……」
転生特典に目を通してみる。
うーん、この中で欲しいものは特にはない。
一通り目を通してみて、ある剣に、目が止まった。
「聖剣アロンダイト……?」
かの有名な円卓の騎士ランスロットが使っていたと言われるアロンダイト。湖の精霊に育てられたランスロットが愛用していた剣。
アーサーよりランスロットのほうが好きな俺はこれを使ってみたい。
聖剣アロンダイトはたしか切っても刃こぼれしない剣だったはずだ。
刃こぼれしないということは、剣身を研ぐ必要もなにもなくなるし、斬れ味も落ちないので、殺傷能力は高いものだろう。
そしてなによりエクスカリバーよりかっこいい。
これに決めた。聖剣アロンダイトに決めた。
「聖剣アロンダイトが欲しいです!」
「わかりました。では、いい異世界ライフを堪能してください」
下に魔法陣が描かれ、俺の体が浮かび上がっていく。
ここから俺の楽しみな異世界ライフが始まる。
かと思いきや、それはまったくの逆で、楽しくない異世界ライフを送ることは未だに知らない。