アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第五十七話 再び対決!横浜の女狐

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 おみやげいっぱい持って横浜基地よりムショに帰還しました。そしたら神宮寺教官が出迎えてくれました………って避難しなかったんですか!

 確かに原作では横浜基地の反応炉制圧に失敗したBETAは一斉に鉄原ハイブへ撤退しますが、原作通りに進むとは限らず危険なのに!

 

 「私はあなたの監督を任じられているのよ。あなたが帰還するというのなら待っている義務があるわ」

 

 そうですか。もし間違ってBETAが流れてきて、それで死んでたら私、オルタの白銀君みたいなトラウマ抱えることになっちゃいますね。

 あれ、見てるだけでも鬱になるのに実体験なんてしたら…………うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!生きてて本当~~~によかったです神宮寺教官!!

 

 管制ユニットを開け、雪ダルマ型パイロットスーツを脱ぎ、一緒に乗っていた涼宮さんを、神宮寺教官に手伝ってもらいながら降ろします。

 一応スピードは緩めたんですが………やっぱりグロッキー状態です。

 そんな状態でも涼宮さん、私のことを切なさと恨めしさの入り混じった目で見ています。

 やっぱり”鳴海孝之ボイス”のこと恨んでますか。

 今更ながらアレは悪いことをしたような気がしてきました。

 

 とは言え罪悪感で立ち止まってなんていられません。今からは大忙しです!

 これからの予定、涼宮さんに手伝ってもらおうと連れ帰ったのですが、さすがに動けそうにありません。なので代わりに神宮寺教官に頑張ってもらいましょう!

 

 「神宮寺教官、涼宮さんをベッドに運んだらすぐ河崎重工に行って下さい。今日納品予定の戦術機パーツをすぐ横浜基地に運ぶよう交渉してきてください!」

 

 「ええ!?基地は壊滅状態だって聞いたわよ!受け入れなんて出来ないでしょう?」

 

 「大丈夫です!今からが人類の存亡の戦いの始まりです!そのためにもパーツを送ってください!」

 

 「………わかったわ。一応副司令に連絡をいれて許可が出たら行くわ。沙霧はどうするの?」

 

 「対BETA殺しの”毒薬”の最後のパーツが手に入りました。朝までに完成させて出来次第博士に持っていきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”毒薬”は最後のパーツ、強振発信部を組み込むだけなのですぐ終わりました。

 野球のボールより一回り大きい球形で、リーディングを通さない物質で覆ってます。

 これの情報を読もうと外皮を破ると強力粘着剤で取れなくなり、強力なBETA言語で”BETA自壊命令”を破った者に送る、というモノです。

 一応危険物の研究製作品なので専用のアタッシュケースに入れます。落としたぐらいじゃビクともしないんですけどね。

 

 ラジオ放送でBETA情報を聞いてみると、侵攻してきたBETAは全て鉄原ハイブに向かっているようです。

 わざわざ海を渡らせて送ったBETAを、作戦失敗とはいえそのまま全て回収するということは、やはり”守り”に入ったようですね。どうやら予定通り原作と同じ”隙”を作っているようです。

 

 では基地に届けに行くとしましょう。

 神宮寺教官は河崎重工にパーツの受け取りに行っちゃったし、一応寝ている涼宮さんに声をかけてから行きますか。

 そう考えて研究室を出ると………涼宮さんが待っていました!

 

 「研究は完成した?私も基地に帰るから一緒に行こうか」

 

 「涼宮さん起きてて大丈夫なんですか? まだ顔色が悪いですよ!」

 

 「こんな大変な時に私だけ寝てなんていられないわ。それに基地まで近いとはいえ、あなた一人だけで混乱している基地に行くなんて危ないわ。神宮寺軍曹にも頼まれたもの」

 

 確かにまだ暗い道を一人で行くのは恐いですね。それじゃ二人で基地まで行きますか。アタッシュケースを涼宮さんが持ってくれて基地に向かいました。

 

 

 

 

 

 「私を助けてくれたのは沙霧さん。でも……”孝之君が助けてくれた”。そう思うことにする」

 

 涼宮さん、そんな悲しそうな目で私を見ないでください。やっぱり”鳴海孝之ボイス”のこと根にもってますね。やはりアレはやりすぎでしたか。

 涼宮さんてば私が鳴海さんだと思ってた時はいっそう女の子らしい感じだったし、いつも勝ち気な速瀬さんもすごく可愛かった!さすがに罪悪感がのしかかってきます。

 

 基地に着いてみると施設は大きく破壊されており、遺体が大量に航空路に並べられています。負傷者が基地内のいたる所におり、横浜基地まるごと外傷病院のようです。私が横浜基地BETA襲撃を知っていながら何もしなかったせいでこの地獄絵図が出来たと思うと心が痛いですね。

 

 それにしても最近”女神の加護”で記憶が飛ぶことがなくなりました。ここ最近の重要なことが飛んじゃったらシャレになんないので一応ボイスレコーダーに記録とかつけてますが、世話になることはありません。どうやら私の心はいろいろ修羅場をくぐったせいでけっこう強くなったようです。

 

 混乱しているとはいえ、さすがに夕呼さんのいる中央作戦室は不審なアタッシュケースなんか持ち込めません。なので涼宮さんに預かってもらい、身ひとつで夕呼さんに会いに行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 夕呼さんにアポを取ると、とあるブリーフィングルームの一室で待たされました。

 しばらくして、思ったより早く夕呼さんは来てくれました。

 さっそくUSBメモリをPCで映し、私は説明を始めました。

 

 「これとこれがBETA全滅のための”毒薬”です。実物はいまアタッシュケースに入れて涼宮さんに預かってもらっています。詳しい構造なんかは後でじっくりを見ていただくとして、使い方を簡単にご説明いたしましょう。

 ”人類の重大秘密あり”と入れた方をA、”BETA全滅せよ”と入れた方をBとします。まずBをBETAが興味持ちそうな機体のメインコンピューターに厳重なブラックボックスにして封印します。そしてAはその機体から常時周囲に発信するようにします。

 そしてその機体をオリジナルハイブに進ませ、BETAに鹵獲させます。人類の秘密を暴こうと深奥のコア『あ号標的』が調べると…………ウソです!毒でした!となります」

 

 「毒……ねぇ。確かに情報の毒かもしれないけど、これを読ませるだけで本当に?」

 

 夕呼さんは画面を見ながら聞きました。

 

 「Bはただ普通にBETA言語を発信するだけの単純なモノじゃありません。ここの反応炉より得た数十万のBETAへ命令を送る強振発信部でとてつもなく強力にし、さらに洗脳技術やコンピューターウイルス技術、ハッキング技術などにより拒絶不可能、命令不服従不可の恐るべきモノとして作ってあります。これを『あ号標的』が読んだ途端、BETA全滅命令しか出せなくなるのですよ!」

 

 ついでに擬似的なケイ素生命体のようにもしてあります。BETAの上位存在がケイ素生命体だという原作知識の応用ですね。

 夕呼さん、画面に映る”毒薬”の構造や情報をじっくり確認しながら見ていきます。こういう姿を見ると『この人も科学者なんだなぁ』なんて思いますね。

 

 「なるほど………。確かにこの構造なら標的をこのBETA言語の支配下におけるわね。それにしても凄いこと考えるわね。BETAを洗脳しようだなんて」

 

 「これの運用は博士にお任せします。この先は謀略の領分ですから。”毒薬”を入れる”杯”の機体が決まったら教えてください。間違いなく発動するようセットします」

 

 すると夕呼さん、ニヤリと楽しそうに笑いました。

 

 「確かにそれはあたしの領分ね。帝大出たての無力な小娘が巨大なお偉いさん相手に色々仕掛けて成り上がったものだわ。”女ギツネ”なんて称号までもらってね。

 いいわ、それをクソ傲慢なBETAのお偉いさんに必ず飲ませてみせるわ!」

 

 うん、やっぱり夕呼さんは敵にまわすとおそろしいけど、味方にすれば頼もしい!

 夕呼さんはまたまたニヤリと笑って続けます。

 

 「ところで、これで”BETA全滅計画”を立てるならオリジナルハイヴのコア『あ号標的』がすべてのBETAに命令を与える存在だと、はじめから知ってなきゃ出来ないわよねぇ?」

 

 

 

  いきなり敵になりましたか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 かつての強大なライバル香月夕呼
 彼女と再び相まみえる!
 さらに強大になった夕呼に真由は勝てるのか?
 
 そして勝負の果てに何を見る………?

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