アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第五十五話 基地襲撃の終わり

 

 白銀武Side

 

 オレは反応炉ブロックを出た後、全速力で90番格納庫へと向かった。

 あそこではオレと速瀬中尉のいない状況でヴァルキリーズのみんなが頑張っているはずだ。みんなの能力は高いが、やはり突貫力は落ちている。

 それに隊長を代行している宗像中尉も隊全体の指揮をとるのは初めてのはずだ。いきなりこんな修羅場で十分な指揮を取れるとは思えない。急いで合流するぞ!

 

 目的地の90番格納庫近くに来ると、ヴァルキリーズに通信を入れた。今までは中継機を壊されているので届かなかったのだ。

 

 「ヴァルキリー2よりα3リーダーへ。ただいま90番格納庫へ向かっています。そちらの状況はどうですか?」

 

 宗像中尉は現在凄乃皇の防衛をしているα3分隊のリーダーなので、コールサインはα3になっているのだ。

 

 『……ザザッ……白銀か!助かった……ザザッ…いや、こちらα3リーダー。各員奮闘するも凄乃皇にBETAが取りつき始めた。鎧衣が使っている新武装のおかげでまだ絶望的には至っていないが……あ!90番に着いたら床に気をつけろ!不用意に着地はするな!』

 

 …………床? どういうことだ? ともかく急ごう!

 

 

 

 

 

 ガガガガガガガガ!  ゴォォォォウゥ!!

 

 格納庫はやはり修羅場だった。もちろんオレも到着するなり戦闘に加わった。向かってくるBETAはやはり凄い数だった。しかし何故か格納庫の床に粘液状のモノが一面にあり、戦車級BETAはそれに足をとられて動きを鈍らせている。

 

 『足を取られているBETAは殺すな!殺すと後ろからのBETAが死体の上を踏み越えて来る!突破してきたBETAだけを集中的に狙え!』

 

 「は……はい!しかしこれはいったい何なんですか?」

 

 オレの質問には美琴が答えてくれた。

 

 『真由ちゃんが作って送ってくれた”トリモチ弾”だよ。

 ”無数に迫ってくるBETAを止めるには足を狙うのが効果的です。美琴さんなら足の重要性を一番よくわかっているでしょうから評価試験お願いします。”て手紙といっしょによこしてきたんだ。

 偶然90番格納庫に保管してあったんで使っているんだけど、ずいぶんBETAを止められたよ!試験なしの実戦使用だけどね』

 

 …………真由が? 反応炉の件は偶然だとは思うが、これもそうなのか?速瀬中尉がなにか疑う気持ちもわかる気がする。………いや、BETAの襲撃なんて誰もわかるハズがないし、わかっているならここまで追い詰められる前にもっと効果的な防衛方法をやるはずだ。やはり偶然だろう。

 オレは考えを振り切り、戦闘に集中した。

 オレが加わることで部隊は活気づき、凄乃皇に取りついたBETAも排除した。だが、にも関わらずいくらでも沸いてくる!

 BETA共相手に忙しく迎撃に励んでいるその最中、

 

 

 

 ズウゥゥゥゥ――――ン………

 

、いきなり地下から爆発音が聞こえた。

 

 (…………地下? 反応炉ブロックからか?)

 

 ―――――――――――――――!?

 

 すると信じられないことが起こった! 

 さっきまで津波の様に押し寄せてきたBETAがすべて動きを止めたのだ。

 そして一斉に出口へ向かって引き始めた!

 

 BETAが全て格納庫から出て行った後、しばらくしてオペレーターから状況報告がきた。

 

 

 『全ヴァルキリーズへ通達。基地に侵入した全BETAは撤退を開始した。追撃はせずその場で待機。警戒体勢に移行せよ』

 

 この90番格納庫だけでなく、基地内に侵攻してきた全てのBETAが撤退したようだ。

 

 

 ………………なにが起こった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 90番格納庫で警戒を解かず待機していると、やがて速瀬中尉の不知火が戻ってきた。

 

 『……………ただいま。本当にBETAはみんな引いていったわね。あいつ、一体どこまで読んでいたのやら………ってなにこのベタベタ!? 足とられた―――――!!!』

 

 中和剤で不知火の足をはがすまで速瀬中尉はずっと真由を罵っていた。これのお陰で凄乃皇は守られたんだけどな。しかしここを掃除するのは………オレ達しかいないな。ガックリ。

 

 そして速瀬中尉の話によると、真由は反応炉を爆破したそうだ。こうしなければいくらでもBETAはやってくるためだという。そして真由は涼宮中尉と共にムショに戻っていったそうだ。

 

 『宗像、引き続き指揮を頼むわ。アイツのことで副司令に報告しなきゃなんないことが山のようにあるの。それに場合によっては事態が大きく動く………いや、まだこれは話すべきことじゃないわね。じゃ、頼んだわよ…………ってまたネバネバ足についた―――――!!』

 

 うん。なにか重要そうなことがあるようですが警戒くらいちゃんとしてくださいよ。天丼ギャグとかやって疲れさせないでくださいね。

 オレ達は再び中和剤の用意をした。

 

 

 

 

 

 ようやく準警戒態勢になり、オレ達は機体を降りて休息に入った。見渡せば基地中ケガ人だらけだった。航空路には大量の死体が並べられている。全ての部隊は壊滅状態だそうだ。一人の損耗もなく、軽傷のみのヴァルキリーズが奇跡だ。

 …………いや、奇跡じゃないな。このBETAに蹂躙されつつあった横浜基地に突然現れた真由。あいつが来なけりゃ速瀬中尉も涼宮中尉も生きていなかった。

 

 

 「タケル、いいか?聞きたいことがある」と冥夜が話かけてきた。

 

 「ああ、いいぞ。何だ?」

 

 「反応炉ブロックに沙霧が現れたそうだな?実は宗像中尉から頼まれてな。その時のことを詳しく教えてくれ」

 

 「いいが、宗像中尉は?直接話した方がいいんじゃないか?」

 

 「宗像中尉は現在涼宮中尉と話している。涼宮中尉は沙霧と刑務所の方に行っていた様だが、つい先頃こちらに戻ってきたのだ」

 

 オレは冥夜に真由が鳴海孝之という速瀬中尉と涼宮中尉の思い人のフリをして流星に乗って現れたことを話した。

 

 「………何故沙霧はその鳴海孝之という人物のことを知っていたのだ?」

 

 「いや、基地の知っている人に聞いたと言っていたが……」

 

 「伝聞だけで他人のフリなどできまい。実はな。他の部隊がこれだけ死傷者負傷者を出したにも関わらず我がヴァルキリーズは一人の損耗も出さなかった。それは沙霧の送ってくれたトリモチ弾による恩恵が大きい。

 BETAの戦術は先に我々が殺したBETAの死骸を盾にし、隠れながら迫るというものだった。この戦術に他の部隊は対処できず次々に潰されていった。だが我々は鎧衣がトリモチ弾で死骸ごとBETAをくるむことで対抗できたのだ」

 

 「そうか。真由のやつ……」

 

 「沙霧に感謝はしている。しかし偶然にしてはあまりに出来すぎていることに宗像中尉は気にしておられるようでな。評価試験に使うだけとは思えない程大量に送ってきたそうだ。それは何故か90番格納庫に保管されていた。そして沙霧が反応炉に現れた不自然な状況を考えてみると……」

 

 「真由は横浜基地のBETA襲撃を知ってたっていうのか?そんなこと……!」

 

 「あるわけない、か。確かにそんなことはありえんがな。しかし『沙霧が反応炉で何かをやったのなら数日内に事態は大きく動く』宗像中尉はそう仰っていた」

 

 

 

 『そんなことあるわけない』と思いつつも『ある』と予感していた。

 

 そしてそれは数日内どころか翌日にやってきた。

 

 人類史上最大の軍事作戦が発令されたのだ。

 

 

 

 ――――名を『桜花作戦』

 

 

 

 

 

 

 

  




 戦いは終わった
 しかし休む間もなく次の戦いが幕を開ける
 それは人類最大の作戦

 そして次回、BETA全滅計画の全貌が明かされる!

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