アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第五十三話 伍長さんの挨拶

 

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 

 「遠いですね………」

 

 私は制御室を見上げて思わずつぶやきました。

 さっきざっと計算した結果、制御室の廊下からの扉が開いて、入ってきた者を確認してから涼宮さんを助けようとしても遅すぎるのです。

 どうしてもBETAが涼宮さんを攻撃して殺す方が一手速い!

 涼宮さんには伍長達さんが警備しており、定期的に涼宮さんの状況確認に入ってきます。入って来たのがBETAか伍長さん達か確認しないわけにはいかないのです。

 もちろん今すぐ動けば涼宮さんは助けられます。

 けどそれをするわけにはいかないのです。

 私は今日のBETA襲撃を黙って見過ごしたため、何百人もの基地の人を死なせてしまいした。

 それは全て計画のため。

 今さら涼宮さん一人を助けるために動いて拘束されるわけにはいかないのです。

 

 

 

 『真由、涼宮中尉が心配なのはわかるが、だったら一刻も速く作業を完了させるんだ!』

 

 そう白銀君が言ってきました。

 

 「え、ええ。わかりました」

 

 ――――――ゴメンなさい、涼宮さん。

 

 私は心の中でもう一度あやまりました。

 

 クーデターの終了時に一緒に帰った時からなんとなく縁のあった涼宮さん。

 

 彼女のやさしく女の子らしい姿を思い浮かべると胸が痛みます。

 

 軍人なのに本当に可愛らしい人でしたね――――

 

 多分作業は間に合わないだろう、そう思いつつもケーブルに向かおうとしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――おチビちゃん…………

 

 

 ――――!?

 

 いま、ヒゲの伍長さんの声が聞こえました!?

 いつもゲートを守っている守衛の一人です!

 こんな場所にいるハズなんてないのに! 今は確か涼宮さんの警護についていて……………

 

 

 

 

 

 ―――――そうか、あなたも殺られちゃったんですね。相棒さんと一緒に………

 

 

 私がクーデターの件でいろいろやらかした時も随分心配してくれましたね。

 

 

 助けられなくてごめんなさい。 見捨てちゃってごめんなさい。

 

 

 でも最期に挨拶をありがとう。

 

 

 お陰で涼宮さんだけは助けることができそうです。

 

 

 私は謝罪と感謝を胸に、背中の突撃砲を下ろします。

 そして制御室側に向かいジャンプ体勢を取りました。

 

 『お、おい真由……?』 『ちょっと! 何やってんのよ!』

 

 二人の声は無視して、制御室の窓からわずかに見える扉をメインカメラのズーム機能で注目。

 

 

 ――――扉が開いた瞬間が見えました!

 

 来た!!

 

 確認もせず、すぐさまジャンプ!

 

 そして涼宮さんに通信をオン!

 頼みましたよ”鳴海孝之ボイス”! 涼宮さんを守ってください!!

 

 「遙ァァァァ! 窓際に寄れ!オレはここだァァァァ!!!」

 『孝之くん!?』

 

 やった!! ”鳴海孝之ボイス”につられ、涼宮さんが窓際へと駆け寄ってきました!

 

 やはりその後ろには侵入して来た小型BETA、闘士級の群れ!

 

 「貴様らァ!遙にさわるなァァァ!!」

 

 ………………なぜこんなセリフが出てしまったのでしょう?演技が過ぎて心まで鳴海孝之っぽくなっちゃったみたいです。

 

 ビームは出さない!一万度近いんで涼宮さんもヤバイ!

 

 ただの長刀にして涼宮さんを避けて制御室の窓を突き破り、闘士級BETA共に突きを喰らわせる!

 

 グワシャアァァァァ!!!

 

 闘士級BETAは一瞬にしてミンチに!

 

 制御室の機器もスクラップ!………まあ、ささいな問題ですね。涼宮さんが助かったんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ちょっと!アンタ何してくれちゃってんのよ!制御室がメチャクチャじゃない!!』

 

 案の定、下に降りたら速瀬さんに叱られました。そしたら涼宮さんが私をかばいます。

 

 『ゴメン水月!でも孝之君を責めないであげて! 私を助けるために、私のせいだから……!』

 

 あ~~~さすがに涼宮さんに真相を伝えるのは罪悪感わきますね。他にもBETAがいる可能性が大きいので涼宮さんも下に降ろしました。

 

 『遙!そいつは孝之じゃなくて…………あ~~もう! この嘘吐き小娘!遙を助けるなら機器を壊さないようにやりなさいよ!これじゃ反応炉を停止させられないじゃない!』

 

 無茶言いますね。まあ、出来てもやりませんが。

 

 『速瀬中尉、夕呼先生との通信は? 急いで善後策を仰がないと!』と白銀君。

 

 『…………ダメね。制御室の中継が壊れたんで司令部に繋がらないわ』

 

 『そんな!』『くそ!みんながやられちまう!』

 

 さて、そろそろですかね。あの決断は。

 

 

 『………………やむを得ない。今からは私の独自判断で行動するわ。白銀、あんたと私のS-11で反応炉を爆破するわよ』

 

 これを待ってました!反応炉破棄です!

 

 「待て、水月!」

 

 『なによ、孝之…………じゃなくて!あんたもいつまで孝之の演技してんのよ!』

 

 いや~クセになっちゃったみたいです。ヒーローっぽい男っていいですね!

 

 「ここはオレに任せろ!三日前に反応炉の調査したお陰で反応炉のことなら何でも知ってるぜ!無論、止め方もな!」

 

 『そうなのか?やったぞ真由!』

 

 『すごい!孝之くん………って三日前の調査?じゃあ、やっぱり沙霧さん?』

 

 皆の絶賛をあびながらジョジョ立ち! バァ―――ン!と擬音を背負ったヒーローの如く!

 

 

 

 

 

 

 『……………おかしい』

 

 「あれ?速瀬さん、このポーズおかしいですか?自分じゃかっこいいと思うんですが……………ではこう!」

 

 体斜めに指さしポーズ! 巨匠、荒木飛呂彦先生の考案した背中にドドドドドドドド!と擬音が出るほどカッコイイポーズ!

 

 『誰があんたの戦術機変態ポーズの批評なんてやるか!あんた、何もかもおかしすぎるじゃないのよ!!』

 

 ヤバイ!さすがに私の不自然さに気がついた!?

 

 『反応炉の調査をして構造を知っているあんたがたまたまここにいる!? そもそもあんた、なんでここにいるのよ! それに孝之と私達のこと何で知ってんのよ! A-01のデータベースに孝之のことは載っていても、私と遙の関係まであるわけないわ!』

 

 ヤバイ!!! とうとう核心に繋がる疑問を持ってしまったぁ~~~!!

 いや、今こそ神にも等しい私の巧みなウソの出番!!

 

 「横浜基地の危機と聞いてたまらずここに来てしまったのです! 迷っていると反応炉に出てしまい、そしたら反応炉を停止しなければならないというではないですか!いや~たまたま反応炉の構造を熟知している私がここに来ちゃったとは何という素晴らしい偶然! まさに神の導きとしかいいようがありません!!!

 孝之さんのことは噂でききました。男二人、女二人のグループなのに女の方二人とも孝之さんに惚れちゃって、平慎二さんよく一緒にいられますね、なんて。」

 

 アメリカンなポーズを交えて力説! 私の説得力ある巧みなウソに速瀬さん、感心したように聞き入り……………突撃砲をこっちに向けました!?

 

 『………アンタ、そんなゴミみたいな嘘で切り抜けられると思ってんの?それに慎二のことまで知っているなんて………あんた何者よ!?』

 

 

 

 

 ………………………ピンチです。

 

 

 

 




 華麗なるジョジョポーズも水月には通用せず!

 どうなる!?真由の運命!!

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