こんにちは 沙霧真由です。
ウソです。流星に乗っているのは鳴海孝之さんじゃなくて私でした~~~!!
鳴海孝之さんというのは『君が望む永遠』という作品の主人公です。ヒロインは速瀬水月さんと涼宮遙さんのこの世界での中尉コンビ。この世界でもふたりの思い人でありA-01部隊の先任でしたが、1999年の明星作戦において任務中死亡しています。
さて、事の始めは流星の通信回線の改善です。知っての通り私の今の姿はでっかい雪ダルマ型パイロットスーツにくるまっているので映像とか出せませんし、酸素マスクのせいで声もくぐもったものになってしまいます。そこで通信用の仮の映像と音声に補正なんかを入れてるんですが………アレ?これなら別に私のものじゃなくてもいいんじゃね?そうだ鳴海孝之さんのものにしよう!向かう先には速瀬水月さんと涼宮遙さんがいるし、二人の君望ヒロインのデレ顔ゲットだぜい!と、いうわけです。
鳴海孝之さんは速瀬さんと涼宮さんより先任のA-01の隊員だったので、映像と音声の記録をサルベージしました。そして色々表情つくったり、声も鳴海孝之ボイスに変換されるように改造したのです!忙しいのになにやってんでしょうね、私。
ですが!このように泣いて感動する速瀬さんを見ると頑張った甲斐があったというものです!
いや~~~まさに素晴らしいウソは感動を呼ぶ!………ですね!
『―――いや………タチが悪いぞ真由。やりすぎだと思うぞ』
真相を公表したら白銀君はこう言いました。失礼な!
「なにを言うのです白銀君!ほら、速瀬さんだってこんなに感動してるというのに!」
『―――――ウフ、ウフフフフ。アハハハハハハ…………』
「ほら、こんなに嬉しそうに笑っている!速瀬さんも久しぶりに鳴海さんに会えたみたいで喜んでいるでしょう!」
『い……いや、とにかくその鳴海さんの声をやめろ!なんか速瀬中尉の様子が………』
いきなり速瀬さんの不知火は疾風の如く突撃砲を拾い
ジャキッ!
私に銃口を向けました!なんで!?
『ちょ……!速瀬中尉やめてください!さすがに真由も度がすぎてるとは思いますが!』
『うるさい!孝之を騙るこの嘘吐き小娘だけは生かしちゃおけないわ!!』
うお!ヤバイ!! だったら…………
「――――撃つなら撃て水月。でも、遙が―――愛するあいつが待っているんだ」
そう言ってダンディに流星の背中を向けました。すると――――
ガシャン……
速瀬さんの不知火は突撃砲を落としました。戦術機なのにガックリうなだれているみたいです。
なんか映画の1シーンみたいですね。
『ちょ!しっかりしてください速瀬中尉!あれは鳴海さんじゃなくて真由なんですよ!』
反応炉より先に速瀬さんが機能停止してしまいました。再起動できるでしょうか?
おっと、ここまでつきあってくれた戦車級のカワイコちゃんに感謝を表してとどめを刺しときますか。手足をもいでいるんでその必要はないんですが。
実はこの赤いカワイコちゃん、基地に入る前からのつき合いです。こいつを盾代わりにしてここまでぶっ飛ばしてきました。
”BETAは生きたBETAを攻撃できない”という法則通り、基地にウジャウジャいるBETAはみんな避けてくれましたよ。お陰でロクに武装のない流星もここまで無傷で来ちゃいました!
さて、ようやくでっかい光る岩みたいな反応炉の前に来ました。そして反応炉の上にある制御室を見上げると、涼宮さんが作業しているのが見えました。速瀬さんは反応炉に取り憑いたBETAの排除、白銀君は破られた扉の前でBETAの侵入を防ぎ、私は扉の充填封鎖の作業を受け持ちました。爆破してたらできませんでしたね。
侵入したBETAの排除と扉の封鎖が終わると速瀬さんは夕呼さんに連絡。私への対処とこれからの行動の指示を仰いでいます。
『後で副司令の元に来なさい、と言ってたわ。それまでおとなしくしてるのよ。』
「ああ、わかったよ水月。」
『だから孝之の声やめろって言ってるでしょ! あと画像! 孝之の顔使うな!』
「すいません。さっきの突撃で不調おこしたみたいで切り替わらないんですよ。しばらくこのままでお願いします。」
ウソです。不調なんておこしてません。
『………だったら話かけんじゃないわよ。遙にもよ』
計算通り!わざわざ今だに鳴海さんの画像と声なんて使っているのは速瀬さんの追求を避けるためです!速瀬さんはさっき一瞬にして自決の決断をしたように、衛士としてはかなり優秀な人ですからね。このような小細工でここに来た理由をうやむやにしないと!
そう、さっきの自決宣言にはビックリしましたねぇ。流星に高度な通信傍受機能と超スピードがなきゃ間に合いませんでしたよ。おかげで『仲間の危機を救いに現れた復活のヒーロー!』みたいな登場になってしまいました。………うん、あれは気持ちよかった!
それにしてもオルタ原作よりBETAが手強くなっています。光線級が反応炉まで来る時間も恐ろしく速いし、光線級の半数が隔壁を破り、半数が後背の迎撃というフォーメーションもそうです。これは多分佐渡島においての奮戦によって人類への恐れが大きくなり、より練った戦略、戦術をたててきたのでしょう。
ここへ来る途中の隔壁は第五隔壁まで全て大穴が開いてました。私がここのシステムに介入して隔壁を開けられることが知られなかったのは幸いでしたが、危うく間に合わない所でしたね。
『わかりました。………はい、すぐ作業にかかります。ちょっと!小娘!』
おや、速瀬さんが呼んでいます。
『ケーブルの断線で反応炉の停止ができないそうなのよ。制御室側のケーブル交換をしてちょうだい』
――――ズックン!
一瞬オルタ原作のあのシーンを思い出しました。原作ではこのケーブル交換の後、涼宮さんは侵入してきた闘士型BETAに殺されてしまうのです!
『速瀬中尉!これを見てください!』
ふいに周囲の警戒を受け持っている白銀君が叫びました。見ると制御室へとつづく隔壁に穴が開いてます!
『隔壁が破られています! 研究塔内にBETAが侵入した可能性があります!』
………………やはり、ですか。可能性じゃなく間違いなく侵入して来ているでしょう。原作知識抜きでも推理できます。反応炉をコントロールしているのが制御室、なんてのはとっくに知られているはずです。
反応炉自身が頭脳型BETAなんだから!
そして侵入してきた小型BETAに命じて制御室の確保、なんてあたりまえすぎです!
私は思わず制御室の涼宮さんを見上げました。
流星がジャンプすれば楽々届く距離。でもBETAが侵入した後、遙さんを助けるなら…………間に合いません!頭の中でざっと計算してみましたが、どうしても一手遅れるのです。
『ちょっと、急いで!だったら速く作業を完了させて退避させないと危ないわ!』
速瀬中尉が急かせます。
ごめんなさい、涼宮さん―――
明かされた大いなる真実に驚愕の白銀と水月!
そして三人はついに反応炉へとたどり着く!
だが一足先に制御室へたどり着いた遙
彼女は原作においてこの後、死の運命が待つのだ
それを知る真由は………?