アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第五十話 ぼくは因果導体

 白銀武Side

 

 ガガガガガ! ガガガガガガ!

 

 ぼくのなまえははしろがねたける。いんがどうたいです。まいにちまいにちおしごとがたいへんです。とくにきょうはねるひまもありません。…………………いかん、幼児退行おこしちまった。

 

 今現在またまたBETAの大群と戦闘中! しかも戦場は我らがホームベースの横浜基地だ。

 まったく今日は…………いや、日付はもうとっくに変わったから昨日か。いろいろありすぎだ!あげくの果てにこの始末!因果導体に休息はないのか!?

 

 

 

 佐渡島から帰ってきたら命令不服従の懲罰であちこちの掃除をやらされた。まあ、それはいい。以前から体はやたら丈夫になったんで大戦闘の後だろうと疲れない。だが新隊長になった速瀬中尉から昨日いきなりA-01の突撃前衛の小隊長に任命されちまった。ちょっと待て!オレは衛士になって一ヶ月ちょっと、衛士になって初出撃やったばかりの新任だぞ!

 

 「ハァ?新任? 衛士の世界じゃBETAの群れに自分から飛び込んで帰ってくるようなヤツを新任だなんていわないのよ!」

 ………との速瀬中尉のお言葉だ。

 

 「『突撃前衛はBETAの群れに飛び込むのがお仕事』なんていうけど、一人でやる奴とか初めて見たわ。いきなり突撃前衛の小隊長とか悔しいけど、目の前であんなの見せられちゃしょうがない!しっかりやんなさい!」

 と、涼宮茜。前の世界じゃ水泳で学園の有名人だった。こいつにラクロスで勝つために世話役なんて引き受けて、女子ラクロスチームの特訓につきあったのも随分昔みたいだ。

 

 「うんうん、まさにバケモノ………あ、ごめんなさい!」

 と、涼宮妹の横で築地多恵って娘。こいつは前の世界でも見なかったな。どうでもいいが涼宮にくっつきすぎじゃないか?

 

 「あっはっは。君をはじめ生きのいいのがいっぱい入ってきて思ったより長生きできそうだよ。後ろからガンガンフォローするから思いっきりやりなよ」

 と、柏木晴子。前の世界ではクラスメートだった。

 

 懲罰の一環で彼女ら同期ふたりの墓を作る手伝いをする時にそんな話をした。彼女らは先に衛士になった元207訓練小隊A分隊だった者だ。

 

 まあ、まかされちまったらしょうがない。冥夜と彩峰を部下にして率いていくなんて難易度高いが、明日からの訓練でなんとか形にしていこう!似たようなことは前の世界で女子ラクロスチームの世話役とかやって経験済みだしな!…………………思い出した。あの一件、一番大変だったのが彩峰、次が冥夜だったような気がする。

 そんなことを純夏にグチってた夜だ。いきなり「あ!ああ!」と純夏は叫んで倒れた!

 慌てて夕呼先生の所へ行こうとすると基地に響き渡る緊急警報!佐渡島ハイブのBETA残党が横浜基地を目指して侵攻しているらしい!

 

 

 

 

 

 「どうなんです?純夏は!」

 

 夕呼先生の指示通り純夏を処置室へ運んだ。夕呼先生は純夏を計測しているさまざまな計器やモニターを見ながら言った。

 

 「さっきあんたといた頃バイタルに大きな乱れがあったわ。原因に心当たりない?」

 

 「いえ、なにも。オレがいきなり小隊長になったグチを言ってたぐらいで……」

 

 「そう、そういやあんた小隊長になったんだったわね。こっちは任せてブリーフィングルームへ行きなさい。基地防衛があんたの初の小隊長任務よ」

 

 訓練一回もなしにそんな豪華な初任務はいりません。

 

 「あ!そうだ、真由とまりもちゃんは!? ムショはすぐ近くなんだから避難させないと!」

 

 「そうね。まったく明日行く予定だったのに………え?流星の準備も29日、話の詳細も29………あいつ、まさかこれを知ってた?」

 

 「夕呼先生?」

 

 「……あ、いいえ、なんでもないわ。二人には避難の指示を出しとくわ。白銀、行きなさい!」

 

 

 旧町田市に張った防衛線で激しい戦闘が行われた。戦況はこちらに優勢かと思われたが、BETAはさらに地下を進んでの奇襲。防衛線部隊は挟撃されほぼ壊滅! だが、それすら陽動で、直接この横浜基地を狙い襲撃するBETAの一群!

 とうとう横浜基地守備のオレ達が戦うことになった。

 しかしどういうことだ? ”佐渡島の残党がエネルギーを求めて”なんて動きじゃないぞ?

 

 

 

 

 

 ―――――そして現在。第二航空路での戦闘が終わった所だ。ここら一帯のBETAは全て倒し、メインゲートは守ることが出来た。Aゲートも無事充填封鎖が完了したようだが、Bゲート前が難航しているらしい。本来の作戦はA、Bゲートを充填封鎖し、メインゲートに戦力を集中させて撃退する予定だった。しかしBETAがBゲートに戦力を集中し、激しく戦闘しているため作業は進まないようだ。オレ達も援護に行きたいが命令あるまで待機してなきゃならない。

 

 

 

 

 『タケル、そなた何故BETAの群れに飛び込んで無事でいられるのだ?後学のためにぜひご教授願いたい』

 

 「簡単だ。群れの全てを討つんじゃなく、体の中心を向けてくるヤツから倒すんだ。フルオート射撃で全てを狩ろうとするのは死亡フラグ。機体が硬化して潜り込まれるだけだ」

 

 『………白銀、佐渡島がBETAと初戦闘だよね?なにその”十年BETAと戦い続けました”みたいな貫禄のセリフ』

 

 と、待機してる間部下になった冥夜、彩峰と話したりした。ふと思い出したが、ここにきて一ヶ月ぐらいした頃に佐渡島から基地に向かってのBETA侵攻の報が伝えられたことがあった。あの時オレは恐怖でぶっ倒れちまったんだよな。

 あの時の恐怖は今はもう思い出せない。おぞましいBETAの一体一体を丁寧に見て脅威度の優先順位をつける、なんてことも出来てしまう。

 その時突然CPの涼宮(姉)中尉から指示が来た!

 

 

 『ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズへ通達。BETAの地下施設侵入に備え直ちに移動を開始せよ』

 

 ―――――侵入!? Bゲート、破られたか!!

 

 

 

 

 戦場は中央集積場。手前の臨時補給所で補給をすませ、第7大隊と交代せよとの命令だ。

 補給を済ませ、いざ出陣!………しようとした所で待機命令が出た!?

 

 「速瀬中尉、どういうことです!? 敵はメインシャフトに流れ始めていると聞きます!オレ達も合流してこれ以上の流入を防がないと!」

 

 『メインゲートが…………破られたわ!!』

 

 ―――――――――!?

 

 「バ、バカな!? あそこ一帯のBETAはオレ達が殲滅した!再び襲撃してきたとしても速すぎる!」

 

 『私達が撤退したのを見計らったようにすぐ要塞級が来たみたいなのよ。そして………体内から光線級を吐き出して……それがメインゲートを破壊した!』

 

 

 ――――なんだそれは!? 孔明のワナに嵌まった周瑜とかな気分だぞ!? 旧町田の陽動といい、戦場の魔術師にでも進化したのかBETA!?

 

 メインゲートが破られた以上中央集積場を守ることは不可能だ。あと防衛陣を敷けるような場所は………ないな。後はメインシャフト内か反応炉前の廊下ぐらいだが、そこの施設を破壊するのはヤバイ。どうにかできるのか?司令部!

 

 

 

 

 

 

 




 激戦の横浜基地!
 巧みに基地を切り崩すBETA!

 そして次回、破滅せまる戦いの中で白銀武が出会った以外な人物とは?

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