アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第四十六話 横浜基地へ

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 

 「あたしね、けっこう危険なギャンブルって好きなのよ。で、それに勝ったり負けたりしてきたけど、勝ったいくつかで今の地位とか立場なんかを手に入れたわけ。

 そのあたしのカンがいうわけよ。この話は”買い”だってね」

 

 というのが夕呼さんが私の話にのった理由だそうです。カッコイイけどその下で働いている身としては冷や汗モノの上司ですね。

 さて今現在、夕呼さんと護衛さん達と共に車に乗って10分ほど先にある横浜基地に向かっています。

 

「博士、これどうしてもつけてなきゃダメですか?」

 

 私の手首には手錠がガッチリついています。外へ行く時はつけてなきゃいけないそうです。今更ながら自分が罪人ってことを自覚しちゃいますね。

 

 「一応あんたに刑罰受けさせてるってアピールは必要なのよ。流星で暴れて帝国やらアメリカやらの顔をいろいろ潰しているからね」

 

 「嗚呼!なぜにどうして通信にまるで気を遣わなかったのでしょう! 通信さえ出来ていたなら神業の如き私の巧みなウソで1度も戦闘せずに大団円となっていたでしょうに!」

 

 「いや………それは幸運だったわ。それしてたら帝国、米国共に怒り狂ってなにするかわかったもんじゃなかったわ。事件の最後についたあんたがスーパーソルジャーだってウソだけでもかなり混乱したし」

 

 横浜基地前に着くと、私は護衛に守られながら夕呼さんがゲートキーパーの伍長さん達に身分証チェックするのを待ちます。私の身分証は抹消されたのではなく夕呼さんが預かっており、ここへ来る時は夕呼さんか他の誰かに持ってもらう、という形になります。

 

 

 「確認とれました。お帰りなさい、副司令!………おチビちゃんもな」

 

 伍長さん達は私にも挨拶してくれました。私は「ありがとうございます。ただいま。」と言って夕呼さんと基地に入りました。伍長さん達とはここに初めて来た時白銀君がらみでハデに押し問答したんだけど、それ以来なんとなく仲良くなって時々話したりなんかしてました。

 

 

 

 

 

 「で、どうする?鑑に会う?」

 

 夕呼さんの自室に入ると夕呼さんが聞いてきました。

 

 「いえ、まず反応炉からお願いします。早くお薬飲みたいので」

 

 「ああ、そうだったわね。ちょっと待ってなさい」

 

 夕呼さんは内線をかけ、あちこちに指示。やがて涼宮さん(姉)が部屋に来ました。ふんわりした感じのやさしそうな人です。そういやクーデターが終わって基地に帰還する時には彼女が私についていました。

 

 「ピアティフはあたしの代わりに事後の後始末をしているからこれないわ。代わりに涼宮があんたにつくわ。涼宮、突然で悪いけどお願いね」

 

 「はい、地下の反応炉へ沙霧さんを案内せよとのことでしたが、昨日あれだけ大きな戦いを行った直後ですのに今すぐに?」

 

 「本当はあたしも今日ぐらい伊隅達を偲んで泣きたいんだけどね。あの結果じゃ偉い人やら邪魔したい奴が色々突いてくると思うのよ。そういうヤツらに隙を与えないためにもすぐ次の手を用意しないといけないの。これもその一環と思ってちょうだい」

 

 「そうなのですか。いえ、失礼いたしました。任務、謹んでお受けいたします」

 

 そう言って涼宮さん、ピッと敬礼。この人がやるとなんか可愛いですね。

 

 「涼宮、敬礼はやめてって言ったでしょ」

 

 いや涼宮さんも軍人だし、夕呼さんは副司令だしそうもいかないでしょ。それにしても夕呼さんも大概ウソが上手ですね。このテクニック、盗まねば!

 

 

 この横浜基地は元横浜ハイブがあった上に建てられており、そこにあったBETAのエネルギー源である反応炉が地下にあります。00ユニットはこれの研究によって出来ており、それを安定させるODL浄化もこれで行っているのですが………。実は反応炉の正体は頭脳型BETA。BETAはあえて人類にこれを渡すことで人類の情報収集を行っています。なので00ユニットのODL浄化を行うさいに00ユニットが得た知識、情報をオリジナルハイブに送っているので今現在大変なピンチになっています。まあ、私もこのことを知っていながらあえて何もしてないのですが。

 

 

 さて、夕呼さんと涼宮さんと一緒にエレベーターで最下層まで降ります。夕呼さんは制御室へ行ったので、私と涼宮さんだけで反応炉前に来ました。でっかい岩の塊のようであり、でも内部から眩い光を発する姿は壮観であります。一目見ただけで表層はおそろしく頑丈な物質とわかりますね。あとなんとなくですが、私の頭の中にあるBETA技術由来の記憶補器が反応炉の響きのようなものを感じ取っています。

 

 「それじゃ涼宮さん、お付き合いお願いしますね」

 

 いっしょにいる涼宮さんにはノートPCを持たせています。これにわかった情報を入れていきます。

 

 「反応炉周囲をぐるってまわって見るだけ?それで何かわかるの?」

 

 「いろいろわかりますよ。例えば涼宮さん、あなた昨日相当泣いたでしょう?」

 

 「ええ!その通りだけど………」 

 

 涙の跡なんて一発です。

 

 「その足、疑似生体ですね!」

 

 「すごい!服の上なのに!?」

 

  はい、わかります。

 

 「そして昔ひとりの男をめぐって誰かとぶつかった!今もその人を愛している!」

 

 「ええええええ!? どこ!?どこを見てそんなことわかっちゃうの!?」

 

 そんなにわたわたしてるとノートPC落としますよ。まあ、これは原作知識なんですけどね。

 

 

  涼宮さんが落ち着くのを待って反応炉の観察を始めました。ゆっくりと反応炉をまわって歩いて、内部の構造を調べていきます。透視能力とかではないのですが、表層に現れる微妙な変化や、漏れてくるエネルギーの強弱で内部構造がかなり詳しくわかります。そしてわかったことを次々に涼宮さんが持っているPCに入力していきました。

 

 

 

 「終わりました。やっと薬が飲めますね。」いつも携帯している脳の働きを鈍らせるお薬を飲みます。やっと人間の世界が戻ってきました。

 

 夕呼さんの自室に戻り、夕呼さんがさっきのノートPCをチェック。

 

 「大したものね。ただ歩いて見ただけなのにこんなにも詳しくわかるのね。」

 

 「帰ったらもう少し詰めて、補足説明なんかも入れて、次会った時に渡します。ちょっと面倒で飛ばしちゃったとこなんかもあるしね」

 

 実は意図的に反応炉の正体が頭脳型BETAと匂わせる所は省いているのです。

 

 「じゃ、次は鑑ね。いま白銀がついているはずだから聞いてみるわ」

 

 夕呼さんは内線で白銀君と連絡。話では純夏さんも荷電量子砲を限界まで撃ってシステムダウンしたらしいんですよね。私と話せるでしょうか。

 やがて受話器を置いて夕呼さんは言いました。

 

 「いま安定して大丈夫みたいよ。白銀が連れてこっちに来るって」

 

 

 

 

 

 




 ロボ純夏と邂逅! 真由の用事とは?

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