アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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 佐渡島ハイブ攻略戦佳境!
 白銀武達と凄乃皇に乗っている純夏の運命は!?


第四十三話 佐渡島戦記 後編

  白銀武Side

 

 

 凄乃皇が墜ちた! 純夏はどうなったんだ!?

 

 凄乃皇の墜落する所を見たのは補給を受けている最中だった。そして新たな命令を下された。

 この状況に対する最終作戦。純夏こと00ユニットを回収し全部隊撤退。凄乃皇を自爆させ佐渡島ハイブを消滅させる――――

 

 オレは伊隅大尉と共に純夏のサルベージ役に選ばれた。二人で凄乃皇内に入り機関内にいる純夏を手順に従い引き上げた。

 

 (意識なしか………。一刻も速く夕呼先生に見せないと。)

 

 純夏を案じるオレに伊隅大尉が話しかけてきた。

 

 「よく退路を作ってくれたな。もっとも命令不服従のため、ここの外では褒めるわけにはいかんのでここで礼を言っておくが。」

 

 「いえ、命令に従わず申し訳ありませんでした。」

 

 「しかしずいぶんな無茶をしたが機体は大丈夫なのか?もし異常があるなら正直に言って欲しい。乗った後では対処できんからな。」

 

 「本当に大丈夫なんです。部隊に入る前、しばらくオレが乗る不知火と共に真由の研究所の方にいましてね。新素材で作ったパーツでかなり強化してもらいました。OSもオレの反応についていけるよう改良してあります。お陰であんな無理をしても問題なく動かせます。」

 

 真由は預かっていたゲームガイをアメリカに渡してしまったことへのお詫びだと言っていた。思えばアレもオレと共にこの世界に来ちまったが随分数奇な運命をたどったものだ。

 

 「部隊に入るのが遅れたのはそういう訳か。とにかく結果はこうなってしまったが、この戦いで得られた情報は貴重だ。何としても基地に帰り、次の作戦に繋げるぞ!」

 

 ――――伊隅大尉はそんなことを言っていた。でも彼女に次なんてなかった。 

 

 

 

 

 「こちら白銀。ただいま鑑少尉と不知火に帰還します。周囲の警戒、よろしくお願いします。」

 

 凄乃皇から出る前にそう連絡すると鬼の声。

 

 『白銀!あんた、よくも堂々と命令不服従やってくれたわね!軍法会議は勘弁してやるけど基地に帰ったら死ぬほど懲罰くれてやるから覚悟しなさい!』

 

 速瀬水月中尉!? この人、いま伊隅大尉に代わって隊の指揮取ってなきゃいけないってのに何やってんの?

 

 「は、速瀬中尉!? 申し訳ありません!いえ、それより退路の確保は!? あれを塞がれたら基地に帰るどころじゃありませんよ!」

 

 『ちゃんとあんたの作った道は守っているわよ!ウチだけじゃなく帝国軍も。今それで帝国軍が順次撤退を開始してるし、大尉が戻るまで死守するわ。あんたはついで。』

 

 やれやれ、基地に戻っても地獄は続くのかよ。そんな感じでオレと純夏は不知火に戻った。

 伊隅大尉はまだ凄乃皇に残り、起爆装置のプログラムをセットしている。起爆装置と言っても爆弾の類ではなく、エンジン機関であるムアコック・レヒテ機関の出力を臨界まで上げて爆破するのだそうだ。その破壊力は佐渡島全てを消滅させる程のものらしい。………まあ、BETAの群れを一発でなぎ払う威力だしそのくらいはあるのだろうけど、とんでもない爆弾と一緒にいたんだな。

 

 実は今のオレは警戒する方ではなく守られる側。伊隅大尉と速瀬中尉以外知らないが。この場の最重要物の00ユニットである純夏を乗せているからだ。やがて速瀬中尉から連絡が来た。

 

 『白銀、大尉からもう間もなく帰還すると連絡が入ったわ。あんたは先に撤退してなさい。鑑を乗せているんだからさっきみたいな無茶するんじゃないわよ!』

 

 「了解しました。お叱りは母艦で。」

 

 オレは冥夜、柏木を護衛に一足先に撤退することになった。巨大BETAを倒し、レーザー種も片づけたので付近のBETAの排除もうまくいっている。問題はないだろう、そう思っていた。

 

 

 

 

 ――――ズウウウン!!!

 

 

 突如、巨大な質量音があたりに響き渡った!

 

 沈黙したはずの超巨大BETAが再び動き出したのだ!!

 

 凄乃皇の荷電量子砲を十発喰らい、体半分を溶かされているのになんという生命力!!!

 

 

 そいつは凄乃皇に突進した! くそ、伊隅大尉がまだ中にいるのに!

 凄乃皇は咄嗟にラザフォード・フィールドを展開して受け止める!

 だがこのままでは伊隅大尉は脱出できない!

 

 オレはデカブツの注意を引きつけようと機体を出しかけたが、

 

 『ダメよ白銀! あんたの機体には人類の希望が乗っている! 私がやる!』

 

 と速瀬中尉に止められた。確かに純夏の体調を考えると無茶な機動は出来ない。だが速瀬中尉が行こうとしたとき、まわりのあちこちからBETAが出てきた!

 それらはみるみる増えていき、全て凄乃皇に群がっていく!それらもラザフォード・フィールドに阻まれて取りつくことはできないが、これじゃもう伊隅大尉は…………!

 

 くそ!なんで凄乃皇に? まさか凄乃皇のエネルギー目当て!?

 凄乃皇はBETAの大海の中で沈み没する船にようにも見えた。

 

 そして船と運命を共にする気高き衛士がひとり――――

 

 『ヴァルキリーズ総員撤退! 速瀬、私からの最後の命令。そしてお前の部隊長としての最初の仕事だ。皆を率いて無事、基地に帰還せよ!………ヴァルキリーズをよろしく頼むぞ。』

 

 『……………了解……いたしました大尉。どうかあの世でもお元気で。いずれ私も……』

 

 『余計な気を回すな。お前達の顔は当分見たくない。そっちで長く苦労しろ。香月副司令と神宮寺軍曹にもよろしくな。それと白銀、鑑と横浜のムショにいる嘘吐きを頼むぞ。あいつはいつか必ずBETAを打ち滅ぼす方法を思いつく、そんな気がする。………まあ最期の美しい夢かもしれんがな。』

 

 「はい……大尉。いろいろありがとうございました!」

 

 オレは自分の中のありったけをこめて敬礼した。

 

 『他のみんなにも別れを言いたいが、さすがにそれは無理だ。さあ行け!生きて何事かを成せ!』

 

 最期は命令ではなく激励か。本当にあの人らしい――――

 

 

  撤退中はまるで何かに封じられるように悲しみはわかなかった。ただヴァルキリーズの先頭で的確、冷静にBETAを排除していく。大尉のことを思えども悲しめず、ただ機械のように戦う自分が無性に悲しかった。

 そうして無事、部隊の損耗もなく母艦に帰還した。

 

 母艦に戻って程なくして天地揺るがすような巨大な爆発。オレ達は甲板に出て佐渡島の消滅する壮大な光景を眺めた。そして伊隅大尉への感謝と敬意を込めて部隊のみんなといつまでも敬礼をした。

 

 母艦での待機中、夕呼先生が伊隅大尉と最後に通信を繋げて取った映像があると言ってきた。みんなで待機室に集まり、その映像で大尉に最後の別れをする。大尉がオレ達部隊のひとりひとりに送ってくれた言葉は力強くやさしかった。純夏や横浜にいる真由への言葉もあった。

 

 最後にオレへ向けたオレを案じ、期待しているという言葉に

 

 

 オレはやっと一粒だけ泣くことができた――――

 

 

 

 

 

 

 




 ライバルと呼ぶにはあまりに強大過ぎる敵BETA!
 この絶大な敵に沙霧真由はいかに戦う?

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