アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

38 / 64
第三十八話 真実を殺した少女は謳う

 伊隅みちるSide

 

 

 

 副司令から指示を受けた後、私と速瀬、宗像、風間の四機と指揮車両の涼宮で奴の足取りを追った。私と速瀬は新任の機体を拝借した。熱海海岸を南下して岩山をまわる途中、頭部にダメージを負った三機の白い武御雷に出会った。通信してみると将軍殿下の護衛をしているとのことだ。さすがに三機ともカメラアイの破損した状態では万一のことに不安があるため、宗像と風間をつけることにした。私と速瀬、涼宮は戦闘現場へ直行した。

 

 

 『しっかしあの斯衛が三機がかりでもやられちゃうなんてねぇ。しかもあいつ、銃なしなんでしょ?どんだけ無敵なんでしょうね、大尉』

 

 と速瀬が話しかけてきた。私も本当に技術部の者だろうか、と思う。

 

 「副司令の命令で奴には涼宮が投降をすすめ、私達はクーデター部隊の鎮圧に当たる。涼宮、現場からの通信はどうだ」

 

 涼宮の乗っている指揮車両は広範囲の索敵と長距離通信が可能だ。なので先程から神宮寺軍曹と連絡をとり、戦況を伝えてもらっている。

 

 『はい、神宮寺軍曹との通信によると戦闘は終了したそうです。例の実験戦術機が我が方、クーデター側双方の戦術機を行動不能にし、動けるのは二〇七訓練小隊B分隊の機体のみだそうです。現在彼の戦術機の搭乗者は機体から降りて首班の沙霧尚哉と会話をしているそうです。副司令の仰る通り彼の妹のようです』

 

 副司令の仰る通りだったか……。だがそれなら何故あれほどの戦闘技術を?とにかく戦闘が終了したならさっきまで考えていた行動予定は大幅に変更せねばなるまい。しばらく考えていると涼宮から緊急通信がきた。

 

 『大尉、月詠中尉と米軍所属のウォーケン少佐が彼女の元へ向かったそうです! 彼女が基地の者のため帝国、米国との関係が危ぶまれる可能性があるとのことです!』

 

 「軍曹には彼女の確保と身の安全を指示しといてくれ。我々も急いで向かうともな!」

 

 やれやれ。銃剣ではなく言葉での戦いになりそうだ。これなら速瀬ではなく風間を連れてくるべきだったか。ともかく急ぐとしよう!

 

 

 現地は戦術機の墓場だった。無数の不知火や激震の残骸、米軍のF-22ラプターがスクラップになり、赤い武御雷が胸に大穴を開け佇んでる様は衝撃だった。二〇七訓練小隊B分隊の吹雪だけは無事。いや突撃砲は無い所から我々と同じくそれを破壊されたのだろう。速瀬の言う通りどれだけ無敵だったのだろうな。周囲の警戒は速瀬に任せ、私と涼宮は機体を降りて揉めている一団の所へと向かった。

 

 

 

 「いったい君は何者なのだ!あの戦術機は!? これほどの戦闘力を持ち、あれほどの動きが可能な機体はどこでつくられたのだ!ラプターが銃なしの機体に一方的に蹂躙されるなど悪夢だ!あまつさえラプターを抱えてジャンプし、地面に激突して無傷など悪魔が作ったとしか思えん!」

 

「貴様が………我が剣を破ったというのか……! 貴様らの組織の強化技術とは何だ!? なぜ貴様の様な小娘が我が剣のことごとくを見切れる!? 言え! 言わねばこの場で……!」

 

 「妹に手出しはよしてもらおう。帝国斯衛の矜持とはその程度のものであったのか?月詠中尉よ」

 

 我が恩師である神宮寺軍曹は小さな少女をかばいながら必死に激昂する彼らを取りなそうとしていた。しかし聞けば聞く程とんでもない機体と彼女だ。高名な物理学者でもある香月副司令の腹心として動いてきたお陰で物理には多少詳しくなったが、あまりに物理法則から外れすぎているように思える。だが確かに様々な法則から外れているBETAに対抗しうる者かもしれない。

 

 

 「神宮寺軍曹。伊隅みちる大尉、涼宮遙中尉他速瀬水月中尉ただ今現地に到着しました」

 

 私と涼宮は神宮寺軍曹に敬礼をして挨拶をした。軍曹は教え子の私達に敬礼し、律儀に敬語で報告をした。

 

 「ご苦労さまです大尉、中尉。見ての通りただ今現場は大変混乱しております。後日副司令より説明をすると言っても皆興奮しており、引き下がりそうもありません」

 

 まあそうだろうな。彼らも散々にやられた以上、情報のひとつも持って帰らねば本国に顔向けできまい。そういう立場というのは痛いほどによくわかる。対象であるこの少女を守るのは骨が折れそうだ。クーデターを煽動した首班の沙霧尚哉の妹というのも立場を難しくさせるだろう。だがどれほど困難であろうと命令であり、その重要性も理解できる。

 彼らを説得すべく言葉を選び、口を開きかけた正にその時。その少女は我々の中心に歩み出た………?

 

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 

 

沙霧真由Side

 

 

 

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 お兄ちゃんとやっと出会い話すことができました。お兄ちゃんに投降させることにも成功し、私の用事は一応終わったんですが………月詠中尉やウォーケン少佐らに詰め寄られピンチです。お兄ちゃんに会った後はどうなってもいいと出発する前は思っていたんですが、私を必死にかばう神宮寺教官を見ているとそうもいきません。でも死人は出さなかったとはいえここまで調子に乗って彼らの機体をぶっ壊してしまった以上、そう簡単に事が済むとは思えません。私でもこの状況をどうにかするのは至難の業です。思わず胸元の貝殻ペンダントを握った時、懐のなにかに手がふれました。あ、これは出てくる前に作った……

 

 

 ピコ―――ン! 閃いちゃいました!!

 

 物理学チートに並ぶ私の最大の武器。それは様々な前世経験、原作知識、物理学チートなどに基づくチートな発想より生み出されるウソ。恐るべきウソこそが我が最大にして最強の武器です!そして今、この場を収める天才的なウソが私の脳内より生み出されてしまったのです!!

 

 素晴らしい! なんという我が頭脳!! 私の偉大なる叡智が皆を救うのです!! 今、ここからハッピーエンド一直線です!!

 

 

 ふと彼方から二機の不知火と一台の指揮車両が来ました。そして衛士強化装備と横浜基地の制服を着た二人の女性が降りてこちらにやって来ました。二人は神宮寺教官に敬礼して挨拶。皆の気がそちらに向いた隙に私は中央に歩み出ました。さあ、大一番です!

 

 

 

 「よろしい! 私からご説明いたしましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 




 今、ここに沙霧真由の真価が試される!
 彼女の言葉はここにいる全ての人間の希望………?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。