アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第三十五話 夜空に掲げた奇跡

 

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 クーデター部隊がお兄ちゃんの仇と襲ってきました。なので米軍や二〇七訓練小隊と一旦戦闘はやめて制圧しましたが、終わるとまた戦闘。さっきウォーケンさんの機体をサクッとしちゃったせいでまたまた私対その他のバトルです。

 二〇七訓練小隊の皆さんは武器破壊、または小破で戦闘不能になってもらいました。まだ動きが鈍かったですね。神宮寺教官は手こずりましたが旧OSの激震じゃ厳しすぎですね。同じく小破。

 で、いま米軍機戦です。F-22Aラプターはさすがに高性能ですが連携がイマイチですね。ウォーケン少佐がいないと穴だらけの連携です。

 巧みに動きまわり囲まれないようにします。やがて近づきすぎた一機にダッシュ!

 速攻で背後に回り、そのまま背中を押し込んで別の一機にまたまたダッシュ!

 

 相手はフレンドリーファイアを恐れて撃てない!

 

 ガシャアアアア!

 

 ぶつかった瞬間ビーム長刀で貫いて二体とも機体の制御部を破壊。

 

 ガガガガガガガガ!

 

 最後の一機のラプターが横から撃ってきました!

 

 このラプター、イルマ少尉の機体に通信で妙な信号送っていたんですよ。洗脳技術に関しては少し学んだことがあるんですが、催眠誘導起こす信号そのものです。どうやらこいつが第5推進派の手先のようです。

 

 素早く回避! まあ、鋭い射撃ですね。

 

 ですがいくら鋭くても一機だけじゃ私の先読みと流星の機動には分が悪すぎます。第5の手先なら手加減無用!あと月詠さんがいるはずですが姿を見せません。

 

 月詠さんを警戒しつつ、奴にさっきのイルマ少尉から奪ったアーミーナイフを投擲!

 

 よけるラプター!

 

 そのすきにダッシュ!

 

 素早く体勢を立て直し射撃モードをとるラプター!

 

 そこにもう一本アーミーナイフを投げる!

 

 突撃砲で受けてしまった!

 

 計算通り! 突撃した私は流星の肩とラプターの肩を合わせそのまま持ち上げた!

 

 持ち上げたそのままダッシュ!

 

 さあ、”アレ”をためす時が来ました!

 

 失敗すればそのまま自爆。流星その名のごとく墜ちて消える。

 

 やらないほうがいい、やるべきではない。

 

 そんなのはわかっています。

 

 でも”一人の技術者として限界を超えてみたい。この機動と共に消えてもいい”。

 

 そんなバカな私が心の中にいます。

 

 ピ――――。ピ――――。相手のラプターから通信が来ました。

 

 『私をどうするつもりだ!?』

 

 随分あせってますね。まあ、戦術機が戦術機に天地逆さに肩で持ち上げられてダッシュ、なんて信じられない体験すればさすがの米軍衛士も混乱しますか。今頃、管制ブロックの中じゃ着座すらままならない酷いことになっているでしょう。でも本当に信じられないのはこれからです。

 

 ”どうするか”ですって?

 それは技術の限界突破。その飛翔。

 その礎となってもらいます!

 

 最終軌道計算、モーションシミュレートOK!

 

 いきます! 大きくジャンプ!

 首と首をガッチリからめラプターの両足を一本ずつしっかり握ります!

 

 

 ダッ! バァ――――――――ン!!!

 

 キン肉バスター!!!

 マブラヴ世界の夜空に雄々しく現れた伝説の必殺技!!! 

 

 

 素晴らしい雄姿を一瞬描いた後、落下。ぐんぐん地面が迫ります。

 

 さあ、本当の勝負はこれから。

 

 両足で一瞬地面を叩き受け身!

 

 そして踏ん張らずにそのまま腰から尻もち着地!

 

 相手の両足首を握り大きく広げフィニッシュ!

 

 やった! ついにこれをやり遂げた!

 

 人に言えば百人が百人夢だ幻だと言うでしょう。戦術機に詳しければ詳しいほどそうです。普通戦術機が戦術機を持ち上げたら潰れちゃいます。あまつさえそれでジャンプして着地すれば上より下の方が押し潰され、無残な姿になってしまいます。

 ですが確かに奇跡は起こった!この地上、この場所にあの必殺技が現れたのです!アレをやり遂げながら流星は無事。正に奇跡!奇跡なのです!!!

 

 

 

 

 

 それは私が不可能の突破を目指す物語――

 

 これは流星のフレームを作った時から始まります。突撃級のガラから軽くて強靱な素材を手に入れた私は概存の外骨格ではなく、内骨格であるムーバブル・フレームにすることは決めてました。ですが『どうしてもキン肉バスターをやらせてみたい!』というバカな衝動にかられた私は脊椎を十六に分割。それを磁力で浮かせるというリニアモーターカー技術の応用をしたのです。消費電力もバカになりませんが、徹底的な省エネと超高エネルギー電池の開発によって実現させました。そして私の知る限りのあらゆる対衝撃機能を施しました。これにより落下時の衝撃にとてつもなく強い機体になったのです………が、ここまでやっても”やはりキン肉バスターには耐えられない”という計算が出てしまいました。

 深い絶望、物理学チートを生かし切れない己の不甲斐なさ、やはり幻の技かとの諦め、渦巻く感情に苦悩の日々を送りました。”いっそキン肉ドライバーにしようか”などと弱気になれば『貴様のキン肉バスターに賭ける情熱はその程度の甘っちょろいものだったのかァー!!』と、脳内ブライトさんに叱られもしました。

 ………ですが、ここで宇宙衝撃吸収素材発見!これにより一気に実現の可能性が高まりました。脚部腰部肩部に重点的に補強することにより、一回受け身を取れば可能だという計算結果が出たのです!

 

 「いける、いけますよ流星! さあ、行きましょう。不可能の向こう側へ!!」

 

 

 

 

 

 ズゥ―――………ン………

 

 ラプターの墜ちる音で回想から覚めました。そして立ち上がります。

 

 通信を傍受しても誰も会話する人はいない。それほどの奇跡!

 

 私はゆっくり流星の腕を上げ、この沈黙の喝采に応えます。

 

 やった、やり遂げた――

 

 私の夢と情熱がたぎった流星は見事に応えてくれました!!

 

 いつの間にか私は泣いていました。ここに至るまでの日々を思い返しながら――

 

 

 

 

 

    ――――マブラヴの大空にキン肉バスターを!―――

         ~ とある物理学チートの挑戦~       〈完〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………おっと思わず自叙伝まで脳内で書いてしまいました。さて、メガネを……

 

 

 『大したものだ。中々の………いや、素直に賞賛しよう。素晴らしい技術だ。』

 

 ふいにこちらに通信が入りました。

 

 そうか、まだあなたがいましたね………

 

 『その様子ならまだ戦えるな? 我が名は月詠真那。汝に敬意を表し一手所望いたす!』

 

 いつの間にか長刀を握った赤い武御雷が立っていました。

 

 

 

 

 

 

 




 …………真由は何と戦ってるのでしょう?

 そして遂に最後のライバルとの対決!
 それはオルタ原作で義兄に引導を渡したあの人……!

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