アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第三十三話 吹き荒れる銀の暴風

 白銀武Side

 

 

 

 ガガガガガガガガガガガ!

 

 あちこち銃撃音が響き渡り、戦術機が飛び回っている。オレは悠陽様の格好をした冥夜を乗せて沙霧尚哉の不知火から逃げるために全力で吹雪を疾走させている。かなり無茶な機動なので隣の強化装備を着ていない冥夜が心配だが気遣ってやれない。なにしろ全力全速で走らせているのにまったく引き離せない。まったくどうしてこうなった!?……………やっぱアレだな。彼女のあの射撃。

 

 

 

 

 

 冥夜と沙霧尚哉の謁見は概ね成功だった。冥夜は将軍として堂々と謁見にのぞみ、沙霧尚哉ら決起した者達の心情を解し、涙すら見せた。そして真由のことを話すに至って遂に投降を決意させることに成功した。よかった。これで真由や彩峰も救われるし、この不毛な闘いも終わらせることができる………と思った瞬間だ。

 

 ガガガガがガガガがガガガ!!!

 『ハンター1よりハンター2!なぜ撃った!? 命令は出していないぞ! やめろ!撃つな!』

 

 突然銃撃音が鳴り響いた! 米軍のイルマ・テスレフ少尉が突撃銃を乱射したのだ。あわててウォーケン少佐が止めようとしたがクーデター部隊はすでに刺激されてしまった。そしてとうとう戦闘が始まった。

 なぜ彼女がそんなことをしたのかはわからない。しかし冥夜が危険だ。どうにかしようとする冥夜を半ば無理矢理機体に押し込めてその場を離脱した。そしたら沙霧尚哉が不知火で追ってきた!冥夜を奪うつもりか!?

 

 ……………というのが今の状況だ。オレは全力疾走で沙霧尚哉から逃亡中というわけだ。まったくやれやれだぜ。

 

 

 

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 沙霧真由Side

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 ただいま岩山を回りやっと現地目前まで来たところです。遅れて来たゲストにも料理とダンスは残っているでしょうか?それにしてもやっぱり戦闘になってしまいましたか。派手に銃声の音楽が鳴り響き、戦術機機動音のダンスは聞こえてきます。

 さて、どうしますかと前方を見ると白い武御雷が三体こちらに向かってきます。…………ああ、思いだしました。たしか冥夜さんは将軍殿下の悠陽さまの代わりにクーデター軍首班のお兄ちゃんの謁見に出ます。そして本物は三バカ、もとい斯衛三人衆を護衛に離脱するんでしたね。

 ま、将軍殿下に用はありません。無事に横浜基地に向かってください、と通り過ぎようとしたら………ロックオンされちゃいました! なんで!?

 

 『お前、横浜の実験戦術機だな!何故ここにいる!? 』

 『搭乗者と目的を言え!言わねば撃つ!』

 『正直にいいなさ~い!』

 

 将軍殿下の護衛で直ちに離脱しなきゃなんないのに私相手に誰何なんかしてる場合ですか!? 酸素マスクのせいで声が届かないんですよ!

 構わず距離をとって急ごうとしたら……本当に撃ってきた!

 

 ガガガガガガガガ!×3

 

 最高速ダッシュ!

 

 なんとか弾は喰らわず済みましたが気づいちゃいました。

 

 こいつら伊隅ヴァルキリーズより強い!

 

 ヴァルキリーズは伊隅さんの指揮の高さで未熟な新任なんかもよい動きをさせていました。が、彼女達三人は指揮すら必要ない完璧な連携と面制圧射撃!物理学チートな私が見てもほぼ同時!

 そういえば前にピアティフさんと引き離された時こいつらの連携は見たことがありますが本当にすごかった!脳内でこいつらとの闘いをシミュレートしてみると、射撃の軌道やタイミングは読めても物理的に躱せない状況に追い込まれる未来が見えます。

 こちらの最高速が向こうの予想を上回っていたためさっきは躱せましたが、次の斉射は補正してくるでしょう。

 ヤバイ! 身を隠す場所すらほとんどない!

 迷っているヒマはありません。次は躱せない気がします。

 その前に無力化しないと!

 

 そばにあった手頃な大石を拾い、岩壁に向かってダッシュ!

 

 ぶつかる直前彼女らの真ん中、将軍殿下が乗っていると思われる機体に矢のような送球!……じゃなくて投石!

 

 普通なら戦術機の投げた石なんて当たるもんじゃありませんがそこは物理学チートの私。

 

 ガシャアァァァン!

 

 一瞬で軌道計算して見事頭部のカメラアイに命中!

 

 他の二人がそれに気を取られ、一瞬こちらの気がそれたスキに岩盤蹴ってジャンプ!

またまた完璧な軌道計算! 角度とパワーを調整!

 

 必殺! 三角蹴り!!!

 

 ドガアァァァ!!×2

 

 右足左足それぞれ残り二体の頭部に命中!

 

 ズウゥゥゥゥン!×3

 

 倒れる時まで三人ほぼ一緒。仲がいいなあ。………って将軍殿下やっちゃった!?

 まあ将軍殿下のいる機体は頭部に石だし。それほどヤバイことにはなってない、と思います。

 ………なってないといいなあ。

 そう祈りつつ、先を急ぎました。

 

 

 

 

 

 

 いた! 現場に到着した途端見つけました。憎いメガネのあんにゃろうです!

 夜間で視界は悪いですが、戦闘の最も激しいその場所で一機の吹雪を追っている不知火。あの機動には覚えがあります。とりあえずあいつを成敗です!

 

 

 『何者だ!? 所属を名乗れ!』

 『流星!? なぜここにいるの!?』

 『将軍殿下のもとにいかせるな!』

 

 やっぱり戦闘の中心だけあって突破は厳しいですね。二〇七訓練小隊はまあ相手にならないんですが問題は米軍。ウォーケン少佐の指揮で上手くこちらの動きを封じる様に動いてきます。やはりウォーケン少佐を潰さなきゃお兄ちゃんのところへは行けませんか。

 米軍機甲小隊の注意を引きつつクーデター部隊に道を空けます。そして双方ドンパチやっている間にウォーケン少佐のラプターに突撃!当然こちらに銃を向け撃ってきます。

 

 ラプターってのは対人戦闘に優れた機体らしいですね。確かにスピードも旋回性もこれまでの戦術機と比べて大きく上回っています。これで戦術機の動きの穴に素早く入り込んで撃墜していくのでしょう。

 でもスピード、旋回性どっちもこちらの方が上!この流星から見ればそっちの方が穴だらけ!

 

 ガガガガガガガガガガガ!!

 

 射撃の瞬間しゃがみこみ、そのまま体を丸めて足のジェットホバーで突進!

 

 戦術機ってフルオート射撃すると銃の反動に耐えるために腕が固定されちゃうんです。なので腕を動かし銃口を下に向けるには一旦射撃をやめ、腕の位置を直してから再び撃たねばならないんですが…………そんな隙をさらしてこの流星に当てようなぞ笑止千万!

 

 相手が腕の位置を直している隙にジャンプ!

 

 余裕すぎてムーンサルトまでやっちゃいました!

 

一回転 二回転 三回転 横回転!

 

  ドン! ザクザクザクザク!!!

 

 背後に着地、同時にVの字斬り!

 

 ビーム長刀で大きく描いたVでウォーケン少佐のラプターの手足を切り飛ばしダルマ状態に!

 

 フィニッシュのポーズも完璧! ハイスコア確実!! 金メダル貰った!………いえそんなものありませんでしたね。オリンピックなんてとっくに凍結されちゃってます。とりあえずこのアホなポーズやめてメガネを追いましょうか。

 

 私は流星の見事なYの字フィニッシュを解除し、メガネの不知火目がけて猛ダッシュしました。

 

 

 

 

 

 

 

 




 到着する前に通信できるようにするべきでしたね。
 またまた全員と強制バトル!
 戦いの結末は……?

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