アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第二十三話 激突! 沙霧真由対鎧衣課長

 こんにちは 沙霧真由です。

 時刻は深夜にさしかかる頃、開発室を抜け出してチョコチョコ早歩きです。

 私の今の格好はいつもと違います。頭はツインテールをほどいてヘッドセットをつけ、背中にはでっかいリュック。腰には大きめの拳銃があります。

 

 「まったく重くてしょうがないですね。博士キャラの戦闘スタイルって、どうしてこうアホみたいになってしまうんでしょう」

 

 それにしても夕呼さんも甘いですね。開発室は一階にあって非常口があるのですよ。今、私なんかに人数を割けないから非常口の方はガラ空きです。脱出した私は基地の片隅、見張りのほとんど来ない場所に向かっています。本来ならそんな所に用なんてないんですが、先に野暮用を片付けないと。

 言っときますがすぐに無策に飛び出したわけではないですよ?基地の無線を傍受し、原作知識でお兄ちゃんの行動を予想。鎧衣さんが基地にやって来た時刻や、二〇七訓練小隊が出発した時間で大体のスケジュールを予想して、これからの行動予定をキチンとたててきました。

 オルタ原作より帝国斯衛との仲が悪いので、原作通りに進むかは”賭”ですけどね。何しろ月詠さんたら

 

 『沙霧尚哉は必ず討つ! 帝国を割った罪、報いを受けさせろ!!』

 『はい!帝国の未来のために!』×3

 

 なんて言って殺る気満々です。オルタ原作じゃお兄ちゃんを殺ったとはいえもっと慈悲があったんですがねぇ。

 さて、人気も程ない、場所も開けた所に来ました。ここらでいいでしょう。

 

 「鎧衣さん、出てきて下さい。ここで決着をつけましょう」

 

 気配はまるでなくとも、熱センサーは誤魔化せません。どこからともなくのそりとぬらりひょん親父に戻った鎧衣さんが出てきました。

 

「本当に名探偵だね、君は。監視していたことも私だということもピタリだ」

 

 「まあ、将軍殿下を送っていった後のスケジュール的にも無理はないし。それに主人公の行く手を阻む宣言をするのはライバルキャラって決まっているんで来ると思ってました」

 

 「………殿下の行動までお見通しか。沙霧尚哉と合流するのかい?」

 

 「いいえ。お兄ちゃんの行動を許せば日本はメチャクチャになってしまいます。いくら家族とはいえ、そんなことに手を貸す気はありません」

 

 「じゃあ何をしに?」

 

 「家族としてこんなことをした奴を殴りに行きます。私、パパやママ、お兄ちゃんと血が繋がってないんですよ。だからこんな時、家族らしいことをしないと他人になっちゃうんです」

 

 鎧衣さんは帽子で目を覆い、フゥーと一息。静かに言いました。

 

 「沙霧尚哉を反政府勢力『戦略勉強会』のリーダーに祭り上げたのは私だ」

 

 「な!何故そんな………ああ、そういう事でしたか」

 

 「流石だね。わかったのかい?今ので」

 

 「はい。クーデターの組織は元々アメリカのオルタネイティブ5推進派が軍の反政府勢力の人達に力を与えて育て上げたものです。本来ならもっと徹底的に破壊活動をさせるつもりが、お兄ちゃんをリーダーにすることでこの程度のものにしたんですね」

 

 クーデター発動フラグはもう一つありましたか。それは”オルタネイティヴ4が成功すること”。アンリミでも研究が成功してたら、時期は遅れるでしょうが起こっていたんですね。

 ただ5推進派にとってもクーデターは最終手段。大陸へG弾撃つには日本は位置的に必ず手に入れなければならない場所ですが、日本の軍事力は出来るだけ減らしたくないんです。盾が薄くなりますからね。

 HSST落下事前阻止によりクーデター発動は研究の成否に関わらず決定的になったため、鎧衣さんは落下事前阻止した者がどの立場の者か探っていたんですね。納得です。

 

 「それにしても常軌を逸していますね。横浜基地を吹き飛ばそうとしたり、クーデターを起こしたり。そこまでしても成りたいほどオイシイものなんですか?主流派って」

 

 「欲がらみなら良かったんだけどねぇ。それなら私も香月博士もなだめようはいくらでもある。連中、BETAを激しく憎んでいる大物遺族の集まりでね。”何が何でもG弾をBETAに喰らわせなきゃ気が済まない”って方々なんだよ。本気で”邪魔者は皆殺し”ってね」

 

 ポリポリ頭を掻きながら鎧衣さんは言います。帽子越しなのでポーズですね。

 それにしても相当危険な奴らのようですね。こんなことならHSST落下の情報抜いたときもっとよく調べておくべきでした。あ、実は私、とある事情でハッキング技術は相当磨いたんですよ。いくら原作知識があったって落下の正確なスケジュールや軌道なんて、向こうから情報抜かなきゃわかりません。後は横浜基地からグレイ・ナインの情報を抜いたりですね。こっちは夕呼さんがいるのでかなり時間かけて慎重にやりました。

 

 「さて、次は君のことだがいくら調べても背後は見つからなかった。かわりに君がとある違法研究所の被験者だったことがわかった。君にスパイなど無理なこと、高い技術力などを考えれば君はその研究の成果だったことがわかる」

 

 「鎧衣さんも流石ですね。その通りです」

 

 ウソです。本当の研究成果は00ユニットです。

 

 「そして社霞を超えるリーディング能力、そして予知能力を持っている」

 

 「はい?なんでそこでオカルト? ありませんよそんな能力!」

 

 「………ここで嘘とはね。苦労して極秘裏に進めた殿下の帝都脱出計画をいつの間にかあっさりと知っておきながら。なぜそれだけの力がありながら嘘だけは下手なんだろうね。とにかく、沙霧尚哉のことはすまないと思っている。だが君は危険だ。一緒に情報省まで来てもらおう」

 

 いま思いっきり騙されていたでしょう!

 私のハイレベルなウソが炸裂すれば、あなたなんて木っ端微塵です!

 私は腰の拳銃を抜いてピタリ、と鎧衣さんに合わせました。

 

 「九ミリだろ? いくらなんでも君には無理なんじゃないか?」

 

 「そのままこっちに来て下さい。そしたらわかりますよ」

 

 フム、と顎を一撫での鎧衣さん。

 

 「とても撃てるとは思えないが、この世界小さな用心を怠って消えていく奴は多い。君のことだ。撃てると思って全力でねじ伏せる方がいいだろうね」

 

 鎧衣さんはバサァッと帽子と上着を脱ぎ、猛烈な勢いで横へ走り出しました!

 

 

 ザザッ……!

 

 

 そしてジグザグ右、左ともの凄い速さ、勢いでこちらへ向かって来ます!

 あの速さ、本当に野人ですね。

 

 

 ザザザッ…!

 

 

 私は彼を追うこと無く、銃をそのまま真正面にお地蔵状態。

 

 

 ザザザザッ!

 

 

 「鎧衣さん。私、今お薬断っているんです」

 

 

 ザザザザザッ!!

 

 

 「だから今、私……」

 

 

 ザザザザザザッ!!!

 

 「強化人間なんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 遂に激突!
 あの日結ばれた宿命は今日、この瞬間のため!
 互いの想いを賭けた宿命の対決!

 果たして天が選ぶのは
 真由か?鎧衣課長か?

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