こんにちは。沙霧真由です。
二〇七訓練小隊の皆さんが帰って来ました。………で、白銀君と冥夜さんはお婆さんの想いを助けるために盛大に命令違反して営倉へお務め中。アンリミのイベントは総戦技評価演習以来無くなっているのばかりなので、逆に新鮮に感じますね。
でも吹雪は二機とも無事に帰還しました。何でも白銀君が一人で天狗岩をぶった斬って崩れる山岩から逃げることに成功したそうです。新型OS………結局XM3になりましたが、XM3搭載の吹雪と白銀君の技量あっての離れ技ですね。
さて、ピアティフさんに家への帰還申請をしたんですが却下されちゃいました。
「帝国はいま『沙霧』という名にピリピリしています。あなたが沙霧尚哉と接触すればいろいろ腹を探られるでしょう」
「お兄ちゃん、そんなに凄い人だったんですか。戦術機の操縦は凄くても政治とかはまだまだ下っ端かと思ってました」
「あ……いや、彼自身はそうでしょうが……」
結局ピアティフさんって秘書といっても私が会う人を制限するだけなんですよね。
前言ってた『リアルBETAシミュレーション』は完成したので運用は神宮寺教官にまかせちゃっています。
で、最近はハンガーで流星をいじって遊ぶのが一日の使い方ですね。じゃあ今日もそうしますか!
「ちびっ娘……」
「慧さん?」
いきなり慧さんが私の前に現れました。なんか表情が暗いです。
「トイレ」
「え……? ああ、いってらっしゃい」
なんで私にわざわざ宣言? 私にそれを聞かせてどうしろと?
「一緒に行こう」
手を引かれトイレに連れて行かれました!? 連れションの誘い!? こんな強引に!? 私したくないんですけどハコの前で待ってなきゃいけないの!?
…………と思ったら一緒の個室に入っちゃいました!
ハッ!! こ……これはまさかのHイベント!? 私に慧さんの”する”所を見ろと! そうおっしゃるんですか慧さん!? 元々エロゲキャラとはいえなんというレベルの高さ! まさに青少年をエロゲ脳に誘う悪魔の如きイベント!! 驚愕の彩峰ルート恐るべし! 前世の男だった頃の魂が甦ってしまいました―――!!
ふうぅ、やはり私もマブラヴキャラになった以上イベントはしっかりこなさなくてはなりませんね。
画面の前で水鉄砲かまえてスタンバってるユーザーのためにも!
いやあドキドキするなあ、夢のマブラヴヒロインとの”絡み”とか!
「………ちびっ娘、何してる?」
「はい、慧さんのパンツを下ろしてさしあげてます。やっぱり慧さんの”する”所を見せていただけるなら、こういう女の子同士の『ちょっとドキドキ♡』なシーンもあってしかるべきかと」
「お前の変態性癖にドキドキ。半径3メートル以内に近づくな」
ギュム!と頭を踏まれました。
ひどい! 自分からこんな所に連れ込んで! これじゃ女が自分からラブホに連れ込んだのに『そういうつもりじゃないの。中がどうなっているか知りたかっただけなんだ。テヘペロ♡』とかいい腐るようなものじゃないですか!仮にもマブラヴヒロインがそんな非道するとは思いませんでしたよ!
「お前はいつも金髪つき。だからこうしないと話せない」
「え……?」
「『ごめん』………だって。」
「何ですって?それってどういう……」
ガッ!と慧さんが私の口を塞ぎました。
「金髪、甘くないか。扉の前で聞き耳たてている」
慧さんが私の耳元で声を潜めて言いました。
トイレの扉を開けてみると本当にピアティフさんがいました。
「じゃ。」 慧さんはそのまま行ってしまいました。
「何を話してたんです?」 ピアティフさんがズンッと聞きます。
ヤバイ!ごまかさなくては!
「話してたんじゃありません。慧さんと女の子同士”する”所を見せっこしてたんですよ。いや~まさか慧さんとこんな関係になるとは!」
「…………よりによってなんというウソを。本当のことを言って下さい」
「わ、私がウソなんかつくわけないじゃないですか! 真実と誠実を宗とするこの私が!」
「そうですか。では彩峰訓練兵共々指導が必要ですね」
「いえいえいえいえ!それにはおよびません!エロゲイベントにドキドキな慧さんにビシッ!と言ってやりましたよ。『気高くあって下さい。衛士として恥ずかしいマネはやめて下さい!』ってね。だからピアティフさんのお手を煩わせることはありません!」
「………………………………………………えろげ?」
どうにか巧みに誤魔化しましたがピアティフさんはまだついてきます。
それにしてもさっきの慧さんの言葉、まさかお兄ちゃんがクーデター?ちゃんと二〇七訓練小隊の皆さんは天元山に行ったのに?ともかく慧さんともう一度話さないと。
対彩峰慧専用アイテム焼きそばパン! PXの京塚おばちゃんに作ってもらいました。これ一つでうまいタイミングに渡せば何でもしゃべってくれるはず!それにしても慧さんってどうしてこんなに焼きそばが好きなんでしょうね?昔からごはんを食べにいけば焼きそば、駄菓子とかでもソース味ばっかで付き合わされるこっちは胸焼けしまくりですよ。
後は慧さんを探すだけ!……ま、屋上なんですけどね。
「あの人も……ちびっ娘も白銀もウソをつくのが下手。上手なのは私だけ」
屋上にいた慧さんに焼きそばパンでその言葉を引き出しました。なんで白銀君も……って問題はそこじゃない! 離れているとはいえピアティフさんもいるのでそれ以上は言えないのでしょう。
でもわかっちゃいました。
やっぱりお兄ちゃんは動いた!!!!
過去の検証をして私はこの件を読み違えたことがわかりました。
「そうか、クーデター発動フラグは天元山救助活動に行かないことじゃない。HSST落下の事前阻止だったんだ。アメリカの妨害派は横浜基地の諜報能力に恐れをなし、お兄ちゃん率いる戦略勉強会の後押しをして横浜基地へ介入する口実を手に入れたんだ」
防衛基準体勢2発令。
翌日夕方に放送局占拠によるクーデター部隊の決意声明が流れました。現首相榊是親はじめ閣僚全てを国賊として殺害。『戦略勉強会』が決起したことをお兄ちゃんこと沙霧尚哉大尉は宣言しました。
夢と散ったマブラヴヒロインとの絡み!
帝都を揺るがす義兄の凶行!
時代を劈く12.5事件!
沙霧真由の運命を嵐の渦へと誘う
クーデター事件勃発する!