アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第十五話 さらば流星

 こんにちは―――――――――!

 沙・霧・真・由で―――――す!! お元気ですか―――――!!!

 みんな私のチートは知ってるかな―――――!?

 そう! 科学力(物理)チートォォォォォォォォ!!!!

 

 ふぅ――。そろそろ落ち着きましょうか。いえね、夕呼さんの手伝いのためにこのチートを選んだんですけどモビルスーツとか開発するのは一番適してるんですよ。それを知った時の嬉しさを思い出してこのような冒頭になってしまいました。

 新素材、新エネルギー。これが開発できなきゃ話になりません。それを可能とするのが私の科学力(物理)チートなのです!工学力(設計、開発)チートなどおいしそうなお餅を描く能力にすぎないのです。

 

 ここで私の帝大時代の昔話をひとつ。入学した途端、機械歩兵装甲なんかを作って先輩達に混じって評価試験を受けたりしたんです。そこでトップ成績をとったんですが軍への推薦は受けられませんでした。理由は私が発見した新素材で全身作っちゃって量産できないからなんですね。 

 でも河崎重工さんがそれに目をつけて新素材の権利ごと買ってくれました。代金が私の設計した実験戦術機の製作。

 さらにBETAのガラを融通してくれて、そこから謎宇宙物質なんかも新素材にしてトンデモ戦術機を作っちゃいました。

 皆さん知ってます?BETA突激級の外殻とか要撃級の腕とかメチャクチャ硬いんですけど、BETAの殻の硬度ってその個体が生きている時のみ発揮されるんでそれらを人類は再利用出来ません。その他のBETAの特性についても同じです。

 でも私には出来ます。物理チートですから。

 河崎重工さんはじめ軍研究所が苦労している分析もチートな神眼であっさり看破!抽出し精製し結合させて軽くて超硬度な新素材作成!さらに光線級のガラから超断熱材と新エネルギー開発!筋肉からも電気信号で伸縮する丈夫で柔軟性あるまたまた新素材!これで人工筋肉作っちゃおう!作っちゃいました!

 ……という訳で超高度CPUと私のプログラムも相まって気持ち悪いくらい人間っぽく動く戦術機になりました。

 名前は”流星”と名付けました。『白銀の流星』と二ツ名で呼ばれることでしょう。

 

 そしてここはテストのために来た旧市街。白銀君も無事起動出来たようですし武装テストからいきますか。

  ビームライフルっぽい電磁投射砲とビームサーベルっぽいなんちゃってビーム長刀。

 ……笑わないで下さい。今の工作機械と設備じゃこれが精一杯なんですから。

 

 電磁投射砲。

 私が光線級のガラを研究して作ったレーザーはこれまでのどれより高出力なんですが……残念ながらBETAには火傷ひとつつけられません。そのかわり電磁投射砲のレールにすれば10キロ先にも戦術機の弾を飛ばせます。しかも砲身は例の超断熱材!熱エネルギーを一切吸収しないのでいくら撃っても変形しません!

 いま、白銀君が撃っているんですが……5千メートル先とは思えないほどドッカンドッカン街を壊していますね。

 ビーム長刀。

 レーザービームの粒子を発射せずに刀の形に止めておくことで数千度の熱の剣にするってやつです。刀身を完全にビームにするのは不可能だったんで例の断熱材を刀身にしてビームを纏わせるって形にしました。

 あれ?ここって映画のセット?コンクリート製に見えるけど全部発泡スチロール製?って思っちゃうくらいスパスパ街を切っちゃってます。

 

 さて次は機動テスト。

 ここだけは宇宙世紀に指先入るぐらいは届いています。宇宙遊泳可能でありながら戦術機に搭載出来るほどの小型ブースターエンジン開発しちゃいましたから。普通ならエンジン吹っ飛ぶほどの高出力も新素材で解決!BETAの躰ってホントチートですよね。もう少し技術が進めば高機動で宇宙戦闘可能になります。ザクさんの背中とか見えてきちゃいましたね。

 

 エキストラの神宮寺教官率いる二〇七訓練小隊の皆さんも配置につきました。

 鎧衣課長、月詠さん、三バカ……もとい斯衛三人衆の皆さんもライバルにも関わらず応援に来てくれました。あんな遠くにいないで近くに来ればいいのに。

 夕呼さんも忙しいにも関わらず来てくれました。冷たい言葉とはうらはらに熱い仲間思いの心を秘めている女なんですよね。

 こんな熱い仲間達の前で無様は出来ませんよ白銀君。

 

 「さあ白銀君、ゴォ――――――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙世紀ナメてました。

 白銀君は無様に医療用ベットでお休み中。

 それでも新型OS搭載の吹雪に乗る神宮寺教官はじめ二〇七訓練小隊の皆さんを5分で撃墜判定にしたのはたいしたものです。でも強化装備でも吸収仕切れない超Gで前後左右上下に揺さぶられてダウンしてしまいました。

 宇宙世紀の人間ってのは宇宙に適応するために高重力、高加速に耐えるよう進化した人達みたいです。さらに時代が下がるにつれ強化人間が出てこなくなるのはあたりまえです。主人公から一般兵までみんな当たり前に強化人間になっちゃってるんですから。

 ハイヴ攻略には兵器を開発しなきゃいけないんです。ガンダムシリーズなんて兵器じゃありません。

 Zガンダムは人間ミンチ製造器。

 ウイングガンダムゼロは人間ミキサー。

 ダブルオークアンタに至っては人間原子分解装置です。

 

 己の無能さを噛みしめる中、みんなが慰めに来てくれました。

 

 「はっはっは。本気で情報省にさらいたくなってしまったよ。」と鎧衣さん。

 

 「沙霧真由……。敵にまわるなら真っ先に狩りに行く!」と月詠さん。

 

 「あなたの才能、これから何万人もの衛士の命を救うわ。でもあまり夕呼に心配かけちゃダメよ。」と神宮寺教官。初登場ですね。

 

 「……そのガラクタ、当分厳重にしまっておきなさい。まったくクソ忙しいのに情報管理が追いつきやしない。」と夕呼さん。

 

 ううっ、ガラクタなんてヒドイ。でもガラクタですね。

 仕方ない。ハンガーの隅に置いてヒマな時にでもいじって遊びますか。

 

 

 ―――――さらば”流星” 。

      一話だけで輝き消えた儚き流れ星。――――――




 出オチ戦術機でした

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