こんにちは 沙霧真由です。
ただいまガッチリ鎧衣さん(父)に両肩をつかまれています。この状態で鎧衣さんは夕呼さんとお話中。とにかくこの状況を切り抜けるべくタイミングを!あの瞬間を待ちます。
「面白くないわ。さっさと本題に入ってちょうだい」
「ならばドードー鳥の生態について少し………」
「却下よ」
よし! ここだ!
「たまには最後まで聞いてあげたらどうです? この手の話、相手を揺さぶって切り崩すのによく使うけど、でも本当にこういう話題が好きなんですよ。冒険野郎ですから」
私は保健委員の女の子みたいに優しい娘を演じました。鎧衣さんも私の愛らしさにメロメロ♥ ギリギリと強く肩を握り
「どこまで知っている?」
とドスのきいた声で囁きました♥
ええ! キャラ変わった!?
でもそれは一瞬。いつもの調子でのらくら夕呼さんと大人の会話を続けます。
「……というわけでこの横浜基地にHSSTを爆薬満載で墜とすという怪異文書が出回りましてね。関係ないでしょうが、さる大物組織がネズミ探しにてんやわんや、ああ痛快。
ですが香月博士ならこの一件、何かご存知なのかと思いましてね」
「あれね。残念だけどウチは関係ないわ。他を当たってみたら?」
「ふむ………沙霧真由ちゃん、君は何か知っているかな?」
なぁ!? なんで突然私!? このぬらりひょん親父!
「わ……わ私が知っているわけないじゃないですか!ずっと横浜基地にいたのに!
アリバイは完璧です!」
動く必要はありませんしね。移民系の底の浅い革命家気取りの慈善組織二十ばかりに情報を流せば勝手に拡めてくれます。
「…………なるほど、君か」
「あれもあんただったの?」
「真由?よくわからないが『アリバイは完璧』って犯人と疑われた時に使う言葉だぞ」
オォゥ……私らしくないミス。名探偵から一転真犯人です。
「先日伺った時は、いつ計画失敗を発表するかのご相談。なのに本日伺ってみれば、完成日まで予想できるとは。いったいどんな悪魔と取り引きなされたので?」
「あれは仮の話よ。万一に備えるのは当然でしょ」
「沙霧真由ちゃん?」
「沙霧に聞かないで!」
「シロガネタケル…………沙霧真由が連れてきた死んだはずの人間。訓練兵にしては風格が有りすぎますな。沙霧真由ちゃん?」
「聞くなっつってんでしょ!」
ああもう夕呼さんたら!これじゃ基地内の不思議が全部私に繋がっているみたいに聞こえるじゃないですか。私に任せてくれれば得意のウソで鎧衣さんを煙に巻いてみせるのに!
「では、失礼しますかな。なかなか有意義な時間でした」
やっと帰ってくれますか。
「あれ、美琴と逢っていかないんですか?」
と白銀君。ああ、そういえば鎧衣美琴さんのお父様でした。
「そうだ、かの娘の動向を探るという名目でやって来たのでした」
ああ、冥夜さんですか。悠陽さまはいつもこの親父に様子を見させていたんですね。
「どっちの?」と夕呼さん。
「え?美琴に姉妹が?」と白銀君。
白銀君の疑問に答えてあげますか。原作チートですからぼかして言っても丸わかりです。
「冥夜さんですよ。この人の飼い主ってのが、冥夜さんのお姉さんのこ………
ガッ! ギリギリギリ ぐえええええ!?
「それ以上いうな………」
鎧衣さん!?なんで私を持ち上げて締め上げてるんですか!?
っってか凄いパワー!さすが冒険野郎!
キャラ崩壊してますよ!
ぬらりひょん親父はどうしたんですか!?
「おいあんた! 真由を放せ!」
「鎧衣!? ここで暴力沙汰起こせば二度と入れないわよ!」
ビクッと体を震わせ慌てて周りを見回し、鎧衣さんはそっと私を置きました。
「ケホッケホッ……あ、博士、心配いりません」
すごく青い顔して心配してくれている夕呼さんに余裕のブイサイン。
「失礼、これは一般論ですが口の軽い者に秘密を知られるようでは長生き出来ませんよ。いや、香月博士には釈迦に説法でしたな」
「あははは……。あたしも一般論として聞くわ。
何にも教えてないのに何でも知られちゃう。あたしの知らないことすら知っているのにボロボロ情報こぼしちゃう。こんなゴミがあったらどうしたらいい?」
「よろしければ帝国情報省で引き取りますが」
「却下よ」
この日宿命は結ばれた
出会ってしまった二匹の虎
互いを噛まんと咆吼す!
対決の時はいつ!?
そして次回、早くも第三のライバル登場!