異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第三話 初めての戦闘2

 

 

 

 

 走って来るビッグゴブリンは大剣を重さに任せ、俺に向けて振り下ろしてくる。

 

「っ!」

 

 俺はとっさに横に飛んで攻撃をかわすと大剣が地面に叩きつけられて砂が舞い上がる。

 

 砂を被りながらも89式小銃をビッグゴブリンに向けてトリガーを引き、銃声と共に弾が連続で放たれビッグゴブリンに当たる。

 

「ゴアァッ!?」

 

 弾が身体中に命中するが、痛みは感じているようだが弾は弾かれて傷を負わなかったが、ビッグゴブリンは突然の事に思わず足を止めて戸惑い、後ろに数歩下がる。

 

 マガジン内の弾を撃ち尽くしてすぐに空になったマガジンを外して新しいマガジンを挿し込み、固定されたボルトのロックを外して射撃を再開する。

 

「グゥゥゥゥ!」

 

 連続で弾が当たってビッグゴブリンは煩わしいように唸り声を上げて手にしている大剣を前に出して盾にし、弾を弾きつつこちらに向かう。

 

「見た目によらずお頭は悪くないってか!!」

 

 残弾が少なくなったマガジンを外して新しいマガジンを挿し込み、後ろに下がりつつ射撃を続ける。

 だが弾は大剣の表面に直撃するも火花を散らして弾かれる。

 

「チッ!」

 

 俺は踵を返して走り出し、ビッグゴブリンは大剣を前に出したまま走り俺の後を追う。

 

 走りながら腰の弾帯に提げているポーチから40mmの榴弾を取り出し、89式小銃の銃身下部に取り付けているM203の銃身を前にずらして榴弾を差し込み、元の位置に戻す。

 

「……っ!」

 

 俺はビッグゴブリンと距離が開けた所で振り返りながら立ち止まり、向かって来るビッグゴブリンに向けてM203の安全装置を外してトリガーに指を掛け、思いっ切り引く。

 

 ボンッ!!と言う音と共に榴弾が放たれ、榴弾はビッグゴブリンが盾にしている大剣の腹に直撃すると爆発を起こす。

 

「っ!?」

 

 爆発に驚いてかビッグゴブリンはバランスを崩して後ろへと倒れる。

 

 俺はM203の銃身を前にずらして空薬莢を排出し、別の弾を装填して元の位置に戻し、ビッグゴブリンに向けて放つ。

 

 弾はビッグゴブリンの傍に落ちると爆発せず、代わりに白い煙を噴射し、ビッグゴブリンを覆い尽くす。

 

『ブシュッ!?グシュッ?』

 

 するとビッグゴブリンはくしゃみや咳き込みをしてもだえ苦しむ。

 

 先ほどM203に装填したのは催涙弾で、しばらくの間ビッグゴブリンはこちらどころじゃないだろう。

 

 ビッグゴブリンが倒れている内に89式小銃を手放してメニュー画面を開いて武器項目の中からある武器を選択する。

 

「いきなりこれを使うことになるとはな!!」

 

 俺は愚痴りながらも地面に現れたカールグスタフこと『84mm無反動砲(B)』を手にして砲尾を開けると一緒に召喚した砲弾を装填し、砲尾を閉じて肩に担ぐ。

 

『グゥゥゥゥ!!』

 

 催涙ガスに苦しんでいたビッグゴブリンが起き上がり、涙目になりながらも雄叫びを上げて大剣を盾の様にして前に出して走り出す。

 

「……」

 

 俺は右膝を地面に着けて84mm無反動砲(B)を構え、グリップを握る手に力を入れ、息を呑む。

 

 

 そして距離が縮まった所でトリガーを引き、砲尾から勢いよくガスが噴射して弾頭が飛び出す。

 放たれた弾頭はビッグゴブリンが盾にしている大剣の腹に直撃して爆発し、燃焼ガスとメタルジェットが大剣を貫いてビッグゴブリンの腹を焼いて貫通する。

 

「っ!?」

 

 燃焼ガスとメタルジェットによって腹が焼かれて大きく抉れた上に貫通し、ビッグゴブリンは後ろに数歩下がり激痛の余りかその場に膝を着き両腕で焼け焦げて血を流す腹を押さえる。

 

 俺はすぐに砲尾を開放してメニュー画面から砲弾を出し、砲弾を装填してから砲尾を閉じ、ビッグゴブリンに向けてトリガーを引くとノズルからガスが勢いよく噴射して砲弾が飛び出し、ビッグゴブリンの胸辺りに直撃して爆発し、辺りに血や肉片を撒き散らす。

 

 

「……」

 

 煙がビッグゴブリンを覆って姿見えない中、俺は84mm無反動砲(B)を装備解除して89式小銃を拾い上げ、M203の銃身を前へとずらして空薬莢を排出して榴弾を装填して元の位置へと戻す。

 

 そして風が吹いて煙が晴れると、胸や腹が焼け焦げて大きく抉れた上に貫通して向こう側が見えているビッグゴブリンの屍があり、しばらくして屍はゆっくりと前へと傾いて地面に倒れる。

 

「……」

 

 俺はジリジリと足を擦らせるようにして前へとゆっくりと進み、ビッグゴブリンに近付く。

 

 すぐ傍まで近付き、89式小銃の先端で数回ほど強く突いてみたが、反応は無い。

 

「……っ」

 

 どう表現すれば分からない臭いで思わず後ろに数歩ほど下がり、吐き気が込み上げて俺は何とか耐えようとするも、遂に耐えられずその場で胃液や飲み込んだ唾液が混じった液体を吐き出し、その場に膝を着く。

 吐き出すものなんて無いのに俺は嘔吐を続けて、しばらくしてようやく吐き気が収まる。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ」

 

 深呼吸をして気持ちを落ち着かせて、俺はゆっくりと立ち上がり、水筒を手にして口いっぱいに水を含んで口の中を濯ぎ、吐き出す。

 

 それを二回繰り返して水筒の蓋を閉めて弾帯に提げ、地面に置いている89式小銃を手にする。

 

 

 

「はぁぁぁ……」

 

 ビッグゴブリンから少し離れ、緊張から解かれて俺は思い切ってため息の様に息を吐き出し、その場に座り込む。

 

「……」

 

 違和感を覚えて右手を見ると、細かく手が震えていた。

 

(あれが、銃を使って戦う感覚、か……)

 

 俺は未だに震えている右手を見ながら内心呟く。

 それは恐怖からもあるが、昂りから来ているのかもしれない。

 

(いずれ、慣れるんだろうな。どっちの感覚にも)

 

 人は慣れる生き物だ。いずれ銃の扱いにも慣れ、そして殺す事にも躊躇しなくなるだろう。と言っても、さっきゴブリンを殺す時は躊躇無かった気がするが、あの時は自分の身が危険であったとあって、ほぼ無意識の内に動いていた。

 なので、意識している今は少し複雑な気分だった。

 

(切り替えないとな。もう、前世と違うんだ)

 

 平和な世の中はもう無いんだ。この世界では気を抜けば死が待っている。それを先ほど身を持って思い知らされた。

 

 まぁ、すぐにとはいかないだろう。だが、さっきも言ったが人間は慣れる生き物だ。いずれは変わる。

 

 内心で自分に言い聞かせながらメニュー画面を開く。

 

「ん?」

 

 俺はメニュー画面のお知らせの項目が点滅しているのに気付き、首を傾げる。

 さっきは頭の中がゴチャゴチャになっていたから武器選択の時は気が付かなかった。

 

 お知らせの項目に触れて画面を開く。

 

『経験値が溜まりましたので、レベルが6に上がりました

 レベルが上がったと共に身体能力が7倍へと向上しました。

 特定条件「初めての戦闘で勝利した」をクリアしました。トレーニングモードが解放されました。

 特定条件「自分より格上の相手を倒した」特別ポイントが760pt追加されました。

 特定条件「レアモンスター ビッグゴブリンを討伐した」が満たされました。スキル『大和魂』が追加されました。

 特別ポイントが620pt追加されました』

 

「おぉ……おぉ?」

 

 お知らせの内容に俺は思わず声を漏らし、同時に疑問を漏らす。

 

(一気にレベルが上がったな)

 

 しかも何か色々と追加されたな。と言うかあのでかいゴブリン、名前そのままでレアなモンスターだったのかよ。と言うかまるでメ○ル○ライ○みたいな経験値の上がり方だ

 っつか、大和魂ってなんやねん

 

 内心で呟きながら追加されたトレーニングモードとスキルを見る。

 

 トレーニングモードは仮想空間内で訓練を行うモードで、ありとあらゆる状況をシミュレーションで体験訓練を受ける事が出来ます。

 訓練を行っても経験値こそ入りませんが、感覚と技術を身に付ける事が出来ます。

 訓練はあなたのみならず、人物を選択することで同様に感覚と技術を身に付ける事が出来ます。

 尚、仮想空間内で1年以上時間を過ごしても、現実では1秒しか経過しないようになっています。ただし仮想空間内で受けた疲労は蓄積されて現実の肉体に影響を及ぼす可能性がありますので、ご注意を

 

(結構便利な能力だな)

 

 と言うか時間の経ち方がまるで○神と○の部屋みたいだな。

 

 しかし、これなら銃のみならず兵器を運用するまでの訓練時間を大幅に短縮する事が出来る。

 

(だが、疲労が出るとなると、調子に乗ってずっと訓練ってわけにはいかんな)

 

 状況によっては危険を招きかねないな。まぁ、これは追々考えるとしよう。

 

 俺は自分のステータスを開き、新たに追加されたスキルを見る。

 

 

 身体精神異常無効:一部を除いていかなる身体及び精神の異常を無効化する能力。但しものによっては若干のペナルティーが生じる可能性があります

 

 五感強化能力:任意のタイミングで五感の内どれか一つを強化する。レベルが上がれば上がるほど強化した際の効果も強くなる。

        但し現時点のレベルでは二箇所以上の強化は不可

 

 勘:様々な状況を事前に察知できる。レベルの高さ次第で勘の当たる確立と察知する早さが上がる。

 

 大和魂;精神力と気合で各種ステータスが一時的に向上するスキル。レベルが高ければ高いほどステータスが高く強化される。

     但しレベルが低い場合、任意でスキル発動は出来ないので、一定の確率で発動する事になります。

 

  捕捉:スキルはレベルが一定数上がる、もしくは特定の条件を満たす事により新たに追加、もしくは既存能力が強化されます。

 

 

(気合と精神力……)

 

 旧日本軍の思想じゃないんだから……まぁ能力的には結構優秀だけど、もう少しマシな名前は無かったのか 

 

 新しいスキルの能力を確認してメニュー画面を閉じる。

 

 

 

 その後俺は気持ちを切り替え、何かに使えないかとビッグゴブリンの屍から頭の角と牙を89式多用途銃剣で色々と耐えながら切り取り、その場から立ち去る。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 時系列は少し下る……

 

 

「……」

 

 目の前の光景に私は驚きを隠せなかった。

 

 私達は近隣に現れたビッグゴブリン率いるゴブリンの群れの討伐依頼を受けて騎士団から派遣され、その群れが居座る森に向かっていた。

 

 しかし到着するなり血生臭い臭いが辺りに立ち込めており、その発生源を特定しようと辺りを捜索したら、そこには私たちが討伐するはずだったゴブリンの群れが死んでいた。

 

 それだけなら別に驚きはしない。ゴブリンが他の魔物に殺されるか、それとも私達以外の騎士か冒険者によって討伐される事はたまにある。

 でも、ビッグゴブリンが死んでいるとなると、話は別だ。

 

「これは、一体どういうことなの」

 

 隣では私の親友が目の前の光景に思わず声を漏らす。

 

「ゴブリンだけならまだしも、ビッグゴブリンまでもが」

 

「……」

 

 ビッグゴブリンは並大抵の実力では討伐は困難だと言われるほど強力な魔物だ。練度の高い私達でも気を抜けない相手だ。しかも子分のゴブリンと連携して襲ってくるのでその厄介さに拍車が掛かる。

 それが群れのゴブリンと一緒に死んでいるとなると、ただごとじゃない。

 

「それに、このやられ方は」

 

 彼女はビッグゴブリンの屍に近付くと、焼け焦げて貫通した胴を見る。

 

「火属性の魔法で焼いた、にしては少しおかしいわね」

 

 私は焼き焦げた痕から妙な違和感を覚える。

 

 焼け焦げているといっても、火属性の魔法でこんな綺麗に穴を空けれるものなのか?

 

 

「フィリア様!」

 

 と、ピンク色の髪を二つに分けて纏めた髪形をして、左目を黒い眼帯で覆う仲間の少女がやってくる。

 

「リーンベル。どうだった?」

 

「ゴブリンの屍を見てきましたが、こちらの方はおかしな傷が」

 

「おかしな傷?」

 

「はい」

 

 私達はリーンベルに案内され、茂みで息絶えているゴブリンの屍の群れを見る。

 

「……これは」

 

 ゴブリンの屍に残された傷に私は目を細める。

 

 ゴブリン達は一部を除いて身体や頭に小さな穴が開いており、よく見ると真っ直ぐ貫通している。

 

「こんな真っ直ぐ綺麗に穴の開いた傷、見た事がありません」

 

「そうね。少なくとも、矢で射抜かれた傷じゃないわ」

 

「……」

 

「それと、こんな物があちこちに」

 

 リーンベルは手にして居た物を私と親友に見せる。

 

「なんだこれは?」

 

「……」

 

 それは薄く焦げた金色の円筒状の物体で、先端が焼け焦げたような色をしている。

 

「嗅いだ事の無い臭いだな」

 

 親友は金色の円筒状の物体を鼻に近づけ、発せられている臭いを嗅ぐ。

 

 そういえば血生臭い臭いの他に、こんな臭いが微かに辺りにしているような……

 

 

「少なくとも、このゴブリン達は何かに恐れて逃げようとして、後ろからやられた、と見るべきでしょう」

 

 と、茂みの奥から腰の位置まで伸ばした金髪でまるで目を閉じているかのような薄目な目つきの少女が出てくる。

 

「森の方に向かって前のめりに倒れているから、だな」

 

「はい、ユフィ様」

 

 親友ことユフィの問い掛けに少女は答える。

 

「やっぱり、冒険者でしょうか?」

 

「この依頼は騎士団にしか伝わっていないはずだ。冒険者の可能性は低いだろう」

 

「では、盗賊か傭兵によるもの、と?」

 

「状況で決め付けるにはまだ早い。でも、可能性は捨てきれないわね」

 

「……」

 

 

「どうするの、フィリア?」

 

「……」

 

 私は状況から判断を下す。

 

「結果はどうあれ、目的は達せられているわ」

 

「それはそうですけど……でも」

 

「横取りされたと言う結果だけどね」

 

「……」

 

 誰もが納得し難いと言った雰囲気であった。

 

「……兎に角、報告の為にブレンに戻るわ。いいわね?」

 

「分かった」

 

「はい!」

 

「分かりました」

 

 私が踵を返して乗ってきた馬車へと向かい、その後をユフィたちが続く。

 

 

 

 


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