坑道内に野太い銃声が連続して鳴り響く。
俺は手にしているAA-12の引金を引き続け、銃口から連続して野太い銃声と共に無数の鉛球が放たれる。
その度に俺達を殺そうと出てきた山賊たちの身体を無数の鉛球がズタズタに引き裂き、粉砕する。
やがて引金を引いたままのAA-12はその咆哮を止める。ドラムマガジンに入っていた弾が無くなった。
するとそれを好機と見たのか、山賊たちが各々の武器を持って岩陰や障害物から大きな声を上げて出てくる。
俺は慌てずAA-12を手放してスリングで吊るすと、右太股のレッグホルスターからUSPを取り出して向かってくる山賊に向けて発砲する。
銃声と共に放たれた数発の弾丸は山賊の身体を撃ち抜き、山賊達は激痛のあまりバランスを崩して倒れ、地面で転がるように悶え苦しむ。
すぐさま横に跳んでずれると、後ろにHK416Cを構えた状態で立っているエレナが引金を引き、連続してマズルフラッシュが瞬いて放たれた弾丸が山賊達の身体を貫く。
その後ろから続くユフィさんとセフィラの二人が周囲を警戒しながら前進する。
「……」
俺はUSPをレッグホルスターに戻してAA-12を手にして空になったドラムマガジンを外して新しいドラムマガジンをレールに沿って挿し込み、コッキングハンドルを引き、彼女達の後に続く。
「死ねぇぇぇっ!!」
突然横穴から山賊が短剣を手にして飛び出してくる。
「っ!」
俺はとっさにAA-12を前に出して攻撃を防ごうとする。
しかし直後にエレナがHK416Cを片手で山賊に向けてフルオート射撃を行い、山賊の体を無数の弾丸が貫いて蜂の巣にして、命を刈り取った。
「大丈夫、お兄ちゃん!」
「すまない、エレナ!」
俺はエレナに礼を言ってAA-12を構える。
先に進んでいたセフィラとユフィさんの二人がそれぞれ横穴にスタングレネードを放り込んで陰に隠れると、直後にスタングレネードが破裂して閃光と轟音が響く。
すぐさま二人は穴に銃口を向け、発砲すると山賊の悲鳴が穴から発せられる。
俺とエレナは先に進むと、セフィラとユフィさんも続く。
『こちら土方。目標捜索中も発見に至らず、送れ!』
と、耳に付けている通信機から恭祐から通信が入る。
「こちらも発見に至らず、捜索を続ける。送れ!」
『了解。無理をするなよ。終わり!』
通信を終えて俺達は進んでいくが、道が二手に分かれていた。
「道が二つに」
エレナは左右の道を交互に見る。
「どうしますか?」
「……」
セフィラの問いに俺は一考する。
だが、時間との勝負もあって、俺はすぐに判断する。
「俺とエレナが左を。セフィラとユフィさんは右をお願いします!」
「了解しました」
「了解した!」
二人は頷くと右の道へと走っていくのを見届けてから俺とエレナも左の道へと走っていく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……」
僕は吐き気を何とか抑えて恭祐さん達の後を追い掛ける。
恭祐さんに言われた通り、無理の無い範囲で援護に徹していたけど、人を撃つというのは想像以上に厳しいものだった。
(こんなに、きついなんて)
分かってはいたはずだ。こんな事になるのは。だが、現実はその理解を超えていた。
(なのに、何で恭祐さんは……)
僕は恭祐さんが何の躊躇いもなく山賊を射殺していることに、戸惑いがあった。
自分と違って転生してから日が浅いのに、どうして……。
「前方敵!」
すると恭祐さんが叫ぶとその場で止まり、HK416A5を構えて射撃する。
洞窟内にいくつもある横穴から山賊が出てきて各々の武器を手に襲い掛かってくるも、あんな距離から出てきたら、ただのカモだ。
案の定恭祐さん達の銃撃で山賊達は放たれた銃弾の雨によって蜂の巣にされ、次々と倒れる。
僕もHK416A5を構えて引金を引くも、手が震えて照準が定まらず銃弾は山賊に当たらなかった。
「……」
何とか落ち着こうとして、深呼吸をしながら場所を移動しつつHK416A5を構えて引金を引く。
「死ねやぁっ!!」
「っ!」
突然岩陰から山賊が飛び出て来て僕に向かってきた。
とっさに銃を構えようとするも、相手の方が早く山賊の振るうマチェットが僕が手にしているHK416A5にぶつかり、そのまま僕を地面に押し倒す。
「ぐっ!」
押さえつけられるように背中を地面に強打した為、僕は肺の中の空気を押し出され、一瞬意識が飛びそうになる。
何とか意識を失うことは避けれたが、山賊はマチェットを振り上げる。
銃を構える暇は無い。すぐにHK416A5を前に出して防御体勢を取る。
しかし直後に左側頭部から銃弾が突き抜け、山賊は左へと倒れ込む。
「っ!」
「大丈夫か、シキ!」
僕が驚いていると、恭祐さんが僕の傍まで近づいて左手を差し出す。
「だ、大丈夫です」
恭祐さんの手を掴んで引っ張られながら立ち上がると、すぐにお礼を返す。
「言ったはずだ。無理をするなとな」
「……」
無理をしていないはずなのに、どうやら僕が自覚していないだけで、無理をしているようだ。
「リーンベル。彼のフォローを頼む」
「了解!」
「周囲警戒を厳に前進。ここいらで目標を見つけたいものだが」
恭祐さんはそう呟き、銃を構えて再度前進する。
「……」
すると曲がり角から人影が出てきてとっさに恭祐さん達は銃を構える。
「待て! 私達だ!」
と、とっさに左手を上げながらユフィさんとセフィラさんが恭祐さん達を止める。
「ユフィか! 志郎達は!」
恭祐さんは銃口を下ろして二人の元へと駆け寄る。
「シロウ様は先ほど分かれ道がありましたので、そちらの方へ」
「そうか」
頷きながら恭祐さんは周囲を見渡し、HK416A5のマガジンを外してダンプポーチに放り込み、マガジンポーチからマガジンを取り出して挿し込む。
「ユフィ。志郎達が向かったルートに案内してくれ」
「分かった」
ユフィさんは頷きながら元来た道へ踵を返して走り、その後を恭祐さん達が続き、僕も後を追い掛ける。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「もうそろそろ見つかってもいい頃だと思うんだが……」
お兄ちゃんはそう呟きながらAA-12から、えぇと確か『FN FNC』って言うアサルトライフルだっけ? それと装備を変更していた。
私もHK416Cの空になったドラムマガジンを外して腰に提げている専用のマガジンポーチからドラムマガジンを取り出して挿し込み、ボルトストップを解く。
「さすがにこれ以上見つからないとなると、もう逃げたか、それとももっと奥に居るのか」
「……」
「くそっ……」
「お兄ちゃん」
深刻そうな表情を浮かべるお兄ちゃんに私は声を掛けるしか出来なかった。
―――!!
「っ!」
すると奥から山賊達の声が響いて来て、私とお兄ちゃんは咄嗟に身構える。
「まだ来るの!」
「いや、ここまで多くの山賊を倒しているんだ。となると、こいつらが最後だろう」
銃のコッキングハンドルを引いてお兄ちゃんはすぐに構える。
私もすぐにHK416Cを構え、山賊の襲撃に備える。
「恐らく、この奥にまだやつが居るはずだ」
「……」
(この奥に、お父さんとお母さんの)
ふと、私の脳裏に血まみれたお父さんとお母さんの姿が過ぎる。
そうだ。この奥に、二人の仇が居るんだ……。
私の中で感情が冷え込み、HK416Cのグリップを握る手に力が入る。
なのに、こんな所で油売っている場合じゃない。
(これ以上時間は掛けられない)
「お兄ちゃん! 私が援護するから、先に行って!」
「エレナ!?」
お兄ちゃんは驚いたように私を見る。
「これ以上時間を掛けたら、あいつは逃げてしまう!」
「だからって、一人でやるっていうのか!?」
「ここまで来てお父さんとお母さんの仇を逃がしたくない!」
「エレナ……」
「……」
「……」
お兄ちゃんは悩んだ表情を浮かべるけど、意を決したように私を見る。
「無理はするなよ」
「うん!」
すると奥から山賊達が大きな声と共に出てきて私達へと向かってくる。
私はHK416Cの銃口を山賊達に向けて引金を引き、連続してマズルフラッシュが瞬いて洞窟内を照らす。銃声が鳴る度に山賊は次々と倒れていく。
その間にお兄ちゃんはFN FNCを構えながら山賊達を迂回するように走り、山賊に向けて引金を引いて銃声と共に放たれた弾は山賊の身体を貫く。
山賊は一瞬お兄ちゃんの方に意識が向くけど、そっちを向いている余裕は無いよ!
私は引金を引いたまま山賊の方へと歩み寄り、連続して放たれる銃弾は山賊達の身体を貫き、次々と倒していく。
山賊の注意が逸れた内にお兄ちゃんは洞窟の奥へと走っていく。
私はその間に山賊達に向けて射撃を続けるけど、しばらくしてボルトが一番後ろまで下がって弾が出なくなる。
「ちっ!」
私は咄嗟に銃を手放して両脇のホルスターから銃剣付きUSPを取り出して残った山賊に向けて引金を引く。
銃声が鳴る度にスライドが後退して次の弾を薬室へと送り込み、同時に山賊の身体を銃弾が貫き地面へと倒させる。
山賊の一人が斧を手にして私に向かってくるが、慌てず左手に持つUSPを山賊に向けて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸は山賊の頭を撃ち抜く。
横からも棍棒を手にして振り下ろしてきたけど、私は棍棒をかわしてその脇を通り過ぎる際に右手に持つUSPの銃剣で山賊の首筋を切り裂く。
私は山賊達に向けて引金を引き続ける。挑んで来ようが、逃げようが、誰一人ここから逃がさない。
(逃がさない……逃がさナイ……逃ガサナイ!)
私は一心不乱に、引金を引き続けた。
中には武器を捨てて命乞いする山賊が居たけど、私は無視して山賊の頭を撃ち抜く。
そうやって命乞いをした人たちを殺して来たんでしょ。いざ自分の番になるとそうやってすれば助かると思っているの?
馬鹿なの? 死ぬの?
胸の中でモヤモヤとした、怒りのようで呆れたような、そんな言葉で表せないような感情が募り、私はただただ引金を引き続けた。