青い空が広がり、そよ風草が揺らぐ草原。
その中を走る大きな物体があった。
「で、俺は思うんだよな。AK系やM4系の事を勘違いしているやつが多いって」
草原を走る高機動車改の後部席に座り、陸自の迷彩服3型と各種装備を身に纏う士郎はそう口にする。
「それは同意だな」
「僕もそう思います」
向かい側に座る恭祐とシキは士郎の言葉を肯定する。
シキも他のみんなと同じ迷彩服3型と各種装備を身に纏っているが、他のみんなと違ってズボンには尻尾を通す為の穴を開けて、88式鉄帽をかぶらず代わりに耳を通す為の穴を開けたブーニーハットをかぶっている。
まぁ耳が頭の上にある以上仕方ないのだが。
「大体M16やM4が汚れに弱いって言う認識がおかしいんだよ。まぁ汚れに弱いって言うのは構造上仕方ないんだがな」
M16、もといAR-15系は『ダイレクト・インピンジメント式』通称『リュングマン式』とされる作動方式を用いる……と思われがちだが、正確には似ているが作動機構と構成、構造が異なる『ストーナー方式』と呼ばれる作動方式を用いる。
反動が抑制できる為、命中精度が高くなる特性を持つが、その反面直接ボルト内にガスを吹き付けるので汚れに弱い欠点がある。
「ベトナム戦争でのM16の悪評が広がったのが原因だからな」
「あれは使用していた弾薬の発射薬と徹底したメンテナンスをしていないのが原因ですからね。決して汚れに弱かったわけじゃないんですよね」
M16は欠陥銃と言われがちだが、実際には当時使用していた弾薬と管理体制が悪かった事で故障が頻発したのが殆どで、構造上に欠陥があったわけじゃない。
試験時はM16に適した別の発射薬が用いられていた弾薬を使用していたのだが、いざ採用時になるとコスト面から急遽別の発射薬が用いられるようになった。この発射薬はコストが安い上に威力あったが、燃えカスが多かったので、作動方式上汚れが付きやすく動作不良に繋がりやすかった。
その上、M16に使うクリーニングキットが不足しており、その上コルト社の過剰な広告とどっかのアホが『クリーニングは自動でしてくれる』とデマを流したことによる清掃の怠りや、清掃教育が徹底されていなかった上に、訓練でM14を使っていたのに実戦ではM16を使わされていたりと、トラブルが頻発したのだ。
更に当時使っていた潤滑油にも問題があって、弾薬の不発化や異物混入が発生して、結果的に多くの動作不良を起こす事になったのだ。
その後はクリーニングキットを部隊に行き届かせたり、マニュアルをアメリカらしいセクシーな美女が説明するイラスト付きの物にするなどして清掃管理を徹底させた。
そして銃本体にも改良を施して対策を取ったのだ。
まぁ、それでも故障は発生したのだが。
「AKは確かに汚れに強いが、逆に構造上汚れが入りやすいから、むしろあんまり強くないんだよな」
「逆にM16と言うか、AR-15系は密閉した構造故に、汚れが入りづらいからな。例えダストカバーを開いた状態で泥を被ってもボルトを閉鎖している状態なら普通に撃てている動画があったしな」
「AKは閉鎖していてもパーツ同士の隙間が多いですから、逆に動きが悪くなっていましたね」
「まぁ、隙間が多い分汚れを出しやすいって言う利点があるし」
「正に一長一短だな」
とある動画で検証されていたが、泥を被ったAK-47とAR-15の動作の行った所、予想を反する意外な結果があった。
汚れに強いはずのAK-47だが、機関部に泥を被った状態で射撃をすると、一発撃っただけでパーツが泥を噛んで動作不良を起こした。逆に汚れに弱いと言われてきたAR-15はダストカバーを開けた状態で泥を被っても軽快に動作していたと、予想外な結果となったのだ。
AK系は構造が簡素な分隙間が多い為、泥や砂が侵入しやすい。その動画ではボルトを閉鎖して泥を被せていたが、にも関わらず泥が侵入して動作不良を起こしていた。しかし逆を言えば隙間がある分泥が浸入しても簡単に水で洗い流すことができると言う利点がある。実際簡単な分解をして水で泥を洗い流しただけで快調に動いていた。
AR-15系は密閉した構造故、泥を含んだ汚れが侵入しにくい構造をしている。動画ではダストカバーを開いた状態で泥を被せても軽快に動作していた。しかしその分内側の汚れに弱いと言うのは先ほど言った通りだ。
まぁ、結論からすればそれぞれの銃に一長一短がある、完全無欠の銃など存在しないと言うことだ。
(((((何を話しているのか全く分からない)))))
ミリオタな三人以外のメンバーは何のこっちゃ分からず苦笑いを浮かべるしかなかった。
士郎達が仲間に加わって一週間が経過し、特に問題なく冒険者として依頼をこなしていく日々が続いた。
今回も魔物討伐の為依頼主が待っている牧場へと向かっている。
スレイプニルを出発して三十分が経過し、俺達の乗る高機動車改は依頼主が経営している牧場に着く。
愛用の89式小銃を手にして車体後部の扉を開けて降りると、運転席に座るユフィと銃座に着くセフィラ以外のメンバーが降りる。
牧場の入り口には依頼主と思われる男性が戸惑った表情を浮かべて立っていた。そりゃ斑点模様の服装をした集団が居たら戸惑うわな。
「すいません。あなたがここの牧場の持ち主ですか?」
「そ、そうですが、あなた方は?」
「あなたの依頼を受けた冒険者です」
「おぉ! あなた方が! こちらへどうぞ!」
男性は俺達が依頼を受けた冒険者だと分かると笑みを浮かべ、俺達を牧場へ案内する。
今回の依頼内容は牧場に何度も山から下りて来て家畜や野菜を食い荒らす魔物の駆除だ。
その魔物と言うのが、意外にもオークらしい。
オークは雑食性で、肉でも野菜でも、何でも食べるそうだ。その上知能があるし、身体が大きく脂肪が多いとあって、中々倒れないで、厄介なのだとか。
その他にも様々な魔物が確認されているので、その辺は注意しないとな。
「オークか。相手にするのは初めてだな」
森に入る前に全員を集めて狩猟の準備をする。
「ユフィ。オークって二足歩行する豚か猪みたいなやつか?」
「そんな感じだ」
「まんまだな」
士郎が苦笑いを浮かべる。
「やつらは同族以外の魔物を率いて群れを成し、襲ってくる。それに身体が大きい分頑丈だから、騎士団でもかなり手を焼いたものだ」
「それに、様々な種族の女性達を拉致するんですよ。どうしてだと思います?」
「言わなくても察したよ」
リーンベルの言葉に俺はオークの生態が読めた。
恐らくゴブリンと同じなんだろうな。もしくは愉しむ為にか、その他の理由からか。
「それ以外には、他の魔物に注意して目標を駆除ってところかしら」
「そうだな。ユフィ。君はあそこの高台から目標の索敵と狙撃を頼む」
「了解した」
「士郎。バレットをユフィに」
「あいよ」
士郎は指を動かしていると、バレットM82A1が彼の両手に現れ、ユフィに渡す。
現時点では俺はシモノフや九七式自動砲以外の対戦車、対物ライフルを召喚する事が出来ないので、士郎に出してもらうしかない。
まぁシモノフでも十分だろうが、無理矢理近代化改修して性能を向上させたものだから、性能的に限界が来ていた。
なので、俺が出せない銃火器は士郎に出してもらうことにしている。
彼女はバレットM82A1を受け取るとスリングに腕を通して背中に背負い、次に士郎から12.7×99mm NATO弾が込められたマガジンをいくつか受け取る。
「シキはユフィの護衛と
「分かりました」
シキは返事を返して頷くと、レッグホルスターに収めているUSPを取り出してスライドを引き、ハンマーをデコックしてホルスターに戻すと、腰のホルスターに収めているCz40Bを抜くとスライドを引いてハンマーをデコックしてホルスターに戻す。
Cz40Bは手放したくないと言う彼の要望で予備の拳銃として持っている。
次に背中に背負っているG3SG/1を手にしてマガジンを挿し込み、コッキングハンドルを引いて薬室に初弾を送り込む。
それからして二人は先に高台へと目指していく。
二人を見送った後、俺はセカンダリウェポンのカスタムUSPをレッグホルスターから抜くとスライドを引いて初弾を薬室に送り込み、ハンマーをデコックしてレッグホルスターに戻す。
最初にセカンダリウェポンから装填するのは、メインウェポンを装填して、セカンダリウェポンの装填をし忘れるのを防ぐためだ。
次にマガジンポーチから30発の89式5.56mm普通弾を詰めたSTANAGマガジンを取り出して89式小銃の挿入口に挿し込み、コッキングハンドルを引く。
次にM203の銃身のロックを外して前へとスライドさせ、40mmの榴弾を銃身に挿し込んで元の位置へと戻し、セーフティーを掛ける。
隣でフィリアもセカンダリウェポンのUSPに初弾を装填してからホロサイトとブースターを載せ、フォアグリップを取り付けた89式小銃にマガジンを挿し込んでコッキングハンドルを引く。
リーンベルとセフィラもそれぞれ士郎が新たに召喚した『MINIMI MK3』と『M240G』のコッキングハンドルを引いてフィード・カバーを開き、ボックスマガジンからベルトリンクを取り出して先端をレシーバーにセットし、フィード・カバーを閉じる。
士郎はレッグホルスターに収めているセカンダリウェポンのUSPを引き抜くとスライドを引き、初弾を薬室に送り込むとハンマーをデコックしてレッグホルスターに戻す。
次に右肩に背負っている『G41』と呼ばれるアサルトライフルを手にしてマガジンポーチからマガジンを取り出して挿入口に挿し込み、コッキングハンドルを引く。
G41とはH&K社で開発されたアサルトライフルで、HK33を基に内部機構の改良と3点バーストの追加、NATOのSTANAGマガジンが使えるように改造が施された自動小銃だ。
一応ドイツ軍のG3に代わって次期主力小銃として開発されたが、ベルリンの壁崩壊と共に東西ドイツが統合したことによって軍事費が削減され、ただでさえ金額が高いこの小銃は採用が見送られた。
その代わりにG36がドイツ軍の次期主力小銃として採用されている。
それ以降は極一部の国の警察機関や軍で採用されたが、商業的にうまく行かず、現在ではH&K社のカタログから消されている不遇な小銃だ。今もカタログに載っていないのかは分からないが。
士郎はそのG41にレシーバー上部とハンドガード下部にピカティニー・レールを追加して、それぞれアングルフォアグリップにオープン式ドットサイトを装着している。
正直俺としては同じ89式小銃を使って欲しいんだが、あいつ曰く『せっかく銃の召喚能力が使えるんだから、色んな銃使わないと勿体無いだろ?』だそうだ。
まぁ一応STANAGマガジンを使う小銃を使ってくれているから、マシな方か。
士郎の隣ではエレナが手にしている89式小銃にマガジンを挿し込んでコッキングハンドルを引く。
しかしよく見るとその89式小銃は他と違って全長が短く、先端のフラッシュハイダーも側面に無数の穴が開いた先割れ型の物に変わり、銃床も折り畳み式の物になっている。
これは89式小銃の開発過程で試作された短銃身型の物であり、試作こそされたが採用されることが無かった代物だ。
なるべく使う銃は統一しておきたかったが、銃身が短いアサルトライフルがいいというエレナの要望に応えてこれを出した。
今回は試験的に運用して彼女の評価を聞くところだ。
エレナは『89式短小銃』を背中に背負うと、両脇のホルスターから銃剣を取り付けたUSPを取り出してそれぞれスライドを引いて初弾を送り込むと、ハンマーをデコックしてホルスターに戻す。
彼女はどうしても銃剣を付けたかったらしく、士郎が改造を施してUSPにCz75 SP-01の銃剣を取り付けたそうだ。
何だこのこだわりは……
「さて、行くぞ」
全員の準備が終わったのを確認してから89式小銃のセレクターを
森の中に入った俺達は魔物の襲撃を警戒しながら前へと進む。
「こちら土方。そちらはどうだ。送れ」
『今高台に到着した。これより周囲を警戒する。送れ』
耳に着けている通信機に手を当ててユフィに通信を送ると、彼女は高台に着いたのを伝える。
「目標を発見したら報告してくれ。送れ」
『了解。終わり』
通信を終えて俺は再度周囲の警戒に入る。
「ユフィは高台の着いたの?」
「あぁ。今から見下ろして捜索するそうだ」
「目標の居場所が分かれば良いんだけど」
「だな」
出来ればこちらが先に見つけられればいいが。
「にしても、ここは視界が悪いな」
周囲を警戒しながら士郎が俺の隣に来ると、声を掛ける。
「あぁ。注意をしないと魔物のアンブッシュを受ける事になりかねんな」
「全くだ。ベトナム戦争の米軍もそんな心境だったのかね」
「まぁ、罠が無いだけマシな方だ」
「だな」
そんな会話を交わしながらも、士郎は周囲に鋭い視線を向けていた。
『こちらユフィ。目標を発見した。送れ』
するとユフィから通信が入り、俺はしゃがみながら左手を開いて上に上げ、全員に停止を合図すると、無線機に手を置く。
「こちら土方。目標の現在地点は? 送れ」
『キョウスケ達からその先にある森の開けた場所だ。そこでゴブリンと集まって何かしている。送れ』
「了解。ユフィは監視を続行。目標の動きを逐一報告してくれ。送れ」
『了解。終わり』
俺は通信機から手を退かして後ろに振り返る。
「どうやらオークはこの先の開けた場所にゴブリンと居るようだ」
「ゴブリンとですか?」
「それはまた厄介な」
セフィラとリーンベルは険しい表情を浮かべる。
「何で厄介なんだ?」
「ゴブリンはただでさえ数が多いのですわ。オークと共にいるという事は、それだけの数が居ると言うことを意味しています」
士郎が首を傾げると、セフィラが説明する。
「つまり、一つの群れがいたら他にも居るって事を考えないといけないってことだ」
「Gかよ」
俺がそう言うとげんなりした様子で声を漏らした。
「ここからは物音を立てずゆっくりと進むぞ」
「分かったわ」
「おうよ」
『了解』
俺達はそれぞれ銃火器を構え、ゆっくりと忍び足で前へと歩みを進める、
周囲を警戒しながら前へと進むと、開けた場所が見えてきた。
俺達はそれぞれ木の陰や茂みに身を潜め、双眼鏡を手にして木の陰から顔を出して覗き込み、状況を確認する。
前方は木々が無いぽっかりと開いた広場で、そこには7,8体の猪の様な頭を持ち、身体の大きなオークが地面に座って肉を食っていた。
近くには何かの残骸が地面に転がっていた。恐らくオーク達が食べている肉の持ち主だろう。
その周りには数体のオークとゴブリンが周囲を警戒している。
「ホント、見たまんまだな」
「あぁ」
「それで、どうする?」
「まずユフィの狙撃で一際大きな個体を狙ってもらう」
俺は木の陰からメンバーにどう動くかを説明しながら、オークの群れの中で一際大きな個体を指差す。
「あれが群れの頭目か?」
「恐らくな。狙撃と同時にセフィラとリーンベルが機銃掃射を行う。俺達は取り逃がしの始末だ」
「分かった」
全員が頷くのを確認してから、俺は無線機に手を当てる。
「こちら、土方。ユフィ。そちらで大きな個体が見えるか? 送れ」
『あぁ。見える。それを狙えばいいのか? 送れ』
「話が早くて助かる。その後は逃げようとしているやつを始末してくれ。送れ」
『了解した。終わり』
ユフィと通信を終えてからシキの無線機の周波数と合わせる。
「シキ。お前は狙撃をしつつ周囲を警戒だ。送れ」
『こちらシキ。了解。終わり』
無線機から手を離すと、左手をM203に添えてホロサイトの電源を入れて覗き込む。
士郎もG41のハンドガード下部のアングルフォアグリップを添えるように握り、構えるとセレクターをセミオートに切り替え、オープンドットサイトを覗き込む。
フィリア達もそれぞれ銃火器を構え、いつでも撃てる体勢を取る。
「……」
トリガーガードに引っ掛けていた指をゆっくりとトリガーに掛け、ホロサイトのレティクルをオークの頭に重ねる。
直後、大きな身体を持つオークの頭目の頭が文字通り弾け飛び、血と肉片を辺りに撒き散らす。その後に遠くから銃声がする。
オーク達は突然群れのリーダーの頭が吹き飛び、何が起きたのか分からず、呆然とする。
直後にセフィラとリーンベルの二人が引金を引き、5.56mmと7.62mmの弾丸の雨をオークとゴブリンの群れに降り注がせる。
二種類の弾丸はオークとゴブリンの身体を貫き、次々と倒していく。
すかさず俺は引金を引き、銃声と共に銃床越しに反動が右肩に伝わる。
隣で士郎もG41の引き金を引き、銃声と共に放たれた弾丸がオークの首を貫通し、直後に放たれた弾丸が左眼を貫通して命を刈り取る。
フィリアもブースター越しにホロサイトを覗き、狙いを定めては引金を引き、次々とオークとゴブリンの頭や左胸を撃ち抜いていく。
エレナは89式短小銃の3点バーストで三発ごとに射撃を行い、オークとゴブリンの身体を撃ち貫く。
しかしゴブリンはともかく、頑丈なオークは5.56mmや7.62mmの弾丸で貫かれてもまだ動いており、身体中から血を流しながらも森の奥へと逃げようとしていた。
俺達はオーク達を逃がさず、頭に狙いを定めて撃つ。
遠くからはユフィとシキが逃げようとしているオークを狙い、頭部に穴が開くか、弾け飛んだりして次々と命を刈り取っていく。
すると俺の89式小銃のボルトが一番後ろまで下がってそのまま停止する。
「リロード!」
俺は一声掛けてから木の陰に隠れると、士郎達が空いた分を埋めるように射撃を行う。
マガジンリリースボタンを押して空になったマガジンを左手に持ちながら外し、腰に提げているダンプポーチへ放り込むと、マガジンポーチからマガジンを取り出して挿し込み、スライド止めを上から押してボルトを前進させる。
『こちらシキ! 10時方向からゴブリンの群れが接近中! 送れ!』
「了解! 迎撃する! 終わり!」
無線機からシキの報告が入り、俺はほぼ壊滅したオークの群れを一瞥して10時の方向を見る。
「10時方向からゴブリンの群れだ! 士郎、リーンベル、エレナ! 迎撃用意!!」
『了解!』
「フィリアとセフィラは周囲警戒だ!」
「了解!」
「了解致しました!」
俺は指示を出して89式小銃の被筒下部にあるM203のセーフティーを外し、左手でマガジンをグリップの様に握って身構える。
「……」
そして聴覚を強化した俺の耳にこちらに近付く複数の足音を捉え、足音がした方向へM203の引金を引く。
直後ポンッ!! と言う音と共に40mmの榴弾が放たれ、茂みの奥へと入ると、その直後に炸裂音が発せられる。
すぐさまM203の銃身のロックを外して前へとスライドさせて空薬莢を排出し、次弾を銃身に差し込んで元の位置へと戻す。
少ししてボロボロの姿となったゴブリンが茂みから出てくるも、直後に士郎がG41の引金を引いてゴブリンの頭を撃ち抜く。
同時にリーンベルもMINIMI MK3の引金を引いて連続して鉛弾の雨をゴブリン達に降り注がせた。
近くでは他の方向から襲おうとしたゴブリンに対してフィリアとセフィラが迎撃する。
「リロード!」
「カバー!」
エレナが木の陰に隠れて空になったマガジンを交換している間に、俺達が援護に入る。
弓矢を持ったゴブリンがいたが、構えようとした瞬間頭を撃ち抜かれて後ろに倒れる。
そして30分も経たずにオークとゴブリンの群れは全滅し、辺りには魔物の死骸が埋め尽くしていた。
周囲を警戒しつつ俺はまだ弾が残っているマガジンを手にしながらマガジンリリースボタンを押して外し、ダンプポーチに放り込んでマガジンポーチよりマガジンを取り出して挿し込む。
「こちら土方。周囲に敵影はあるか、送れ」
『こちらシキ。周囲に敵影無し。目標と思われる影も見受けられない。送れ』
「了解。だが、まだ居る可能性がある。オークから身体の一部を切り取った後、周囲の索敵を行う。送れ」
『シキ了解。こちらも周囲の索敵を行う。終わり』
通信を終えて俺は周囲を確認する。
「まだオークが残っているかもしれない。オークから一部分を切り取って回収した後、時間まで周囲を確認する」
「分かったわ」
「了解です!」
「了解しました」
「おうよ」
「はい!」
俺達は周囲を警戒しつつオークの牙や耳を89式多用途銃剣で切り取ると、森の奥へと前へと進んでオークの捜索に入った。