異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第三十四話 集う者達

 

 

 

 

 運命とは時には想像を遥かに上回るような出来事を起こしてくれるものだ。

 

 山賊に襲われた村を後にして森の中を彷徨っていた俺達は小型の恐竜もどきの魔物の群れに襲われて、応戦しながら逃げていた。

 

 そんな中、森の中にある道へと出ると、そこにあったのはこの世界には存在しないはずの物が鎮座していた。

 

 少し形が違っていたが、それは日本の陸上自衛隊で採用されている高機動車であり、美少女三人がこれまた陸上自衛隊で採用されている迷彩服3型を身に纏っていたのだ。

 その上、それぞれ銃器を持っていた。

 

 目の前の光景に驚きを隠せなかったが、直後に林の方から恐竜もどきが走ってきて俺達は美少女三人と共同で迎え撃った。

 

 その後三人に事情を説明して、三人には申し訳なかったけど彼女達が活動の拠点にしている街まで送ってもらった。

 

 しばらくして街の外に着くと一人が団長を呼んでくれるそうで、その待つ間に残った二人と会話を交わした。

 

 会話の中で分かったこととすれば、彼女達の上司である団長はどうやら俺と同じ転生者である可能性があり、彼女達が使っている銃器も、この高機動車もその団長が能力で出したようだ。

 

 そしてしばらくして団長を呼んできた女性が戻って来て、彼女達の団長と対面した。

 

 

 まぁ、その団長とやらが、まさか俺の幼馴染だったとは、予想しなかったがな。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『……』

 

 あの後、全く想像していなかった幼馴染との再会を果たした後、ユフィ達は再度依頼主の元へと出発し、俺達はフィリア達の所へ向かっていた。

 

「それにしても、随分と久しぶりだな、恭祐」

 

「あぁ。高校を卒業して以来だな。元気だったか?」

 

「あぁ。こうして異世界に転生する事以外はな。お前は?」

 

「俺も士郎と同じだ」

 

「そうか。にしても、その格好は何だ?」

 

「見て分からんか? 陸自の迷彩服3型だよ」

 

「それは見りゃ分かる。俺が言いたいのはそれをどこで手に入れたんだって話だ」

 

「その事についてだが、まぁ後で話す」

 

「そうかい」

 

 俺は久しぶりに友人に会えて、会話が弾んだ。

 

「それにしても、まさかお兄ちゃんの幼馴染も、この世界に転生していたなんて。世の中分からないもんだね」

 

 隣でエルフの少女ことエレナが呟く。

 

「しかしエルフか。さすがファンタジーな世界だ」

 

「あぁ。全くだ」

 

「?」

 

「しかし、士郎。一体何があってこんな所に」

 

「それはこっちの台詞だ。恭祐こそ、何があってここに居るんだ?」

 

「俺をこの世界に転生させた神曰く、頭の血管が切れてお陀仏だそうだ」

 

「そうか。俺はコンビニ強盗が運転する車に撥ねられたそうだ」

 

「そうか。お互い大変だったな」

 

 互いの死因を聞き、俺は声を漏らす。

 

 と言うか、お互いの死因を聞くって、おかしな話だな。

 

「それと、転生の際に武器の召喚能力を貰ったんだ」

 

「武器の召喚能力、か。そのIMI ガリルもその能力で?」

 

 俺は士郎の背中に背負われているIMI ガリルを見る。

 

「あぁ。古今東西各種様々な武器を出せるんだ。まぁ兵器は無いけどな。そういう恭祐は?」

 

「一部限定だが、武器兵器を召喚できる能力だ」

 

「へぇ。良いじゃないか。戦闘服とUSPもその能力で?」

 

「そうだが、俺は士郎の能力もいいと思うぞ。俺のなんか一部を除いて日本製だけだ」

 

 俺はレッグホルスターに納まっているUSPに手を置きながら愚痴を零す。

 

「それでも兵器が出せるのは良いじゃないか。もしかして戦車も出せるのか?」

 

「あると言えばあるが、まだ出せないな。似たような車輌なら出せるが」

 

「それって16式辺りか?」

 

「あぁ」

 

「それでも凄いな。じゃぁ後々には他にも出せるって事か?」

 

「かもな。まだ何とも言えないが」

 

「すげぇな……」

 

 士郎は凄さのあまりか、声を漏らした。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「着いたな」

 

 しばらく恭祐と歩きながら話していると、喫茶店風の店の前で止まる。

 

「ここは?」

 

「ここに待たせている人が居るんだ」

 

「ふむ」

 

 恭祐が店に入って俺とエレナもその後に続く。

 

 店に入ると、案の定客達の視線がこちらに向く。

 

 まぁ変わった特徴を持ったエルフが居るんじゃ目立つわな。

 

「待たせたな、二人共」

 

 視線を感じながらも恭祐は奥の席に着くと、そこには二人の美少女が座っていた。

 

(おいおい恭祐さんよ。美少女ばかり揃えているってどういうこっちゃ。ハーレムでも築く気かよ)

 

 俺は内心恭祐に突っ込みながら美少女二人を見る。

 

 片方はエレナの様な銀髪碧眼の美少女で、もう片方は同じく銀髪で紅い瞳をした獣人の美少女だった。

 

 

 

 恭祐が二人に事情を説明して俺とエレナは席に座り、注文した料理を食べていた。

 

 まぁしばらくまともな物を食っていなかったので、かなり腹が減っていたからエレナ共々ガッツガッツと食った。

 

「はぁ、食った食った」

 

「よほど腹が減っていたんだな」

 

「あぁ。しばらく森の中を彷徨っていたからな。食えるものは限られてたし」

 

「だろうな」

 

 恭祐は手にしている木製のコップに入った果実ジュースを一口飲む。

 

「まさかキョウスケみたいな転生者とこうもあっさりと出会えるなんて、本当にどうなっているのかしら」

 

 恭祐の隣に座っているエレナのような銀髪碧眼美少女ことフィリアさんは怪訝な表情を浮かべて首を傾げている。

 

「それは、俺の方もですよ。まさか俺以外の転生者が二人も居るなんてな」

 

 恭祐もさっき知ったようだが、どうやらこの獣人の美少女ことシキも前世は日本人で輪廻転生した転生者らしい。

 

 そしてさっき知ったが、どうやらこんな身なりでも、シキの性別は男らしい。

 

 リアル男の娘だよ。その上獣人と来た。色々と持ってんなぁ。

 

 で、恭祐とフィリアさんも、その事に気付いたのはついさっきらしい。

 

 まぁこんな姿じゃ普通は気付かないよ。うん。

 

「それで、士郎。お前はこの世界に転生してから、何をしていたんだ?」

 

「あぁ。この世界に転生した後、しばらく森の中を彷徨っていたんだが、その時にゴブリンに襲われていたエレナを見つけて助けたんだ」

 

「本当にあの時はもう駄目かと思ったよ」

 

「なるほど」

 

 なんか、デジャブを感じたように呟いたな。

 

「で、エレナを村まで連れて行ったら、お礼として村に住まわせてもらったんだ」

 

「ふむ」

 

「って事は、その村はエルフの村だったの?」

 

「いや、普通の人間が暮らす村だったよ」

 

「どういう事ですか?」

 

 シキが首をかしげて俺に問い掛ける。

 

「エレナは昔気を失っていた所を保護されたみたいだ。名前以外の記憶を失っていて、そのまま保護した夫婦が養子として引き取ったんだ」

 

「そうだったんですか」

 

 シキはエレナを見る。

 

「そういえば、エレナさんは普通のエルフと違いますよね」

 

「どういう事だ?」

 

 シキの言葉に恭祐は首を傾げる。

 

「エルフは大抵金色の髪とエメラルドグリーンの瞳の色をしているのが多いんです。エレナさんの外見の特徴からすると、恐らくハイエルフと思われます」

 

「ハイエルフか」

 

「エルフの上位種なのは知っているけど、でも」

 

 フィリアさんはエレナの方を見る。

 

「えぇ。通常エルフもそうですが、例外を除いてもハイエルフは金髪にエメラルドグリーンの瞳が基本なんです」

 

「ふむ」

 

 そういえばエレナが普通のエルフとは違うってゲオルクさんは言っていたな。

 

「でも、エレナさんみたいにハイエルフの特徴を持っていて、瞳と髪の色が異なっているのは、聞いた事が無いです」

 

「なるほど」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「で、話を戻すが、俺はその村でしばらく生活していたんだ」

 

「なるほどねぇ」

 

「そこで私がお兄ちゃんに銃の扱い方を教えてもらったの」

 

 と、どこか嬉しそうにエレナが両脇のホルスターより拳銃二丁を取り出してテーブルに出す。

 

「銃剣付きのCz75 SP-01。マイナーじゃないけど、渋いな」

 

 俺は腕を組んで苦笑いを浮かべる。

 

 しかも拳銃で銃剣を付けるって。正直言って実用性が無いんだよなぁ。まぁ、二丁拳銃もそうなんだが。

 

 いや、この世界ならまだワンチャンあるか?

 

「それにしても、現代において実用性の無い要素二つを兼ね備えた拳銃とは」

 

「まぁ俺もそう思ったんだが、そうじゃないんだよな」

 

「と、言うと?」

 

「二丁拳銃や銃剣付き拳銃は実用性が無いってドヤ顔で説明する連中が真っ青になるぐらいに、彼女は使いこなしているんだ。さながら映画みたいな光景だったぞ」

 

「マジですか」

 

 士郎がそう言うと、シキは苦笑いを浮かべる。

 

「それと、ヴェープル12 モロトとか、AK-104とか、最近じゃAKS-74UやHK416Cとか、色んなやつを使うぞ」

 

「銃身が短いやつばかりだな」

 

「どうもカービンモデルの方が彼女的には扱いやすいみたいだ」

 

「なるほど」

 

「と、まぁ、彼女に銃の扱い方を教えながら村で農作業の手伝いをしながら暮らしていたんだ。だが―――」

 

「だが?」

 

 すると士郎とエレナの表情が曇る。

 

「……その村が、山賊に襲われたんだ」

 

「っ!」

 

「俺がエレナの銃の練習に付き合って山に登っている間の事だった。俺達が山を下りた時には、既に村は」

 

「……」

 

「酷いものだった。村人たちは皆殺しにされて、山賊たちは我が物顔で暴れていた。その中で、エレナの両親は……」

 

「そうか……」

 

 俺は何があったかを察して、何も言わなかった。

 

「俺とエレナは山賊を退けて、実質上逃げるように森の中を彷徨っていた」

 

「そしてユフィ達を見つけた、か」

 

「そういうことだ」

 

 

 

「まぁ、経緯としてはこんな感じだな」

 

「そうか」

 

「で、お前は何があったんだ?」

 

「話したいのは山々だが、ちょっとワケありでな」

 

 国外逃亡の為に砦一つを潰したなんてこんな公の場所で言えるわけがない。

 

「そうか。分かった」

 

 士郎は理解してくれて何も聞かなかった。

 

「それで、士郎。お前はこれからどうする?」

 

「どうするって言われてもなぁ」

 

 士郎は頭の後ろを掻いて静かに唸る。

 

 

「二人が良ければ、俺達と共に冒険者をやらないか?」

 

「冒険者か」

 

「あぁ。依頼ごとに報酬額は変わってくるが、やりがいはある。魔物の討伐とかもあるし、俺達にはピッタリじゃないか?」

 

「……」

 

 士郎は静かに唸り、エレナに視線を向ける。

 

 彼女は彼の視線に気付くと、縦に頷く。

 

「あぁ。俺達ならいいぜ。何より、お前からの頼みだ。断るわけ無いだろ」

 

「それじゃぁ」

 

「あぁ。宜しく頼むぜ」

 

 俺は右手を差し出して、士郎と握手を交わす。

 

(士郎の能力があると、今後銃のバリエーションが増えてくるな)

 

 士郎は俺と違って古今東西様々な武器を召喚できる。俺が出せないような銃火器も揃っているだろう。

 これはかなり効果が大きいだろう。

 

 それに、個人的に好きな銃があるから、出してもらうのも悪くない。

 

「シキ。君はどうする?」

 

「僕、ですか?」

 

「あぁ」

 

 俺は次にシキに声を掛ける。

 

「個人的には境遇が同じな以上、一緒に行動した方が都合がいいと思うが」

 

「……」

 

 シキは少しの間黙り込む。

 

「良いんでしょうか? 今の僕は、獣人ですよ」

 

「……」

 

 俺はエレナに視線を向けると、何が言いたいのか察してシキは苦笑いを浮かべる。

 

「それで、どうする?」

 

「僕は……」

 

 

 

「……僕でよければ、宜しくお願いします」

 

 シキは頭を下げる。

 

「あぁ。こちらこそ、宜しくな」

 

 俺は右手を差し出し、シキも右手を差し出して握手を交わす。

 

 

 こうして俺達は新たに転生者二人とエルフの少女一人の計三人が仲間に加わった。

 

 

 


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