異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第三十一話 カミングアウト

 

 

 

 

「……」

 

 射撃場を模した仮想空間で俺は89式小銃を構えてホロサイトを覗いて的に狙いを定めて引金を引き、銃声と反動が銃床を伝って右肩に押しかかり、排莢口(エジェクションポート)より硝煙を纏った空薬莢が排出されて床に落ち、澄んだ金属音を鳴らす。

 放たれた5.56mmの弾丸は一直線に狙った的の中央に命中して穴を空ける。

 

 間隔を空けながら引金を引いて弾丸が銃声と共に放たれて、的に次々と穴が開いていく。

 

 しばらく撃つとマガジンに入っている89式5.56mm普通弾30発を撃ち終えてボルトが一番後ろまで下がった状態で止まる。

 

 すぐにマガジンキャッチボタンを押して空になったマガジンを外して腰のベルトに提げているダンプポーチに放り込んでマガジンポーチから素早くマガジンを取り出して挿し込み、スライド止めを押してボルトストップを解くと射撃を再開する。

 

 数発撃った後89式小銃のセレクターを(単射)から(安全)に素早く切り替えて手放し、チェストリグに繋がっているベルトに吊るすとレッグホルスターからUSPを取り出して数発射撃を行う。

 左右を確認した後USPをレッグホルスターに収めて89式小銃を手にする。

 

 隣では同じようにフィリアが89式小銃を構えて数回射撃を行い、セレクターを(単射)から(安全)に素早く切り替えて手放し、チェストリグに繋がっているベルトに吊るすとレッグホルスターからUSPを取り出して数発射撃を行う。

 左右を確認した後USPをレッグホルスターに収めて89式小銃を手にする。

 

 その隣ではMSG90のスコープを覗いて遠くにある的に狙いを定めて引金を引くユフィに、5.56mm機関銃MINIMIを構えてドットサイトを覗きながら撃つリーンベル、7.62mm機関銃M240Bを派手に撃つセフィラの姿があった。

 

 

 89式装甲戦闘車の試験運用を兼ねた依頼で俺達はグリムベアーやベリルと言った魔物の討伐を終えていつもの様に組合に依頼達成の報告をして報酬を受け取り、夕食を取った。

 

 そして俺たちは宿に戻ると寝る前の訓練を行っていたのだ。

 

 

 しばらく射撃を行って辺り一面空薬莢が覆い尽くしている中、俺達は休憩に入っていた。

 

「……」

 

 胡坐を組んで床に座っている俺は会話を交わしているフィリア達を見ながら首の後ろを擦り、覚悟を決めて立ち上がってフィリア達の元へと歩く。

 

「みんな、ちょっといいか?」

 

 俺が声を掛けるとフィリア達が一斉に顔を向ける。

 

「どうしたの、キョウスケ?」

 

「……みんなに、話があるんだ」

 

「話? 何だ急に?」

 

「ちょっとな。この際色々とハッキリとさせておきたいからな」

 

 俺は彼女達の傍に座り込む。

 

 彼女達は俺の意図が理解できないのか、首を傾げる。

 

 

 

「みんなは、俺の事をどう思っている?」

 

「どうって……」

 

「急にそう言われましても」

 

 リーンベルは戸惑いの表情を浮かべながら視線を左右に動かす。

 

「私はとても勇敢で優しい方だと思っております。こうして皆様と居られるのも、団長のお陰ですわ」

 

 セフィラは微少を浮かべながらそう答える。

 

「そうね。キョウスケが居たから、私はこうして自由に居られて、みんなと一緒に居られる」

 

 フィリアはそう言うと、両手を交差させて自身の胸に置く。

 

「あー、その、何だ。そう言われるのは嬉しいんだが、俺が聞きたいのはな」

 

 ここまで評価が高いと俺自身恥ずかしいけど、嬉しい事はある。でも、聞きたいのはそれじゃなくてだな。

 

「みんなは、俺に対して何かしら疑問に思うことは無いのか?」

 

「疑問、か」

 

 ユフィは腕を組むと、ボソッと呟く。

 

「まぁ、無いと言ってしまえば、嘘になるな」

 

「そう、ね」

 

「はい」

 

「……」

 

 フィリア達は台に置いている銃火器を一瞥する。

 

「でも、どうしてそんな事を聞くの?」

 

「それは、これから話す事に関係しているからだ」

 

「……」

 

「みんなに伝えないといけない。俺の正体を」

 

 

 そして俺は彼女達に自身の経歴を伝えた。

 

 

 自分がこの世界とは異なった世界の人間であり、そこで一度死んでこの世界に転生した人間であると。

 

 そして転生させた神の事は伏せて、武器兵器の召喚能力について。

 

 

 

『……』

 

 その現実離れした事実を知らされた彼女達は唖然としていた。

 

「きょ、キョウスケ。今の話、本当なの?」

 

「あぁ。信じられないだろうが、全て事実だ」

 

「……」

 

「別の世界で死んで、この世界に転生……。とても信じられない話だが」

 

 ユフィは後ろを向いて台に置いているMSG90や89式小銃を見る。

 

「あれらを見てしまえば、信じるしかないだろう」

 

「……」

 

「キョウスケが居た世界の武器。確かにそれなら知らなくて当然ね」

 

「無い物を知って居るなんて無理な話ですからね」

 

 リーンベルは軽く頷く。

 

「だが、どうしてこの事を私達に教えたんだ?」

 

「そうですね。別に私達は団長のその能力については気にしていませんのに」

 

「……」

 

 彼女達の疑問に、俺は一間置いてから返事を返す。

 

「いずれは知られる事だ。なら、早い内に明かした方がいいだろうと思ってな」

 

「……」

 

「まぁ、そういうことだ。それを踏まえた上で、さっきの事を聞きたいんだ」

 

『……』

 

 彼女達は黙り込む。

 

(まぁ、無理も無いか)

 

 いきなり違う世界の人間で、その世界で命を落としてこの世界に転生したと言われても、簡単に信じろと言うのが無理な話だ。

 

 

「そんなの、関係無いわ」

 

 最初に口を開いたのはフィリアだった。

 

「例え私達とは異なる別の世界の人間だとしても、キョウスケはキョウスケよ」

 

「フィリア……」

 

「武器や兵器を召喚出来る魔法を使える。違いはそれだけよ」

 

「……」

 

「別に真実を知っても、私達の気持ちや貴方への感情は変わらないわ」

 

 フィリアがそう言うと他のみんなは頷いた。

 

「みんな」

 

 ここまで俺は信頼されていたんだな。

 

(なんだか色々と心配していた俺が馬鹿みたいだ)

 

 俺は気恥ずかしさを感じながらも気持ちを切り替えてフィリア達に向かい合うと、頭を下げる。

 

「改めてだが、これからもよろしく頼む」

 

「こちらこそ、宜しくお願いします」

 

 フィリアがみんなを代表してそう言うと、頭を下げて、ユフィ達も頭を下げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――♪

 

 

 ミッション『仲間との絆』をクリアしました。

 

 ・特別ポイントが7000追加されました。

 

 ・改造パーツが追加されました。

 

 ・スキル『教導』が追加されました。

 

 


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