異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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番外編01 輪廻転生先は異世界

 

 

 

 輪廻転生と言うのを知っていますか?

 

 昔から人間もそうだが、生き物の魂は死後別の存在として生まれ変わると言われている。よく人間には前世の記憶があると言われており、実際前世の記憶と思われる記憶を持つ人間は世界各地で確認されている。

 ある一件ではとある男性に殺された男性の記憶を持つ子供がその時の状況を口にして殺人事件を解決したり、大戦中に戦死した空軍のパイロットの記憶を持つ子供が居たりと、少なくとも事実だった件もある。

 

 まぁそれら全部が全部真実と言うわけではなく、ホラ吹きだってあるが。

 

 だが前世の記憶は大抵の場合は時間の経過と共に薄れていき、やがて消えて無くなるものだ。ましても、ラノベやアニメの様に、魂と記憶が残ったまま来世を迎えるなんて一例は全く確認されていない。

 

 

 

 でも、中には例外な一例もある事もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 小さく揺れる馬の牽く荷車に詰まれた荷物の中、仰向けになって後頭部に両手を組んで横になっている僕は雲がちらほらとある青空を眺めた。

 

「はぁ……」

 

 深くため息を付き、目を瞑る。

 

(それにしても、何でこうなったんだろう)

 

 僕は空を眺めながら内心呟き、今日に至るまでの出来事を思い出した。

 

 

 この世界における僕の名前は『シキ・クーゲルト』。前世地球においての僕の名前は『翔 アマミヤ』と言う名前だった。名前の感じから分かると思うけど、僕の父親は日系のアメリカ人だ。と言っても、実の父親じゃないんだけどね。

 

 何でも僕の母は僕がまだお腹の中に居る時に離婚して、その後シングルマザーとして僕を育てていた。そんな中、僕が4歳の時に今の父と知り合って5歳の時に結婚した。ちなみに名字を変えるまでは『天本 翔』と言う名前だった。

 

 母は離婚する前の事はあまり話してくれなかったけど、一度だけ僕には生き別れの兄が居ると聞かされた事があった。生きていれば大学生ぐらいだって言っていた。出来ればその生き別れの兄と会いたかったけど、今となっては叶わぬ夢だ。

 

 で、僕はミリオタである事以外は至って普通な高校生だった。まぁ僕がミリオタになったのは今の父親の影響が強いかな。

 

 父は結構なガンマニアで、母国アメリカの実家でも叔父が多くの実銃を持っており、小学校や中学校の頃から夏休みや冬休みの時期にはアメリカに行っては父と叔父と一緒に射撃場や砂漠で色んな銃を撃たせてもらった。中には大戦時中の小銃も撃たせてもらったのは嬉しかった。

 その影響もあって、僕は銃の魅力に大いに引かれた。

 

 まぁ母は僕が銃好きになるのに少し抵抗感があったみたいだけど。

 

 で、その事もあって僕は銃から派生して軍事関連のものが好きになっていって、まぁ結構なミリオタになったわけだ。

 

 その中でも中学の時の親友の女の子がドイツ系の武器兵器が好きなミリオタとあって、僕もドイツ系の武器兵器が好きになった。

 

 

 でも高校生活を過ごしていた時、当時僕に対して虐めを行って絡んでいたいじめっ子がいた。さすがに度の過ぎた虐めが何度もあると僕でも我慢の限界はある。

 かと言って喧嘩沙汰になるとお互い停学処分を受けて将来に響く事になる。それは避けたかったので、僕は頭を使っていじめっ子だけに罪を背負ってもらう事にした。

 

 僕はボイスレコーダーや隠しカメラを使っていじめっ子による虐めの決定的な証拠を手にしてこれを然るべき所に提出して、虐めに対して厳しくなった世の中もあっていじめっ子は見事に退学処分となった。ざまぁみろ。

 だが、その後の事を考慮していなかったのが、僕の運のツキだったのかもしれなかった。

 

 

 そして、その日は訪れた。

 

 家への帰路に付いた時、僕の前に現れたのは退学になったいじめっ子だった。そいつは退学にされたのを僕のせいだと逆恨み、金槌を手にして僕に襲い掛かってきた。

 僕は逃げようとしたが、その時に足が縺れて倒れてしまい、いじめっ子の持つ金槌が僕の頭に振り下ろされた。

 

 ソイツは何度も僕の頭を金槌で殴った。そんな中僕の意識は朦朧となり、やがて意識を失った。

 

 

 

 

 

 だが、目覚めるはずも無い中、僕の意識は目覚めて、視界は明るくなって行った。そして気付いた時には、僕は女性の胸の中に抱かれていた。

 そして僕は違和感を覚えて、偶然近くにある窓が視界に入り、そこに薄っすらと映る僕の姿は、姿が以前とは似ても似つかない姿となっていた。

 

 それは赤ん坊の姿であったのもあるが、それ以上に驚いたのは、僕の頭にはある筈もない、獣の耳が生えていたからだ。

 

 僕の目に映ったその姿に僕は驚きを隠せなかった。色々と突っ込みたかったけど、赤ん坊だから喋る事が出来なかった。

 

 だが、僕は認めないといけない。これが俗に言う異世界転生であり、僕が異世界で獣人として新しく人生をやり直す事になったと言う事を。

 

 

 

 それからはまぁ異世界とあって相応の生活が待っていた、なわけがなかった。

 

 僕が居たのはそれなりの規模を持つ村であり、その村に住む中年の夫婦に僕は生まれた、わけではなく拾われた。

 

 僕が拾われたその日は夜間に激しい嵐と雷雲が空を覆って雷を激しく鳴らしていた。その時極めて大きな雷が村の中央に落ちたそうだ。で、その落雷地点に赤ん坊だった僕が居たとのことだ。

 

 落雷の地点に赤ん坊が居るって、明らかに普通じゃないよね、これ。

 

 まぁその後は普通に成長して、5歳の頃から父の仕事の手伝いをしていた。普通このくらいの年の子なら途中で集中力が切れるかもしれないけど、中身は高校生だから、別に苦ではなかった。

 

 ちなみにその世界では冒険者はポピュラーな職であり、父もその冒険者だった。父から聞かされた話から、前世地球では見られない聞かれない職業に僕は冒険者に憧れた。

 

 んで、7歳ぐらいから父から冒険者時代に培った技術を伝授されてながらも仕事の手伝いをして、その間にこの世界について母から教わった。

 

 この世界では人間を含めて多種多様な種族が東西南北にある大きな大陸に暮らしており、魔法が普及している。

 まぁつまりラノベや漫画でよくある異世界物の異世界のようなところだということだ。

 

 あと科学力も発展し始めているけど、火薬の類はまだ無いらしい。魔法が発達した世界観なのかねぇ。

 

 

 でも、僕が10歳を迎えた年、村で流行り病が流行し、両親もその流行病に掛かってしまい、その後二人は亡くなってしまった。僕は獣人故か、村で唯一何の影響もなかった。

 流行病は小規模で尚且つ伝染性が低かった事もあって、すぐに収まった。

 

 その後僕は両親が遺したお金と村の手伝いで生計を立てつつ生活して、15歳を迎えた。

 

 この時父の仕事は弟に任される事になって、僕はその手伝いを含めて村の仕事を手伝う事になっていた。だが、僕と同い年ぐらいの男の子や女の子が居たので、僕が必ず居る必要がなくなっていた。

 

 ちなみにこの世界では15歳で成人として認められるので、僕は村を出て冒険者として働こうと考えていた。実際僕以外の何人かの同い年の男の子も村を出て街で出稼ぎに行こうとしていた。

 

 僕も街に行く為の資金と必要な品物を集めて、その年の中頃に準備を終えて村を出発した。

 

 

 んで、最初に到着した街で僕は冒険者として登録して、初の依頼をこなしたのだが……黒歴史確定な出来事があって、思い出したくない一件だったので、ここでは省略。

 まぁそんな事が遭ったので僕はその街を離れた。

 

 

 

 そして現在次の街に向かう為にその街に向かっている馬車を見つけて荷車に乗り合わせている。

 

 

(人生どんな事があるか分からないもんなんだな)

 

 僕は内心呟きながらため息を付く。

 

 いじめっ子に殺されて、気付けば獣人として異世界に輪廻転生を果たし、冒険者となった。ホント分からないもんだねぇ。

 

(いや、分からないのは、すぐ傍にあるんだけどね)

 

 僕は傍に置いてある布に包まれた物と、腰のベルトに提げてある物に手を触れる。

 

 これは僕が15歳を迎えた年のある日、家の掃除をしていて、その家の裏にある倉庫を掃除していたら、とある長い箱が見つかった。

 

 見るからに他の箱とは雰囲気が異なるその箱は僕がロックしている箇所に触れるとその部分に光が纏い、それが弾けた。

 

 そしてその箱を開けてみると、そこには明らかにこの世界には存在しない物が収まっていた。それを見た僕は驚きと興奮を覚えた。

 

 僕は村長に箱はどこで手に入れたかを聞くと、何でも箱は僕がこの村に捨てられた時一緒に置かれてあったそうだ。当時は施錠魔法が掛かっていて誰にも開けられなかったらしい。で、壊そうにも頑丈に作られていて壊れなかったそうだ。

 で、誰にも開けられないままその時に至るまで忘れ去られたらしい。

 

 中身を見た村人は誰もが珍しがった。まぁ当然この世界には存在しない物だからね。

 

 まぁこの世界じゃ代物の調達ができないからずっと使い続けられないが、僕には『錬金魔法』と呼ばれるこの世界ではかなり希少な魔法が使える。

 

 これは生まれた時に使える才能がなければ血反吐を吐く努力をしても使う事が出来ない魔法で、この世界では使える人はかなり少ないそうだ。

 その上、完全なものとなると、もっと少ない。

 

 僕はこの魔法を完全な形で使える。この魔法はイメージ力と記憶力が大事らしく、それの能力の高さ次第で質が違ってくる。

 僕の場合は前世の頃からイメージ力が強く、記憶力も一度覚えたら忘れる事はないので、完全な形でこの魔法を使えている。

 

 その上僕はレアスキル『内部把握能力』がある。名称は僕が付けたけど、このスキルは触れた物の内部構造を一瞬で把握する能力で、さっきの記憶能力もあって、錬金魔法による複製は瓜二つの代物を生み出せる。

 

 まぁ、良い事尽くしだけど、この魔法が使える代わり僕は普通の一般魔法が使えないデメリットがある。まぁこの世界で魔法が使えないと困るなんて事は無いけど。

 だが、この錬金魔法は過去に大いなる災いを呼び寄せたとして、世間には悪いイメージが植え付けられている。現に村の一部の人間からは嫌悪な視線で見られる事があった。まぁ、僕は気にしなかったけど。

 普通の魔法は使えないが、錬金魔法はとても応用が利く魔法で、それを応用して他の魔法モドキの事は出来る。

 

 話が逸れたけど、この錬金魔法のお陰であれを使い続けられる目処が立った訳で、武器として使っている。尤も冒険者としてその武器を使った事はまだ無いんだけど。

 

 

(でも、何でこれがこんな何の縁も無い世界に)

 

 これはこの世界には何の縁も無い代物だ。それ以前にこれに使われている技術事態が確立していない。これはそれすらすっ飛ばして存在している。

 

 これはホント謎が深まるばかりだ。

 

 

 

「おーい、お嬢ちゃん。街が見えてきたぞ」

 

 と、馬を操るおじさんが荷車に居る僕に声を掛ける。

 

「ですから、僕は女じゃなくて男です!」

 

 僕はバッと立ち上がって抗議の声を上げる。

 

「おぉすまんかったな、坊主!」

 

「ガハハ!!」とおじさんは笑う。

 

(うぅ! いっつもこれだ!! もうっ!!)

 

 僕は内心で悪態を付きながらも、荷車に載せられている鏡に映る自分の姿を見る。

 

 雪の様に白い銀髪のショートヘアーに二つの獣の耳が頭から生えている。ルビーの様な透き通った赤い瞳を持ち、整った顔つきをしている。お尻の上辺りから髪と同じ色のふさふさした毛の生えた尻尾が生えており、穴の開けたズボンから出している尻尾が自分の意志に従ってユラユラと揺れる。

 服装はこの世界だと一般的な極普通の服装を着ている。いや説明雑過ぎって言われても、これ以外に説明のしようが無い。強いて言うなら灰色の半袖の上着に黒で足首辺りが出ている裾の長さを持つズボンに靴と言った格好だ。

 一応僕の種族は獣人種の中の狼族らしい。なので耳と尻尾は犬じゃなくて狼だよ。

 

 まぁ誰もが見ても美形な容姿なのは一目瞭然だ。実際村や以前の街で声を掛ける人は多い。

 

 だが、問題はその美形が美少年としてではなく……美少女な容姿なのだ。

 

 誰がどう見ても美少女にしか見えない。自分自身ですら認めてしまっているほどに、美少女なのだ(大事なので二回ry

 で、その上身体つきが華奢なせいで余計に女の子にしか見えないという。

 

 少なくともこの人生で初見で男の子として認知されてもらった事は無い。村でもこの容姿のせいでちょっかいを出されたり、以前居た街でも女の子と勘違いして僕に声を掛ける男性冒険者が多かった。そして冒険者として初の依頼も発端はこの容姿のせいで……。

 

(うぅ……なんでこんな姿になったんだよぉ)

 

 正直この容姿が人生で一番の悩みだ。例えレアな魔法に優秀な技能に獣人だからこその優れた身体能力に、あれがあると言っても、これは……。

 

 

 

「―――っ!!」

 

「っ!?」

 

 すると突然馬の悲鳴が上がった直後に荷車が停車し、僕は前へと放り出されそうになるも、何とか踏ん張った。

 

「お、おい!? どうしたんだ!?」

 

 おじさんは慌てて馬を宥めようとしているが、馬は一向に落ち着きを戻そうとしない。

 

(何かに怯えている?)

 

 長年動物の世話をした事があり、獣人故なのか、動物の事はそこそこ判る。馬の怯え方が尋常じゃない。

 

「っ!」

 

 すると僕の獣人としての優れた耳がこっちに向かって来る足音と、葉っぱ同士が掠れる音を捉える。

 

 すぐに音のした方向に視線を向けると、道から離れたところにある森の中からゴブリンとオークと言った魔物が現れた。

 

「ゴブリンに、オーク」

 

「な、なんだと!?」

 

 僕がその二つの名前を口にするとおじさんは驚いた表情を浮かべる。

 

「何でこんな所にゴブリンとオークが!?」

 

 おじさんが驚くのも無理は無い。

 

 この辺りは街に近い場所だ。少なくともやつらがこんな所に現れることは考えられないだろう。だがそれはこちらの考えだ。向こうの考えと合致するわけがない。

 

「おじさんは荷車に隠れてて!」

 

「お、お嬢ちゃんはどうするんだ!?」

 

「あいつらを追い払います! 後僕は男です!」

 

 僕は布に包まれたそれを手にして荷車から降りると、馬車から離れた場所まで走って立ち止まりながら片膝を地面に着く。

 

(実戦だと初めてだけど、試し撃ちで何度も撃ったんだ)

 

 自分にそう言い聞かせながら右手に持つそれを覆う布を取っ払う。

 

 布が払われてその下から現れたのは、半光沢の漆黒の色をした物体だ。

 

 いくつ物パーツによって組み合わされ、上部に筒状の物体を持つそれはこの世界には存在しない物。その名前は『G3SG/1』である。

 

 西ドイツ初のアサルトライフルG3の中で、最も命中精度の高い個体を選抜して改装を施したのがこの銃だ。主に通常より長い銃床に専用のマウントベース、二脚を追加している。狙撃銃だが、運用や銃としての特性からすればマークスマンライフルの方が近いかもしれない。

 使用弾薬はG3から変わらず威力の高い7.62×51mmNATO弾を使用する。

 

 このG3SG/1が家の倉庫で見つかった箱の中にあったのだ。それを見つけた時、僕は戸惑いと興奮を覚えた。なにせ存在しないはずの物が手元にあるのだから。

 まぁその時は本物だとは思えなかったけど。

 

 その後僕はそのG3SG/1と一緒に入って居た物と一緒に山奥で試しに撃ってみたら、銃声と反動が来たもんだから、驚いた。そしてそれが本物であり、僕の魂に刻まれたアメリカで銃を撃った時の感覚と同じであると確認した。

 そして一緒にあった『Cz40B』も試し撃ちをして、それも本物であると確認した。ってか、Cz40Bってなんちゅうマイナーな銃を。

 

 銃弾やマガジンの問題は僕の錬金魔法の複製と内部把握能力を用いて数を増やす事が出来るので、村に居る間はそうして弾を複製して銃を撃っていた。

 

 

 僕はポケットからマガジンを取り出して前端を引っ掛けながら挿し込み、コッキングハンドルを引いて構えると、取り付けられたスコープの蓋を開けて覗く。

 

「……」

 

 スコープの倍率を調整して再度構えると、レティクルに何も知らずに近付いてくるゴブリンの頭を捉え、引金に指を掛けてゆっくりと引き絞る。

 

 

 ――――ッ!!

 

 

 辺り一面に発せられた銃声と共に放たれた弾丸は一直線にゴブリンの頭へと飛んでいき、弾丸はゴブリンの頭を貫いて後頭部が弾け飛んで血と中身を撒き散らす。

 

「……」

 

 僕はすぐに隣で仲間が聞いたことの無い銃声と共に死んだことに驚いてオークと共に足を止めたゴブリンに狙いを定めて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸が頭を撃ち抜く。

 続けて隣のオークに狙いを定めて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸がオークの頭を撃ち抜く。

 

 狙いを定めては引金を引いてを、それを繰り返してゴブリンとオークを次々と仕留めていく。

 

 そしてゴブリンとオークは自分達の不利を悟ってか、武器を捨てて森の中に逃げようとしていた。

 

(逃がさない!)

 

 僕は逃げようとしているオークとゴブリンの後頭部を狙っては引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸が次々とゴブリンとオークの頭を撃ち抜いていく。

 

 

「……」

 

 銃声が周囲に木霊す中、僕はG3SG/1を構えてやつらの増援が来ないか警戒する。

 

 

 しばらく待ったが、やつらは戻って来なかった。

 

「……」

 

 僕は息を吐いてコッキングハンドルを引いてボルトを回して溝に引っ掛け、マガジンキャッチャーを押しながら空になったマガジンを外して腰に提げているダンプポーチ代わりの麻袋に放り込み、新しいマガジンをポケットから取り出してマガジンの前端を引っ掛けながら挿し込み、コッキングハンドルを上から叩いてボルトを戻し、セレクターを動かしてセーフティーを掛ける。

 G3SG/1に掛けているスリングに腕を通して背中に回し、周囲に落ちた空薬莢を拾って麻袋に仕舞うと馬車へと戻る。

 

「す、すげぇ」

 

 馬車の荷車からおじさんが顔を出して僕を驚いた表情を浮かべて見ていた。

 

「ぼ、坊主。お前さん、一体何者なんだ?」

 

「ただの冒険者の駆け出しですよ」

 

 僕はそう言って荷車に乗り込む。

 

 おじさんは怪訝な表情を浮かべるも、馬を落ち着かせてから馬車を牽かせて歩き出させた。

 

(こりゃ噂はすぐに広がりそう)

 

 仕方が無いとはいえど、あれだけしたらこのおじさんがすぐに噂を広めるんだろうな。

 

 僕はそんな事を思いながら、出発した馬車に揺られながら次の街であるスレイプニルに着くのを待った。

 

 

 

 

 




次回から本編に戻ります。

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