全速力で走る16式機動戦闘車は要塞のある山脈を下りて森の中を駆け抜け、日が傾き空がオレンジ色に染まりつつある中、国境線から離れた森の中にある開けた場所で停車すると、エンジンが停止する。
「ついに、辿り着きましたわね」
「あぁ」
16式機動戦闘車から降りたセフィラはタイヤにもたれかかっている俺に声を掛け、俺も短く返事を返す。
「ジッとしていてくださいね」
セフィラは俺の頭に両手を翳して青い光が発せられ、傷口を覆うと少しずつ傷が塞がっていくのを感じて、次第に痛みが引いていく。
「キョウスケ! 大丈夫なの!?」
操縦席から降りたフィリアが俺の元に駆け寄ると、頭から血を流している俺の姿を見て顔色が青くなる。
「あぁ、血が!?」
「大丈夫、ってわけじゃ無いな」
俺はまだ頭からズキズキとする痛みに苦笑いを浮かべながら答える。
「だが、平気だよ」
「そう。良かった」
フィリアは安堵の息を吐く。
(とは言えど、さっきは完全に油断してしまったな)
要塞を突破できたと言う安心感から完全に油断してしまい、あの状況を生み出してしまった。慢心と油断だな。
これからは最後まで終わるまで油断しないようにしないとな。
「まさか、本当に出来ちゃったんですね」
「そう、だな。キョウスケ殿が居なければ、私達だけでこんな事は成し得なかっただろうな」
リーンベルは未だに信じられないような表情を浮かべ、ユフィも同じ表情を浮かべてオレンジ色に染まりつつある空を見ていた。
「キョウスケ殿。本当に、本当に、感謝する。私達だけでは、どうする事もできなかった」
ユフィは俺に向かって深々と頭を下げる。
「気にするな。それに、俺も感謝する。俺だけでも、きっと成功はしなかっただろう」
いくら強力な現代兵器があると言っても、俺だけでフィリアを連れてあの要塞を突破する事は出来なかっただろう。みんなの協力があって出来た事だ。
「っ?」
すると背中に何かが触れて俺は後ろを首を回して振り返ると、フィリアが俺の背中に顔を当てていた。
「フィリア?」
「―――」
「ん?」
「……私、自由に、なれたのよね」
震える声でフィリアが問い掛ける。
「……」
俺は後ろに振り返ってフィリアに向き合うと、彼女の目には涙が浮かんでた。
「あぁ。君はもう自由だ。そして、これから、ずっとな」
俺が後ろを見ると、ユフィ達は笑みを浮かべて縦に頷く。
「っ!」
フィリアは抑えていた感情が溢れ出して、顔を俯かせて涙を流す。
「み、みんな、ありが、とう……!」
震えながらも彼女は声を搾り出すように発する。
「……」
俺は震えているフィリアの頭を優しく撫でる。
「それで、ここからどう動く?」
フィリアが大分落ち着いたところで俺達は今後の事を話し合う事にした。
「あぁ。まずは国境線から離れないといけない。いくらエストランテの領内と言っても、やつらの手の届く範囲だからな」
「だろうな。だが、この国の事は知っているのか?」
「あぁ。以前にこの国に来て見て回った事があるから、多少は知っている」
「そうか。それなら、なるべくリーデントとの国境線から大きく離れた場所にある街を知っているか?」
「それなら、スレイプニルがある。あそこはこの国の中でも3番目に大きな街だ。3番目と言っても、かなり発展している」
「そいつはちょうどいい」
ある程度街が発展しているなら、生活に困る事はない。
「でも、何で街に?」
「何でって、そりゃ冒険者として活動する拠点として、ちょうどいいからだ」
「冒険者として、ですか?」
リーンベルは首を傾げる。
「あぁ。みんなも、一緒に冒険者をやらないか?」
「キョウスケ様と、冒険者をですか」
「あぁ。将来的には、ギルドを立てようと思っている」
冒険者はギルドと呼ばれる団体を設立することが出来る。設立すれば組合から色々とソロでは受けれない依頼を受けることが可能となったり、知名度が上がれば依頼主から指名されることもある。
「最初は君達と一緒にな。どうだ?」
『……』
みんなはそれぞれ顔を合わせると、互いに頷き合い、フィリアが俺の顔を見て頷いた。
「うん。キョウスケとなら、一緒に」
「私も、それで構わない。むしろ、こちらから願おうと思いたかったぐらいだ」
「私もです。キョウスケ様に恩を返す為にも、付いて行きます。あっ、でもギルドを立てるなら、これから団長って呼んだ方がいいんでしょうか?」
「そうですわね。将来的にはそう呼ぶかもしれませんが、今はそうではないでしょう」
「そうか」
彼女達の答えを聞いて俺は軽く頷く。
「じゃぁ、今後の方針は決まったな」
「えぇ」
「あぁ」
「はい!」
「はい」
返事を聞いてから俺が16式機動戦闘車に向かって車体に登ると、彼女達も後を付いて行って16式機動戦闘車に乗り込む。
「キョウスケ。運転は私がするから」
操縦席のハッチを開ける俺にフィリアが心配そうな表情を浮かべて声を掛ける。
「大丈夫だ。初めての運転で疲れただろう」
「でも、怪我が」
「傷は塞がっているし、痛みも引いてる」
セフィラの治療魔法のお陰で傷は塞がっているから、無茶をしない限り傷が開く事はない。
まぁ流れ出た血を拭っていないので見た目は結構グロイが。
「……」
「分かったよ。少ししたら、交代してくれるか?」
「っ! えぇ! 分かったわ!」
心配の色が取れない彼女に俺はそう提案すると、彼女の表情が明るくなって納得してくれて、砲塔を登ってキューポラから車内へと入る。
「さぁ、行こうか」
俺はエンジンを起動させると16式機動戦闘車が搭載するディーゼルエンジンが唸りを上げ、アクセルを踏むと前へと前進して森の中を進んで行った。
―――――ッ♪
特殊ミッション『守るべき者』をクリアしました。
特定条件『倒すべき相手』を満たしました。
・レベルが33に上がりました。
・スキル『シーフ・オブ・ウェポンパーツ』『ジャイアントキリング』が追加されました。
・スキル『五感強化能力』がレベル2に強化されました。同時に二箇所の感覚を強化可能となりました。
・スキル『大和魂』がレベル2に強化されました。発動条件が緩和され発動しやすくなりました。
・スキル『勘』がレベル2に強化されました。発動範囲が拡大化。発動条件が緩和されました。
・身体能力が7倍から10倍へと向上しました。ならびに身体能力の調整も可能となりました。
・特別ポイントが2600pt追加されました。ならびに新たな改造部品及び改造項目がアンロックされました。
・武器兵器が5つランダムでアンロックされました。それぞれの項目の横にNEWと点滅して表示されています。
・『装軌装甲車』の項目がアンロックされました。
ようやくプロローグが終わったって感じになりましたね。いやぁ予想以上に長くなりました。
次回番外編を何話か挟んで、新章スタートとなります。