異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第二十七話 要塞突破作戦

 

 

 

『……』

 

 ガタガタと揺れる中俺は狭いそこでユフィと共にその時を待つ。

 

「それにしても、ここは狭いな」

 

「仕方無い。元々これらを置いておくのが主な目的の場所だからな。それに素早く降りるとなると、ここしかない」

 

「そうは言っても、こんな物騒な物の傍に居るのは、落ち着かないぞ」

 

 そう文句を口にしながら隣にある物体を見る姿を見て俺は苦笑いを浮かべる。

 

 俺とユフィが居るのは多目的スペースだが、基本そこは弾薬庫となっており、俺達が座れるだけのスペースを確保している以外は砲弾がぎっしりと詰められている。

 

「まぁ、何かあったら俺達は確実に死ねるな」

 

「……」

 

 ユフィは息を呑みながら、右太股につけているレッグホルスターよりUSPを取り出し、スライドを引いて手放して初弾を送り込み、レッグホルスターに戻す。

 次に傍に置いているMSG90を手にし、コッキングハンドルを引いてボルトを回して溝に引っ掛け、傍に置いているマガジンを手にして前端を引っ掛けながら挿し込み、コッキングハンドルを叩いてボルトを戻して初弾を薬室に送り込む。

 

 俺もレッグホルスターよりUSP(カスタム)を取り出してスライドを引いて手放して初弾を送り込んでからレッグホルスターに戻す。

 次に89式小銃を手にしてマガジンをマガジンポーチから取り出して挿し込み、コッキングハンドルを引いて初弾を薬室に送り込む。

 

『キョウスケ、ユフィ。そろそろ要塞に着くわ』

 

「分かった」

 

 耳に付けている通信機からフィリアの声がして返事を返す。

 

「いよいよ、だな」

 

「あぁ。案内は頼むぞ」

 

「任せろ」

 

 ユフィと言葉を交わしてから俺は狭いスペースを移動して戦闘室に顔を出す。

 

「セフィラ。弾は榴弾を主に装填してくれ。俺達が出た後は機関銃を主に使い、たまにリーンベルに撃たせる為に榴弾を込めろ」

 

「了解しました」

 

「リーンベル。砲弾が装填されていない時は同軸機銃か砲塔上のキャリバー(ブローニングM2重機関銃)を使え」

 

「分かりました」

 

「フィリアは常にこいつを動かしてくれ。間違っても、裂け目に落ちるなよ」

 

『分かっているわ』

 

 運転席に居るフィリアに伝えてから俺は再び多目的スペースに戻る。

 

 

 さて、そろそろ説明すべきだろう。俺達が今乗っているのはまるで装甲車に戦車の砲塔と主砲を載せたかのような形状をした『16式機動戦闘車』と呼ばれる、陸上自衛隊で採用された最新鋭の車輌だ。

 まるで96式装輪装甲車の車体にレオパルド2A6の砲塔に似た形状の砲塔を載せたような姿をしているそれは国産の105mm砲を採用しており、諸外国の似たような構造をしている装甲車の砲と異なり、この16式戦闘機動車の砲はフルスペックの戦車砲を搭載している。なので74式戦車の主砲の砲弾と共有化が出来る。しかもこの16式機動戦闘車は似た構造の装甲車と違い、なんと反動を受け止めるのが難しい横向きでの行進間射撃を行う事が出来ると、キチガイ染みた性能を持っている。

 たまに日本は度肝抜く物を作るよな。

 

 

 緩やかの傾斜のある平らな道を16式機動戦闘車が走り、トリスタ要塞の門が見えてくる。恐らく向こうはこちらの存在に気付いているはずだ。

 

 セフィラは弾薬庫より榴弾を軽々と取り出すと戦車砲の薬室に押し込み、砲尾を閉じる。

 

「……」

 

 リーンベルはモニターを覗き主砲を門の扉に向ける。

 

『今よ!』

 

「っ!」

 

 フィリアの合図と共にリーンベルは引金を引くと、異世界で初めて戦車砲が吠えた。硝煙を纏った空薬莢が排出される中、放たれた砲弾は門に直撃して爆発し、門の前で警護していた騎士二人が爆風で吹き飛ばされ、破片を身体中に受けて絶命する。

 セフィラはすぐに2発目の榴弾を装填し、リーンベルはすぐに引金を引いて榴弾を放つ。榴弾は破壊された門に命中して爆発し、扉は完全に吹き飛んだ。

 リーンベルはすぐに砲塔を180°旋回させて主砲を真後ろに向け、その間にセフィラが榴弾を装填する。

 

 フィリアはアクセルを踏み込み、16式機動戦闘車の速度を上げて走らせ、壊れた門に突っ込ませて要塞に侵入する。

 

 中では先ほどの砲撃に騎士たちが慌てふためいていたが、16式機動戦闘車が現れたことで更に混乱していた。

 

 リーンベルは砲塔を旋回させつつ7.62mm機関銃M240Bに変更した同軸機銃を放ち、騎士達を牽制する。そして主砲を正面に向けると建物にあるトンネルを閉じている扉に向けて引金を引き、榴弾を放つ。放たれた榴弾は扉に直撃して爆発し、扉を粉々に粉砕する。

 

 そのまま建物にあるトンネルに突っ込み、その途中で停車する。

 

「いくぞ!」

 

 俺は扉を開けて16式戦闘機動車の車体後部から降りるとすぐに89式小銃を構えて周囲を警戒し、続けてユフィが降りてきてMSG90を構える。

 

「フィリア。思う存分暴れて来い!」

 

『分かったわ!』

 

 16式機動戦闘車は搭載しているディーゼルエンジンを唸らせて走らせる。

 

「こっちだ!」

 

 ユフィはトンネル内にある扉に向かって開け、俺が先に入るとユフィが後に続いて扉を閉める。

 

 

 

 恭祐達が別行動を取った後、フィリアは16式機動戦闘車を前進させて閉められていないトンネルから出す。

 

 リーンベルは建物に向けて砲塔を旋回させて砲身を上げ、引金を引く。轟音と衝撃波と共に榴弾が放たれて建物に命中して爆発を起こす。

 ちなみにその建物にはアレンが居て、出てきたところに榴弾が彼の居る階の下の部屋に命中して爆発を起こしていた。

 

「セフィラ! リーンベル! 相手の視線をこっちに向けさせる為に派手に暴れるわよ!」

 

『了解!』

 

 彼女の指示に二人は返事を返し、セフィラは榴弾を装填して砲尾が閉じるのを確認してからわざわざ車長用のハッチを開けて上半身を出し、備え付けられている12.7mm重機関銃M2のコッキングハンドルを二回引き、トリガーを押して銃撃を始める。

 同じくリーンベルも同軸機銃を放ってクロスボウを持つ騎士を排除する。

 

 フィリアはブレーキを踏んで停車させると、ギアをバックに入れて16式機動戦闘車を後退させる。その間セフィラは12.7mm重機関銃M2を撃ちながらフィリアに後方の情報を伝えて衝突を回避させる。

 

 

 

 扉を開けた俺は隙間から敵が居ないのを確認して扉を開けて89式小銃を構えて周囲を警戒し、その間にユフィが出てきて扉を閉め、俺が見ている方向とは反対側をMSG90を構えて警戒する。

 

「右に曲がった先に橋を繋いでいる鎖の巻き上げ機を設置している部屋がある」

 

「そうか。じゃぁ、さっさと済ませるぞ」

 

「あぁ」

 

 周囲を警戒しつつ通路を進み、曲がり角で止まり角の陰からこっそりと向こうを覗く。

 

 そこには騎士が数人ほど警戒しており、外の様子を見ていた。

 

「どうだ?」

 

「騎士が何人も居る。こりゃどっかに行くのを待っている暇は無いな」

 

「そうか」

 

 ユフィは気を引き締めるように深呼吸をする。

 

「こいつを使った後、一気に行くぞ」

 

「分かった」

 

 俺はチェストリグに下げているM26破片手榴弾を手にしながらユフィに伝えると、彼女は頷く。

 

「……」

 

 89式小銃をスリングで吊るして右手に持ち替えると、安全レバーを押さえながら左手で安全ピンを抜き、もう一度角の陰からこっそりと覗いて騎士の位置を確認する。それから指で安全レバーを弾いて角の陰に隠れながらM26破片手榴弾を投げ込み、角の陰に隠れる。

 

 直後にM26破裂手榴弾が爆発し、同時に生々しい音と共に悲鳴が上がる。

 

「行くぞ!!」

 

 俺とユフィは同時に角の陰から跳び出し、それぞれの得物を構える。

 

 目の前には手榴弾の爆発によって飛散した破片で足が吹き飛んで床でもだえ苦しむ騎士が居たが、中には血だらけになりながらもまだ立っているやつもいた。

 

(恨むなよ!)

 

「何だ貴s―――」

 

 騎士が言い終える前に俺が引金を引き、銃声と共に放たれた弾は騎士の頭を撃ち貫き、その場に倒れる。

 

 続けてユフィもMSG90の引金を引き、89式小銃より大きな銃声と共に弾が放たれ、剣を抜こうとした騎士の頭を大口径の弾が貫き、後頭部で小さく爆発が起きて後ろに倒れる。

 

「ひっ!?」

 

 突然の事に生き残った騎士は逃げ出そうとするが、俺はすぐさま狙いをつけて引金を引き、銃声と共に放たれた弾は騎士の後頭部へと吸い込まれ、そのまま両目の間から弾が突き抜けて命を刈り取った。

 

 一瞬、ほんの一瞬で立っていた騎士は全滅し、まだ息があり倒れている騎士に俺とユフィは頭と胸に一発ずつ銃弾を撃ち込んで確実に仕留める。

 

「……」

 

 俺は余計な事を考えずに恐怖の色に染まった表情を浮かべて命乞いをしながら後ずさりをする騎士に89式小銃を向けて引金を引き、騎士の額を撃ち抜く。

 隣でもユフィが左手にMSG90を持って右手にUSPを持ち、一人一人頭を撃ち抜く。

 

「……終わったな」

 

「あぁ」

 

 俺が呟くと、ユフィは短く返した。

 

「だが、さっきの銃声でここに騎士達が来るぞ」

 

「分かっている。手早く済ませる」

 

 俺は扉に向き直ると、思い切って蹴りを入れて扉を破壊し、中に入る。

 

「こいつか」

 

 部屋に入るとそこには巨大な鎖の巻き上げ機が2基部屋の左右に配置されており、鎖を通す穴からは上げられた状態の橋が見えた。

 

「しかし、どうやってこれを破壊するつもりだ? 16式機動戦闘車の主砲で吹き飛ばした方が」

 

「いや、それより確実性のある代物だ。尤も―――」

 

 俺はそう言いながらメニュー画面の召喚項目より特殊な代物の項目を開き、それらを数量召喚する。

 

「こいつの破壊力はあるが、いかんせどれだけ威力があるのかが分からないのが欠点でな」

 

「なんだ、それは?」

 

 それを見たユフィが疑問の声を漏らす。

 

 まぁ見た感じ四角い物に糸状の物体がいくつもあり、それに繋がる別の四角い物体がくっ付いた何かだからな。

 

「こいつはC4と呼ばれる爆薬だ。それぞれ1kgある」

 

「シーフォー? それに、バクヤク?」

 

 初めて聞く単語にユフィは疑問の声を漏らす。そういや火薬の類がこの世界にはまだ無かったんだっけ。

 

 C4とは映画やゲームでは有名なプラスチック爆弾で、威力のある爆薬で知られる。粘土の様な軟らかさがあるので色んな形にしたり固形爆弾では設置が難しい場所に使用できる爆薬だ。更に安定性が非常に高く、強い衝撃を与えても爆発せず、火を付けてもただ燃えるだけで、確実に爆破させるには起爆装置と雷管が必要となる。

 ちなみにC4は甘い香りがして、甘い味がすると言われるが、主成分に毒性があるので中毒症状を起こしてしまう。実際ベトナム戦争では米軍が、日本では陸上自衛隊で訓練にて教官がC4を訓練生に舐めさせて24人を病院送りにしたという事が起きている。

 

「話は後だ。ともかくこれを左右に3つずつ貼り付けてくれ」

 

 つまり片方だけでC4を3kg使用しているのだ。ちょっと多すぎかもしれないが、鎖の太さと大きさからもしもの事があるので、多すぎなぐらいがちょうどいい。

 

「わ、分かった」

 

 俺の説明を聞いたユフィはすぐにC4を手にして鎖に貼り付ける。

 

「貼り終えたぞ」

 

「よし。すぐに逃げるぞ。こいつは威力があるから遠くに逃げないと巻き込まれる」

 

 そう言って俺とユフィは部屋の外に出て通路を走る。

 

「フィリア! 仕掛けを設置した。今から言う場所にヒトロクを来させてくれ!」

 

『分かったわ!』

 

 フィリアに通信を入れて俺とユフィはその場所に向かう。

 

 だが曲がり角を曲がった時、先ほどの騒ぎに駆けつけようとした騎士達と鉢合わせする。

 

『っ!』

 

 俺は向かって来る騎士を銃床で殴りつけて床に倒すと、素早く89式小銃を構えてセレクターを(単射)から(3点バースト)に切り替えて引金を引き、弾を3発連続で放つ。

 放たれた弾は騎士達の身体を撃ち抜いて後ろに倒れる。

 

 俺の後ろでユフィがMSG90を向けて引金を連続して引いて騎士達の胸を撃ち抜く。

 

 放たれた銃弾を受けた騎士達は次々と倒れていくが、中には銃弾を受けてもこちらに向かって来る騎士も居たが、ユフィのMSG90が放った弾が頭を撃ち抜いて後ろに倒れさせる。

 

「……」

 

 ちょうどマガジンに入っていた弾を撃ち切ってボルトが開いた状態で止まり、鉢合わせした騎士達は全滅した。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ」

 

 俺は息を止めていたとあって、呼吸が少し荒くなっていたが、次第に落ち着いてくる。

 

「……」

 

 隣のユフィも呼吸が荒れていた。

 

「ユフィ。大丈夫か?」

 

「あ、あぁ。大丈夫、とは言い切れんな。だが、私は戦える」

 

 俺が問い掛けるとユフィは若干疲れ切った様な表情を浮かべるも返事を返した。と言っても、身体的な疲れではなく、精神的な疲れだろう。まぁそれは俺も同じだがな。

 何せ目的の為、自身を守る為とは言えど、多くの人間を殺して気分が良くなる筈が無い。その上血の臭いが精神的に来る。少しでも気を緩めたら、呑まれそうだ。

 

 お互いに大丈夫かどうかを確認し、俺は空になったマガジンを手にしながらマガジンキャッチャーを押して外し、腰のベルトに提げているダンプポーチに放り込んでマガジンポーチからマガジンを取り出して挿し込み、ボルトストップを解く。

 ユフィもボルトを引いて回してから溝に引っ掛け、マガジンキャッチャーを押しながらマガジンを外して腰に提げているダンプポーチに放り込み、マガジンポーチからマガジンを取り出して前端を引っ掛けながら差し込むみ、コッキングハンドルを叩いてボルトを戻す。

 

「急ごう」

 

「あぁ」

 

 マガジンを交換し終えて俺達は先に進む。

 

 


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