異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第十一話 ゴブリンとかの特殊な事情のある生物のこの習性ってお決まりのパターンなのかねぇ

 

 

 

 俺が冒険者になって早くも3日が経過した。

 

 

 

 

 一定の間隔で発砲音が三回ずつ森の中に響き渡り、歩いていたゴブリン達を蜂の巣にしていく。

 

「……」 

 

 突然仲間が殺されて戸惑うゴブリンに向けて手にしている武器を向けて取り付けられている照準眼鏡を覗いて狙いを定めて指切り引金を引き、3点バーストの様に3発ずつの射撃を行ってゴブリンの胴体を蜂の巣にする。それと同時にマガジン内の弾が無くなる。

 空になったマガジンを抜き取り近くに置いているマガジンを挿し込み、コッキングハンドルを引いて射撃を再開する。

 

 俺が使っているのは『九九式軽機関銃』と呼ばれる、大日本帝国陸軍で採用された軽機関銃だ。

 

 なぜ5.56mm軽機関銃MINIMIやM240と言った現代機関銃を使わず旧式の軽機関銃を使っているのかと言うと、威力を確かめたかったからだ。

 

 旧式と言ってもこの世界では十分な威力を持っているだろうが、どこまで通じるかは分からない。まぁ九九式軽機関銃で使われている九九式普通実包の口径は7.7mmなので、威力自体は申し分ないだろう。実際ゴブリンの身体を容易く撃ち抜いている。

 だが、小口径弾を使う三八式歩兵銃や九六式軽機関銃は正直どこまで通じるか分からん。

 

 まぁぶっちゃけ言うと、性能テストはついでで、実際はただ単に使ってみたかっただけなんだけどな。旧日本軍の武器兵器は結構好きだからな。特に戦艦とか、戦艦とか……

 

 

「……」

 

 しばらくして前方にゴブリンがいないのを確認してから左手で九九式軽機関銃のキャリングハンドルを持って立ち上がり、身構えて周囲を警戒しつつ前進する。

 

 射殺したゴブリンの死骸が7体が地面に倒れており、九九式軽機関銃の先端で何回か突いてみるも反応は無い。

 

 周囲を警戒しつつ九九式軽機関銃の二脚を立てて地面に置き、64式銃剣を鞘から抜いてゴブリンの傍にしゃがみ込んで耳を切り落とす。

 

 

 今回の依頼はゴブリンの討伐だ。依頼主はとある村の村長で、村の周囲にゴブリンが出没して村人に襲い掛かっては被害を出しているとのことだ。幸いまだ死者は出ていないが、このままだと犠牲者が出るかもしれないと依頼書にはあったが、俺が到着した時点では2日前に村の女性が3,4人攫われていた。

 なぜ女性が攫われるかと言うと、ゴブリンと言う種族は雄しか存在しない。当然繁殖にはごく一部の生物を除いて雌雄の対が必要不可欠だ。そんな雄しか存在しない種族が繁殖するにはどうすればいい? まぁ簡単な話、多種族の雌に自分達の種を埋め込んで実らせると言う、傍迷惑なやり方で数を増やしている。

 

 村長は数を指定してこなかったが、可能なら多くのゴブリンを排除して欲しいとの事だ。村に到着して村長よりもし住処を見つけてそこに攫われた女性達が居れば最優先で助け出して欲しいとのことだ。

 

 

 7体から耳を切り落として腰に提げている麻袋に入れてから俺は九九式軽機関銃を手にして抱え上げ、周囲を見回す。

 

「……」 

 

 耳を済ませていると木々の揺れる音が届き、俺は64式銃剣を鞘に収めて音のした方へと身体を向ける。

 

 視線の先には俺に襲い掛かろうとしていたゴブリンが茂みから5体走って出てきた。不意打ちをしようとしたが気づかれて普通に襲い掛かることにしたのだろう。

 

 俺は九九式軽機関銃を構えて指切りで3点バーストのように射撃をしてゴブリンの頭や左胸などの急所に命中させて仕留める。

 

 2,3頭は左胸を撃たれて動きを止めるも、倒れずに尚こちらに向かって来る。

 

 俺は慌てずに更に弾を撃ち込んで確実に仕留めた。

 

「……」

 

 警戒しながらゆっくりと近付き、ゴブリンを一頭一頭生死を調べる。その内一頭だけまだ息があった。血を吐き出し倒れている周囲を赤く染めている所からそう長く持たないだろうが、頭に狙いを定めて引金を引き、銃声と共に放たれた弾はゴブリンの頭を撃ち抜いて辺りに中身と血を撒き散らして息絶える。

 

「……」

 

 マガジンキャッチャーを押してマガジンを外し、マガジンポーチより新しいマガジンを取り出して九九式軽機関銃に挿し込み、コッキングハンドルを引いて薬室に初弾を送り込む。

 

「さてと」

 

 射殺したゴブリンに近付き鞘から64式銃剣を抜こうとした直後、後ろで倒れていたゴブリンが立ち上がって森の中へと逃げていく。

 

(まだ生きていたのか!)

 

 俺は逃げたゴブリンの後を追って森へと入る。

 

 

 

 ゴブリンの後を追って森の中に入り、しばらく追跡していたら洞穴を見つける。その洞穴にへとゴブリンから流れ落ちた血が点々と続いていた。

 

「この中に逃げたか」

 

 洞穴に近付いて中を見るも薄暗く、奥に至ってはほぼ真っ暗だ。

 

(ライトをつけるとすぐにばれそうだな)

 

 もし奥で待ち構えているとなると、逆に不意打ちを受ける可能性があるな。窮鼠猫を噛むと言う事がある通り、ゴブリンは弱っても油断できない魔物だ。

 

(それに、こいつじゃもしかしたらきついかもしれんな)

 

 性能は申し分ないが、マガジン一つ分の撃てる数は決して多くない。中で多くのゴブリンが待ち伏せていると倒し切る前に弾が切れる可能性がある。

 

 少し考えてから俺はメニュー画面を開いて装備項目から二つの装備品を出し、九九式軽機関銃を収納する。

 

 一つは『JGVS-V3』と呼ばれる微光暗視眼鏡で、二つは『5.56mm機関銃MINIMI』と呼ばれる軽機関銃だ。

 

 個人用暗視装置JGVA-V8にしようか悩んだが、辺りが真っ暗の中で洞穴に入るわけじゃないので、V3でも十分だ。ただV3は88式鉄帽に取り付けられるV8と違って顔面に装着する方式なので88式鉄帽を一旦脱がなければならない手間があるのが難点である。

 

 5.56mm機関銃MINIMIは日本がベルギーのFNハースタル社のミニミ軽機関銃をライセンス生産して自衛隊で採用された軽機関銃だ。5.56×45mmNATO弾をベルトリンクで繋いだ弾帯の他にM4カービンや89式小銃で使用されるSTANAGマガジンも使用できる。

 

 二脚を立てて地面に置かれている5.56mm機関銃MINIMIのコッキングハンドルを引いてレシーバー上部のフィード・カバーを開き、取り付けられたボックスマガジンから弾帯を取り出してレシーバーにセットし、フィード・カバーを閉じる。

 それから88式鉄帽の顎紐を外して脱ぎ、V3を装着して脱いだ88式鉄帽を腰に提げ、V3を起動させて5.56mm機関銃MINIMIを構え洞穴へとゆっくりと歩みを進める。

 

 

 周りが暗くなっていく中俺の視界は外ほどの明るさではないが、分かりやすく見えるぐらいに明るさがV3のお陰で確保出来ており、ほぼ問題なく洞穴の奥へと進めた。

 

「ん?」

 

 少し進むと、倒れているゴブリンの姿を見つける。恐らく追いかけていたゴブリンだろう。

 

 近付いて数回身体を揺すってみるも、反応は無かった。

 

(奥に辿り着けずに、力尽きたのか)

 

 まぁ、お陰で警戒されていないようだし、俺としては都合がよかった。

 

 

 

 それから更に奥へと進むと、徐々に明かりが見え出してきた。

 

(何かが居るな)

 

 何となくそんな感じがして明かりがある奥へと歩みを進めると、曲がり角の向こうから出ている明かりが見えた。

 

「……」

 

 曲がり角まで進んでV3の電源を切って額に上げ、曲がり角からその先をこっそりと覗き込む。

 

 曲がり角の奥が洞穴の最深部らしく、天井は低いがそこそこ広い空間があった。そこがゴブリン達の寝床であるらしく、藁や草、葉っぱと言った物が地面に敷かれておりそこに何頭かのゴブリンが中央の焚き火を囲んで何らかの生き物の肉を食している。

 よく見るとその奥の壁に出来た窪みに木の枝で作った格子があり、その中に怯えた表情を浮かべる女性二人がお互いを慰めるように寄り添っていた。

 

(ここが住処だったのか)

 

 奥に居るのは攫われた女性達か。

 

 だが、攫われた女性は確か3,4人だと言っていたが、人数が少ないな。

 

「……」

 

 内部を見回してゴブリンの数を確認し、状況を把握する。

 

(スタングレネードを使えば一瞬なんだが、それだと奥の二人に被害を被らせてしまうな)

 

 この状況ならゴブリンを閃光発音筒ことスタングレネードを使えば一瞬で制圧できるだろうが、100万カンデラ以上の閃光に加え、15m以内に170デジベルの爆音がこの狭い空間に発せられる。その場合奥に居る女性達に被害が及んでしまう。

 

 まぁ目や耳を塞ぐように警告すれば良いのだが、いきなりそんな事を言っても向こうはすぐには出来ないし、何よりゴブリンにこちらの存在がばれるので出来ればやりたく無い。

 それに、もしここにいるゴブリン以外にもまだ仲間が居たらその爆音を聞いた他のゴブリンが戻って可能性がある。一時的に見えなくなって動けない女性達を歩けるまでに回復するのを待っている時間は無い。

 

 まぁ幸いなのは、ここから女性達が捕まっている窪みが射線上に入っていないことだな。

 

「……」

 

 5.56mm機関銃MINIMIのグリップを持つ左手に力を入れ、ゆっくりと深呼吸をして気持ちを整えて、タイミングを見計らう。

 そして曲がり角から出て5.56mm機関銃MINIMIをゴブリンに向けて構え、引金を引く。

 

 狭い空間とあって音が反響していつもより大きな銃声が洞穴に響き渡り、ゴブリンが気付いた時には指切りで放たれた三発の弾が仲間のゴブリンの胴体や頭を撃ち抜いて地面に倒れる。

 

 俺は前へと進みながら引金を指切りで引いて5発ごとに放たれる弾は次々とゴブリンを撃ち殺し、状況を呑み込んだゴブリンが動こうとした時には殆どが撃ち殺されていた。

 

 残ったゴブリンは手近にある武器を拾い上げて雄叫びと共に俺に向かって走って来る。俺は向かって来るゴブリンに向けて引金を引き、放たれた数発の弾に胴を蜂の巣に撃ち抜かれて絶命する。

 

 最後に残った一頭は逃げようと首を左右に振って逃げ道を探していたが、残念な事に逃げ道は俺が通ってきた道しか無い。

 

 絶望したような表情を浮かべるゴブリンに俺は5.56mm機関銃MINIMIを向け、躊躇無く引金を引く。

 

 

 空になったボックスマガジンを交換して弾帯の先端をレシーバーにセットしてフィード・カバーを閉じ、前へと進む。

 

 地面に転がった空薬莢が半長靴に当たって転がり、事切れたゴブリンの死体の数々の傍を通って奥の格子に近付く。

 

 木製の格子に閉じ込められている女性二人はさっきよりも怯えた様子で俺を見ていた。

 

(まぁ、そうだよな)

 

 冒険者でも油断できないし、何より自分達を攫ったゴブリンの群れを一瞬の内に全滅させたのだ。そんな相手に恐怖を抱くなと言う方が無理な話だ。

 

「○×□△村の者だな?」

 

 俺が問い掛けると二人はゆっくりと縦に頷く。

 

「俺はその村の村長から依頼を受けた冒険者だ。君達を助けに来た」

 

 それを伝えながら格子を握り、力を込めて引っ張るとあっさりと抜けた。意外と脆いな。

 

 女性達は俺が助けに来たのを聞いて安心してか、二人共目に涙を浮かべ、ついに泣き出してしまう。

 

 二人は服を剥ぎ取られている以外特に目立った外傷もなく、顔色も悪くなかった。まぁ、言い方はちょっとあれだが、自分達の同族を増やす為の苗床だから、一応大事にはするよな。

 

 まぁさすがにこの格好のまま外に出て村に連れて行くわけにもいかず、その辺に捨ててあるボロボロの服の中からマシなやつを見つけて二人に手渡し、着るまでの間周囲を警戒しながら64式銃剣を手にしてゴブリンの死骸から耳を切り落としつつ二人にいくつか質問する。もちろん後ろを向いたままでだぞ。

 

 二人の他にまだあと二人居たのだが、連れて来られた当日に身体の隅々を調べられ、なぜかその二人だけは外に連れて行かれ、戻ってこなかった。

 その後ゴブリン達はどこからか肉を持ってきてそれを食べていた。一瞬見えた形から人間の手足らしいものがあったらしい。

 

 どうも女性であれば誰でもいいってワケじゃないみたいだな。理由は分からんが、別に知る必要はないか。

 

 ゴブリンの死骸全てから耳を切り落として麻袋に詰めて後ろを向くと、既に女性達は服を着て待っていた。マシなやつと言ってもボロボロの服だったので肌を露出している箇所が多かったが、無いよりかはマシだ。

 

 俺は女性達を出口付近まで進ませてからゴブリンの死骸を焚き火へと放り投げて死骸を燃やし、ついでに召喚した焼夷手榴弾を安全ピンを抜いてレバーを弾き飛ばして死骸の上に放り投げる。

 

 すぐにその場から離れて女性達を曲がり角の陰に隠れさせると焼夷手榴弾が破裂してゴブリンの死骸を燃やし尽くす。

 

 焼夷手榴弾の破裂を確認した後、額に上げていたV3を下ろして二人を暗い道の中を誘導しながら出口を目指した。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 洞穴から出た後女性達を守りつつ森の中を進んでいき、最初に仕留めたゴブリンの死骸から耳を切り落として回収し、暗くなり始めた頃に村に到着する事が出来た。

 

 村に到着するなり女性達は俺の帰りを待っていた村人の中にいた家族の下へと走っていき、家族を抱き締めた。

 

 女性達の家族からは頭を下げながら感謝の言葉を掛けられた後、村長にゴブリンを討伐したのを報告する。ちなみに倒したゴブリンの数は19頭だ。

 

 さすがにこの暗さの中でブレンまで帰るのはちょっと無理なので、その日はその村で一夜を過ごすことにした。

 ちなみに宿泊先は助けた女性の一人の家族が食事付きで泊めてくれた。

 

 

 

 翌日の朝、村長と助け出した女性二人の家族から依頼完遂で貰う報酬とは別に個人的な報酬として銀貨24枚を受け取り、村人に見送られながら俺は迎えの馬車に乗り、ブレンへと向かった。

 そしてブレンに着いたのは正午に差し掛かる頃だった。

 

 

「うーん」

 

 馬車から降りて背伸びをしてから肩を交互に回して筋肉を解す。

 

「さてと、行くか」 

 

 首を鳴らして息をゆっくりと吐き、酒場を目指す。

 

 

 酒場に入ると昼頃とあってテーブルの殆どは冒険者や住民達で埋まっていた。

 

 そのテーブルとテーブルの間を通ってカウンターへと向かう。

 

「おかえりなさいませ、ヒジカタ様」

 

 カウンターに着くと受付嬢が俺に気付いて声を掛けて挨拶する。

 

「依頼を完遂したから、その報告に」

 

「分かりました。確認の為少々お待ちください」

 

 受付嬢は立ち上がって奥へと向かう。

 

 

 

 その後依頼完遂の確認が取れてタグとゴブリンの耳の入った袋を提出し、タグに情報を記録して報酬金の入った袋と共に返却された。

 

 ちなみにタグだが、ランクペーパーの紙製ではなく、ランクウッドの木製になっている。今回の前に受けた魔物の討伐依頼で事前情報ではいないはずの大型の魔物と遭遇すると言う想定外の事態に遭った。まぁ88mm無反動砲で木っ端微塵に粉砕したんだけどな。

 で、それが組合にて話し合われ、それが認められてランクアップしたってわけだ。

 

「お疲れ様でした。次の依頼も頑張ってくださいね」

 

「えぇ。次も頑張らせてもらいます」

 

 袋の中の報酬金を確認して腰のポーチに入れた俺は受付嬢に頭を下げる。

 

「あっ、ヒジカタ様。少し宜しいでしょうか?」

 

「何でしょうか?」

 

 昼飯にしようと空いたテーブルを探そうとしたとき受付嬢に呼び止められる。

 

「実は昨日ヒジカタ様に御用のある方がいらっしゃったのですが」

 

「俺に?」

 

「はい。その方は先ほど来て、そちらの席でお待ちになっています」

 

 受付嬢は酒場の一角にあるテーブルに指差す。

 

「……」

 

 そこで待っていた人物は俺に気付いて小さく手を振る。

 

「……フィリア?」

 

 思わず俺はそこで待っていた彼女の名前を口にする。

 

 

 

 

 


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