答えの表と裏   作:Y I

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お、お久しぶりです……。

いや、あの言い訳をさせてください。
1月くらいには投稿しようと思ってたんですが、部活の方が大変で12月から3月は合宿などのイベントが盛りだくさんでして、はい、そうですね、その、本当にごめんなさい。

でも、どうせ遅れるんでしょ? とかみなさん薄々勘づいてたでしょうし、別に……あ、いや、なんでもないです。ごめんなさい。




遅れに遅れた平成最後の投稿、19話です。どうぞ。




第19話

 

 

 

「そう言えば昨日、僕が寝てる間に何かあった?」

《いや、特には》

「そっか」

 

 

 綾辻とのいざこざ? があった次の日。

 那須隊との合同任務を終えた雄介は、飲み物を求めてロビーへと向かっていた。

 

 

「まあ、何かあったとしても綾辻さんが怒りに来るくらいだしね」

《あーまあ、そうだな》

 

 

 ほとんど正解だけどな、と思いながらも妖介は適当に返事をする。

 結局、昨日の出来事はわざわざ教えることでも無い、と妖介が結論付けたため、雄介は昨日綾辻が屋上へ来たことすら知らないでいた。

 

 

 

 

 

「寒い日はココア1択だよね~」

《激同》

 

 そんな話をしながら辿り着いた自動販売機で、ココアを1つ購入する。

 どんなにお金が無くとも、寒い日のココアには勝てないのだ。

 

 

「ん?」

 

 

 ココアも買ったし、さあ帰ろう。

 そう思い、歩き出した視線の先に5~6人程の人だかりが出来ていた。

 

 それ自体は大したことじゃない。

 ただ、その中に見覚えのある無造作ヘアーの小柄な少年がいたことが問題なのだ。

 

 その少年に気付かれたら面倒なことになる、と直感が告げている。そのため、雄介は気付かれないように気配を消して抜き足差し足を繰り返し、出口へ向かう。

 

 そう、気分は暗殺者(アサシン)

 

 雄介は真っ正面からの戦闘はからきしだか、隠密行動においてはC級時代の訓練で毎回1位を取るほどに長けているのだ。この程度の隠密行動など造作もない。

 

 

 

 出口はもう目と鼻の先。

 

 

 

 

 

 

 

(ふっ……他愛な――)

「あっ! あまみん先輩!」

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「風間さんはこないの?」

「大学のレポートがあるそうで」

「どうせ太刀川のを手伝わされてんだろ」

「チーム数はどうする?」

「3つでいいんじゃないかしら」

「早くバトろーぜ」

「ダルい」

 

 

 ――どうしてこうなった?

 

 

 雄介は目の前で盛り上がる11人を見てそう思った。

 

 

 

 雄介は緑川に見つかった後、半強制的に人だかりへ連れてかれ、その輪に加えられた。

 加わった輪の中には数分前まで一緒にいた那須と熊谷、そして知らない人物が2人居た。

 

 その人物は、No.1射手の出水とボーダー唯一の槍使い米屋の2人だった。

 

 どうやらこの2人は、緑川をボコボコにした人物が那須隊と防衛任務を共にしていると聞き、その人物の詳細や防衛任務の様子を那須達に聞いていたらしい。

 

 そしたらそこへ本人が来たとなれば、戦闘狂である米屋が黙ってない。

 

 

 

 ――ちょうどいいや。このメンバーでチーム戦でもしようぜ。

 

 

 

 と米屋が提案し、それに雄介以外が賛同してしまった。

 そこからはトントン拍子で事が進み、出水が防衛任務終わりの荒船隊の面々と近くにいた菊地原、歌川、偶々通りかかった諏訪を誘い、総勢12人のメンバーとなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

(もう帰りたい……)

《つうかよ》

(……どうしたの?)

 

 チーム戦をやることになった流れを思いだし、ワイワイ盛り上がる11人を死んだ魚の様な目で見ながらそんなことを考えていると、妖介が疑問を口にした。

 

 

《歌川、菊地原、緑川は『サイドエフェクト』のこと知ってるだろ? 緑川は忍田さんに口止めされてるからいいとして、2人に口止めしなくてもいいのか?》

(あー……)

 

 

 妖介が懸念しているのは、『サイドエフェクト』の存在を知っている歌川と菊地原が作戦会議などで他のメンバーに『サイドエフェクト』のことを言ってしまわないか、ということだ。

 

 那須隊での出来事で二重人格のことが公になるのに抵抗はほとんど無くなった。

 

 しかし、『サイドエフェクト』は別だ。

 

 既に玉狛支部に赴いた際、〝変化した目は人に嫌悪感を抱かせる〟という解は得ている。

 

 

 

 

 

 

 

「歌川君、菊地原君」

「? どうした」

「……何?」

 

 故に、他のメンバーから少し外れたとこへ2人を手招きする。

 それに対して歌川はすぐに応じ、菊地原も少し間があった上に嫌そうな顔をしたがちゃんと応じてくれた。

 

 他のメンバーがこちらに気づいてないのを確認し、小さな声で、申し訳ないんだけど、と切り出す。

 

 

「えっと、お願いがあって……その〝目〟のことなんだけど……」

「ああ、そのことか。安心しろ。別に言ったりしない」

「あ、ありがとう!」

 

 やはり、というべきか人柄のいい歌川は雄介の申し出を快く承諾してくれた。

 

 しかし、

 

「……」

「き、菊地原君……?」

 

 

 それとは反対に菊地原は何も反応を示さない。

 何か気に障る様な事言ったかな、と内心ビクビクしながら不安げに菊地原を見る。

 そんな視線を向けられた菊地原は、ため息をついてから口を開く。

 

「……なに? 『サイドエフェクト』を知られていないことでアドバンテージでも得ようっていう腹図もり?」

「そ、そうじゃないよ……! 僕はただ〝目〟のことを……」

「キミがそんなつもりじゃなくても、こっちはそう受け取ることができるんだよ。それにわざわざ口止めするってことは、ぼくらがバラすんじゃないかって疑ってるってことでしょ?」

「え!? あ、え……ご、ごめん……」

 

 

 

 菊地原の刺のある言葉を受けて、雄介は項垂れてしまう。

 雄介は2人が言わないとは思っている。しかし、思ってはいるが信じてはいない。菊地原が言うように疑っているのは確かである。

 

 これ以上は可哀想だと思った歌川が「おい」、と菊地原を諌めようとするが、それと同じタイミングで菊地原が「でも」と続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「キミからはいらない音が聞こえない」

「……え?」

「だからまあ、言わないでおいてあげるよ」

 

 

 そう言って、菊地原は他のメンバー達の方へ行ってしまう。

 なぜ菊地原が突然言わないようにしたのか分からず、雄介は呆然としてしまい、その一連の流れを見ていた歌川は苦笑いした。

 

 

 今までの経験から、雄介が『サイドエフェクト』のことで様々な不安を抱えてしまうのは菊地原自身、よく分かっているし、()()()()()()

 しかし、雄介の行動を菊地原が言ったように捉えることもできるため、そう捉えることもできるぞ、と忠告をしたのだ。

 

 まあ、言い方は辛辣だが菊地原なりの優しさ、というやつなのだ。

 

 

 

 それに――

 

 

「大丈夫だ、天峰。あいつの言い方はちょっとあれだが、別にお前のことを嫌ってるわけじゃないし、『サイドエフェクト』のことも言わないさ」

「うん……。それは嬉しいんだけど……〝いらない音〟ってなんのことなんだろう……?」

「ん? ああ、それか。それはお前らが良い奴ってことだよ」

「?」

 

 

 菊地原が言った〝いらない音〟。

 それは菊地原に対する悪口や陰口のことを指す。

 

 菊地原の『サイドエフェクト』である『強化聴覚』。

 それは一言で言ってしまえば〝耳がいい〟ただそれだけの能力であるが、その有用性は菊地原が所属する部隊『風間隊』が菊地原が加入したこでA級3位まで一気に駆け登ったことで証明されている。

 しかし、菊地原の『サイドエフェクト』が知られるようになった当初は、その能力を周りの隊員達は「地味だ」「大したことない」「盗み聞きには使える」と蔑み、聴きたくもないその音を勝手に耳が拾ってしまう。菊地原はそんなことを何度も経験してきた。

 

 

 

 

 

 だが、雄介、妖介からは、

 

 

 

 初めて会った時も。

 

 嫌味を言った時も。

 

 軽口を言い合った時も。

 

 

 そして今も。

 

 

 

 〝いらない音〟が聞こえたことはなかった。

 

 だから、嫌いな優秀そうな奴である雄介を、毎回ちょっかいをかけてくる妖介を、菊地原は嫌いになれないのだ。

 

 

 もちろんそのことを雄介が知っているはずもなく、歌川の言葉の意味を理解しかねているが。

 

 

 

「良い奴? つまり……どうこと?」

「さすがに全部は教えられないな」

 

 

 そう言って歌川は困った様に笑う。

 さすがに菊地原の過去をバラすわけにもいかないので、〝いらない音〟の内容を全て話すことはできないのだ。

 

 そのことを知らない雄介は釈然としないが、教えられない、とはっきりと言われたため、これ以上の追求をやめ、自力で答えを得ようと『サイドエフェクト』を使用する。

 

 それと同時に、チーム戦をする集団のなかから米屋が手を振り上げてこちらに声を投げ掛けてきた。

 

 

「おーい。歌川と天峰、くじ引きするぞ」

「今行きます。ほら、天峰も行くぞ」

「あ、うん」

 

 

 その声に応じた歌川に従い、集団へと向かう。

 

 

 その途中、雄介は『サイドエフェクト』によって得た答えについて考えていた。

 

 答えを求めた結果、〝いらない音〟の意味はわかった。

 しかし、『サイドエフェクト』のことを黙っているのとどう関係があるのか、それが分からなかった。

 

 だが、分からない理由は分かる。また感情だ。

 

 

 なにが関係している。

 喜か? 怒か? 哀か? 楽か?

 それとも、愛か? 憎か?

 

 

 分からない。

 雄介にも、もちろん妖介にもその感情、感謝が、優しさが分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、

 

 

 

 

 

「――ありがとな、菊地原」

 

 

 

 なぜか、()の口からは自然とそんな言葉が漏れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うっさいなぁ」

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

「おれらは狙撃手0、Cは攻撃手が0か。随分偏ったな」

「ねー。Bが一番バランス取れてるよ」

 

 開始前の短い作戦会議の為に集まった対戦ブース内で、出水と緑川は今回のチーム分けについて話し合っていた。

 

 

 くじ引きをした結果、チーム分けは

 

 

 Aチーム

 天峰、緑川、米屋、出水

 

 Bチーム

 菊地原、歌川、荒船、熊谷

 

 Cチーム

 那須、諏訪、半崎、穂刈

 

 

 

 

 となった。

 

 たしかに2人の言うように、Aチームは前衛に偏り、逆にCチームは後衛に偏る中、Bチームだけが攻撃手2、万能手1、狙撃手1、となかなかバランスの良いメンバーとなっている。

 

 それに不満があるわけではないが、緑川が「でもさー」と言葉を続ける。

 

 

「よねやん先輩といずみん先輩が一緒って、このチームバカばっかりだよね」

「おい、こら。お前もその1人だろ。てか、俺を弾バカと一緒にすんな」

「そりゃこっちのセリフだ、槍バカ」

 

 そう、この2人はそれぞれ弾バカ、槍バカ、と呼ばれており、Aチームがバカだらけだ、と言った緑川自身も迅バカと呼ばれている。そしてこの3人はまとめて〝A級3バカ〟と称されているのだが、その3人全てがAチームに集まってしまったということである。

 

《緑川自身もバカだから、本当にこのチームバカだらけじゃねぇか》

(妖介含めてね)

《どこがだよ。俺、超頭良いじゃねぇか》

(妖介は頭の良いバカってやつだよ)

《んだとぉ!?》

 

 プラス、頭の良いバカこと妖介だ。

 本当にAチームにはバカしかいない。

 

 

 ギャアギャアと妖介が騒いでいるのを、ハイハイと適当にあしらっていると、そういえば、と出水が質問を投げ掛けてきた。

 

 

「お前、攻撃手なのに防衛任務で『アイビス』使ってたってのは本当か?」

 

 急に話を振られたため、ビクリとしてしまう。

 恐らく那須か熊谷にでも聞いたのだろう。別に隠すことでもないので、素直に首を縦振る。

 すると、その反応を見た緑川が驚愕と当惑の混じった声を上げた。

 

「あまみん先輩狙撃手になったの!?」

「ち、違うよっ! トリガーセットに『アイビス』入れてるだけで攻撃手のままだよ」

 

 その否定の言葉に緑川が安堵の息を漏らし、米屋はへぇ、と感嘆に似た吐息を漏らす。

 

 

「攻撃手なのに『アイビス』使ってんのか、おもしれぇな。〝完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)〟にでもなるのか?」

 

 

 米屋の口から出た聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべてしまう。

 

 

 〝完璧万能手〟

 攻撃手、銃手もしくは射手、狙撃手の全てに対応、更にその全てが8000ポイント以上の者をそう呼び、ボーダー内に1人しか存在しないポジションである。

 

 もちろん、そんなポジションの存分など今しがた初めて聞いた雄介は、それがなんのことか分からず、頭の中が疑問符でいっぱいになってしまう。

 

「なんだ、完璧万能手のこと知らなかったのか」

 

 その雄介の反応を見て米屋は、本当におもしれぇ奴だな、と快活に笑い、周りもそれにつられて笑う。

 自分のことを笑われた雄介が不満そうな顔をすると、また周りは謝りながら笑う。

 

 暫くそうやって笑いあっていたが、時計を確認した出水が声を上げた。

 

 

 

「っと、流石に作戦立てないてまずいな」

「でも、作戦っていってもこのメンバーじゃ突撃しかなくない?」

「どう突撃するかを決めんだよ」

《……》

 

 

 〝作戦〟

 その言葉に妖介が僅かにだが反応する。

 ここにいる者達は隊長でないとはいえ、自分以外は全員がA級の精鋭達である。その精鋭が一体どんな作戦を立てるのか、妖介は少々気になっていた。

 

 

 

「とりあえずは俺がサポートするからあとは臨機応変に」

「結局それな」

「了解~」

 

《おい、大丈夫か。こいつら》

(……ノーコメントで)

 

 

 が、妖介の期待するような作戦が立てられることはなかった。

 そもそも、このチームにいるA級の精鋭とされる者達は全員がバカだ。頭を使うようなことで期待するのは間違いである。

 

 

 

「お、そろそろ始まるな」

「おーし。やるからには1位だな」

「当たり前じゃん!」

 

 そんな妖介の落胆を他所に、チーム戦開始が目前まで迫り、3人の士気が高まっていく。

 それにつられてか、戦闘が嫌いな雄介でさえ気持ちが――戦うのは妖介だか――少々昂り、いつもより少しだけ大きな声で妖介に声をかける。

 

 

「じゃあ妖介頑張ってね!」

《ん? ああ。そういやぁ言い忘れてたわ》

「? どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《俺戦わないから、よろしく》

「…………………………………why?」

 

 

 

  そんな言葉と共に、雄介は転送の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 




次話からチーム戦スタートです。

ちなみに人選及びチーム分けに関しては、菊地原と歌川、3バカ以外は適当です。思いつきで詰め込みました。


次回こそ! 本当の本当に! 次回こそは早く投稿できるように頑張ります。(フラグ)

遅れたら……ごめんなさい。許してください。なんでもします。(なんでもするとは言ってない)



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