答えの表と裏   作:Y I

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失踪したと思った? 残念してませんでした(ФωФ)






すいません、調子乗りました。

いや、本当に申し訳ありません……!
大学のテスト、部活の合宿等でなかなか投稿できませんでした。

恐らく次回もこのくらい間が空くと思います。
4月になれば多少楽になるんですけど……。それまでは踏ん張ります( ;∀;)


それと苦し紛れで書いたため、おかしな部分が多々あると思います。そこは暖か目で見守ってください。

ではどうぞ!





第16話

 

 

 

 雄助は女性が苦手だ。

 

 

 

 

 まだ幼い頃、『サイドエフェクト』の影響で変化してしまった目を気味悪がった者達は、男は暴力で、女は言葉で雄助を虐めた。

 

 暴力は耐えられた。

 身体に痛みが走り、切り傷や痣ができようとも、いずれ切り傷は塞がり、痣はなくなって痛みはなくなるのだから。

 

 しかし、言葉は堪えられなかった。

 暴力とは違い、言葉で傷つくのは〝心〟。

 心にできる傷は、身体とは違いなかなか治らなかった。

 

 

 ――なんで、なおらないの……? なんで、なにかいわれているだけでむねがいたいの……?

 

 

 幼き雄助は膝を抱え、1人で、独りで胸を押さえて泣いた。

 唯一の味方であり、拠り所である両親にその答えを求めようともした。けれども、大好きな両親に余計な心配をさせたくなくて言わなかった。

 

 

 1人で、独りで堪えて、考えて、答えを求めた。

 

 

 

 でも答えは出なかった。

 何でも分かる〝力〟を使っても答えは出なかった。

 

 

 

 

 

 答えがでないのは必然であった。

 人の気持ち。つまりは〝心〟が理解できない〝力〟、『サイドエフェクト』で分かるわけがなかった。

 

 

 

 心の刃――相手に危害を加えようとする心。

 

 

 

 その心をもってして彼女らは、雄助に言葉を発していたのだから。

 

 

 

 心で(言葉)を造り、言葉()で刺す。

 何本も何本も〝言葉〟という刃を雄助の心に突き刺す。

 

 

 そうやって言葉()(トラウマ)を作ってくる女性が雄助は苦手だ。

 

 

 

 だから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなの危ないでしょ! 当たってたらどうすんのよ!?」

「……はい、すいません」

 

 苦手な女性に感情(怒り)のこもった言葉を向けられると胃が痛い。

 

 

 

 

 

 場所は那須隊作戦室。

 そこでミーティングという名の説教が行われていた

 

 

 

 

「まあまあ、落ち着いて熊ちゃん」

 

 

 作戦室に戻ってきてからずっと怒られている雄助を不憫に思ったのか、事情をある程度把握している那須が熊谷を宥める。

 

 

「玲……でも、おかしくない!? 百歩譲って『アイビス』を何の確認も無しに撃ったのはいいとして、謝罪が無いってどうよ!? しかも()()()()!」

 

 

 那須の言葉で幾分か冷静になったが、まだまだ怒り心頭であり、雄助のことを指で指して不満をぶつける。

 

 

《人のことを指差したらいけないんだぞー》

(はぁ……)

 

 茶化す様に言う妖介にため息が漏れる。

 

 

 こうなってしまった原因は、お察しの通りトラブル発生機こと妖介である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖介の放った『アイビス』が当たりそうになった熊谷は、近界民襲来をやり過ごして一息ついている雄助に「何か言い訳はある?」と額に青筋なんて浮かべずにヤサシク声をかけた。

 すると、雄助はびくりと肩を震わせ、一拍置いてから錆びたロボットのように振り向いた。その顔は青白く、冷や汗をダラダラと流していたが。

 

 さてこの怒りをどうしてやろうか、と怒りの鎮め方を考えていると、耳に聞き慣れた志岐の声が響いた。

 

『門発生します! 座標誘導誤差は2.37です!』

「――熊ちゃん行くよ!」

 

 次いで聞こえた那須の声で、即座に思考を戦闘のものに切り替え、門から出てきた近界民の元へ向かう。

 雄助も寝てしまっている妖介のことを起こし、即座に入れ替わる。

 

 

 さて、ここからが問題なのだ。

 いや、まあその前から問題大ありなのだが、トラブル発生機は更にやらかす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ファイヤー」

《え、ちょ!》

 

 ズドン! と本日3度目になる『アイビス』特有の重低音が響く。

 躊躇なく放たれた『アイビス』の弾丸は、近界民の弱点である目に、吸い込まれる様にして着弾した。

 

 

 熊谷の右肘から先を吹き飛ばして。

 

 

 

「~~っ!? ちょっと! 今度は当たったんだけど!!」

「はい、第2射どーん」

 

 肘から先が無くなった腕を指差して、吹き飛ばした本人に抗議するが、妖介は我関せずといった顔で第2射を放つ。

 放たれた弾丸は第1射と同じく、吸い込まれる様にして近界民の目に着弾し、活動を停止させた。

 

『ち、沈黙を確認。後続はありません……』

「うし」

《いやいやいやいや、うし、じゃないよ!?》

「んあ? 瞬殺だったろ」

《そういうことじゃなくて、ほら、熊谷先輩の腕!》

「それは射線上にいるあいつが悪い。俺は悪くない」

《…………なんなのさ、その暴論》

 

 

 

 雄助が妖介の暴論に呆れている一方、熊谷は修羅に落ちかけていた。

 

「……」

 

 熊谷(修羅)はゆらり、と獲物を仕留めるために得物を構える。

 

「く、熊谷先輩? なんで、『弧月』構えてるんですか? もう近界民はいませんよ?」

「そ、そうよ熊ちゃん。とりあえずそれを下ろしましょ!」

 

 2人の声が届いたのか熊谷は、腕をダラリと下げ、俯いているため前髪で目元が見えない顔を2人に向ける。

 

「……私の右腕ってあいつが……撃ち抜いたのよね……?」

「は、はいぃ!」

「……あいつは私に……謝ったっけ?」

「そ、そうだけど、天峰君だって悪気があったわけじゃないはずよ!」

 

 俯いたまま先程起こった事実を1つ1つ確認していく。

 

「……この右腕の恨み、晴らさないでおけようか」

「あの……怖いですよ、熊谷先輩」

 

 いつもはカッコ良くて優しい先輩である熊谷が、今はその面影の無い幽鬼の様な佇まいでいる。そのことに恐怖を感じる日浦。

 

 その日浦が熊谷(幽鬼)に声をかけた瞬間、今まで俯いていた熊谷が突然、顔を勢い良く上げた。

 

 

 

 

「――いやっ!」

「ひっ……!」

「晴らさなければならない!!」

 

 

 そう言って鋭い眼光で獲物を睨み付ける。

 

 あまりの気迫に日浦が短い悲鳴を上げて那須の背後へ隠れ、那須もどうしたらいいか分からずオロオロとしてしまう。

 

 

 そんな時、熊谷の耳に至極冷静な声が届いた。

 

 

『落ち着いてください熊谷先輩。隊務規定違反になりますよ』

「!……すぅー……はぁー……そう、ね」

 

 

 志岐の冷静な指摘を受け、深呼吸をして怒りを鎮める。

 熊谷が落ち着いたのを見て、那須と日浦は心の中でホッと安堵のため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 一方、そんなやり取りをしていることなど露知らず、雄助は戦闘が終わったので妖介と入れ替わっていた。

 

「あっ、もう防衛任務終了の時間だ」

《なんだよ。もう終わりか》

「5匹も倒したじゃん。 充分でしょ」

《たった5匹じゃ足らねぇよ。それに大した金にもならないだろ》

「あーそっか……」

 

 まだまだ満足できねぇ、と言う妖介に雄助は呆れていたが、妖介が指摘した金銭問題を聞いて、たしかにまだまだ足らないと思った。

 

 近界民をお金として見れば戦えるかな? と少々残念なことを考えて、ハッとした。

 そういえば、まだ熊谷に謝罪をしてないではないか、と。

 急いで謝罪しようと熊谷達のいる後ろを向いた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界が真っ暗に。次いで頭部、主にこめかみ辺りに痛みが走った。

 

 

 

 

 

 

 

「イデデデデデ! 痛い痛い痛い!」

「とりあえず作戦室に行こう、玲」

「そ、そうね」

 

 

 暗やみの中で聞こえた声でこの状況を作り出した人物を特定した。そして何をされているのかも。

 

 雄助の痛みの原因、それは熊谷による脳天締め。所謂、アイアンクローというやつだ。

 

 しかし、誰か分かったところで意味はなく、ギリギリと軋む様に掴まれ、痛みが継続して襲いかかる。

 

「ちょ、ほんとに痛いです!」

「そりゃそうでしょ。痛くしてるんだから」

 

 何を当たり前のことを、とでも言いたげな顔で締め上げる。

 

「さて、戻ろうか」

「このままですか!?」

 

 そうして雄助はアイアンクローによるダメージを受けながら、引き摺られる様にして作戦室へと運ばれていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まだこめかみが痛い……)

《あいつゴリラかよ》

(絶対言っちゃだめだよ、それ)

 

 失礼なことを言う妖介を注意しながら、まだ痛むこめかみを押さえる。

 たしかに妖介を止めなかったのも、すぐに謝罪しなかったのも悪いとは思っている。それでも、()()()()()()()にはトリオン体の力で行うアイアンクローは痛過ぎるのだ。加減をしてほしいものである。

 失礼ではあるが、ゴリラと称しても間違いないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてんの!?」

「あっ! はい、聞いてます!」

 

 

 などと考えていると熊谷の怒声が響いた。

 痛みに気を取られ過ぎていたが、今は熊谷の説教のまっ最中である。この様子ではまだまだ終わりそうにないが。

 そろそろ、怒られ続ける心も正座を続ける足も限界突破しそうである。

 

 しかし、そこで待ったをかけたのは那須だった。

 

 

 

 

 

 

「熊ちゃん、ちょっといい?」

「待って玲。私はまだ許して「熊ちゃん」……分かったわよ」

「ありがとう」

 

 

 

 そう言って那須は正座をしている雄助の前まで進み、屈んで視線を合わせる。

 

 

 

「雄助君」

「っ! な、なんですか?」

 

 

 

 今まで〝天峰君〟と呼んでいた那須が突然、下の名前で呼んだことに驚き、どもってしまう。

 

 

 更に、次の那須の発言で雄助は更に驚愕する。

 

 

 

 

 

「さっきのはもう1人の君、妖介君だよね?」

「……! そ、それは!」

 

 

 

 

 突然のことで雄助は暫し呆然としてから、慌てて他の2人に聞かれないように那須を止めようとする。

 なぜ那須がそのことを皆の前で言ったのかが理解できない。

 幸い、他の2人は話の意味が理解できず、首を傾げているが、それでも妖介のことをあまり知られたくない雄助にとって、今のは心臓に悪過ぎる。

 

 雄助がそのことを抗議をしようと口を開く前に、那須が真剣な表情で言葉を発する。

 

 

「そうならちゃんと説明しなきゃ。みんな不信感を抱いたままになっちゃうよ」

「僕はあまり妖介のことは言いたくないんです……」

「だとしてもこのことはちゃんと言わなきゃ」

「……どうしてですか?」

 

 しつこい那須に少し棘のある声色でどうしてか聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって――〝信頼〟してもらえないじゃない」

「ッ!」

 

 

 その言葉が酷く胸に突き刺さる。

 それは彼女らを見て羨ましく思ったもの。

 自分が欲した安らぎとは違い、信じられて頼られるものである。しかし、それを得られたなら欲した安らぎに1歩近づけそうな気がした。

 

 元々、いつかは言わなければいけないのかもしれない、と考えてはいた。

 ただ、そのきっかけ(勇気)が無かった。

 

 

(……妖介)

《んーまあ、いいんじゃね? お前がしたいようにしろよ》

(ごめん、自分勝手で)

《謝んな。んでもってそれは俺もだ》

(……フフ、それもそうだね)

 

 

 今からしようとしていることは、言ってしまえば、妖介を売って安らぎを得る様なものだ。とても利己的で最低なことだ。

 それでも妖介は笑って、それを許す。

 妖介にとって最優先事項は己ではなく、雄助だから。

 

 

 そうして雄助がどうするかを決意をするのと同時に那須から声がかかる。

 

 

「無理にとは言わない。でも、一緒に任務をしている相手を知らないって、私は嫌かな」

「そうですよね……」

 

 雄助は1度深呼吸し、未だに話の内容に付いていけてない2人の方へ顔を向ける。

 

 

 

 

「皆さんにお話があります」

 

 

 雄助は1歩、進んでみることにした。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「……なるほどね。理解はしたわ」

「あ、ありがとうございます」

 

 10分程の説明の末、なんとか理解してもらえた。

 途中、何度も2人に、は? みたいな顔され時は泣きそうになったが、堪えて説明を続け、最終的には那須の証言もあり、なんとか信じて貰えた。

 

 

「駿君とのランク戦の後に言っていたのは、このことだったんですね」

「そうね……。でも、なんで玲は教えてくれなかったのよ」

「フフ。なんでかしらね?」

 

 

 熊谷は妖介のことを教えてくれなかった那須をジト目で問い詰めようとするが、那須は笑って誤魔化す。

 

「……ハァ。まあ、いいわ。もう疲れた……」

 

 誤魔化された熊谷の一言を聞いた那須が、1度手を叩いて注目を集める。

 

 

「それじゃあ報告書を書き終えたら今日はもう解散にしましょうか」

「賛成です~。私も疲れました……」

「そうしよっか」

 

 

 那須の提案に日浦と熊谷が賛成するなか、雄助は遠慮がちに手を挙げ、自身の処遇を問う。

 

 

「あ、あのー僕は……」

「あたし達の方で報告書はやっておくから、あんたは帰っていいよ」

「え、でも……」

「やり方わかんないでしょ?」

「わかんないです、けど……」

 

 報告書程度なら『サイドエフェクト』を使えばできるので、そのことを伝えようとしたが、それよりも先に熊谷が頭をガシガシとかいて声を荒げた。

 

 

「あーもう! こっちの気持ちも汲みなさいよ!」

「?」

 

 

 熊谷は、初めての防衛任務で疲れているだろう、という理由で雄助のことを早めに帰してあげようとしているのだ。

 

 それは心遣い、所謂〝優しさ〟だ。

 

 つまり、雄助にはわからない。

 当の本人である雄助がキョトンと首を傾げているのがいい証拠だろう。

 

 

「ハァ。 なんで伝わんないのよ……。あーもう今日はため息ばっかついてる気がする」

「え、あの……すいません?」

「なんで疑問系なのよ。とりあえず報告書はあたし達でやるからほら、帰った帰った」

「え、ちょっと……あ……」

 

 熊谷に押されて作戦室の外に無理矢理追い出され、抗議をする前には扉が音をたてて閉まってしまった。

 

 

「……閉め出されちゃった」

《いいじゃねぇか、帰れって言われたんだ。さっさと帰ろうぜ》

「うーん……そうだね。じゃあ帰ろっか」

 

 

 そう言いながら那須隊作戦室を後にする。

 ボーダー本部の迷路の様な廊下を歩き、ロビーを過ぎて外へ出る。

 外へ出ると、時刻はそんなに遅くはないのに、太陽は既に沈んでおり、月や星が輝いていた。もうそんな時期か、とひとりごちて、身震いをしポッケに手を入れて歩き出す。

 

 後は帰路につくだけなのだが、そこでふと、疑問が沸いた。

 

 

「どうして、僕のことを早く帰らしたかったのかなぁ」

 

 

 そのことを考えながら歩を進める。

 

 もちろん『サイドエフェクト』は使ったが、答えは出なかった。

 数時間前の雄助なら『サイドエフェクト』で答えが出なければ、興味を持とうともしなかっただろう。現に日浦の時は即座に思考を切り捨てた。

 

 

 しかし、今は『サイドエフェクト』で答えが出なかった問題に興味を持っている。

 

 

 

 別に、人の気持ちが分かるようになったわけではない。ただ気になっているだけで、時間が経てば興味は薄れ、まあいいか、と流すことだろう。

 

 

 

 

 それでも、気になるようになった。

 

 この変化が、この1歩がきっかけとなり、今日受けた〝優しさ〟が分かるようになる。そんな日がいつか来るのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女子だけじゃないとできないこととかあったのかな?」

《着替えとかか?》

「なるほど」

 

 

 

 まだまだ、先は長そうではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日浦が狙撃手なのに那須達と一緒にいた理由は次話で明かすと言いましたが、あれは嘘です。

はい、すいません。
まとまりきらず書けませんでした。まあ、大した理由でもないんですけどね 笑
次こそは明かします(フラグ)。


では、また次回。


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