あーしさん√はまちがえられない。   作:あおだるま

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やはり彼女はポンコツである。

『明けましておめでと。今年もよろしくしてやるし』

 

 正月の朝。反射的にスマホのモニターをのぞいたことを後悔した。差出人は見なくてもわかる。文面を見た瞬間、あの不遜な女王の顔が浮かぶ。

 

 他にも12時直後に律義に送られた絵文字たっぷりのメール、同級生に送るメールとは思えないほどの堅苦しい新年のあいさつ、そしてとつかわいい戸塚のメールは即刻保護し、中二病全開のチェーンメールは即刻破棄する。

 

 大晦日である昨晩は例年通り、国民的お笑い番組を見ている途中に寝落ちしたので、俺はメールには気づかなかった。…というか送られてくるとは思わなかった。

 

 正月の比企谷家は普段とは少し違う。適当にメールの返信を返しつつリビングに下りると、普段は忙しい両親もこの時期ばかりは家で正月特番を見ておせちを食している。母親は小町と福袋について楽し気に話し合っていて、今年の当たり福袋について考察を交わしている。その中にはここ数年の福袋のデータはもちろん、snsやネット、知り合いの評価までも混じっていて正直言って怖い。

 

 ソファでうなだれる父親はと言えば、元旦にして3日後には仕事だということを嘆いている。…いや、まあ気持ちはわからんでもない。俺も日曜の午前中にもなれば月曜の学校が鬱になるものだ。普段休みなく働いているのだから、正月ともなれば余計そんなことを考えてしまうものだろう。俺はそんな父親を見るたびに将来を誓って詠う。働かない、ああ働かない、働かない。

 

 小町は母親に福袋の希望を伝えたらしく、カマクラをなでながら正月の特番を何とはなく眺めている。どうやら受験のこともあり、今年は福袋争奪戦には小町は不参加のようだ。尤もこの姿を見るとそんなことで受験は大丈夫か、とつい一言いいたくなってしまうが、毎晩遅くまで小町の部屋の電気がついていることは知っている。それに小町は要領で言えば俺よりも良い。心配をしていないと言えば嘘になるが、そこまで悲観的にもなっていない。むしろ高2にもなって全く働く気のない俺の方が問題だろう。誰か僕をお嫁さんにもらってください。

 

「ごみいちゃん、明けましておめでとう。…って、新年から目腐ってるし。正月だからってカマクラみたいにだらけ切って、小町はごみいちゃんの将来が今から心配になってくるよ」

 

 こたつでだらけ切る俺を見て、およよと小町は目頭を押さえながらこたつに入り込む。とはいえ。今度は俺が小町を見下ろしてため息をつく。

 

「兄のことをゴミとか連呼するといつか天罰下るぞ…。俺がだらけ切っていることについては否定しないが、自分の胸にも同じこと聞いてみたらどうだ」

 

 その薄い胸に聞いてみたらどうだ、とはさすがに言わなかった。ゆきのんよりはあるしね!

 

 俺はこたつに全存在を預け、せっせとミカンの皮をむく小町に問う。不機嫌そうな小町とカマクラが俺をにらむ。

 

「小町は先の見えない受験勉強で疲れてるからいいんだよ!…ていうか小町もがっかりだよ。お兄ちゃん年末は結衣さんと雪乃さんとあんなに忙しそうにしてて、ようやくお義姉ちゃんができると期待してたのに」

 

「いや、だから年末はクリスマスで忙しかっただけだっての。そもそも働くこと自体俺の信念に反する」

 

 働かざる者世の頂点なり。

 

「へー」

 

 小町は冷めた目で俺を見る。

 

「じゃ、クリスマスにディスティニーランドに遊び行ったのも『お仕事』の一環だったんだ。…帰ってきてからなんか変だったくせに」

 

「…」

 

 目を細める小町に俺は顔をそらす。

 

 生徒会で事に当たったクリスマスイベント。あのイベントは結局特に大きな問題はなく進行された。雪ノ下と三浦に対して海浜総合高校側はどこかおびえていたように見えたが、その気持ちはよくわかる。俺だって怖いし、なんならあの二人が横並びになっておびえない高校生はいないまである。

 葉山もクリスマスイベントには参加しており、彼の顔を見た瞬間に三浦は大げさではなく「花が咲く」という表現がふさわしい笑顔を浮かべていた。そのつい一分前には作業が遅れている俺を蹴飛ばしていたとは到底思えない身代わりの早さだった。これが一色だったら「計算高い」の一言で済むが、三浦の場合はそこに裏の顔は見えない。だからこそ俺も葉山との扱いの違いに愚痴の一つも言えないわけだが。

 

 加えてクリスマスイベントでは、鶴見留美が三浦と俺にやけに懐いてきた。というよりも、三浦優美子は存外子供たちからのウケがよかった。歯に衣着せぬ物言い、それでいてどこか抜けたところがあるというギャップ、子供に対しても本気になってしまう気性を考えればわからなくはなかった。要は対等な相手としてあれやこれやと遊び相手になり、なおかつ年上として相談を受けていたようだった。恐らくそれは黒髪で薄化粧という要素があるからこそ成り立っていたのだろう。俺が小学生だったら金髪縦ロールの女子高生になつきはしない。

 そして鶴見留美も例によってその中の一人だったようだが、彼女と三浦がなにを話していたかはわからない。それとなく三浦に尋ねたが、ただ一言「ロリコン」と返ってきただけだった。断じて冤罪である。

 

 しかしそれも去年の話。

 

「あー…つまらん」

 

 こたつにまさしく「寄生」しながら、俺は代わり映えのしない正月特番を映すテレビをザッピングする。なぜ日本人は毎年毎年同じようなものを食べ、同じようなテレビ番組を見て、同じようなイベントごとをこなし喜んでいるのだろうか。恐らく様式美を重んじる国民性からきているのだろうが、ただでさえ似たような毎日を送っている身からすればテレビくらいは少し刺激がほしいと思う。だらけきる俺を見て同じくこたつに寄生する小町が呆れてため息を吐く。

 

「むー、お兄ちゃんのくせに小町に隠し事?…っていうかお兄ちゃん、そのセリフ何回目?つまんないなら切ればいいじゃん」

 

「小町よ、こういうのはルーティーンなんだよ。いくらつまらなかろうが人々は変わらない茶番を望み、その変わらないこと自体に安心して憂いなく新しい一年を迎える。また何の心配もなく社会の歯車に戻る。…クソ、働きたくねえ」

 

「…暇だったら結衣さんと雪乃さんでも誘って初詣でも行って来たら?家にいられても小町の勉強の邪魔になるだけだし」

 

「そのだらけ切った姿からは説得力が皆無であることを少しは自覚しろ。大体元旦から初詣とか五分後の未来も見えねえのかよ。家から出た瞬間人混みを前に回れ右で直帰ですお疲れさまでしたー」

 

「疲れる前に帰ってるじゃんそれ…。ていうかそんなこと言ってるからいつまでたっても小町にはお義姉ちゃんができな…」

 

 小町のため息は、スマホの着信音によって阻まれた。小町は目を輝かせて電話をかけてきた人物に応答する。

 

「はいもしもし…。あっ、結衣さん…はい、やっはろーです!…お兄ちゃんですか。もちろんいますよ。いますとも。…ええ、ええ、暇です暇です。間違いなく今この世で最も暇な人間ですよ…はいはい。では、その時間に。小町も兄ともども、とっても楽しみにしてます!」

 

「…」

 

 サラリーマンよろしく電話越しの相手にペコペコと頭を下げ電話を切った小町は、一転ニヤリとこちらに嫌な笑みを浮かべる。俺はテレビに視線を移した。絶対に碌なことではない。しかし小町は構うことなく続ける。

 

「いやー、流石お義姉ちゃん候補だねぇ。ちゃんと小町と思考がシンクロしてる当たり、小町的に超ポイント高いですな。うんうん…というわけでお兄ちゃん。さっさと着替えて10分後に出発ね」

 

「いや何が、というわけでだよ。何一つ説明を受けてねえよ」

 

「いやだってほら、今から初詣行くから」

 

「…」

 

「ふんふんふーん♪」

 

「はぁ」

 

 鼻歌を歌いつつ楽しそうに出かける準備をする小町を見てため息を吐く。まあ年末のクリスマスイベントでは家のことは小町に任せてしまっていたことは確かだし、息抜き位になればいいか。

 

 

 

 

「どーもどーもどーもー、明けましておめでとうございます。兄がいつもお世話になっております!結衣さんも雪乃さんもお久しぶりです」

 

 正月の初詣、学校近くの浅間神社一の鳥居の前。そこにいた二人の人物にはしゃぎながら小町は飛びつく。やだ、小町ったらお兄ちゃんにもあんなことしてくれることないのに…。

 

「あはは…今日も元気だね、小町ちゃん。明けましてやっはろー。…あ、あとヒッキーも」

 

 抱き着かれた由比ヶ浜は苦笑を浮かべながら小町の頭をなで、ついでに俺の方も一瞥した。いや、ついでかよ。ていうかなんだよその挨拶。どこの部族の新年なのん?

 

「そうですとも。小町はいつでも元気ですよ。元気という言葉の正反対にいる兄を持っている身としては、やはり世界の元気を小町が肩代わりしなくてはいけませんので」

 

 その理論だと世界の負の部分を一身に俺が背負ってるみたいでカッコいいな。世界の腐の部分を一身に背負ってる人間もいるし。

 とくだらないことを考えていると、もう一人の人物、雪ノ下も申し訳なさそうに小町に言う。

 

「明けましておめでとうございます。受験勉強で忙しいところを呼び立ててしまって申し訳ないわね、小町さん。新年早々で悪いのだけど、比企谷君がこの世に存在していることとともに謝罪するわ。ごめんなさい」

 

「いや、俺完全にとばっちりだよね?それにこいつまあノリノリだったから別に気にしなくてもいいぞ。…いい息抜きになるだろ」

 

 最後、小町には聞こえない程度につぶやく。しかし対面の彼女には聞こえていたようだった。

 

「あら、少しは『お兄ちゃん』らしいところもあるのね」

 

「それは認識が甘いな、雪ノ下。俺以上に小町のお兄ちゃんが似合う人間もその大役がつとまる人間も存在しない。ちょうど月が地球の周りを常に回るように、千葉県農家にマックスコーヒーがつきもののように、小町のそばに常に俺がいるように、だ」

 

「最後のは例えになっていないのだけれど、あなたの小さい脳みそがやられてしまう程度の小町さんへの愛は理解したわ。…気持ち悪い」

 

「なんかいったか?」

 

「き、も、ち、わ、る、い」

 

「いや、別に聞こえてますけどね。でもそこは流れ的に『別になんでもないわ』と言う所じゃないでしょうかね…」

 

「ま、まあまあゆきのんもヒッキーもその辺で…あ、来た」

 

 いつものように苦笑で仲裁する由比ヶ浜は、駅の方向を見てつぶやく。そんな彼女につられ思わず俺も振り向くと、茶髪のふわふわした女子と、黒髪の目付きの悪いギャルがいた。突然の見知らぬ人物の闖入に小町は目を白黒させる。そう言えば初対面か。

 

「結衣先輩も雪ノ下先輩も、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。…あ、ついでに先輩も。おめでとうございまーす」

 

  あれ、またついで?俺だけ軽くない?適当じゃない?

 

「いろはちゃん、明けましてやっはろー!」

 

「一色さん、明けましておめでとう。今年もよろしくね」

 

「…結衣、あーし眠いんだけど」

 

 一色の後ろで不機嫌そうにしていた三浦優美子はケータイをいじりながら口をとがらせる。まともに挨拶もできんのかこの女は。しかし当の由比ヶ浜と言えば特に気にする様子もなく、笑いながら続ける。

 

「優美子も明けましてやっはろー。ごめんね?急に呼び出しちゃって」

 

「ど―せ暇だったしそれはいいんだけど…つーかその挨拶の方がわけわかんないけど。なに、ヒキオも来てたんだ」

 

 その感想には全面的に同意だ。俺を一瞥する三浦に一応適当に答えておく。

 

「おう。来てちゃ悪いか?」

 

「別にんなこと言ってないし。新年から突っかかってくんなっての。…ま、おめでと」

 

「おめでとさん」

 

 軽く言う三浦に、俺も軽く返す。しかしケータイをながめて何かを思い出したのか、一転不機嫌そうに口を開く。

 

「てか、あーしメールの返信もらってないんだけど」

 

 メール?メールをするような仲ではなかったはずなので、心当たりと言えば今朝の新年の挨拶くらいしかない。俗にいうあけおめメールである。

 

「…あれにどう返信すればいいんだよ。つーか「今年もよろしく」って去年がそもそもよろしくされた覚えがねえよ」

 

「はぁ?あんだけあーしのこと振り回しといて、なんでそんなこと言えるわけ?」

 

 振り回されてたのは俺の方なんだよなぁ。しかしそれを言えば三浦がさらに不機嫌になりそうだったので適当にうなずいておく。ていうか、俺は奉仕部関連以外の女子のメールに対してはスルーする習性が染みついてるんだよ。だってどうせスルーされるんだもん。…なんか涙が出てきた。

 

 やれやれと頭を振りつつ、三浦の視線は俺の横にいる小町に移る。怪訝そうに見る三浦に、なぜか慌てて小町は口を開く。いや、気持ちはわかるけど。だって怖いもんこの人。

 

「新年明けましておめでとうございます。はじめまして、この愚兄の妹をやらせてもらってます、比企谷小町って言います。以後お見知りおきを!」

 

「いや、初めましてじゃないっしょ。夏の千葉村の時もあんたヒキオにくっついてなかったっけ?」

 

「?それはそうですけど…」

 

 困った様子でチラリとこちら見る小町。…ああ、そうか。俺は三浦を一瞥して納得する。あの時とは三浦優美子の見た目が違う。金髪から黒髪。けばけばしい化粧から普通の女子高生のそれ。俺は簡潔に小町に耳打ちする。

 

「三浦優美子。葉山と一緒に去年の千葉村のリア充グループの中心にいた金髪縦ロールのギャル」

 

 記憶をたどっているのか、小町は目を瞑って頭を両手に当てる。得心がいったのか、ああ、と手を打つ。

 

「いや、いや、そりゃ覚えてるけど、どう考えてもこの人とはべつじ、ん…」

 

 しばしの沈黙ののち、小町はギ、ギ、ギと壊れた機械のように三浦の方向へ振り向く。

 

「み、三浦優美子さんですよね!?去年千葉村でご一緒させていただいた」

 

「…なに?あーしのこと忘れてたの、あんた。あーし人から忘れられることそうそうないんだけど」

 

「いいいいいいや、いやいやいや、ほら、あの、ですね」

 

 …いや、察してやれよ。忘れてても仕方ねえだろ。機嫌をさらに損ねる三浦に小町は慌てて手を振る。

 

「前会った時よりも、その、なんというか…ギャルっぽくないというか…丸くなったというか…」

 

「あ?」

 

「ひ、ひぃ!?いえ、そう言うことではなくてですね、え、えーっと…その…そ、そう!とっても可愛くなっていて気が付かなかったというか!」

 

「…は?」

 

 絞り出したような小町の言に今度は三浦が固まる。三浦の様子にさらに焦る小町はまたすがるように俺を見る。…いや、三浦さん顔赤くなってますけど。憤怒とは別方向で。

 

「ね、ねね、お兄ちゃんもそう思うよね?小町気づかなくても仕方ないよね?そうだよね?ね?」

 

 来年小町が総武高校に入学する可能性も考慮すると、確かにここは下手なことは言えない。女王に目をつけられるわけにはいかない。ましてや今やただの金髪ギャルではなく、一応は三浦優美子は俺たちの高校の生徒会長である。

 

 俺も仕方なく合わせる。

 

「…気づかなくても仕方ねえだろ、そりゃ」

 

「あぁ?どういう意味だし、ヒキオ?」

 

 金髪ドリル厚化粧と黒髪ロング薄化粧。例えるなら一般人が悪役令嬢に転生したくらいのギャップがある。…いや、わかりにくいうえに状況は逆だな。小町は同意した俺に、文字通り胸をなでおろした。

 

「そ、そそ、そーだよね!いやはやー、小町も驚いちゃいましたよ。あの三浦さんがこんなに可愛らしくなってるなんて。ねー、お兄ちゃん」

 

「まああの時と比べればそりゃちっとは可愛…」

 

 いつものように調子に乗った小町に俺もついつられてうなずく。あれ、なんかいままずいことを…。

 

「あ、あんたら…」

 

 俺と小町は顔を見合わせ、恐る恐る目の前で震える女子を見る。

 

「…っ、こ、この…バカ兄妹!」

 

 あまりの剣幕に思わず頭を抱える俺と小町をよそに、三浦はピューっと全速力で神社の先へと走っていく。…いや、年下に可愛いって言われたくらいで動揺しすぎでしょあの人…。今日日おっさんですら「かわいい」とjkに形容される日本社会だぞ。おっさんですらかわいいとか愛しのマイエンジェル、戸塚と小町のかわいさと言ったらもう言葉には表せ…

 

「…ねえ、お兄ちゃん」

 

 俺の「kawaii」論は小町の呼びかけで打ち切られた。そろそろ世界にも打って出れそうな「kawaii」を発見できそうだったのに…。

 

「なんだ」

 

「い、いや…三浦さんって、ほんと、いろんな意味であんな可愛い人だったっけ?」

 

「お前、本人の前で絶対そんなこと言うなよ」

 

「むー。流石の小町でも今の見たらそうそう言えないけどさ…。なんか、すごい変わったね」

 

「…まあ、見た目はな。中身は今も、多分今も昔もあんなもんだ。ポンコツだポンコツ」

 

「へー。結構三浦さんのこと知ってるんだお兄ちゃん。…っていうかそれはお兄ちゃんにも言えるんじゃない?」

 

 気分よく女王の悪口をいう俺に、小町は困ったような笑みを浮かべる。…なに、その本気で呆れたみたいな笑顔。

 

「お兄ちゃんが流れとはいえ、『可愛い』とか本人の前で言っちゃうなんて小町驚きだよ」

 

 うぐ。

 

 一瞬言葉に詰まったが相手が小町だからか、いつもの調子で続く言葉は自然と出てきた。

 

「お前それはあれだ、別にあいつは俺が何を言おうがお互いに勘違いの余地がねえんだよ」

 

 カーストトップとぼっち。性格は正反対。そのうえ彼女には想い人がいる。これでは含むところなどあるはずもない。

 

「へ~~~~~。ふ~~~~~~~~~ん。ま、そういうことにしといてあげようかな。今・日・は」

 

 ニヤニヤと腹の立つ笑顔を浮かべる小町を前に、俺はため息を吐くしかなくなる。こうなったら俺の意見なんて関係ないからなぁ。

 

「さあさ、昼が近くなれば余計混んでくるでしょうし、三浦先輩がはぐれても困りますし、そろそろ行きましょうか」

 

「…そうね」

 

「…そうだね」

 

 カラカラと笑う一色。絶対零度の視線を俺に向ける雪ノ下。リスよろしく頬を膨らませる由比ヶ浜。俺はまたため息とともに歩みを早めた。…べ、別にビビったわけじゃないからね!

 

 

 


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