協調性を養うとの名目でぶちこまれた先は生徒会室。
 そこには総武高で名高き生徒会長の一色いろはが待ち構えていた。
 三年生になった比企谷八幡は奉仕部を介すこと無く出会った一色いろはにどう対応するのか──ッ!!

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 えー、お久しぶりです。
 前回の投稿からおよそ半年が経ったこの頃──ふいに一色いろはが頭に過ったという事で書いちゃいました。

 今回も当然八幡×いろはです。
 文章力が低いので読んでておかしな点があるかと思います。
 その場合遠慮無く感想欄へ。

 それと完全自己満足で書いたためクオリティは保証出来ません。
 それでも良ければどうぞ──。



やはり俺と一色いろはの生徒会は間違っている!(前編)

 いつからだろうか──。

 

 何もないことが日常となり、家族以外誰とも話さない日に憂いを感じ始めたのは。

 

 それは自分がかつて望んでいた環境だ。

 

 自分の願いは神に聞き入られたと言うのに──この退屈を愛せない自分が確かにいた。

 

 一人でいるのが当たり前。

 

 既に出来上がったコロニーに参加せず、常に孤独でいる。

 

 友情なんて将来自分の首を絞める枷でしかない 。

 

 それを信条として頑なに守り続けてきたモノだったはずだ。

 

 なのに────なのに何故だろう。

 

 ────何かを間違えてるような意識に苛まれていた。

 

 ■■■

 

 高校三年生となれば必然的に受験というワードが脳内に付きまとうものだ。

 

 俺もその例に洩れず、志望校に合格できるよう切磋琢磨している。

 

 場所は図書室。

 

 ここには受験対策プリントもあり、なによりリア充にとっては無縁の地であるため静かなのだ──要するに居心地が良い。

 

 プリントはそれぞれ志望校ずつ分けて用意されてあり、そこらの配慮はさすが進学校であると感心させられる。

 

 無造作に上から一枚プリントを取り、薄い壁で仕切られた机に持っていき、そそくさとペンを走らせる。

 

 理想としてはテキストなど何も見ずにすらすらと回答が出れば良いのだが、現実はそうも上手くいかない。

 

 たった一問に詰まれば後続に続く問題も自然と詰まってしまう──これだから数学は嫌いだ。

 

「……やべ」

「はぁ……遊びたがりの高校三年生が一人で毎日毎日よく勉強してられるな」

 

 止まった手のタイミングを見計らってか、呆れた口調で俺に話しかける声がした。

 

 振り替えれば女性では比較的長身の女教師が今日もいた。

 

 ここ最近ずっと話し掛けられているような気がする。

 

 嫌がらずにここに来る俺も俺だが、この人もこの人だ。

 

 平塚先生……だったけ。

 

「……これしかすることがないんで。ていうか先生こそ俺に構うより他にすることないんですか?」

「生憎、君のような不良生徒を更正することを生業としていてな。──行き詰まってるのか?」

 

 横から中途半端に解かれたプリントを覗かれる。

 

 そのまま数秒唸ってると、俺のペンを取ってすらすらと続きを書くように問題が解けていく。

 

 あ、なるほど。こうやって解けば良いのね。

 

「ふふん、これでどうだ」

「さすが本職ですね。専攻外の分野でも解けるんですか」

「元々数学は得意な方なんでな。──さてこれで切りがよくなったな」

 

 どこか誇りながら先生は言う。

 まぁ……今のが最後の大問でしたからね。

 

 すると、俺に立ち上がるようにジェスチャーをし──。

 

「ついてきたまえ。つい最近、今の君に必要なものを見つけた。それを今から教えてやる」

「は、はぁ……」

 

 その後ろ姿からは何かを企んでるような、どこか環境を変えられそうな恐怖を感じさせられる。

 

 帰りたいしめんどくさいのは山々だけどこの状況じゃ言いにくい……。

 

 はぁ……それにしても生業としてる人から指導ですか? 何かしましたっけ?

 

 ■■■

 

 図書室からここはあんまり離れていないが、立ち寄る縁もゆかりもないところ──って『生徒会室』じゃん。

 え、なに……まさか生徒会長と平塚先生の両方に叱られるの? ダブル説教?

 

「ここだ────入るぞ」

「えっ! ちょまっ……!」

 

 その声は扉の向こうから聞こえたのだが、お構いなしにガーッと開く。

 

 えー……いいのかな。その……アレな感じだったらどうしよ。

 

 と気にしていたのは杞憂だったらしい。

 

 中では俺の想像を斜め上に越え、悲惨なことになっていた。

 

 そこはまるで強盗に押し入られたような状況である。

 

 飛び散ったプリント、開けられた棚、そして乱れた服装────うん、強盗ですわ。よし警察に──。

 

「ち、違うんですよー! これはですね、海よりも深い訳がありまして……」

「ほぅ? でもそれは深海よりは浅いだろう?」

「は、はい。すみません」

 

 シュンとし、肩を狭めた少女は俯きながら謝罪する。

 

 そしてしばらくしてから俺の存在にようやく気がついたのか「ヒッ」と驚いた様子を見せた。

 

 ……う、うん。その反応は慣れてるとはいえ何かぐさりときますね。

 

「あぁ紹介が遅れたな。こいつは比企谷だ、友達がいなくて暇なやつだから今日からここに置くことにした」

 

「「は?」」

 

 俺と彼女の声が重なる。

 え、いえ……聞いてないんですけど?

 

 それは彼女も同じらしく、同様の反応を見せていた。

 

「わたしそんなこと聞いてませんよ!? それに部外者をこの部屋に置くのもどうかと思いますけどー……」

「そうですよ。俺も受験勉強とかしたいですし、こんなところで拘束されてるわけには……」

 

 俺らの反論に平塚先生は意にも返さずフフンと鼻をならして返答した。

 

「比企谷、お前には二年間身に付けられなかった『協調性』を覚えてもらおう。社会に出たときに一番必要なスキルをお前は昔に捨ててしまったらしいからな。一色、〝お前は何もしなくていい〟。比企谷をそうだな……オブジェクトのようにしとけば良い」

 

 オブジェクト? あぁプロジェクトの類義語ね────アホか。

 

 ともかく、俺はその言葉に理解が追い付かなかった。

 

 思考が数秒停止して、誇張した表現を借りれば時が停止したまでに感じられた。

 

 ……協調性? なにそれおいしいの?

 

「あのー……」

「これは決定事項だから従ってもらう。反論異論抗議不服申し立て抗弁物言い──その他もろもろ全て認めん。生徒会を担当する教師として会長に命ずる」

 

 一気に捲し立てるような物言いに彼女は身を縮こませ、そして潤んだ瞳のままゆっくりと頷いて、

 

「は、はいー! ま、任せといてください!」

 

 えー、この子俺の意見を聞くこと無くペチコーンとウインクを決めて了承しちゃったよ……。

 

 で、でも八幡負けないんだから!

 

「あの先生? この学校は生徒の自主性を────」

「先生の命令に逆らっても良いと生徒手帳に書いてあったか?」

「……ないっす」

 

 決死の覚悟もわずか二秒で撃沈……。ふえぇ、だって怖いんだもん。……これだから結婚が────。

 

 と、内心呟こうとした瞬間、拳が空を切り顔の横を素早く通り抜けた────お、お見事。

 

「失礼なことを考えていたろ?」

「め、滅相もございません。……と、とにかくここに居れば何もしなくていいんですね?」

「その通りだ。とりあえず居てくれればそれで良い。これ以上は生徒の自主性を重んじて何も言わん。せいぜい頑張ってくれ」

 

 そうカッコよく言い残し、先生は去っていった。

 ……放置ですか?

 

 え、本当に待って……。期間とか来なきゃいけない日とか一切聞いてないんですけど。

 

 しばらく呆けて状況が理解できないままで数秒が経過した。

 

 先に口を開いたのは彼女のほうだった。

 

「とりあえず座ったらどうですかー?」

「え、あ、あぁ」

 

 適当に端に寄せられていた椅子を運び、彼女の向かいに座るように腰を掛けた。

 

 手持ち無沙汰になった俺らは特に接点があるわけでもないし、ましてやボッチ街道をウェイウェイ歩いてきた俺にこの状況を打破できる手段は持ち合わせてなかった。

 

 か、帰りたい。

 

「あの……ひ、ひき……んっんぅ……先輩、何をやらかしたんですかー?」

 

 短く咳払いして、何かを誤魔化した後何かをやらかした前提で話を進められる。

 

 そんなに比企谷って呼びにくいかな……。

 

 いやそもそも別に勉強してたら呼び出されただけなんですけどね。

 

「別に。何にもやらかしてないな────えっと……」

 

 ……こいつ名前なんだっけ。そう言えば自己紹介がまだだったな。

 

「二年の一色いろはです。一応生徒会長やってるんで知ってると思いますけど……」

 

 すまん、全く知らなかった。

 ……ん? こいつ二年って言わなかったか?

 

「3-cの比企谷八幡だ。……今二年ってことは一年生の時に会長に立候補したのか?」

 

 それを聞くと一色に薄い影が下りたような気がした。

 タブーな質問だったのか、自嘲気味に笑いながら答える。

 

「……はい。やっぱり……おかしい、ですよね」

「さぁな。俺の観点からすればどうでもいいが────まぁ回りの奴からしたらおかしいんじゃないのか?」

 

 俺の容赦ない物言いに一色は更に落ち込む。

 しまったな……そんなつもりはなかったんだけど。

 

「ですよね。まー良いんです。これで内申とか評価とかガッポガッポですし!」

 

 その言葉に俺は素直に同調する気にはなれなかった。

 目が泳ぎ、手元が落ち着かない──典型的な嘘だ。

 

 本心から言ってないことはすぐに見抜けたが、だが長年のボッチライフに慣れ親しんでいたせいか掛けて良い言葉が見当たらなかった。

 

 仕方あるまいと、誰に言い訳をするわけでも無く俺は話題を反らすことにした。

 

「そういや他の生徒会の奴らはどこかに出掛けてるのか?」

 

 するとまたまたタブーな質問だったのか暗い影は再度落ちてきた。

 え、何この子……俺の話は全部タブーなの?

 

 「ハッ」っと再度、自嘲気味に笑い捨てながら吐き捨てるように告げた。

 

「今日は元々生徒会が無い日なんです。ですから他の人はいませんよ?」

「じゃあ何でお前はいるんだ?」

「…………仕事がまだ残ってるんで」

「は? なら別に今日じゃなくて回りの奴等がいる日にでも……」

 

 生徒会のシステムと言うのはよく理解してる訳ではないが、一般的に漫画で見るものと概ね変わらないと認識している。

 

 そのテンプレートになぞるならば、一色の抱えた仕事は分担して終わらせるべきであり、それは率先して副会長やその下の役職に就くものの勤めである筈だ。

 

 言われるまでもないことだろう。

 

 ……と、言ったものの何となく俺には今の生徒会の現状が理解出来つつあった。

 

 いわゆる悪い職場の縮図を見てるような気分だった。

 仕事を抱え込む人、それを見て見ぬ振りをする人────。

 

 つまり一人は皆のために皆は皆のために──だな。

 

 なるほど。何となく分かりましたね。

 

 こりゃタブーなわけだ。

 

「悪い……」

「いえ、大丈夫ですよ慣れっこですし────これ以上迷惑もかけられないんで」

 

 その時の一色の瞳は焦点があってなかった。

 

 昔の失態を思い出してるのだろうか──。

 

 それを引きずって、お互いの関係にヒビが入る……まぁ有りがちな話ではあるが、それを学校で見るとは思わなかった。

 

「まぁ……あれだ。究極に困ったら助けを乞え。そんときに見捨てるアホはいないだろうからな」

 

 そう言うと一色は軽く微笑んだ。

 

「ふふっ──ありがとうございます。……褒めても何にも出ませんよー?」

「アホか。褒めてねぇよ────ていうか片さなくていいのか?」

 

 そう訊くと一色は思い出したかのように悲惨な状況を再認し、せかせかと動き出す。

 

「わ、忘れてました! ……先輩、究極に困りました。よ、良かったら一緒に片してください!」

 

 随分お早い究極なことで──。

 

「まぁ……これは俺にも影響がありそうだしな。……でもどうしてこんなことになったんだ?」

 

 先生は強盗だと思ってないらしいが……これ普通の荒らされ方じゃないぞ?

 

「えっとですねー……明後日提出のプリントを探してたんですよ。でも見当たらなくて……それで気付いたらこんな風になってましたねー」

 

 なるほど……って頷けないんですけど。

 何この子、探し物が苦手なの?

 

「結局見つかったのか?」

「あ、はい。ここにちゃんと」

 

 ヒラヒラとさせた紙は一週間後に控えた『生徒総会』の手紙だった。

 推敲が終わったと見られる文体の手紙には日程や当日予定が書かれていた。

 

 ……ていうかそれを俺に見せてもいいわけ?

 

 と、ここで俺は少し違和感を感じた。

 

「……なぁ。それ少しだけ見せてもらっても良いか?」

「へ? はぁ……見たことを内緒にしてもらえるならいいですよ」

 

 なるほど箝口令が敷かれるわけですか。

 まぁ話す友達もいないし、いいけど。

 

 貰った原稿を俺は手に取り、改めて内容を確認する。

 

 その様子を一色はじぃっと見ていたが、まぁ気にしないものとする。

 

「……これさ。お前一人で作ったのか?」

「あ、はい。私がやりました」

 

 正直に言えば大分拙いものだ。プリントも句読点を多用しすぎて、ごちゃごちゃとなり見にくい。

 

 初心者にありがちな「とりあえず書いとけ!」という空気がこの一枚から滲み出ていた。

 

 ……こいつ本当に大丈夫なのか?

 

 ただ決して間違ってるとは言えないし、全く読めないというわけではない。

 

 しかしまだまだ改善の余地があるように思える。

 

 というより改稿を強くオススメしたい。

 

「例えばさ……生徒総会ってどんなことが重要だか分かるか?」

「はぁ……学校の決定事項をいかに簡潔に伝えられるかとかー……学校に関心を持ってもらえるように説明する……とかですか?」

 

 俺は一色の回答にふむと頷く。

 確かにそれは間違いではない、むしろ回答としてはほぼ満点に近い────だか違う。

 

 生徒総会で大切なことはそんなことではない。

 

 他にもっと重要で、何がなんでも防がなければならない事態が存在する。

 

 それを一色は見落としている。

 

「全部違うな。それじゃあ不正解だ」

「えー……じゃあ何が重要なんですか?」

 

 不服そうに一色は抗議の声を上げる。

 

 勿論俺も回答が無いのにそんな否定をしたりは当然しない。

 

 生徒総会でもっとも重要なこと──それはッ!

 

「────〝トーク力だ〟」

「は?」

 

 俺が答えを言うと一色の見る目が一気に変わった。

 

 あ、あの……干からびた両生類を見るような目付きは止めてくれませんかね。

 

 ただ大切なことなので咳払いをした後、俺は続ける。

 

「生徒総会とは二つの側面にある思惑を理解しなくては成功とは言えない」

「は、はぁ……」

「二つの側面とは主に『生徒の目的』と『先生の仕事』のことだ。これに対する理解がお前には決定的に欠けている」

「理解に……欠けてる、ですか?」

 

 ふむ、どうやら少しは興味を持ってくれたらしい。

 

 こうなると喋る俺の方にも気合いが入ってくる。

 

「生徒総会の理想と言う点ではお前が挙げた伝達や関心で間違ってない。だが現実の場合、そんなことどうでも良いという生徒で大半なんだ。お前だって生徒会長じゃなきゃこんなイベントに興味すら示さねぇだろ」

「まぁ……ぶっちゃけどうでもいいです」

「それが一般生徒の共通認識だ。となれば生徒側のすることと言えば寝ることのみとなる。無論、話す輩は居ない──それは電車の中、大声で話すのを控える心理と同じだ。誰もが自粛する」

「な、なるほど! 生徒側の目的は寝ること……でしたら教師側は……!」

 

 もうここまでくれば一色でも理解できただろう。

 そう、教師の目的は……!

 

「生徒側の寝ることを防ぐ、ですよね!?」

 

 ……あぁ。やっぱり一色だな。本当に生徒会長なのか?

 

「違う。教師の目的は『静かに過ごすこと』だ」

「へ? 静かに……過ごす?」

「そうだ。生徒総会なんてたった一枚のプリントで纏められる薄っぺらい内容を引き伸ばしてるだけだ。となれば教師のすることなんて生徒の注意くらいになる」

 

 事前に職員会議で内容を伝えられているというのもあるだろう。

 なので余計に教師陣はやることがないのだ。

 

「で、でしたら注意こそが……」

「注意なんてことより静かに椅子に座ってた方が楽だろ? わざわざ休める時間が公認されてあるんだ──それくらい静かに過ごしたいに決まってる」

「そ、そうですか?」

 

 そうに決まってるとも。

 

 人間は楽な方へ流される生き物。

 

 不遜な生徒に注意するよりかは間違いなく、パイプ椅子に腰を掛け平和に話を聞いてる方が圧倒的に楽に決まってる。

 

「これでお互いの目的は出揃った。あとの仕事は生徒会にある。────それは寝させない話術……それだけだ」

「寝させない……話術」

「あぁ」

 

 これを噛み砕いて言うならトーク力。

 明石家さんま、今はなき島田紳助あたりがパッと思い付く代表格である。

 

 人々に笑いを届ける彼らのトーク力はずば抜けて優秀とも言える。

 

 まず彼らと話して途中で飽きる人なんていないはずだ。

 

 巧みな話術で話のツボを抑え、相手の反応を伺う──そして相手の良し悪しを見てどういった傾向の話を好むのか、また場の雰囲気を捉えて話題を変えたりとする。

 

 これは生徒総会に通ずるものがある。

 

 笑いが緩い空気を作り上げ、そしてウケを誘う。

 静かな空気を醸し出し、緊張感を敢えて高める。

 

 決め細やかな反応のチェックを毎秒ごとに見て、そしてすぐに切り替える。

 

 それが結果的に寝かせないということになるのだ。

 

 よってトーク力があれば生徒総会の攻略難易度はSSからBくらいに落ちるだろう。

 

「────と言うことだ。分かるか?」

 

 一色はただただ呆然としていた。

 

 え、何……長いから聞いてませんでしたとかやめてくださいよ?

 

「せ、先輩ってもしかして頭良いんですか?」

「ふっ……国語学年一位だ」

 

 自慢はあまり好きではないが、事実を湾曲させて伝えるのは俺の意に反する──ふっ……悪いことは出来ないのさ。

 

「総合ですと?」

「に、二十八位」

 

 ……わ、悪いことは出来ないのさ。

 

「ブプッ……何ですかそれ?」

「こ、これもトーク力だっ。まぁ俺には無縁のスキルだが」

「先輩……本当に友達いないんですね」

 

 そ、そんな深刻そうな目で見るのは止めてー! つ、作らないだけなんだからね!

 

「……うっせ」

「プッ、それもトーク力ですか?」

「ちげぇよ。───んなことよりソレ……修正しなくていいのか?」

 

 俺は手にしていた紙切れを一色に返す。

 

 きっとトーク力の話を聞いた後ではそこに書かれている文面では駄目であると気づく筈だ。

 

 一色がプリントに書いた内容は至ってシンプル。

 

 報告する内容を簡易的にまとめて、終了予定時刻を書いたくらいだ。

 

 これでは誰も関心を寄せること無く、難しい状況のスタートを切ることになる。

 

「廃棄──ですね。また一から作り直してみます」

「まぁそれが妥当だろうな」

 

 正直推敲したものを書き換えるのは相当大変だ。

 文面上に言葉の雰囲気の差異が出てきてしまい、違和感を生む原因となる。

 

 ならもう一度書き直してしまえば良い。

 

 一色には次があるんだから。

 

「…………明日。明日他の皆さんと話し合うんで先輩も来てくださいね」

「……了解だ、会長」

 

 こうして挨拶代わりとも言える言葉を交わして俺らの一日目は終わった。

 

 しかし次の日、後悔することになる。

 

 もう少し一色いろはに対する理解を深めておけばよかった、と。

 




 お読みくださりありがとうございます。
 駄文につき、お目を汚してしまったら申し訳ありません。

 勿論、これにて終了というわけでは無く後編も考えております。
 後編でいろはすがあんまりあざとくない理由も判明する感じです。

 ……意外と原作を真似て書くって難しいんですね。

 いつになるかは分かりませんが、後編もよろしくお願いしますm(__)m


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