第1話
「……ここがアインクラットか。」
俺はそう呟き、周りを見渡す。
ヴァーチャルとは思えないほど綺麗であり、リアルだ。
現実だと言われれば信じてしまいそうなほどに。
森とかだともっと綺麗なのだろうか。
楽しみになって来たな。
前に目を向ければ固まって歩いている人もいれば1人で外に出る人もいるようだ。
今も茶髪の青年が黒髪の少年に話しかけている様子。内容はおそらくレクチャーだろうな。
俺は人と関わるのは面倒だから話しかけるなんてことはしないが。
とにかく準備をしよう。
武器と防具にいくらかの回復アイテムがあればいいだろうか。
武器は……単純に片手剣にしよう。使いやすそうだし。盾は……いいか、重そうだ。
今日の目標は3レベまで上げることとソードスキルのマスターと行こう。
「さて、行きますか。」
俺はそう呟いて駆け出した。
準備を終え、圏外へ飛び出した俺は早速剣を抜いて敵を探すことにした。
……いたか。
のそのそ歩いている敵mobフレンジーボアに斬撃を浴びせる。
気が付いて攻撃をしてくるものの余裕で回避できる。
練習台と言われてるモンスターだけあるな。
「遅い。」
そう囁いて回避しては斬り、最後に突いて倒すことができた。
「よし、倒せたみたいだな。」
ステータスを見る。
変わった所は無いが何か感慨深いものを感じる。
そうだな、次はソードスキルを発動させて倒してみるか。
えーっと……スラントにホリゾンタルとかがあったな。
何事も練習が大事。
あと基本も。
「 ふう……。」
レベルが3に上がったところで俺は一息ついた。
「レベルは達成できたがスキル発動がまだ甘いか。」
高確率で発動できるようになったとはいえ、まれに失敗することがある。
「肝心な時でも安定して発動できるようにしないとな。」
3回ほど発動に失敗してダメージを喰らってしまったから。
ゲージの割合は8割くらいあるがな。
ボス戦で失敗しようものならどうなるかは火を見るより明らかだ。
「火力が高い分発動が面倒という訳か。とにかく経験を積もう。」
そう呟いてポーションを飲もうとしたところ、身体が光に包まれていることに気が付いた。
どういうことだろうかと考え終わる頃には俺はどこかに転移していた。
俺が転移した場所ははじまりの街の中央広場だった。
俺だけでなく、他のプレイヤーも次々と転移してきたようだ。
「……どういうことだ。」
瞬く間に人で中央広場が埋まって行く。
「全プレイヤーが転移しているのか?」
俺の言葉は誰にも届くことはなかった。