Solitude Art Online   作:自由気ままな人

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 ポーションの詳細設定は「ポーションで回復させた時は時間経過が必要。」とある原作からゲームバランスを考えて本作独自の設定をしています。
 原作はこうだ、とかバランスがおかしい、とかありましたら感想欄にお願いします。

 アンケート実施中です。
 詳しくは前話の後書きにて……。



第13話

 アスナが立ち直ったはいいが状況は良くない。

 というかアスナ、女性だったんだな。

 でも今はこんなことを考えている場合ではない、戦闘中だ。

 G隊のHPは全員8割以上あり、ポーションを適宜飲んでいるため安全だが他の隊のHPがよろしくない。

 取り巻きはスコールら2人がいるとはいえまだ処理できていないし、F隊はもちろんAB隊も相当消耗していてHPや集中力の回復に時間がかかる。

 HPはポーションを飲めば死にかけでも100秒経てば全回復するが集中力はそうはいかない。

  ちなみにポーションを飲んだ時の回復量は1秒につき最大HPの1%ずつ回復していくシステムになっている。

 例えばHPが500/1000でポーションを飲んだら1秒ごとに10ずつ回復し、50秒後に全回復すると言う訳だ。

 その間にダメージを受けたりしても回復量や回復時間は変わらない。

 回復量や回復時間が更新されるのは飲み直した時だけとなっている。

 そのため回復しきる前に攻撃を喰らうとそのまま死んでしまう場合があるので時間を置く必要がある。

 フロアボスの場合、スキルの硬直を補うのに加えて回復をするためにもスイッチをする必要があるのだ。

 今回の場合それに加えて初めてのフロアボスや死人ということで全体的に疲労が加速している。

 俺はアハトと徹夜で狩り続けたこともあるからまだ平気だが周りはそうもいかない。

 「アハトは救助を!!アスナとレンジは俺に続いてくれ!!」

 「分かったわ!!」

 「休む暇もないぜ……。」

 「全くだ。」

 キリトが指示を出し、俺はポーションの瓶を投げ捨てて2人について行く。

 アタッカーが少ない以上俺達がダメージソースにならないと長引いて逆に死人が出るな。

 E隊に攻撃が行っているので俺達は遠慮なくソードスキルをぶち込んでいる。

 今の攻撃で敵が転んだ、チャンスだな。

 「よし、CとG隊は敵が起き上がり次第下がれ!!D隊は前へ!!A隊はC隊とスイッチ!!E隊はまだいけるか?」

 「おう、まだ大丈夫だぜ!!」

 年長のプレイヤーが威勢良く返す。

 「よし!!F隊の人数が少なくなったからG隊から1人来てくれ!!」

 「俺が行く!!セフィロスは取り巻きを頼む。」

 「いいだろう。」

 取り巻きの排除が終わったスコールがF隊に移動するか、覚えておかないと危ないな。

 イルファング・ザ・コボルドロードが起き上がる動作をしたため俺達は下がってAD隊に任せる。

 その間俺達はポーションを飲んで一息つく。

 スコール以外の5人が集まるが少し疲労の色が見えているようだ。

 「ようやく半分ね……。」

 「あと一回取り巻きが出て来るからそれを片付ければ俺達の仕事は終わりだ。と思いたい……。」

 「嫌な予感がするのだが……。」

 「奇遇だな、俺も同じだよ。」

 「……畳み掛ける時は気を付けた方が良い。武器変更があるからな。」

 そうだ、それがあったか。

両手剣で薙ぎ払われでもしたらたら死人が出てもおかしくないから注意してもしすぎる事は無い。

 「何に持ち変えるかだけど……ベータの時は曲刀だったから射程が斧より短くなるけどソードスキルの頻度が上がってたな。」

 キリトがそう言う。

 「変わる前提で考えると、盾を捨てて両手剣が濃厚に見える。」

 推測だから盾を捨てて曲刀ともう片方の手で殴るとかの可能性もある。

 これは奇襲に近い分威力が高くなさそうなので確率は低いと俺は考えておいて思った。

 「変わらない可能性も考えた方がいいんじゃないかしら?警戒させて肩透かしということもあるんじゃない?」

 「それもそうか。とにかく油断はするなよ。」

 「今更だろ、それ。」

 キリトが当たり前のことを言い、アハトが呆れながら返す。

 HPは……3本目の1/4か。

 準備を始めよう。

 俺達が話している間に攻撃はBC隊、タンクはF隊に交代していたようだ。

 イルファング・ザ・コボルドロードの斧攻撃をカスケードで弾いているスコールの姿が見える。

 力強いなースコール、1人で弾けるものなのか……。

 もう少しかかりそうだし今の内に休んでおくとしよう。

 4本目になったら休む暇なんてないだろうし。

 「担当はどうする?」

 「私が一人で相手をしよう。キリトとレンジが組んで手早く倒し、アスナとアハトの援護に入れ。」

 「分かった。アハト、アスナを頼む。」

 「ちょっとキリト君?そんなに私が心配?」

 「いやそういうことじゃなくてだな……。」

 「……喧嘩は余所でやれ。」

 「俺は貝になりたい。」

 「…………。」

 3人が額に手をあてて呆れている。

 甘い空気は要らないって、今は。

 

 

 

 

 

 「3本目が1割を切ったからG隊は取り巻きの出現場所に!!そして全隊スイッチだ!!」

 戦闘も後半だと言うのにディアベルは最初と変わらない声で指示を出す。

「全隊って……いいのかそれは……。」

 キリトが走りながらそんなことを呟く。

 「まずいのか?」

 「ああ、スイッチする時は事故を防ぐために1隊ずつやるのが基本だ。一気に交代させると敵の動きの予測が難しくなるからな……。」

 「指示は出さなくていいのか?」

 「さっきのような緊急事態じゃない限り前のプレイヤーは口を出さない方がいい。前が混乱するからな。」

 「後ろが冷静じゃないと前が落ち着いて戦えないって訳か。」

 「ああ。……っと、お喋りはここまでだ。行くぞ!!」

 「そうだな。」

最後の仕事……にならない気がするのはなんでだろうね、本当。

 「合わせてくれ!!」

キリトがバーチカル・アークを繰り出し、右に回り込んだ俺も同じバーチカル・アークで追撃する。

この時キリトのスキルが終わってから出さないとお互いが干渉してキャンセルされてしまうのでタイミングが命だ。

俺に攻撃が来るが殲滅速度命だし取り巻き一発の攻撃で死ぬようなHPにはしてない。

死んだら終わりとはいえ死ななきゃ安いんだ、このゲームは。

1割も削れてないんだしな。

硬直から復帰したキリトがホリゾンタル・アークでトドメ。

 「アスナ達を援護するぞっ。」

 いちいち言わなくても……アスナがよほど心配なのだろうか。

 見るとルイン・コボルド・センチネルのHPは4割と言ったところか。

 キリトがパーチカルで削り、アハトが2撃ほど通常攻撃を当ててアスナがリニアーで吹き飛ばして排除完了。

 俺は後ろで見てただけである。

 ……援護2人も要らなかったな。

 とりあえずポーション飲んで備えるとしよう。

 イルファング・ザ・コボルドロードのHPは残り4割と言ったところだ。

 何事もなかったらしい。

 「よし、戻って備えるぞ。」

 「そうね。」

 「セフィロスは……大丈夫か。」

 浮舟で斬り上げて自分が飛び上がったところに壁を蹴ってさらに飛び上がり、クックックと言いながら地閃を繰り出してルイン・コボルド・センチネルに絶望を与えていた。

 「えげつねえなぁ……。」

 「楽しそうな顔してるからなおさら怖いわね……。」

 「攻略会議で一番怖かったのはあの人だろ……。」

 「そうか?少し変わった人だけどいい人だぞ。」

 強いしアイテムも譲ってくれたし、キバオウ黙らせてくれたし。

 警備会社の社長をやるくらいだからあんな性格なのだろう。

 「終焉を与えたか?」

 「ああ、しばらくは休めそうだ。」

 「…………風が、騒がしいな。」

 セフィロスも何か感じているようだな。

 嫌な予感が消えてくれない。

 

 

 

 「そろそろ武器交換ゾーンに入るぞ。」

 アハトが緊張した様子で言う。

 ベータの通り曲刀ならいいが両手剣だと厳しくなりそうだ。

 ……持ち替えたな……武器はなんだ、どう来る?

 「下がれ!!俺が出る!!」

 …………え?

 ちょっと待ってディアベルさん?

 武器が曲刀とは限らないんだぞ?

 「ダメだ!!全力で後ろに飛べ!!」

 キリトが察知したのか力の限り叫ぶ。

 しかしソードスキルを発動しようとしていたためディアベルの体は止まらない。

 いや、止まることができない。

 イルファング・ザ・コボルドロードもソードスキルを発動して2人が激突する。

 勝ったのは……イルファング・ザ・コボルドロードだった。

 ディアベルはソードスキルを喰らって大きくのけぞり、下がりきれていなかったアタッカー達も薙ぎ払われた。

 次にイルファング・ザ・コボルドロードがターゲットにしたのは……ディアベルだった。

 胴を一閃。それがディアベルへの止めとなり、蒼い破片となって散った。

 悲鳴すらもなく、茫然自失とするパーティー。

 しかしそんなことは関係ないと言わんばかりに硬直から復帰したボスが襲い掛かったのは先程薙ぎ払われたアタッカー達だ。

 彼らに三連撃のソードスキルが襲い掛かる。

 確かあれは緋扇……ということは刀か。

 「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 「やめてくれぇぇぇぇぇ!!!!」

 悲鳴が聞こえるもその距離からでは誰も間に合わない。

 キリトが助けに入るも遅かったようだ。

 何人かがまとめて斬られて数人がポリゴンへなって行く。

「チックショォォォォォ!!!!!!」

 落ち着けキリトっ!!

 お前まで死ぬぞ!!

 嫌な予感がしたのはこれかっ。

 「レンジ、俺はアタッカーの救助に行く!!俺じゃダメージソースにならないからな。」

 その分アハトはいくらかは冷静だ、やることが分かっている。

 「セフィロス、相手の刀を捌いてヘイトを向けてくれ。アスナはキリトのフォローだ。俺は全体の指揮を取る。」

 セフィロスに負担がかかるがこれしかない。

 刀となると使ってる本人が相手をするのがベストだろう

 というかパニックになりすぎだろう……ああ、また死人が……。

 「絶望を贈ろうか。」

 「分かったわ、キリト君を死なせはしない!!」

 セフィロスはいつも通りで安心する。

 アスナもさっきで覚悟をしたのか平気そうだ、まだ勝機はある。

 俺は後ろに下がって力の限り叫ぶ。

 「落ち着けぇぇぇぇぇ!!!!今ここでパニックになってる暇があったらアタッカーを助けたり、敵の攻撃を引き付ける準備をしろ!!」

 「レンジ、F隊は俺含めて3人しか戦闘に参加できない。E隊から協力者が欲しい。」

 スコールが俺に状況を報告して来た。

 参加出来るなら上々、戦力が一人でも欲しい所だ。

 「E隊リーダーのエギルだ。こっちは4人行動できる。スコールと言ったな、協力して敵の攻撃を止めよう。」

 もの凄く頼りになりそうだ、この2人。

 「了解だ。」

 「じゃあ仮にスコール隊とする。スコール隊はボスが倒れるまで攻撃を受け止めてくれ。死者をこれ以上出すな。」

 「おうよ!!」

 「フッ、言われなくてもそうするつもりだ。」

 そう言ってスコール達はボスに突撃して行った。

 セフィロスも少しは楽になるだろう。

 「アタッカーの方の損害はどうなっているんだ?」

 現状キリトとアスナしか攻撃していないため手数が足りていない状況だ。

 「A隊が1人、ディアベルだな。B隊が3人、C隊が2人死んでいる。隊を再編してもいいレベルだと思うが……。」

 D隊のリーダーが答える。

 「D隊は無傷なのか?」

 「ああ、外見は無傷だ。」

 ならば使わない手はない。

 見たところメンタルも大丈夫そうだ。

 「D隊、行けるか?」

 「行けます!!」

 これならなんとかできそうだ。

 「頼むぞ。絶対に死なないでくれ。」

 「俺達を舐めないでくれよ。ビギナーといえどレベルはかなり上げているんだ。」

 当座は凌げたが、スイッチ要因が欲しい。

 D隊やキリト達が崩れた時に援護できるプレイヤーがいないのだ。

 (アタッカーと壁どっちを再建すべきか……生存優先で壁だな。)

 俺は後ろにいる盾持ちプレイヤーに話しかけた。

 「大丈夫か!?」

 「駄目だ、怖くて立てない……。情けないがもう俺に壁は無理だ。あと俺はまだ喋れるが他の奴らは喋る事すらできない。すまない……。」

 5人が戦闘不能、か。

 ABC隊も似たようなものだろう。

 こうなったら説得するより倒した方が逆に安全なようだ。

 アハトがまだ回復させているのを見ると説得する以前の問題か。

 そしてキリトとアスナのHPが5割を切って注意域(イエロー )になっている。

 そしてボスのHPも1割以下だ。

 ……押し切ろう。

 そう決意して俺は前に出た。

 「キリト、大丈夫か?」

 「ああ。レンジ、アスナ、これで決めるぞ!!」

 「分かったわ!!」

 「分かった。」

 そして俺達はソードスキルを発動する。

 「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」」」

 攻撃はスコール隊が引き付けているため隙の心配は少ない。

 まず俺がホリゾンタル・アークを繰り出し、続けてアスナがオブリークで足を突く。

 最後にキリトがホリゾンタル・トライを発動。

 左からまず一撃。

 回り込んで右からまた一撃。

 最後に左下から斬り上げの一撃でイルファング・ザ・コボルドロードを真っ二つに斬り裂いた。

 斬り終わって数瞬したら斬られたモノが蒼片となって舞い降りてくれた。

 嗚呼、良かった、終わったんだ。

 「……終わった、か。」

 「……ああ、キリト、お前が終わらせたんだ。」

 実感がないようなので確かに終わらせたという事を伝える。

 「……勝った気が、しないんだが。」

 死人が出てるからな……できれば0にしたかった。

 「……そうね。」

 「……結局何人死んだんだろうな、レンジ。」

 A隊とF隊から1人、B隊が3人、C隊から2人だから……。

 「7人までは数えている。」

 「……1隊が全滅か。」

 7/42=1/6だから2割近く死んでいる計算。

 戦場なら記録的大損害か。

 何かの動画のコメント欄で見た記憶だと死亡率10%で記録的大損害、今後のの戦略に影響するレベルで、死亡率20~30%で全滅扱いだったはず。

 「キリト、とりあえず止めを刺したお前がこの場を纏めてくれ。」

 纏めなければ全員終わった気がしないだろう。

 「……分かった。」

 キリトが黒いコートを着て前に出る。

 おそらくボスの戦利品であり、勝ったという証明をするためだろう。

 「……今回の犠牲は大きかった。だが、なんとか俺達は勝利することができた。これはアイングラッド解放への大きな一歩だ。死んでしまったディアベルら7人への弔いも兼ねて、今日は静かに祝おう。」

 「祝う前にディアベルら7人の英霊に、黙祷を捧げたいと思うんだが、どうだろう。」

 俺はそう言って周りを見る。

 反対意見はないようだ。

 「「総員、黙祷!!」」

 生き残った俺達全員で静かに7人の冥福を祈った。

 

 

 

 

 

 1分ほどして後ろの方から手が上がった。

 「……どうした?」

 「……少し、喋らせてもらっても、いいか?俺はB隊の生き残り、だ。」

 泣いていたせいか、目が赤い。

 キリトが首を縦に振って場所を代わった。

 「俺はビギナーでさ、情報を持っている、ベータテスターが憎かったんだ。でも、7人も死んじまった。そのうち5人は一網打尽で、俺の目の前で死んでいったんだ。俺は端の方にいてたまたまソードスキルに当たらなかったからかろうじて生き残れたんだ。きっとあの刀の前には、ベータテスターもビギナーも関係なかったんだ。死んだ7人にベータテスターがいるのかは永遠に分からない。でも死んだプレイヤーの中に、ベータテスターがいたのかもしれないって思うと、憎んでいる場合じゃないって思うんだよ。ベータテスターだから無敵だ、ズルイ、チートだ、って思ってたけど、ベータテスターだって1人の人間でさ、斬られたら平等にダメージを受けて死ぬんだって思う、憎むのはなんか違うって、思えて。だからさ、俺は憎むのをやめて、お互いに協力して、100層まで攻略したいと思ったんだ。みんな、頼む…………。」

 「「「「「「「「…………。」」」」」」」」

 「……確かに無意味だ。私達が争うべきなのはモンスターであって人間ではない。」

 「銀髪の人の言う通りだ。だが7人も犠牲者が出てるとなるとベータテスターに非難が集中するんじゃないか?」

 浅黒い男……エギルが言う。

 「確かにそうだ。これはビギナーベータ関係なく俺達全員が7人を殺したようなもの……っ。だけど外野はそうは思わない可能性が高いと俺は思う。なんやかんやでベータのせいにされかねない。」

 「しかもディアベルさんが死んでいるからベータテスターは何しているんだ!!ってなりそうだよな。」

 集団の中からいろいろと聞こえてくる。

 「話を捏造してしまえばいい。問題となっているのは責任の所在がないことだ。死んだ原因をボスに押し付けてしまえばいいだろう。そうだな、ストーリーとしては武器変更されて5人の犠牲者が出てしまい、危うく攻撃隊が全滅するところを司令官であるディアベルが命を懸けて庇い、彼一人の犠牲で済んだ、と。」

 即席にしてはスコールがなかなか良さそうなストーリーを描く。

 「あとは英雄だな。こういう話にはヒーローがつきものだ。」

 俺が付け加える。

 「それならトドメを刺した人間だな。」

 「確か黒いコート着てる奴が最後に攻撃してた。」

 「さっき勝利宣言してたっけ?」

 どうやらキリトのことを指しているっぽい。

 「キリト、出番だ。」

 「え、俺?」

 「そうだ、アンタがいなかったら今頃俺達は死んでいたかもしれない。アンタは俺達の英雄だ。アンタが斬り込んでくれたおかげで俺達は死なないで済んだんだ。ありがとう」

 「ああ、その通りだ。二つ名をつけたいと思うんだがどうだろう。」

 「賛成だ。何かあるか?」

 冷静なスコールがこういうのに積極的なのは違和感があるな。

 「おい、ちょっと待てって!!」

 本人からしてみれば誤魔化す一環としてして考えてなさそうだけど。

 「黒の剣士、でいいんじゃないか?黒いコート着ているし。」

 アハトがそのまんまなことを言う、いいのかそれで?

 「いいわね!!それ。反対者はいるかしら?いないわね。じゃあ二つ名は黒の剣士に決定ね!!」

 「勝手に決めてるんじゃねえ!!」

 アスナが勝手に決定してしまった。

 なお本人に拒否権は無い模様。

 まあいいか、他人事だし。

 「それじゃあストーリーを言うぞ。武器変更されて5人の犠牲者が出てしまい、危うく攻撃隊が全滅するところを司令官であるディアベルが命を懸けて庇い、その仇を黒の剣士キリトが取った、と。そしてディアベルは死に際にビギナーとベータが争わないでくれ……と呟いて死んでいった、だな。こう言った理由はおそらくビギナーとベータが手を取り合って進んでいきたいとディアベルが思ったからとしておこう。これでいいか?」

 ……スコール凄い。

 とっさにここまで考えられるとは……。

 嘘が8割くらい混じっているけど。

 そして反対者もいないようだ。

 「大丈夫だ。2層目は犠牲者0で行こうぜ。」

 キリトが力強く言う。

 「そうね、死ぬ姿はもう見たいくないわ。」

 アスナが凛とした様子で呟く。

 「……………。」

 セフィロスはどうでも良さそうにしている。

 「死ななくて良かった……アイツらは心配してくれているのだろうか。」

 アハトは上を見て口を小さく開いている。

 (家に帰れる日が近づいた、な。)

 俺は声に出さずに言葉を紡いだ。

 「さて、みんなも疲れただろうからここらで解散にしよう。次のボスの時もよろしくな。第二層は黒の剣士たる俺がアクティベートしておくよ。」

 キリト最後にそう言って第1層のボス戦は終わりを告げた。




 出張に行って執筆時間が取れないため、次の投稿は申し訳ありませんが6日後になります。

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