Solitude Art Online   作:自由気ままな人

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 次話は通常通り3日後になります。
 後書きにアンケートがあるので答えてもらえると幸いです。


第12話

 (………………まだ朝の5時か。朝ご飯食べて1時間ほど散歩に行こうかな……。)

 緊張のせいか5時に目覚めてしまったらしい。

 ボス戦は14時からだから9時くらいに起きて13時くらいに迷宮区に行く予定だったんだが。

 「……………。」

 「……………。」

 (話し声……?)

 1人はキリトっぽいがもう1人は……アスナか?

 早起きだな2人とも。

 とにかく俺は音源と考えられるラウンジに向かうことにした。

 

 

 

 「キー坊の剣を欲しがっている人がいるのヨ。」

 「俺の……とりあえずいくらでだ?」

 キリトと……20日前に会った情報屋か?

 喋り方がそれらしい。

 「おはようキリト。この人は?」

 一応確認を取る。

 名前が一致すれば同じと見ていいな。

 「おはようレンジ。この人は鼠のアルゴ。情報屋だ。」

 やっぱりか。

 「先日はありがとうございます。ガイドブック、役に立ちました。」

 初対面だから敬語は基本。

 礼儀を忘れてはいけない。

 これはネットゲームでもあり、対面で話しているのでもある。

 「そんナかしこまらなくてもいいサ。オネーサンは器が広いんダ。」

 フード被ってるから分かりにくいが俺と同じくらいの年齢に見える。

 「一応これはネットゲームですからネチケットを忘れないために、です。あとガイドブックの恩もありますしね。敬語は最初しか使わないし。あ、邪魔しちまってすまんな、キリト。」

 「大丈夫だ。んでアルゴ、買い取り人とその金額を教えてくれ。」

 「エーっと……17000コルだネ。買い取り人は教えられないんダ。」

 「そうか……、とにかく断っておいてくれ。さすがにアニールブレードなしでボスは無理だ。」

 「分かっタ。気を付けテ戦うんだヨ。」

 「ああ。」

 そう言ってアルゴは宿から出て行った。

 「……怪しいな。」

 「レンジもそう思うか?」

 怪しいというか真っ黒だと考えているが。

 「こんな階層でそんな提案をすることがまず考えられない。使ってない武器をたまたま手に入れているのを見たとかならまだ分かるが、そんなことじゃないだろう?」

 「ああ。俺が今使っている片手剣だからな。だけど誰が何の目的でこんなことを……?」

 そこだ、暗殺にしても攻略妨害にしても手口が礼儀正しすぎるし手ぬるい。

 暗殺なら武器を奪わなくても迷宮区やフィールドでHPが減ったところに奇襲をかければいいし、攻略妨害なら悪評を流す……いや、始まったばかりだし、そもそも特定プレイヤーの悪評と言うのをまだ聞いたことがない。

 その理由としてはネットワークがまだ発達していないからだ。

 主なネットワークとして現状ガイドブックしかない。

 となると依頼者がアルゴを使って現状精一杯の攻略妨害をしたということか?

 「誰か、までは分からないが攻略妨害の可能性が高いと俺は考える。」

 「なんでだ?」

 考えをそのまま話せばいいか。

 「暗殺にしてはやり方が丁寧すぎる。HPが減ったところを奇襲すればPKできるだろうし、まず高レベルプレイヤーを殺すこと自体リスクが高い。」

 「まあ、大人しく殺されるつもりはないからな。」

 「そうだ、俺らほど高レベルになると返り討ちの危険がある。だから攻略妨害かなと。やり方が丁寧なのに関してキリトはどう考える?」

 「……俺は何かに迷っているんじゃないかと思う。何に迷っているのかは分からないけど妨害をしなきゃいけないけどしたくない、みたいな。意味がわからなくなってきたな。」

 やり方が丁寧なのは俺も分からないしな……キリトの言っていることが正しいように見える。

 「この辺にしておこうか。ご飯にしよう」

 「わかった。」

 俺達はご飯を食べて肩慣らしに戦ってボス部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 14時5分前、俺達42人全員はボス部屋の扉の前にいた。

 「よし、行くぞ!!!!」

 「「「「「「「「おおーーーーー!!!!!!!!!」」」」」」」」」

 ディアベルが号令を出し、メンバーがそれに応える。

 威勢はいいがうるさい……でも絶望的でいられるよりかはマシか。

 

 「手筈通りにAB隊は攻撃、E隊はタンク、G隊は取り巻きの排除!!CDF隊はいつでも交代できるように警戒するんだ!!」

 ディアベルが指示を出す。

 ディアベルはA隊だが後ろに下がって指示を出す役割、いわゆる司令塔となっていた。

 さあ行くぞ。

 キリトとアスナが閃光のごとく駆け出してボスから遠い敵を相手にしている。

 スコールはボスに一番近い取り巻きを両手剣で吹き飛ばして距離を離し、セフィロスが追撃をかけている。

 俺はレイジスパイクを使って取り巻きの1体のヘイトを向けさせる。

 ランダムに狙われたら面倒だし、ボスに狙われるのは御免被る。

 こっちに来たか、それなら。

 「スラント・トライ。」

 熟練度が上がって昨日新しく覚えたソードスキルだ。

 三角形のように回り込みながら斜めに斬り下し、斬り上げ、斬り下しの3撃を与えるスキルだ。

 そして怯まなくてもアハトがハーフムーンで追撃してくれるから後隙の心配もない。

 2撃も与えればだいたい怯んでくれるからな。

 これはボスの取り巻きでも例外ではない。

 ルイン・コボルド・センチネルも反撃を仕掛けて来るが回避またはガード、そして攻撃してくる時にソードスキルを使ってパリィングという3択を状況によって使い分けている。

 力や武器の攻撃力によってはソードスキルを使わなくてもいけるとはキリトの談。

 ベータテスターは伊達じゃないと言う事だな。

 最後はバーチカルで武器を弾いてスラント・アークで止め。

 4人を見るともう倒したのか下がって体勢を整えているようだ。

 周りを見たら1回目のスイッチがあったらしくCD隊とF隊が前に出ていた。

 ゲージは1本目が残り2/3といったところか。

 「全員終わったか?」

 「ああ。」

 「回復は全員必要ないな?」

 「ええ。」

 「よし、次の指示に備えるぞ。」

 「G隊は取り巻きの排除が終わったなら次スイッチしてくれ!!アタッカーを休ませたい!!」

 取り巻きの排除が一旦終わったのが見えたからかディアベルから指示が飛んで来る。

 そしてその時は遠くない時にやってきた。

 「G隊、スイッチ!!」

 「ボスまで相手することになるとはな。」

 「心まで切り刻んでやろう。」

 「短剣でボスは流石にきついな……。」

 「叩き斬る。」

 「…………。」

 「行くぞ!!」

 六者六様の言葉を紡ぎながら俺達は攻撃を仕掛ける。

 しかしここに誤算があった。

 俺達の攻撃力が高すぎてG隊にヘイトが向いてしまったのだ。

 「スコール!!」

 「分かっている。」

 振り下ろされる斧をガキンと大きな音を生じさせて2人がかりで止める。

 くっ……重いが止められないほどじゃあない。

 それに俺が止めてくれている間にセフィロス達がソードスキルを使って削ってくれているしな。

 ただスコールが止めに入っているのがダメージソース的には少し痛い気がしないでもない。

 「はあっ!!」

 「吹き飛べ!!」

 斧を2人がかりで跳ね除けたが体勢が悪い。

 この時はソードスキルを使わずコボルドをX字に切り裂いた。

 「こっちだ!!こっちに来やがれコボルド!!」

 スレットフル・ロアーを使ってF隊が再び引き付けてくれたようだ。

 「G隊!!AB隊とスイッチ!!1本目がそろそろ削り終わるから処理を頼む!!」

 「了解!!」

 剣閃が五月蠅いから大声を出さざるを得ない。

 喉が枯れないといいけど。

 「スイッチだ!!下がるぞ!!」

 F隊が引き付けてくれたおかげで俺達は楽にスイッチをすることできた。

 「もうすぐ1本目が削り終わる!!警戒を厳かに!!G隊は取り巻きの処理を!!」

 さて、どこから出て来るか……ベータテストの時は2層へ続く階段の近くから出てきたということなのでその近くで警戒をする。

 「……取り巻きが柔らかくて助かるな。」

 アハトが呟く。

 「ああ、俺達の攻撃力が高いのもあるだろうけどな。しかしキリトとアスナのコンビは凄い。」

 「ああ、まるで音のごとき速さだな……来たぞ。」

 「G隊、取り巻きの処理を頼む!!」

 まあ取り巻きの処理なんて長くて2分もあれば終わるんですけどね。

 キリト達2人は1分で終わらせている。

 ちなみに火力の都合上俺達が一番遅い。

 安全を意識しているからというのもあるが、アハトが短剣で元々の火力が低く、俺も力に集中して振っているとは言えないからだ。

 スコールセフィロスの2人は力と敏捷の二極振りでキリトも割合はどうあれ似たようなものだろう。

 アスナは細剣だからほぼ敏捷と見て間違いない、力にもある程度は振っているだろうが。

 細剣に関して言えば敏捷もダメージに関係してくるので早ければ早いほど有利なのである。

 さて、取り巻きの排除が終わった訳だが……まずい状況だ。

 「もう持たない!!援護を頼む!!」

 どうやらF隊の1人が攻撃をまともに食らってしまってレッドゾーンに落ちてしまったらしい。

 さっき交代したばかりじゃなかったか……?

 「う、うわわああああぁぁぁ!!!!!!!」

 レッドゾーンに落ちたプレイヤーが敵に背を向けて逃げ出す。

 おい!!ボスに背を向けるのはまず……もう遅いか。

 「やめろおっ!!」

 「いやあぁぁ!!」

 「避けてくれえぇぇぇぇっ!!」

 キリトらが叫ぶも虚しく、斧が振り抜かれて蒼い欠片となってしまうプレイヤー。

 これが死ぬと言う事か……。

 それはあまりに軽いもののように見えた。

 だけど歩みを止める訳にはいかない。

 俺達は今立っている場所はしっかりとした場所ではなく、蜃気楼のように覚束ない場所なのだから。

 悲しむのは後で出来る。

 今やるべきことは敵を見据えて戦う事、それだけだ。

 だが直近の問題として壁役が欠けるのは痛い。

 「くそっ……F隊を援護してくれ!!」

 ディアベルっ……パニックになっているとはいえ援護する隊を言ってくれないと渋滞を起こすだろうが。

 しかし指示してくれるだけマシだ。

 最悪はここで総崩れになって10人くらい死者が出ることだからな。

 指示がこれでは不十分だ。

 だがら俺達という強力な駒を使わない訳にはいかない。

 アハト、スコール、セフィロス、キリト、アスナ、頼む。

 「G隊はF隊の撤退を支援する!!E隊はF隊を引き摺ってでも助けろ!!」

 「クッ……F隊!!俺がボスを引き付ける。動ける奴は前を見て落ち着いて撤退しろ!!」

 「ここは私が引き受けよう。」

 「「「…………。」」」

 俺が宣言をして、キリトが自力で動けるプレイヤーを鼓舞&補助、セフィロスは舞い降りて助けに入る。

 後3人の声がないがヘイトをこっちに向けられた以上周りを気にしている暇は無い。

 「レンジ!!復帰するまで手伝ってくれ!!」

 「言われなくてもやってやるさ。」

 上から斧が来た所をキリトがホリゾンタルで弾く。

 隙が出来たイルファング・ザ・コボルドロードに俺はパーチカル・アークを叩き込む。

 同時にセフィロスも胴薙ぎの一閃を叩き込んでいた。

 単発系スキルは攻撃を弾く時に使いたいから攻撃はアーク系、防御に単発系と使い分けが必要か。

 スキルを叩き込んだところで安心してはいられない。

 コイツは盾も攻撃に転用してくるのだ。

 俗に言う『シールドバッシュ』だ。

 ソードスキル扱いではないためダメージは低いものの吹き飛ばされやすく、追撃を貰いやすいので注意が必要だ。

 さっき死人が出たのもおそらくこれだろう。

 それを俺は右に転がって回避する。

 起き上がった俺は左から斧が来るのを見てパーチカルで弾きにかかる。

 ガキィン!!と大きな音を立てて鍔迫り合いになる。

 相手は片手なのにもかかわらず重い。

 少しでも気を抜けばこっちが吹き飛ばされるな。

 それを見たセフィロスが幻月で斧を掬い上げるように弾いた。

 その隙を逃さずAB隊とG隊の2人がソードスキルを叩き込む。

 人数が足りないと思ったらアスナが死を見たせいか戦意喪失してしまったらしく、アハトがフォローに行っているのが見える。

 スコールは傷ついたプレイヤーにポーションを飲ませているようだ。

 そして周りを良く見ると蹲っているプレイヤーや騒いでいるプレイヤーがちらほらと見える。

 ディアベルもパニックになっている後衛達の指示で忙しく、前まで指示が行き届いてない。

 俺は叫び出しそうになる。

 次に死ぬのは俺達かもしれないのに騒ぎ立てているんじゃねえよ。

 冷静に対処しろよ。

 これは、ゲームであっても遊びではない

 しかし俺はこみ上げてくるものを必死で抑える。

 (クッ……冷静になれ!!俺よ……っ。)

 後ろと前を繋げなくては……っ。

 「キリト、スコール、30秒支えてくれ。」

 「分かった。」

 「了解だ。」

 近くに来たスコールに指示を出す。

 やることは……スイッチだ。

 F隊は大丈夫だが……AB隊が不安だ。

 なら、

 「AB隊はC隊とスイッチ!!全隊生存を優先しろ!!」

 犠牲者が出る前に疲労があるAB隊を下げ、元気なC隊を前に出す。

 俺達と違って早さはないが攻守共に優れる重アタッカーだからそう簡単に落とされることはないはずだ。

 次は壁役だ。

 俺達6人が壁を務めているからなんとか持っているようなものでいつ崩壊してもおかしくない状況。

 「E隊!!救助は終わったか!?」

 「いつでも行けるぞ!!治療はD隊とディアベルがやっている!!」

 どうりでさっきから声が聞こえない訳だ。

 司令官が指示を出さなくてどうするよ。

 ゲージを見ると2本目のゲージが1割を切っていた。

 「E隊は前に出て壁に!!G隊はE隊とスイッチ!!取り巻きに備えろ!!」

 ここで取り巻きが来るか……厳しい。

 俺が行かないと捌き切れない。

 「これ以上死なせてたまるかよ……!!」

 「怖いが……やるしかないっ。」

 壁役が命だからな、今は。

 怖かろうがなんだろうがやってくれなければ文字通り俺達は全滅する。

 「ディアベル、治療は終わったのか?」

 「ああ、皆目の前で死人が出てショックだがなんとか戦闘に復帰できそうだ。」

 「お前は司令官なんだから周りを良く見ろよ。」

 「分かった……。」

 取り巻きがそろそろ出て来る以上その近くにいなければならない。

 アスナの様子は……アハトがフォローしてたな。

 「アハト、アスナは?」

 「ダメだ、上手くフォローできない。というかぼっちに慰めるなんて高度なことやらせないでくれ。」

 やはりコミュ障が慰めるのはまちがっているな。

 付き合いの長いキリトに頼むしかない。

 「キリト、アスナのフォローを頼む。」

 「分かった、ってアスナ!!大丈夫か!!」

 ただならない様子だが俺達はそれに構っていられない、取り巻きの出現だ。

 「私とスコールでそれぞれ引き受けよう。」

 「助かる。アハト、行くぞ。」

 「はいはい、働きたくないなぁ……。」

 働かないと死ぬぞアハトよ。

 俺は駆け出しながら右を見る。

 安定して攻撃や防御が出来ていることから体勢を立て直しつつあるようだ。

 ディアベルが指示を出し、手が空いている人間が重症者を回復させている。

 これならなんとかなりそうか。

 (迅速に仕留めて本隊のフォローに入らなくては。)

 「レンジ、合わせろ。」

 「了解。行くぞ。」

 アハトがハーフムーンを繰り出し、間を入れずに俺はホリゾンタル・トライで追撃をかける。

  怯みから復帰したルイン・コボルド・センチネルが攻撃をしてくるが、俺とてソードスキルの隙から解放された瞬間に。

 「遅い。」

 スラントで迎え斬り、アハトがファッドエッジでトドメ。

 素早く撃破できたな。

 スコールら2人はまだか。

 「アスナは?」

 キリトに聞く。

 すまないが悲しむ余裕はないんだ、今は。

 立ち止まってなくても死ぬんだ、ここは。

 だから立ってくれ、もう死者を見たくない。

 「もう大丈夫だ、心配ない。」

 キリトが力強く立ち上がる。

 「私は……ここで立ち止まるわけには……いかないのっ!!」

 アスナはそう言いながら、フードを投げ捨てた。

 栗色の長い髪の毛が舞う。

 それはまるで覚悟を決めた1人の人間の祝福のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ……行くわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 アンケートの内容は、ユニークスキルについてです。

 10個全部に設定を作ったのですが(作中にある2つはほぼ原作そのままです)ネタバレになる可能性があるため、設定集にて新しく話を作って公開するかどうかについてアンケートをメッセージで取りたいと思います。
 
 また、こんなスキルをあのキャラが使って欲しいとかあればそれもメッセージにてお願いしたいと思います。
 
 1通も来なかった場合は取得者が出て来るまで非公開という扱いにさせて頂きます。
 期限は2月9日までです。

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