読んで下さった全ての人への感謝をここに記します。
原作のセリフを入れたいが言動がご都合主義に……書き方が難しい。
俺達が宿屋に入ったらラウンジに2人の先客がいた。武器の整備をしていたらしく、机の上には一振りの両手剣と刀が置いてある。
1人は1m以上の長い刀を持った銀髪の……男、なのか?髪の毛は女性みたいに艶やかで長いが横顔は男性に近いような……。見ただけでは男性か女性かの区別はつかなかった。
俺はもう1人の茶髪の男に目を向ける。全体的に整った印象を感じた。顔立ちもそうだが雰囲気が落ち着いていて冷たい。
そしてアハトが落ち着きのない顔をしている。とりあえず俺は、
「(落ち着け。)」
「(わ、分かった……。)」
こう言った後、2人組に話しかけた。
「こんばんは。」
「……こんばんは。」
茶髪の男が一瞬遅れて挨拶を返した。銀髪の男は黙って刀を研いでいる。ここは見て分かる武器の話をするのが良さげだ。アハトはこの様子だがら口火を切るのは難しいだろう。
「武器は両手剣を使っているんですか?」
初対面だと敬語になるのは性だ。ネチケットとも言うが。直接会話しているからネかエかは議論が別れそうな気がしないでもない。
「ああ、前使っていた武器が両手剣に近かったからな。……名前を聞いていなかったな。俺はスコール。後敬語は要らない。ネットだから年齢もあってないようなものだしな。」
「分かりま……分かった。俺はレンジ。連れの名前はアハト。武器は片手剣がメイン。よろしく。」
敬語を慌てて引っ込めた。
「アハトです。武器は短剣です。よろしくお願いします。」
「アハトは話すのが苦手みたいなんだ。だから、その、多目に見て欲しい。」
本人もそう言っていたし。
「そうか。……まあ俺も俺の連れもそういうことがたまにあるから気にしていない。」
「ところで後ろで刀を研いでいる人はなんて名前なんですか?」
アハトが気になったのかそう口を開く。俺も気になっていた。
「ああ、彼はセフィロス。刀をメインに使っている。」
スコールがそう言うと刀を研いでいる銀髪の人……セフィロスがこちらの顔を向け、口を開く。
「私がセフィロスだ。共に誘おう。」
誘おうなんて初めて聞いたぞ。声は低く、この時初めて男だと分かった。
「俺はレンジ。こちらこそよろしく。」
「俺はアハトです。よろしく。」
俺達は名乗り直す。ここからが本番だ。俺は提案をする。
「情報交換しませんか?」
「情報交換……か。構わないが、何故だ?」
スコールがそう返す。物分りいいなこの人。
「俺達はビギナーなので情報が必要だと感じたから、ですかね。」
「一人で行動してたら死にかけたもので……。」
アハトが続けて口を開く。死にかけたというのは初対面の時のことだろう。
「俺の方も情報が必要だ、よろしく頼む。」
「では俺から。どうやらPK集団がいるみたいだ。」
「それは俺達の方でも把握しているな。手口は俺達を10人くらいで囲んで、という戦法だった。殺した後に金とドロップアイテムを奪うつもりだったんだろう。」
10人って……俺達だったらポリゴンの破片になってたぞ。
「よく脱出できましたね……。」
「敵が短剣メインだったからな。懐に潜り込ませなければ両手剣の方が強い。」
短剣と両手剣が鍔迫り合い……ないな。短剣側の勝つビジョンが浮かばない。それより短剣が先に折れそうだ。
「私が刀で一閃か二閃すれば殺せたからな、人を襲おうとする奴はまあこんなものだろう。3人も殺せば逃げて行った。」
二閃すれば……殺せた?
「……人を、殺したんですか?」
アハトが怖そうに聞く。
「ああ。私を殺そうとしているのに私は殺そうとしない、というのは公平ではない。少なくとも私はそう思っている。」
「「……………。」」
俺達は揃って考え込んでしまった。人を殺すという事は善か悪かで言えば間違いなく悪だ。しかし殺される状況においては決して悪とは言い切れない。無論殺さずに撃退するのが一番なのだが、自分の命が掛かっているという状況において意図せず殺してしまうこともあるが……。とにかく聞いてみよう。聞かなければならない。今はデスゲームなのだから。
「意図して……わざと殺したんですか?」
「いや、わざと殺すなんてことはしない。私に刃向う者だけだ。」
「俺もそうだ。わざわざ殺すなんてオレンジになるからやらない方がいい。」
スコールもそうフォロー?しているがすぐに納得できそうにない。……オレンジ?
「オレンジってどういう意味だ?」
俺がそう質問する。アハトも首を傾げている様子から分からないようだ。
「そういえばビギナーだったな。オレンジというのは他プレイヤーを傷つけたりすると名前のカーソルが普通は緑だがその部分がオレンジになる。そうなると町に入れなくなったり層と層を繋ぐ転移装置が使えなくなったりする。ちなみにオレンジを攻撃してもオレンジにはならない。セフィロスの殺すのだから殺されても仕方ないと言う事と似たようなことだ。システム上は。」
「でも殺したという事実は消えませんよね?」
アハトはそう質問する。
「そうだな。この罪は一生背負っていくことになるだろう。現実世界に戻ったら裁判を受けることになるかもしれない。それでもあの時、殺していなければ殺されていたのは俺達だった。今はこう自身を納得させている。もう取り返しがつく事は無いんだ。」
……殺すと言う事に折り合いをつけているというか、殺す事に礼節を持っているように感じる言い方だ。
「『善い奴と悪い奴がいるわけじゃない。敵と、敵じゃない奴がいるだけだ。』もし殺す時が来たならこの言葉を思い出せ。俺達を襲う敵なら、殺すしかない。」
スコールが付け足す。
「その通りだ。スコールは1人だが私は3人殺した。……私の現実の話をしよう。」
セフィロスが唐突にそんなことを言う。……現実で殺しを仕事にしているというと殺し屋しか思い浮かばない。
「私は警備会社に勤めていてね。」
「警備会社……?」
「ボディーガードと言えば分かりやすいか。」
「……まさか。」
アハトが小さく呟く。
「そう、私は殺した。此処に来る前から………………な。事情聴取は当然されたが正当防衛が認められて起訴はされなかった。」
セフィロスが遠く呟く。
守るために殺した……か。
「殺したことに後悔はないのか!?」
アハトが冷静さを少し失いながら問いかけている。
「仕事上仕方ないと思っている。銃を向けて警告はしたのだが聞かずに突っ込んで来た。仕方なく撃ったのだが当たったのがナイフを持っていた手首ではなく、左胸だった。」
セフィロスの声が遠い。理解できるような、できないような、そんな感じだ。
「その……心臓に当たった時、どんな気分だったんだ?」
俺は辛うじて口を開く。
「いつかは起こる事だと思っていた。こんな若い時に殺すことになるとは流石に思っていなかったが。」
本気だ。本気で殺すことに慣れている。それに比べて俺はどうだ。死なないように、とか考えていながら殺す覚悟なんて微塵も無い。そうだ、これはデスゲームだ。いつ死ぬか分からない。だからいつでも殺せるように、覚悟を決めないと……!!
「俺は……、殺す覚悟なんて出来そうにないです……。だけど、俺は生きて帰らなきゃいけないんだ。妹やあいつらのためにも絶対に!!」
アハトが最初は弱く、しかし最後は勢い良く吐き捨てた。俺と同じようにアハトも激しい葛藤があったのだろう。
「俺も同じ、生きて帰るんだ。退屈だけど平和な日常に。」
覚悟を……決められはしないが口に出す。ここで言わなければずっと覚悟は固まらないままだ。
「殺してでも生き残るのなら覚悟しておけ。重いぞ。」
スコールが言う。その言葉の意味は考えるまでもない。
「私はそろそろレンジ達の話が聞きたいのだが。」
確かに話が横道に逸れるどころか飛び上がっているレベルだ。
「ああ、PKの手口の話だったな。俺は遭遇してないがアハトがMPKに遭遇したとのことだ。説明頼むぞ、アハト。」
俺よりアハトの方が詳しく説明できると思い、振った。
「俺がリトルネペントを狩っていたら、近くにいた2人組が実を割って逃げたんだ。幸いその2人組に半分以上のリトルネペントが追いかけて行ったのとレンジが加勢してくれたおかげで生き残ることができたんだ。」
「2人組の生死は?」
「目を向けている余裕がなかったから分からないが五分五分だと思う。」
俺は死んでると思うがな。あの物量はレベルが低いと厳しい。PK集団がレベリングをやってる訳が無いと言う前提があるが。
「……その様子だと集団で行動した方が良さそうか。レンジ、アハト、私が誘おう。」
「頭が高いぞセフィロス……相方がこんなだが俺からも頼む。武器が全員違うから攻撃と速度とある程度バランスが良くなるはずだ。」
願っても無い提案だ。考えるまでもない。
「共に戦おう。」
「よろしくお願いします。」
俺達2人は当然それを受けた。4人となると現状かなりの戦力になる。裏切られさえしなければ、だが。
「良い子だ。」
「…………こいつには構ってるヒマはないな。俺は寝させてもらう。」
スコールが部屋に入って行く。……俺も寝るか。
「……俺も寝るわ。おやすみ。」
アハトも席を立って部屋に消えた。どうやらセフィロスの言動はそっとしておく方針らしい。
「……元気出して下さい。」
何て言ったらいいか本気で分からなかったのでフォローをして俺も部屋に消えた。
……明日刀で真っ二つにされませんように。
やっと出て来ました3・4人目。
そして原作キャラが誰一人出て来ない……(ちゃんと出しますのでご安心下さい)。